テクニカル指標は、良い意味で「どれを使っても一緒」。
自分の感覚にしっくりくる、使いやすいものを選択して長く付き合うのが一番です。
この企画では2024年6月上旬のドル円日足チャートを統一して、人気インジケーターをTradingViewのデフォルト設定で表示してみました。見比べて、感覚に近いものがあれば、使い倒してみてください。
本文◉外国為替編集部
テクニカル指標使いこなしの基本
①トレンド系、オシレーター系の違いを押さえる
インジケーターは大別すると2種類。トレンド系は、再計算された価格をローソク足と同じエリアに描画したもの。オシレーター系は、価格を再計算することは同じですが、100%、50%などの割合や比率を、ローソク足と別のエリアに描画します。一般的に前者はトレンド相場向け、後者はレンジ相場向けとされます。
②テクニカル指標だけで未来は分からない
全てのテクニカル指標は、価格変動を再計算することで、過去から現在に続く傾向を図示したものです。よって、テクニカル指標だけで未来を正確に予想することはできないと考えてください。
③自分に合うものを選ぶ
テクニカル指標には、本質的な優劣はありません。それぞれに特徴があり、メリットもデメリットもあります。自分の考え方や性格に合うものを選び、長い期間をかけて使い込むことが重要です。
④たくさん表示させすぎない
インジケーターはあくまで価格変動のある傾向をピックアップして可視化したものであるため、本家本元のローソク足の方がはるかに重要です。ローソク足が見えなくなるくらいの複数表示はやめましょう。
単純移動平均線【トレンド系インジケーター】
どんなインジケーター?
指定期間の終値の平均価格を線で結んだもの。単純な平均値である単純移動平均線(SMA)の他、直近の変動を重視した指数平滑移動平均線(EMA)などのバージョンもあります。
移動平均線は、ボリンジャーバンドやMACDのような他のインジケーターのベースにもなっている、非常にポピュラーなインジケーターです。期間が短いほど鋭く、長いほどゆったり反応します。複数本を表示させて、線同士の交差をシグナルとしたり、トレンド発生時の押し目買いや戻り売りの基準にしたりと、活用法もさまざまです。
ボリンジャーバンド【トレンド系インジケーター】
どんなインジケーター?
中央の移動平均線に対して、上下に標準偏差を表示したものです。ボラティリティが上がると帯の幅が広がり、ボラティリティが下がると幅は狭くなります。
ジョン・ボリンジャー氏が考案したメジャーなテクニカル指標です。ミドルラインの角度や、上下のバンド幅でトレンドの有無や強弱を判断できます。上のチャートのように、±1σ、±2σを表示することが一般的で、価格の位置によってエントリーや決済の戦略が決まる使い方がメジャーです。
一目均衡表【トレンド系インジケーター】
どんなインジケーター?
昭和初期に、細田悟一氏(一目山人)によって確立された相場分析手法。転換線、基準線、2本の先行スパン、遅行スパンによって構成されています。
今号のP60に登場する細田哲生さんは細田悟一氏の孫にあたり、一目均衡表を活用した相場分析についての発信を行っています。活用法は多岐に渡り複雑ですが、「①転換線が基準線を上に抜ける ②遅行スパンがローソク足より上にある ③ローソク足が2本の先行スパンより上にある」状態を三役好転と呼び、上昇のシグナルであると判断します。
フィボナッチ・リトレースメント
どんなインジケーター?
フィボナッチ数列に基づいた特定の比率にあたる価格を、押し目買いや戻り売りの基準に役立てようとするツールです。上昇時には安値から高値、下降時には高値から安値に引きます。
上のチャートなら、安値から高値にフィボナッチ・リトレースメントを引くことで、23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、78.6%という特定の比率がチャート上に描画されます。押し目が浅い場合なら、23.6%や38.2%、深く押すなら61.8%、78.6%を目安にします。また、半値戻しである50.0%も重視されます。売りの場合でも使い方は同じで、高値から安値にフィボナッチを当てます。
RSI(Relative Strength Index)【オシレーター系インジケーター】
どんなインジケーター?
過去一定期間の上げ幅(1本前の足との比較)の合計が、その期間の上げ幅の合計+下げ幅の合計に対してどれくらいの割合であるかを表しています。
日本語に訳すと相対力指数で、上がり過ぎや下がり過ぎを可視化する代表的なオシレーター系インジケーターです。70~80%で上がり過ぎ、20~30%で下がり過ぎと判断するのが一般的です。上のチャートでは、RSIの移動平均線を表示しています。TradingViewでは、こういったチャートのカスタマイズが容易に行えます。
ストキャスティクス【オシレーター系インジケーター】
どんなインジケーター?
一定期間の変動幅と終値の位置関係から、相場の相対的な勢いを可視化したものです。%Kは敏感に、%Dはゆるやかに動き、両者のクロスが転換シグナルとされています。
相場の過熱感をパーセンテージで表す代表的なオシレーター系インジケーターで、上がり過ぎ、下がり過ぎを視覚的に判断できます。どのオシレーター系にも共通しますが、高値や安値を更新し続ける長いトレンドが出た場合、上下に張りついてしまうことが多いです。そのため、トレンド系のインジケーターとの併用が一般的です。
MACD(Moving Average Convergence Divergence)【オシレーター系インジケーター】
どんなインジケーター?
2本のEMAの距離(MACD)を軸にしたオシレーター系指標です。MACDとその移動平均であるシグナルの交差をトレンド転換のシグナルとします。
このチャートの場合、期間12と期間26の2本のEMAの乖離をMACDが表しています。上昇トレンドなら期間12が期間26に対して先行することになり、MACDは上昇していきます。MACDを平均化したのがシグナルで、MACDとシグナルの距離と位置関係をヒストグラムが表しています。ヒストグラムが上か下に増加している間は、トレンドの勢いが増していると判断するのが基本です。
RCI(Rank Correlation Index)【オシレーター系インジケーター】
どんなインジケーター?
一定期間の日付(日足の場合)と価格に順位をつけ、その相関関係を-100%から+100%で表したものです。期間が長いほど長期的なトレンドを、短いほど短期的なトレンドを表します。
3本、あるいは4本といった複数の線を同時に表示するインジケーターで、幅広い活用法があります。長期線が上か下に張りついている状態で、短期線で一時的な押し目や戻りを狙うのが一般的な使い方です。また、天井圏や底値圏で、長期線が中期線を追い抜くことでトレンドが転換したと判断する使い方もポピュラーです。
さまざまな罫線を使い分ける
ローソク足
説明不要の基本形、ただしローソク足に固執する必要もない
最もベーシックな罫線といえばローソク足。始値・終値・高値・安値の4本値を1本のローソク足で表現しています。一説に江戸時代に日本で考案されたともいわれており、その時間内の値動きをイメージできる優れた仕組みといえます。
平均足
トレンド発生時に同じ色の足が連続出現しやすい
始値は、1本前の平均足の実体の中間(始値と終値の合計を2で割った価格)からスタートします。終値は、始値・終値・高値・安値の平均価格です。こうした計算を行うことにより、トレンドが発生しているときには、同じ色が連続しやすくなっています。
バーチャート
高値と安値を突起のような形状で表現している
MT4で最初にチャートを開くと、必ずこのバーチャートになるため、見たことがある方も多いはず。左側の突起が始値、右側の突起が終値で、高値と安値はローソク足のヒゲと同じです。高値と安値が連結するように推移していきます。
ラインチャート
終値を線で結んだもの、確定した値動きだけを簡単に確認できる
終値のみを線で結んだもので、途中経過は表示せず、最終確定した価格推移のみが分かります。平均足と現在の価格を同時に見る際に、ローソク足だと分かりづらくなるため、ラインチャートを表示するのも有効です。
練行足
時間の概念を排除、一定値幅の変動があった場合に更新
非時系列チャートの代表格。このページの他のチャートは、全て一定時間が経過するごとに新しい足が立ちますが、練行足は一定幅の値動きがあった場合のみ、チャートが更新されます。時間の概念が関係なく、値動きのみに着目した罫線です。
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