王道の考え方を学ぶだけで十分に有利なトレードができる
専業トレーダーとしてFXの知識などを発信しているテクニカルトレーダーhanaさん。
「FXは勉強すれば勝てるようになる」というhanaさんに、トレンドに乗る方法について教えてもらった。
難しいことはせずに、逆張りをしない。たったこれだけで本当に勝てるようになるのか?
意外にもシンプルを極めれば、勝てる世界がそこにあった……。
テクニカルトレーダーhana氏プロフィール
CFD、FXが主戦場の専業トレーダー兼Fincsアドバイザー。hana塾で累計2000人以上の【自分の頭で考える】トレーダーを育成。鋭いテクニカル分析・分かりやすい指導に定評がある。日々、完全初心者でも根拠のあるトレードができるような情報を発信中。
取材・本文◉荻田里佳
- 裁量で怪しい値動きを感知、トレードを控える選択を
- トレンドの初動を捉えて大きく利益を上げる方法
- 半分だけの利食いで握力を高めていく!
- 動く時間にトレードする、狙うべきはNY時間!
- トレードで勝ち続けるならファンダの理解は必須
- まとめ①|週足と日足はどっち向き?同じ傾きならGOサイン
- まとめ②|エリオット波動で利益を得る、狙うべきは1波の推進波から
- まとめ③|レンジを抜けたらエントリー、握り続ける強い握力は必須
- まとめ④|デイトレで使える水平線と年に数回のチャンス(200SMA)
- まとめ⑤|BB±2σ付近でエネルギー補充?反発・反落を確認してエントリー
- トレード例①|200SMAでの反発を発見!安く買って高く売る絶好のチャンス
- トレード例②|大きく減らせる無駄な負け、王道のエリオット波動
- hanaさんの余談ですが……。
裁量で怪しい値動きを感知、トレードを控える選択を
荻田里佳(以下:荻田) まずは裁量トレードのメリットについて教えてください。
テクニカルトレーダーhana(以下:ハナ) 自動売買は一定のルールを作って過去の値動きの規則性を基にどこで売買するかを探すものですが、裁量トレードは、生き物のように変化する相場に対して臨機応変に対応できるメリットがあります。
例えば日銀の介入が入りそうな局面や普段の値動きと比べて怪しい値動きをしていたらトレードを控える、そうすれば損失を防ぐことができますよね。
荻田 怪しい値動きとは何ですか?
ハナ ローソク足は市場参加者の心理が反映されたものだと思って良いので、ローソク足の伸びが遅かったり、ヒゲの長さだったり、ちょっとした感覚の変化があると、怪しいと判断してトレードを控えます。
荻田 では、裁量トレードのデメリットはどんなことだと思いますか?
ハナ 裁量=労働なので単純に疲れるというのがデメリットです(笑)。最初は損切りをすることによる心理的ダメージを感じて、体力とメンタルのどちらも辛いと思うかもしれません。
トレンドの初動を捉えて大きく利益を上げる方法
荻田 裁量トレードで稼ぐには、デイトレードかスイングトレードか、どちらが向いていると思いますか?
ハナ デイ寄りのスイングが稼げると思います。
荻田 そもそもトレンドに乗るとはどういうことだと考えていますか?
ハナ チャートにはレンジ・上昇トレンド・下降トレンドの三種類しかなく、ダウ理論の定義でいえば、高値と安値を切り上げ続けていたら上昇トレンド、高値と安値を切り下げ続けていたら下降トレンドです。しかし、実際にはトレンドの判定に悩む局面はたくさんあります。定義だけでは状況が分かりづらい局面で、何を使って相場を分析し、トレンドに乗るかは勝敗を分けると思います。
私はブレイクアウト手法を使ってトレンドの初動を捉えるのが得意なので、トレンドが発生したその瞬間にエントリーする際は、ロットを大きく張って稼ぐことが多いです。トレンド発生前にエネルギーを溜めているレンジ相場との付き合い方が非常に重要です。
例えば、有名なチャート理論エリオット波動では推進波の1波~5波、修正波のA波~C波で構成されますが、推進波に乗るのがトレンドに逆らわないコツですよね。レンジを抜けたときにエントリーしておくと、後からエリオット波動の1波だったと分かることも珍しくありません。1波をつかんで5波までポジションを握っておけば、大きな利益を積み上げられるというわけです。
荻田 ハナさんは、この1波でエントリーする手法をデイトレでやっているのですか?
ハナ そうです。4時間足以上を見てエントリーするのがおすすめなのですが、そうなると1日では決済できないポジションが発生すると思います。目の前でコロコロ変わる損益に一喜一憂してしまい、すぐに利益確定してしまう人は、2波が始まるタイミングで半分利食いしてしまえば、心にも余裕ができると思います。私も2波で半分利確して、残り半分の利益を伸ばし続ける手法で稼いでいます。エリオット波動では、3波が一番伸びるといわれているので、それまではしっかりポジションを握っておくのが肝ですね。
荻田 4時間足でのトレードなので、四六時中チャートに張り付く必要はないと思いますが、定期的にチャートを見て成行でレンジブレイクを狙っているんですか?
ハナ レンジブレイクをしたあたりに逆指値を入れても良いですが、私の場合はあまり指値を使わないので、95%の割合で成行エントリーします。
荻田 上下どちらに抜けた場合でも同じ対応ですか?
ハナ 考え方は一緒です。しかし、為替に関しては、私の場合ロングポジションを持つのが基本です。金融商品にもよりますが、今トレンドに乗ることを考えると、上昇トレンドを形成しているドル円とメキシコペソ円がとてもやりやすいと感じています。
もちろん、年が変わればトレンドが転換して下落トレンドになることもあると思うので、そのときはショートばかりする、ということもあり得ます。つまり、長い目で見たときに、どちらに分があるかを考えるのが大事だということです。押し目を作るための下落中を狙うより、押し目をつけて伸びていく方向についていく方が有利だと思います。
荻田 次に、レンジかトレンドかを見分ける方法を教えてください。
ハナ 判断の方法は複数ありますが、ボリンジャーバンドのミドルラインと呼ばれる20SMAを見るのが分かりやすくておすすめです。ミドルラインが横ばいのときはレンジ、傾きが出ていたらトレンドと判断します。
しかし、ミドルラインは移動平均線=一定期間の価格から平均値を計算し、折れ線グラフで表したものなので、現在の相場より遅れて反応します。最初はそれでも十分だと思いますが、ある程度のレベル以上になってくると、シンプルにローソク足の形だけでトレンドかどうかが分かるようになるので、そこまで突き詰めてFXと向き合えるようになると良いですね。
荻田 ローソク足のどんな動きに注目しているのですか?
ハナ ダウ理論で見たときに、高値と安値を更新しているか、ローソク足に勢いがあるかです。レンジのときは、どっちつかずの状況になるので、高値と安値を更新したのか、はっきりと判断するのが難しいと思います。トレンドが発生すれば、それらは明確になることなので、分からないのであれば触りません。
荻田 相場の状況を判断する環境認識をどのように行っているか、教えてください。
ハナ 必ず週足と日足を見ます。二つの時間足でミドルラインが同じ方向を向いていて、なおかつ上下どちらかに傾きがしっかり出ているかを確認するのです。
例えば、週足と日足のミドルラインが上向きになっていたら、強い上昇トレンドのサイン。もし、週足のミドルラインは上向きで、日足では下を向いていた場合は、日足で押し目を作っていると分析します。
また、ダウ理論を基に、各時間足で意識されている価格帯に水平線を引くようにしています。
荻田 水平線のブレイクアウトを狙うと良いということですか?
ハナ そうですね。水平線付近では特に右往左往せず、シンプルにブレイクしたらエントリーする、予想と反したら損切りをするというやり方を徹底するのが良いと思います。
荻田 二つのミドルラインを確認した後は、どのように戦略を組みますか?
ハナ 週足と日足のトレンドが上なのにショートを持つというのは自殺行為だと思っているので、逆張りは絶対にしません。自分で引いた水平線付近で逆張りをしたがる人は多いんですが、初心者であれば、その勝率は決して高くないでしょう。トレンドに乗った方が勝率も獲得pips数も多いはず。負けを減らした方がトータルで増やせる金額も多くなると思います。
半分だけの利食いで握力を高めていく!
荻田 出口戦略の考え方も教えてください。
ハナ 先述しましたが、ポジションを握り続けるために、エリオット波動の1波の終わりで半分利食いし、残りを5波まで握り続けることが多いです。
また、利確に限らず、安値と安値、または高値と高値を結ぶトレンドラインを参考にすることも……。水平線に比べると優位性は高くありませんが、トレンドラインはある程度幅があるものとして考え、押し目でトレンドラインにタッチしたら買ったり、トレンドラインを割ったら利確する、といった具合に使います。
一方で、損切りは直近の安値を下回ってから行います。ただし、この損切りの考え方は多くのトレーダーが参考にするもので、その価格帯で大きく価格が動きやすいことも覚悟しなければなりません。時には自分が狩られる側だということも考慮し、必要な損切りだと割り切りましょう。
トレンドに乗る手法は簡単なことだと思うかもしれませんが、できることをできる範囲で、当たり前のことをあたり前にできるようになるのは訓練が必要です。しかし、自分の許容損失額の範囲内のロットで、それらができるようになれば勝てるようになります。大きくロットを入れすぎると、少し価格が逆行しただけで損切りしたり、損切りを確定するのが怖くて損失が膨らんでしまったり、通常の判断ができなくなることもあると思います。そんな状況に陥らないためにも、適切なロット管理を徹底するのはFXをやっていく上で最も重要なことだといえるでしょう。
動く時間にトレードする、狙うべきはNY時間!
荻田 ブレイクアウトを狙うなら、価格が大きく動く時間にトレードするのが重要ですよね。
ハナ 出来高が大きい時間に取引をするのは大事ですね。特に、NY時間が始まる21時半(冬時間は22時半)、日本時間の午前9時、ロンドン時間の16時、それぞれ開始から1時間程度は市場が活発に動きやすいです。
そのほかにも、経済指標の発表は価格が動く燃料になりやすい傾向があるので、その時間帯にトレードができる環境を整えておくと良いと思います。
荻田 エリオット波動の初動を捉える以外でおすすめの手法はありますか?
ハナ 長期のトレンドを示す移動平均線の200SMAはFXで意識されやすいので参考にすることをおすすめします。使い方は簡単で、上昇トレンドの場合は200SMAに上からタッチしたタイミングで買いを仕込むんです。200SMAにタッチするタイミングは年間で考えても少ないですが、その絶好の買い場をどう活かせるかが勝敗を分けると思います。
さらに、上昇トレンドでは、ボリンジャーバンドの−2σ付近で価格がもたついていれば、パワーを溜めている可能性も。そこで買いを入れて、前回の高値付近で利確するというやり方も有効だと思います。これは応用編なので、低ロットで試してみてほしいですね。
トレードで勝ち続けるならファンダの理解は必須
荻田 ファンダメンタルズはどれぐらい参考にされていますか?
ハナ テクニカル7、ファンダメンタルズ3といった割合です。ただし、大前提としてファンダメンタルズが分かっていないとトレンドの方向性は読めないと思っています。為替では、各国のインフレ率や金利は必ずチェックしていますね。
また、ドル円は日銀の介入がどのタイミングで入ってくるのかが気になっていた人も多いと思います。そのあたりも要人発言などのニュースやSNSなどをチェックしておおよその価格帯を分析します。今年4月は急激な円安進行がない限り、156円付近までは介入しないと見ていました。それはおおむね予想通りで、GW連休での介入は160円付近で行われました。ファンダメンタルズを理解しておくと、エントリーや利食いの参考になるので、やはり把握しておいた方が良いですね。
荻田 最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
ハナ FXの短期売買では特に9割が負ける世界といわれています。負ける理由はほとんどメンタルだと思っていて、通常時の脳とトレーダーとしての脳の使い方を分けなければならないのに、それができない人が多いのです。
勉強すれば結果がついてくる世界ですが、その方法が間違っていると一生勝てません。仮説と検証を繰り返して勉強を続けてください。
また、どれぐらい勉強が必要かというと、大学受験ぐらい本気で勉強すれば勝てるようになります。私の場合は、1年間1日10時間以上勉強しました。ただ、私は勉強を辛く思ったことはなく、hana塾の仲間と一緒にトレードの世界にのめり込みました。トレードの勉強をする人には、仲間を作ることをオススメします。勉強すれば、いつの間にか勝てるトレーダーになっていると思うので、継続することを意識して頑張ってください。
インタビュー日◎2024年5月17日
まとめ①|週足と日足はどっち向き?同じ傾きならGOサイン
トレンドを見極めるには、週足と日足で同じ方向を向いているかを確認する必要がある。この2つのミドルラインが上向きであれば、強い上昇になりやすい。実際に上記のチャート例では、レンジでパワーを溜めていた分、レンジを抜けてからは強い上昇となった。
まとめ②|エリオット波動で利益を得る、狙うべきは1波の推進波から
上記は上昇時のエリオット波動。1波〜5波を推進波、A波~C波を修正波と呼ぶ。エリオット波動のセオリーでは、①推進波の3波は1波、3波、5波の中で最も短くはならない。②推進波の中で2波が1波の始点(始値)を超えて修正することはない。③推進波の中で4波が1波の高値を割り込むことはない。ここから分かるように、エリオット波動の推進波を捉えることができれば大きな利益に繋げることができる。
まとめ③|レンジを抜けたらエントリー、握り続ける強い握力は必須
エリオット波動の1波でエントリーするためには、レンジを抜けたタイミングを狙うのが最も有効だ。ただ、ブレイクがダマシである可能性もあるので、予想と逆行した場合は直近の安値を下回ったタイミングで損切りしよう。もし、上手く波に乗れた場合はできるだけ5波まで握る。ただし、価格が急上昇したり、上ヒゲが長くなった場合は価格が逆行する可能性が高くなるので利確する。
まとめ④|デイトレで使える水平線と年に数回のチャンス(200SMA)
青い線は200SMAで、これに触れるタイミングは多くはないが、どちらかに抜けると、そこから一気に価格が伸びることは少なくない。年に数回のチャンスといえるだろう。また、水平線は各時間足で意識されている価格帯に引き、そこをブレイクするとトレンドが出ることがある。今回は200SMAと水平線のブレイクのタイミングが同じぐらいの時期だったので、自信を持って買いのエントリーができる局面だ。また、安値と安値を結ぶトレンドラインを引き、利確などの参考にする。
まとめ⑤|BB±2σ付近でエネルギー補充?反発・反落を確認してエントリー
ボリンジャーバンド±2σ付近でエネルギーを溜めて反転した場合は、前回の高値(または安値)を目指して価格が動くことがある。今回は200SMAにヒゲでタッチしていたので、200SMAがサポートになり、上昇する可能性が高かった。上記の場合は、上昇トレンド中の反発だったので、利確目標は前回の高値付近とした。
トレード例①|200SMAでの反発を発見!安く買って高く売る絶好のチャンス
-2σで価格がもたつき、上昇し始めたタイミングが200SMAへのタッチと重なったら積極的に買いを入れていきたい。前回の高値ブレイクにも迷いがなかったため、ポジションはしばらく握り、大きな利益を目指す。決済のタイミングはトレンドライン(オレンジ)を割るか、ローソク足がバンドウォークをやめそうになってから。その後も、200SMAで買いを入れたら前回の高値の少し手前で決済すれば利益を積み重ねることができた。
トレード例②|大きく減らせる無駄な負け、王道のエリオット波動
レンジが長ければ長いほどブレイクしたときの勢いが強いので、ブレイクするまではポジションを持つのをグッと我慢。直近の高値を上に抜けたら買いを入れ、目先の利益にとらわれずポジションを握ろう。ただし、長い上ヒゲを発見したら利確する。今回も上ヒゲが長い陰線が出現したので、迷わず利確した。
hanaさんの余談ですが……。
円安が進み、ドル建てで見ると円の価値は下がっている。そんなときに、保有しているのが自国の通貨だけで良いのか、今一度考えてほしい。FXはギャンブルだという人が多いものの、1つの通貨だけに依存するのも、ある意味ギャンブルではないだろうか……。また、日米は金利差が広がっている影響で、円でドルを買えば、スワップポイント(金利差調整分)の収入を得ることもできる。私はドルを持っておくことはメリットが大きいと考えているが、自分の財産を守る手段にはどんな方法があるのか、しっかり自分で学んで各々で身につけてほしいと思う。
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