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松崎美子のFXロンドン部[第9回]〜欧州から見た政治・経済・金融政策の急所〜

松崎美子のFXロンドン部[第9回]〜欧州から見た政治・経済・金融政策の急所〜

ゴールデンウェイ・ジャパン
松崎美子(まつざき よしこ)氏プロフィール
松崎美子氏プロフィール

まつざきよしこ。スイス銀行東京支店へディーラーアシスタントとして入行。結婚のため渡英。バークレイズ銀行本店ディーリングルームに勤め、日本人で初めてのFXオプション・セールスとなる。1997年には米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスを務め、2000年に退職して数年後より、個人投資家へ。ブログ、セミナー、コラム、YouTubeを通じてロンドンや欧州の情報を日々発信している。
【著書】FXファンダメンタルズの強化書──情報を利益につなげる実践の読み方・使い方/松崎美子のロンドンFX (金融の聖地で30年暮らしてわかった日本人が知らない為替の真実)他

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※FX雑誌『外国為替』vol.17(2025年12月22日発売)より転載 最新号の目次・お知らせはこちら

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右のリフォーム左の緑、英国政治の新潮流

 2025年に入り英国の政治地図が大きく塗り替えられつつある。右ではファラージ氏率いるリフォームUK党が保守党を凌駕し、左ではポランスキー氏率いる緑の党が労働党の背後に迫る。いずれも既存政党に対する有権者の不満を受け皿とした「新しいポピュリズム」のうねりである。

 リフォームUK党は、旧Brexit党を母体として、保守党内の右派や離党者を吸収しながら拡大してきた。ファラージ氏が掲げるのは「常識ある国民の声」であり、移民の抑制、英国第一主義、政治エリート批判といったメッセージを打ち出している。保守党が長期政権の疲弊から中道路線へ傾く中、同党は怒れる中間層と地方の不満票を取り込み、ついに世論調査で保守党を上回っただけでなく、支持率No.1に躍り出ており、保守党の求心力は急速に失われつつある。

 その一方で、左側にも異変が起きている。緑の党は、長らく「環境問題」にとどまっていたが、最近は社会的不平等、住宅問題、ガザ紛争など、より広範な倫理的・社会的課題を掲げて急伸している。

 党首のポランスキー氏は国会議員ではなくロンドン市議だが、SNSを駆使して若年層に訴え、「気候危機と格差の是正」を感情的に語る手法で支持を広げている。与党労働党がスターマー政権下で中道に寄った結果、「進歩の理念」を求める層が緑の党へ流れつつある。

英国の伝統的二大政党制への失望

 これら2つの政党の台頭の背景には、このような理由が考えられる。

①世論の不満の受け皿

 労働党が中道寄りになり、「リベラルでもなく改革的でもない」と見られているため、特に若年層・都市部の進歩派が緑の党に流れている。

②SNS時代の国会議員が持つ〝メディア影響力〟

 ポランスキー氏は発信力が強く、TikTok・YouTube・ポッドキャストなどで若者層に浸透。

③新たな政党が吹かせる、反主流派への風

 右派ではリフォームUK党が保守党を食い、左派でも緑の党が労働党を食い始めている。

 わざわざここに書くまでもなく、両党の共通点は「既成政治への失望」という土壌に根ざしている点であろう。ファラージ氏もポランスキー氏も、政治の内側からではなく外側から語る「反体制の声」を意識的に演出している。リフォームUK党は保守党を右から侵食し、緑の党は労働党を左から浸食している。

 かつて盤石とされた二大政党制が、両端から同時に崩れ始めた構図だ。

 この動きの背景には、英国社会の分断がある。Brexitを契機に国民の価値観は「開かれたグローバル派」と「内向きのナショナリスト派」に二極化し、そこへ物価高と格差が加わり政治的不信が強まった。右は「主権の奪還」を、左は「社会的正義の回復」を掲げ、それぞれが異なる怒りを表現している。

二大政党から五大勢力へ、英国政治の景色が変わる

 今後の焦点は、これら新勢力がどこまで影響力を持ち得るかだ。リフォームUK党は保守党からの離党者を増やしつつあり、緑の党も地方選挙で議席を積み上げている。だが小選挙区制の壁は依然として高い。全国支持率で15〜20%を得ても、各選挙区で1位を取れなければ議席には結びつかない。とはいえ、支持率上昇そのものが政治の力学を変える。リフォームUK党の躍進が保守党を右傾化させたように、緑の党の伸長は労働党を再び左へ引き戻す圧力となるかもしれない。

 英政治の風景は、「二大政党」から「五大勢力」へと流動化しつつあり、保守・労働という古い軸では測れない時代に入ったことは確実だ。リフォームUK党と緑の党。この2つの異なるポピュリズムが同時に台頭する現象こそ、いまの英国が抱える政治的不安定さを最も雄弁に物語っているのではないだろうか?

図:世論調査結果

 上記の図は、最新(11月1週目)の各社の世論調査結果と、議席数予想である。英国議会は650議席、過半数は326議席。つまり明日にでも総選挙となれば、リフォームUK党が単独過半数以上の議席を獲得し、単独与党となる。政権運営の経験がない政党なだけに、英国に住む身としては、不安しかない。

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松崎美子
まつざきよしこ。スイス銀行東京支店へディーラーアシスタントとして入行。結婚のため渡英。バークレイズ銀行本店ディーリングルームに勤め、日本人で初めてのFXオプション・セールスとなる。1997年には米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスを務め、2000年に退職して数年後より、個人投資家へ。ブログ、セミナー、コラム、YouTubeを通じてロンドンや欧州の情報を日々発信している。 【著書】FXファンダメンタルズの強化書──情報を利益につなげる実践の読み方・使い方/松崎美子のロンドンFX (金融の聖地で30年暮らしてわかった日本人が知らない為替の真実)他
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