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村居孝美氏インタビュー「裁量も自動も経験してきたから分かる類似点・相違点」

村居孝美氏インタビュー「裁量も自動も経験してきたから分かる類似点・相違点」

JFX株式会社

株のデイトレ、日経平均先物のシステムトレード、そしてFXの自動売買といろいろなジャンルのトレードを攻略してきた村居孝美さんに、裁量と自動の違いやメリット、デメリットなどについて幅広く教えてもらいました。

聞き手・本文◉鹿内武蔵

IG証券

将来的な目標は横断的なポートフォリオ

─現在はシステムトレーダーとして活動されていますが、もともとは裁量トレードをされていたとか。

「そうですね。僕が投資を本格的に始めたのは2003年ごろで、当時は個別株の短期トレードをやっていました」

─どのような手法だったんですか?

「チャートと板で値動きを追いかけ、利益確定や決済は抵抗になっているサポートライン付近で行います。長くても3時間程度の保有なので、デイトレということになると思います。日をまたいでポジションを持つことはまずないです。

 そのあとは日経平均先物のシステムトレード開発と運用に移行したため、ずっと株のデイトレはやっていませんでしたが、最近はまた再開しました」

─なぜまた株を始めたんですか?

「いくつか目的があるんですが、まずは分散のためです。いろいろな市場で投資を行った方が、対応できる相場展開の幅が広がり、損益が安定します。最終的には、FX、CFD、日経平均先物、そして個別株ですね。これらをバランス良く組み合わせた、総合的なポートフォリオを提供したいと思っていて、今はいろいろなことに取り組んでいます。

 あと、資金を本当に大きくしていくためには、個別株は避けて通れないのもあります。数千万円から1億円くらいまでは、FXや先物でも問題なく到達できるんですが、数十億円稼ごうと思うと、どうしても個別株の力が必要になります」

─確かに、本当の富豪、資産家は個別株をたくさん保有して、長期的にインカムゲインとキャピタルゲインの両方で稼いでいる印象があります。

システムトレードも人が作ったルール

─この外国為替vol.3のテーマは、裁量トレードと自動売買を比較することで、よりトレードスタイルを深めていこうというものです。村居さんにとって、システムトレードとはどういうものですか?

「この辺りはいろいろな定義があって曖昧になっている部分もあるんですが、システムに任せることがシステムトレードです。統計的に優位性がある条件化された売買を繰り返すことですかね。裁量トレードでも、100%ルール化されていてそれを淡々と繰り返すのなら、ある意味システムトレードといえると思います。

 逆に僕が今、株でやっているようなトレードは、もちろん一定のルールはありますけど、全てがシステム化できないんですよね。なので、典型的な裁量トレードだと思います」

─村居さんとも交流があるラリー・ウィリアムズさんがロビンスカップで優勝したとき、システムトレードでものすごく資金を増やしたじゃないですか。ただ、あれって1987年なんですよね。最初のWindowsが出たのが1995年ですから、それより8年も前。ということは、今のMT4やMT5みたいな高速に動く自動売買を駆使していたわけじゃないはずなんですよね。

 データを集めて検証し、優位性があることを前提にトレードをして結果を出したことは事実ですが、人間が見て何をやっているか分からないような摩訶不思議なプログラムがなくても世界一になれたんです。

「そうだと思います。例えばラリーが使っていた手法の中で、OOPS(ウップス)という有名なものがあるんですが、これはとてもシンプルです。

『前日の安値よりも安い価格で始まり、前日の安値を上抜いたら買い』
『前日の高値よりも高い価格で始まり、前日の高値を下回ったら売り』

 ただこれだけですが、ルールとしては明確でシステムトレードといえます。今このやり方に優位性があるかは分かりませんが、超高速トレードや膨大な量の計算は必要ないですよね」

─一般的に想像されるEAの売買よりずっとシンプルですよね。

「システムトレードとは本来これで十分なんです。マーケットの癖を利用して利益を狙うものですから。

 自動売買といっても、人間が作ったルールを機械が自動的に実行するだけのことですからね。勝手に稼いでくれるようなものではありません」

─もちろん、機関投資家が構築している高速取引のようなものもありますが、MT4ではそこまでできませんよね。

「そうですね。逆に裁量トレードの特徴として、今のマーケットの環境を瞬時に取り入れる要素があります。今日の情報やニュースを参考に買いか売りかを決めることは、シストレにはできません」

裁量トレードはスポーツ選手、自動売買はチームの監督

─裁量トレード、自動売買のどちらもやられてきて、それぞれのメリットやデメリットも教えてください。

「改めて、直近の傾向をアクティブに捉えて利益を狙うのが裁量トレード。統計的な優位性に乗って利益を狙うのがシステムトレードです。一言でまとめるとこういう感じで、まずは両者の違いを押さえましょう。

 土台になっている考え方が違うため、裁量が勝てないときにシストレの調子が良かったり、シストレが負けているときに裁量が稼いだりします。

 例えば今日(2023年1月25日)は、仲値のあともドル円が上がり続けていて、それにつられて株価も上がっていて、それなら買い目線に切り替えていこう、のような」

─シストレだと、そういった臨機応変な対応は無理ですよね。

「無理ですね。長期的な傾向が売りなら、売りしかやりません。最新の情報を見て、瞬間的に方針を転換していくのが裁量です。

 ただシストレは長期的な傾向を狙っているからこそ、常に相場を見張る必要はなく、身体の負担は少ないですね。というか、常にチェックをするならそれは裁量ですから、シストレをやるなら見張ってはいけません。

 あとは感情のコントロールですね。これができないと裁量では成功できません。僕も油断すると、損切りしたあとドテン売買をして、負けを重ねてしまうことがあります。こういうことをやってしまうと、連敗が続いて資金が一気に減ってしまいますから、ルールで制限しないといけません。トレード日記を書いて、自分の悪い癖を見つけ出し、記録していくことは必須です。負ける売買を減らしていくことで、裁量トレードは勝率が上がっていきます。こういった感じに、自分の性格的な部分が出てしまうのが、裁量トレードのデメリットかなと思います。こうして見ていくと、裁量トレーダーはスポーツ選手みたいなものですね。技術職といいますか。

 対して、システムトレーダーは監督ですね。自分ではプレイしませんが、売買ルールをマネージメントしながらチームで勝利を目指します」

─体力面はどうですか?

「裁量トレードはものすごく体力が必要です」

─やはりそうですよね。でもこの点って、あまりテーマにならないですよね。裁量トレードは体力が損益に直結するはずなのに。

「あとは集中力が必要です。電話が鳴ったり、LINEが来たりすると、これまたトレードに影響します。裁量トレードで成功するためには、そういった神聖な場といいますか、集中できる環境を作ることも大切ですね。

 そして、情報収集、チャート分析といった一貫性のある行動を日々取っていかないといけません」

─選手として成功するのは大変です。

「さらに、操作ミスも気をつけないといけません。毎回のトレードごとに取引単位や価格を入力していきますが、これを間違えると危険です。資金管理の計算をその場でやりますからね」

─そう考えると、身体能力、判断能力が非常に求められますね。

「頭の回転は速い方がいいです。僕はせっかちだから、まだ向いているかなと思います」

─裁量トレードはいろいろ大変ですが、その分爆発力はありますか?

「はい。うまい人なら、という条件がありますが、上達すれば裁量の方がたくさん稼げるのは間違いないです。ただ、上達できるかどうかは簡単じゃなく、何年もかかります。マーケット環境の判断は必須です」

─昔勝てていた手法が使えなくなりますよね。

「そうですね。裁量の手法は何十種類もあって、今日はこれ、明日はこれ、というように頻繁に使い分けなくてはいけません。昨日勝てたものが今日勝てるかは分かりませんし、銘柄によって癖も違います」

─厳しい世界ですね。

初心者のトレーニングはインジケーターなしで

─かつて裁量トレードに取り組まれていたからこそ、今のシステムトレードに生きているところはありますか?

「大いにあります。ロジックを作れるのは、裁量をやっていたからだと思います。裁量をあまりやっていない人がロジックを作ると、数字だけで構築しがちで、結果としてそれがカーブフィッティングを招きます」

─マーケットの実態に合ってないということですか?

「そうですね。テクニカル分析、特にオシレーターを使いすぎてしまう傾向を感じます。オシレーターはあくまでサブ的な役割であり、マーケット全体の傾向を捉えることはできません」

─オシレーターは、基本的に0~100%みたいな割合を表すもので、その中に相場観は表現されていないですよね。ただタイミングを取るには向いています。

「例えば、NYダウが上がっているときに日経平均も上がる、という傾向を利用するとします。NYダウが上がっている状態を定義するために、ローソク足なり、移動平均線なり、RSIを使うわけです。この場合、NYダウと日経に連動性があるという要因を狙うことに意味があるわけですが、そういった要因がないのに、テクニカル分析だけを使って自動売買を作ろうとするのは危険です。数字をいじっているだけだからです」

─FX業界では、MT4を使った自動売買が盛んです。村居さんはMT4を経由しないでシステムトレードに取り組んだわけですが、この状況はどう見えますか?

「MT4自体は非常に優れた機能を持っています。ただ、人気のテクニカル分析がたくさん入っていて、最適化が簡単にできてしまうので、どうしても偏ったロジックができてしまうのではないかと」

─確かにMT4は高機能すぎるかもしれません。

「最適化の罠に陥りやすいのでしょうね。バックテスト結果は抜群だけど、実際に動かしてみると、『あれ?』みたいな。

 裁量トレードも自動売買も同じなんですが、まずはインジケーター、特にオシレーターを使わずにトレーニングをしないと勝てるようにはなりません。トレードをするときには、マーケット環境をまず意識します。FXなら株価はどうなっているか、とか。でもインジケーターはこれらの要素を考慮していません。上げ止まったり、下げ止まったことが画面から分かっても、なぜそうなったかにはいろいろな理由があります。初心者の方がインジケーターばかり見ていると、あたかもそこに相場が動く理由があると勘違いしてしまうんですよ。

 FXの王道でマルチタイムフレーム分析があります。長期足が上がっているから、短期足で買おうという考えですが、あれも価格変動を見ているだけなんですよね」

─まず価格変動から見ていくことで、裁量も自動売買もうまくなっていくわけですね。

「ですね。トレードって、ブレイクアウト、押し目買い・戻り売り、みたいな定番のパターンを実行しているだけなんですよ。トレンドは一定期間継続しやすいので、長期足にトレンドがあれば、短期足でもその流れになりやすい、ただこれだけです。値動きがやはり一番の基本ですね」

─最後に、今後の目標ややりたいことを教えてください。

「今年はFXのシステムトレードソフトをリリースする予定です。プログラムの知識がなくても自分でロジックを作ることができ、バックテストにかかる時間はMT4よりずっと短いです。またバックテスト結果も分かりやすく、複数のロジックを組み合わせたポートフォリオも構築でき、資金管理も一目瞭然です。

 自分で作ったポートフォリオの売買が、MT4に送られて自動実行されるので、既にEA運用をしている方は同じ環境でOKです」

─FXのシステムトレードの世界に、新しい風が吹きそうですね。

インタビュー日◎2023年1月25日

ABOUT ME
村居孝美
海外の成功トレーダーやヘッジファンドのシステムトレード戦略モデルをベースとして、市場独自の「アノマリーと値動きパターンの規則性を捉えた売買戦略の検証・作成」や「複数の売買戦略のポートフォリオ検証・作成」が一括管理できる「KENSHIRO」を開発・運用。【著書】トレードの成功哲学 (パンローリング)
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