みんな元気か? マッスル武藤だ! 前回は、政府・中銀が外貨準備の一環でゴールドを購入している点について解説したが、理解してくれたか? 特に新興国がゴールドの購入に積極的なのだが、彼らは自国通貨の価値の低下やドル保有のリスクに対してだけでなく、金利動向やインフレにも気を配ってゴールドを購入している。彼らのゴールド買いの動きには要注目だ。
無論、ゴールドを買っているのは彼らだけでない。機関投資家やヘッジファンドなども買っているんだ。彼らはそもそも、金融市場で投資を行うプレーヤーである。したがって、昔は金の現物などを購入することは、投資ルール上では不可能だった。しかし、2000年代に入って上場投資信託(ETF)の仕組みが浸透し、ゴールドの実物を裏付けとしたゴールドETFが証券取引所に上場されると、ゴールドを証券(株式)と同じ位置付けで購入できるようになったんだ。
このような歴史的な出来事を背景に、プロの投資家のマネーがゴールドマーケットに間接的に流入し、2000年代半ばからゴールドの価格が急騰するきっかけになったんだよ。その結果、機関投資家やヘッジファンドなどは、今やゴールドマーケットのキープレーヤーになり、彼らの投資行動次第でゴールド価格が変動するようになったわけだ。
彼らの多くは欧米で投資活動をしており、投資スタイルは順張り=トレンドフォローだ。つまり、ゴールド価格が上昇すると見れば、その動きに乗る形で買いポジションを積み増してくる。逆に、下落傾向になれば、手仕舞い売りを行う。結果的に、彼らの投資行動がゴールド価格の変動に拍車をかけることになる。最近では、彼らが買わないと相場が上がらないことも少なくない。
もっとも、彼らの主戦場は株式市場だ。株価が堅調なら、ゴールドを保有する理由は低下する。彼らの中でのゴールドの位置付けはあくまでリスク分散であり、ヘッジ目的である。もちろん、値上がり益を追求しているファンドもあるだろう。それでも、大半はヘッジ目的が多い。そうなると、株価が上昇しているときに彼らはゴールドの購入は手控えることになる。いずれにしても、欧米を中心とした投資家のゴールドに対するスタンスは、ゴールド価格に直接的に影響を与えることになるから要注意だ。
ETFの保有高は日々公表されている銘柄もあり、これらをチェックしておくと、欧米投資家のゴールドに対するスタンスがおおむね理解できる。月次ベースでは、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が国別のETF保有高を公表している。これも参考になるだろう。
次回は投機家のトレード行動について解説するから、楽しみにしとけよ。じゃあまたな!
FX雑誌「外国為替」vol.14
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