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YEN蔵氏インタビュー「ぶっちゃけFXは一番難しい投資。だからこそテクニカルを磨きながら相場のテーマをいつも把握しておく」

YEN蔵氏インタビュー「ぶっちゃけFXは一番難しい投資。だからこそテクニカルを磨きながら相場のテーマをいつも把握しておく」

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外資系銀行で20年以上外国為替ディーラーとして活躍し、現在は投資系メディアやYouTubeなどでマーケットに関する情報発信を精力的に行っているYEN蔵さん。

豊富な知識と経験を持つ為替のプロに、FXで成功するためのノウハウをインタビューで伺いました。今回は聞き手役として、ユーチューバー&FXトレーダーの逢坂みぁさんにも参加していただきました。

聞き手◉逢坂みぁ/本文◉落合彰

YEN蔵(えんぞう)氏プロフィール
YEN蔵(えんぞう)氏プロフィール

米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。「YEN蔵」の名で為替市場に対するコメントなどで多数のアクセスを集めている。

YENzo market
YENzo market 登録数2.74万人のFX系人気YouTubeチャンネル。毎日更新される朝会は、相場観が養えると評判の人気コンテンツ。FOMC、ECBといった重要な経済指標や要人発言時のライブ配信は、万単位の視聴者が参加する。
逢坂みぁ氏の近影
逢坂みぁ氏プロフィール

2019年の会社退職をきっかけにしてFXとYouTubeを開始。2021年6月にノックアウトオプションで資金を14倍に増やし、9月にはファイスタTV公式FXトレードバトルで優勝。日足と15分足を使ったトレードを得意とし、損切りの早さに定評がある。【Achievement】ラジオNIKKEI『夜トレ!』 にて夜トレガールズ!として出演中。外貨ex byGMO公式チャンネル『ファイスタTV』レギュラー出演中

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取引しやすいのはドル絡みの通貨ペア

逢坂みぁ(以下逢坂)「長年、銀行でディーラーとして活躍されていたYEN蔵さんですが、個人投資家になってからは為替相場に対してまた違った印象をお持ちなのではないでしょうか?」

YEN蔵「銀行を辞めたのは2008年くらいで、そのときは円キャリートレードが流行っていて、スワップを取るやり方がメインでした。でもスワップを取るやり方だと絶対に最後はドスンと円高に動くので、危ういなと思っていたら案の定リーマンショックでそうなったわけ。

 日本のFXトレーダーの皆さんはクロス円が大好きで、だいたい円絡みの通貨ペアでしかトレードしないよね。ここ1年ぐらいは外貨の金利が上がってきているので、またスワップが取れるのであればクロス円の取引でもいいけど、クロス円の場合、考えなければいけない要素が三つになるので基本的に難しくなる。例えば、ドル円だったらドルと円の力関係で為替が動くので、その二つの要素を考えればいいけど、ユーロ円ではユーロと円とドルの三つの力関係を見なければならないからね」

逢坂「ドル絡みの通貨ペアで取引した方が簡単だということですか?」

YEN蔵「そうだね。ドルが絡む通貨ペアは直接取引なので、動きがはっきり出る傾向がある。もちろんリスクオン、リスクオフが流行っているときはクロス円中心でもいいけど、そうじゃないマーケットもあるので、そこらへんは使い分けた方がいい。それと、株の動きで円高や円安になるときも同様にクロス円中心でいいけど、そうではないときはドル絡みの方が分かりやすいよね。特にドル円はスプレッドも狭いし、取引しやすいと思うよ」

逢坂「今はFX会社間のスプレッド競争が激しくなっていて、ドル円のスプレッドは極めて狭いですよね。個人トレーダーにとってはありがたい環境です」

YEN蔵「個人トレーダーの方が入手できる情報も昔と比べて格段に増えたよね。銀行で得られる情報と比べるとまだ少ないけど、それでもトレードに生かせる情報をFX会社などからタダでたくさん得ることができる。今は昔とは比べものにならないほど低コストでトレードできる環境が整っていると思う。FX会社が頑張りすぎなんじゃないかな」

逢坂「YEN蔵さんはFX以外にもいろいろな投資をされているじゃないですか。全体的に見て、FXトレーダーの特徴や問題点などありますか?」

YEN蔵「株に比べてFXや仮想通貨を取引する人は若い人が多いよね。過去に投資の経験がない人たちにとっては、株よりもFXや仮想通貨の方が参入のハードルが低いんだと思う」

逢坂「確かに、株→FX→仮想通貨の順に若くなっていくイメージです。最近のFX業界で他に良い部分、悪い部分、変わっていけばいい部分などはありますか?」

YEN蔵「日本のFX会社はすごくクリーンだよね。例えば、FX会社が破綻しても証拠金は保証してくれるし、海外の業者と比べると明らかに安全で、しっかりレギュレーションができていると思う。その一方で、あまりにもスプレッド競争が激しすぎる。そこにこだわるのではなく、約定力を上げるとかもっと他のことを重視してもいい気がする」

逢坂「日本のFX会社のサービスはすごいですよね。ツールはとても使いやすいですし、取引できる通貨ペアもどんどん増えています。各社の差がもうつかなくなってきているので、ちょっと大変そうだなと感じます」

YEN蔵「差別化を図るといっても、限界があるよね」

相場を動かすテーマが何かを常に意識する

逢坂「続いて、FXで成功するためのアドバイスをいただきたいです。まず個人トレーダーにお勧めの平日のルーティーン、週末のルーティーンなど、こんなことをやっておいたらいいみたいな習慣があれば教えてください」

YEN蔵「僕は毎日チャートだけでなくファンダメンタルズも見ていて、YouTubeで朝会をやるために経済指標とか要人発言は必ずチェックしています。FXの基本はテクニカル分析だと考えているんだけど、ただテクニカルをやるにしても何で相場が動いているのかを把握しておく必要がある。例えば、相場を動かすテーマは少し前だと銀行問題だったし、その前は金利の上昇だった。テクニカルだけでなく、ファンダ的に今何がフォーカスされているかのチェックは毎日やっておいた方がいいだろうね」

逢坂「ちなみに、テクニカル分析を重視するという考え方は、株や商品先物など他の投資に対してもお持ちですか?」

YEN蔵「株もテクニカルがメインになるけど、時間軸の長い取引だとファンダの要素が入ってくる。個別株の場合は経済全体のファンダだけでなく、個別の企業のファンダが重要になってくるので、そこを調べないといけない。株が上がるか下がるかはファンダと需給で決まるので、そこの分析に時間を割きますね。一方、為替の場合はフォーカスされているテーマから大局的に上がるか下がるかがある程度予測できるけど、日々のトレードはテクニカルじゃないとできないから、必然的にテクニカルのウェイトが高くなるよね」

逢坂「なるほど。さまざまな投資先がある中で、FXトレーダーは手っ取り早く稼ぎたいという人が多い印象です。FXのトレードで特に気をつけることはありますか?」

YEN蔵「個人的な見解ですが、僕はFXが一番難しいと思っています。株が簡単とはいわないけど、個別株の場合は業績を徹底的に調べることによって打率を上げることができる。すごく儲かっている会社は、いずれ上がるからね。でも、FXは絶対的にこれで動くという要素が決まっていない。もちろんファンダでもテクニカルでも動くには動くけど、動く要素が常に変わるから難しいんだと思う」

逢坂「そう思っている方は少なくないですよね。『FXってトレンドがないから難しくない?』みたいにおっしゃる方もいます」

YEN蔵「為替相場には、上がるか下がるかの決定的な理由がないんだよね。例えば、メキシコペソのようなスワップ金利が高くて上昇傾向の通貨ペアがあっても、それがどこまで上がるか分からない。株だったらPERとかで大体のあたりはつけられるんだけど、為替はどこまで行っても不思議ではないし、限界が読めない。タガが外れちゃうと、去年のドル円のように151円まで上昇するケースもあるわけで、そこは難しいよね」

アルゴリズム取引に張り合う必要はない

逢坂「話は変わりまして、好きな相場格言はありますか?」

YEN蔵「『相場は明日もある』という格言が好きです。僕は損切りが得意で利食いが下手なんだけど、相場は明日もあるし明後日もあるので、一つのポジションとその損益結果にこだわらないようにしてる。

 それと格言じゃないんだけど、プロ野球の名監督として知られる野村監督が述べた『勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし』という言葉は相場にも当てはまるかなと。どんなことでも負ける理由は決まっていて、相場でもやっちゃいけないことをやると負けるべくして負けます。裏を返せば、やってはいけないことを徹底してやらないようにすれば負けは減らせるんだよね。あと、羽生善治の『決断力』という本も良かったかな。勝負師の心意気を知るにはいい本だよ」

逢坂「大きな損切りをしちゃったときって、なかなか先に一歩踏み出せないじゃないですか。でも明日もあると割り切ってしまえば、今日の負けはいったん置いてまた頑張ろうと思えます。この『相場は明日もある』という言葉、好きかもしれないです」

YEN蔵「トレードを休むにしても、全く相場を見ないようにするんじゃなくて、例えば今までチャートを4面で見ていたのであれば、それを1面に減らすなどして頭の片隅に入れておくといいかもしれないね。それと、大負けしたあとはロットを減らしてリハビリしながら再スタートしていくのがいいんじゃないかな」

逢坂「FXは24時間いつでもどこでも取引できるじゃないですか。いつでもチャンスが狙えるということは、チャンスを取りこぼさないように常に相場に張り付いてしまうトレーダーさんも結構多いと思います。生活を疎かにしないように相場との適度な距離を保つにはどうしたらいいですか?」

YEN蔵「短期トレードの人だったら取引時間を決めるのがいいよね。あるいはより長期にするのもありかと。スイング系の長期トレードでストップロスと利食いを置いておけば、相場への拘束時間はかなり減ると思う。あとはアラート機能を利用するのも有効だね。どこのFX会社のツールにもアラート機能はあるので、寝るときにそれをセッティングしておくとか」

逢坂「なるほど。そのようにすれば生活リズムを崩すことなく相場に向き合えそうです。ところで、最近の為替市場は、AIによるアルゴリズム取引の占める割合が増えていると思います。そういう市場に対して、個人トレーダーはどう向き合うべきだとお考えですか?」

YEN蔵「初めて僕らがアルゴリズム取引を見いだしたのは、1990年代後半から2000年ぐらいのときです。銀行間の取引はEBS(Electronic Broking System)という端末でやるんだけど、その端末の中にも異常に高速な売買をしている人たちがいて、人間が見ても分からない速さで1秒間に何十回、何百回と取引するんだよ。

 いわゆるHFT(High Frequency Trading)なんだけど、個人トレーダーがそれと同じ土俵で戦ってもしょうがないよね。なので、僕はアルゴリズム取引に巻き込まれないよう、距離を取って長期のスイングをやっています。

 スキャルの人はアルゴリズムと戦わないといけないので大変だと思うよ。研究してアルゴリズムのクセを見ながら裏をかいてやっていくしかないんじゃないかな」

逢坂「ありがとうございます。次に、初心者にお勧めのテクニカルのインジケーターはありますか?」

YEN蔵「初心者に向いているかは分からないけど、僕はピボットとRSIを使ってる。ピボットに関しては、デイリーピボットと週間ピボットが重なるところをかなり意識してる。例えば、昨日(2023年3月29日)はデイリーピボットのレジスタンス3と週間ピボットのレジスタンス1が重なっていたんだよね。ピボットは損切りポイントが分かりやすいのも利点かと」

逢坂「私もピボットを使っているので良さが分かります。初心者にもお勧めだと思います」

注目すべきファンダは金利と中央銀行の動き

逢坂「ファンダメンタルズについてもう少し掘り下げてお話を伺います。ここ最近で注目しておくべき点はどこでしょう?」

YEN蔵「金利と中央銀行の動きは押さえておいた方がいいね。特に金利は為替にも株にも全部に影響する。ファンダメンタルズは難しいので敬遠しがちだけど、金利だけは絶対に見ておきましょう」

逢坂「ファンダメンタルズはとっつきにくいですよね。個人的な話になってしまい恐縮ですが、初めてFOMCのドットチャートを見たときに見方が分からず挫折しました。あれ分かりづらくないですか?」

YEN蔵「確かに分かりづらいので、ドットチャートを見るのではなく、SEP(FOMC参加者の経済見通しのサマリー)の下の方にFFレートのターゲットというのがあるから、そこを見た方がいいよ」

逢坂「なるほど、勉強になります。10年前とか20年前ってFXを勉強するツールといえば基本的に本でしたが、今は動画とかSNSとかたくさんあって、初心者はどの情報を信じたらいいのか判断がつかないと思うんです。YEN蔵さん的にお勧めの動画やSNSはありますか?」

YEN蔵「最初はFX会社が公開している初心者向けの解説動画を見るのがいいんじゃないかな。あとYouTubeを見るんだったら、本当に信頼できる人が教えてくれる動画がいいよね。また、ニュースを取得するのにTwitterは便利だと思う。ただ、基本的にロイターとかのニュースは英語版の方が早く出るので、速報性を求めるなら英文のニュースを読む必要がある。英語でもTwitterやグーグルの翻訳機能を利用すれば内容は分かると思うので、英語ができなくても問題ないでしょう」

逢坂「私もTwitterは情報を得るのに適していると思います。ただ、SNSは自分の都合のいい解釈で情報を取ってしまいがちです。例えば、自分のポジションとか思考に合致しているものしか取ってこないみたいな。偏った情報を取らないようにする方法はありますかね?」

YEN蔵「FXの情報ってそんなに偏ってるかな? 海外の情報とかいろいろ見るけど、僕は別に偏っているとは感じない。むしろ株関連の方が煽りのポジショントークとかが激しいと思う。FXはまだマジなんじゃないかな」

逢坂「確かに個別株のSNSは私利私欲が渦巻くダークネスなところという印象があります。その点、FXは割とフェアかもしれません」

複数のテクニカルを身につけることが重要

逢坂「では、単刀直入にFXはどうすれば儲かると思いますか?」

YEN蔵「俺が聞きたいよ(笑)。真面目に答えるなら、自分の得意なテクニカルを三つくらい決めて、それをブラッシュアップしていくことだね。例えば、野球のピッチャーはストレート1本のみではなく、カーブ、スライダー、フォークなど他の球種も覚えた方が有利じゃないですか。FXもそれと同じで、自分に合ったテクニカルを三つぐらい選んでしっかり勉強して、まずは自分のものにすることが大切だと思う。そして実際にエントリーしてみて、勝てるかどうかを試してみる。FXで勝つ秘訣は、使えるテクニカルを一つずつ増やしていくことじゃないかな」

逢坂「インジケーターの基本部分や性質をしっかりと勉強した上で、トレードの場数を踏んでいき、慣れていくみたいな感じですかね」

YEN蔵「そうだね。FXの勝ち方は本当に千差万別だけど、地道にテクニカルの勝率を上げていくか、リスクリワードを高くするか、それしかないと思う」

逢坂「ありがとうございます。では最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします」

YEN蔵「FXは非常に難しいので、まずはいくつかのテクニカルを勉強して使いこなせるようになってください。ファンダメンタルズに関しては、勉強するというより、今のマーケットが何に注目しているかということだけ押さえておけばいいと思います。

 また、FXは1000通貨取引ならやられても致命傷になることは少ないので、1000通貨で慣れてから資金を本格的に投入していくのもいいんじゃないかな。何の努力もせずに初心者がいきなり成功できるほど甘い世界ではありません。焦らずゆっくり成長していきましょう」

インタビュー日◎2023年3月30日

Editor’s Note1-1|FXには方向感や価格の決まった基準がない

実は一番FXが難しい理由
ドル円月足チャート

YEN蔵さんが、「FXは実は一番難しい」と考えるのは、FXでは上がるか下がるかの基準が定まっておらず、相場によってコロコロ変わるからです。また、FXには株のPER(株価収益率)のような、価格変動の目安がなく、上がるとき、下がるときにどこまで行くかも分かりません。ドル円の月足チャートを見ると、2017~2021年の5年間はほとんど動きがなかったドル円が、2022年から突如として動くようになり、一気に151円まで到達しました。

Editor’s Note1-2|短期トレードの頼れる基準、ピボット

米ドル/円5分足チャート
チャート提供:TradingView

前日(1つ前の足)の高値・安値・終値から計算され、チャート上に描画されるインジケーターがピボット。短期的な売買をする際の価格目標としてよく利用されます。特に注目は、日足のピボットと週足のピボットが重複するタイミングで、強力なサポートやレジスタンスになることが多く、利用価値は高いです。上のチャートは、インタビューの中でも出てきた3月29日のドル円チャート。日足と週足のピボットがほぼ同じ位置にあり、抵抗として機能しています。

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米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。「YEN蔵」の名で為替市場に対するコメントなどで多数のアクセスを集めている。
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