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アンティークコインのきほん[ゆったり為替]

イギリス・ヘンリー8世の低品質銀貨|アンティークコインのきほん[ゆったり為替]

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貴金属の純度を落として通貨の流通量を増やす

 不況などで世の中のお金が不足すると、現代の国家(中央銀行)はルールに沿っていくらでもお金を発行できます。しかし昔の世界では、お金とは金(ゴールド)であり銀でした。国家が保有する貴金属の範囲内でしかコイン(貨幣)を発行できません。お金が不足する場合、国家は増税したり政府支出を減らしたりする一方で、コインに含まれる貴金属の量を減らすこともありました。1枚のコインに含まれる貴金属の量を半分にすれば、発行可能な枚数は2倍になるというわけです。イギリスのヘンリー8世(在位:1509~1547年)はこれを極端な形で実行しており、「ヘンリー8世の大悪改鋳」として歴史に名を刻んでいます。

ヘンリー8世の低品質銀貨

 ヘンリー8世は豪華な生活と戦争好きで、支出は増える一方でした。財政は事実上破綻状態であり、修道院を解散して財産を没収しましたが足りません。そこで、銀貨に含まれる銀の量をこっそり減らすことにしました。最もひどいときの銀含有量は従来の3分の1になり、銀貨なのに銅の割合の方が高いという有様に。

 ここまで銀の含有量が減ると、住民は銀の減少に気づきます。銀貨を使い込むと、コインの最も盛り上がっている部分(=鼻の部分)が削れて、銅がはっきりと見えてしまいます。このため、「Old Coppernose(古びた銅の鼻)」という、不名誉なあだ名までつけられる始末でした。

ボロボロなのに高額

 世の中に低品質銀貨があふれると、何が起きるでしょうか。まず、従来の高品質銀貨が世の中から消えます。できるだけ低品質銀貨で支払って、良質な銀貨は手元に置きたいからです。「悪貨は良貨を駆逐する」が現実に起きており、イギリスで流通した銀貨の90%は低品質銀貨になったといわれています。

 また、貿易決済でイギリス製銀貨での支払いを拒否されるようになりました。銀貨という名前の銅貨をもらっても損しますから、自然な成り行きです。こうして、イギリスの名声は地に落ちてしまいました。コインの品質を落とすと、財政は一時的に改善するかもしれませんが、最終的にはデメリットが大きすぎます。このため、後世になってこの低品質銀貨は徹底的に回収されました。

 およそ500年の時を経た現代、この銀貨はほとんど残っておらず、貴重な逸品です。写真の銀貨は作りが粗雑で、ひび割れが目立ちますし銅も見えています。また、肖像はうっすらとした感じですが、肖像全体が分かるという時点で希少品であり、高値がついています。このクラスのアンティークコインになると金銀の含有率は重要でなく、人気・知名度・歴史などが重視されます。

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月足トレードを実践する超長期トレーダー。FXで2013年に退職・独立。現在はFX以外に仮想通貨とアンティークコインで日々生活中。
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