質実剛健な情報発信を続ける相場師クロさんのコラムが、満を持して今号(外国為替vol.9)から始まります。
単にチャートとにらめっこをしていても、継続的にFXで利益を得られる状態には決して近づきません。「なぜそれが必要か」を理解しながら、勝つための思考と技術を積み上げていきましょう。
相場師クロ(黒田雄士)氏プロフィール
FX専門コンサルティング会社 / オーケーインテリジェンス合同会社CEO。為替から株までやる相場師。FXはSMA・水平線軸のテクニカル、短期デイトレ、月利回り命。株式は需給分析ベースのロング&ショート。
金額にフォーカスせず、欲と恐怖を遠ざけることが勝ち組への第一歩
皆さんは、FXトレードで「勝つとはどういうことか?」と聞かれたらどう答えるでしょうか?
「そりゃぁ、利益を出すことでしょう」となるでしょうが、では100円でも増えればそれは勝ちといえるのか?と問われれば、「それでも 〝勝ち〟は〝勝ち〟だ!」と言い切れる人は少ないかと思います。
僕自身、オンラインサロンを約4年運営し続けて、延べ1000人以上のトレーダー志望者と接してきましたが、「勝つ」ということの意味を最初から解像度高く捉えている人はほとんどいません。
なので、僕はいつもトレードの学習を進めていくファーストステップとして、「勝つとはどういうことか?」を個々の中で具体的イメージとして持ってもらうことを徹底しています。これも細分化していくと単純に見えて意外と考えることがたくさんあるのですが。
今回の記事では、「〝勝つ〟ためには 〝負けない〟思考が必要」であるという話を深掘りしていきたいと思います。
勝つ/負けないの意味、トレードの敵は欲と恐怖
ただ「勝ちたい!」といっても、その条件を満たす基準というのは人によって大きく違うものです。僕のメルマガを昔から読んでいる人は、「(原資に対する)利回り」にフォーカスし、平均的にプラス利回りを出し続ける運用を継続することを勝ちと考える人が多いでしょう。
一方で極論ですが、1万円程の少額資金から大きくレバレッジを掛けて一気に10万円、100万円に増やすことを勝ちと考える人もいます。
勝ちという考え方に対して「こうである」という絶対的基準がない以上、どんな考え方でも正しい、あるいは 間違っているということはありません。ただ、この内面化する勝ちに対する定義次第で、FXトレード、ひいては相場で戦い続け、継続的な利益を得られるか否かが大きく分かれます。
僕が考える、「相場で最後まで生き残れない勝ちの考え方」とは、「利益に対する欲と損失に対する恐怖」にとらわれることです。
これも常々伝えていることなのですが、利益(特に金額)にフォーカスした勝ちにこだわるのは、典型的な「利益に対する欲」なので、これを求めだすとキリがありません。
それでも偶発的に10万円、100万円を稼ぐことはできるでしょうが、その利益を守りながら次も継続的に同じような利益を出し続けられるか?といえば、それは非常に難しいといえます。
一時的に勝てる人はたくさんいたとしても、最後までその勝ち舞台に立ち続けられる人が少ないのは「欲に基づく勝ち」にとらわれて、守り方を知らないからなのです。
欲というものは、人の本能として誰でも持ち合わせているものですので、これ自体を根絶することは難しいのですが、「欲に基づく勝ちを求める姿勢」はコントロールする必要があります。
これについては、僕はいつも周りの人たちに「金額にフォーカスした目標を定めるな」と伝えています。簡単に例えれば「月に10万円稼ぐ」といった目標を掲げるな、ということです。
欲望任せに行動すれば行き着く先はコツドカ
相場というものは、どんな分析を行おうと、チャートの右端より先の動きを予知できる人はいません(相場の不確実性)。
その中で、「自分が稼ぎたい額=自分の中の欲を満たす金額」を満足させようとすると、10万円稼げば、次は100万円にしたくなるだろうし、これではキリがないわけです。こうして際限なく稼ぐ金額を引き上げれば、負うリスクは大きくなる一方です。
すると行き着く先は「コツコツドカン」といわれるような、取り返しのつかない大きな損失です。
今まで多くのトレーダーを見てきましたが、「稼ぐ金額(欲)にフォーカスした目標」を設定して、長く相場で生き残れた人は少ないです。
では、長く相場で生き残れる考え方に切り替えるにはどうすべきかというと、稼ぐ金額にフォーカスすることから、「利回りに意識を向ける」ことです。なぜその意識の転換が必要なのかを深掘りするのは、別の機会にしようと思います。
また一方で、稼いだ利益を守ろうとする意識を持つことは良いとしても、「せっかく稼いだこの利益を失う恐怖」にとらわれるのも、トレードには非常に悪い影響をもたらします。
この恐怖という感情がまたクセモノで、ただ勝ち方ばかりを追究し続けたとしても、「失うことへの恐怖」を払拭することはできません。むしろ、そのときに稼いだ金額が多いほど、負けずに済んでいる時間が長くなるほど、これは増幅していきます。
このトレードにおける恐怖というのは、「知らないこと(未知)への不安」から来るものであり、守り方を知らないために負けに対する「おぼろげな不安」が恐怖に直結するのです。
FX雑誌「外国為替」vol.12
発売:2024年8月22日(木)
定価:980円(本体891円)