FXの裁量トレードを表面ではなく本質から理解し、なおかつ実践的なトレードに落とし込むためには、ベーシックなFXの知識が必須です。「これを知っておかないとまずい…」という内容に絞り込んで、シンプルに解説してみました。
本文◉外国為替編集部
指値と逆指値の違いはなるべく早く覚えたい
今号のメイン特集であるFXの裁量トレードを深く理解するための土台になる知識を解説していきます。
まず、注文の種別について。成行は、できるだけ早く約定するためのリアルタイム注文であるのに対し、指値・逆指値は価格を指定する注文です。二つに分かれているのは、基準となる価格に対して、上か下かで、二種類の注文を用意する必要があるからです。新規エントリー時なら、押し目買いや戻り売りが指値、ブレイクアウトでトレンドを追いかけるのが逆指値です。ポジション決済時なら、利益確定が指値、損切りが逆指値となります。
この位置関係を把握していると、OCO注文やIFO注文で迷いませんし、オーダーブックのようなツールも理解できます。
1時限目|同じ予約注文だけど指値と逆指値は何が違う?

指値と逆指値はどちらも価格を指定する予約注文ですが、買いなら今より高く買うのが逆指値、安く買うのが指値となり、意味がまったく異なってきます。投資家にとって都合が良い、嬉しい価格が指値、都合が悪い、あまり嬉しくない価格が逆指値と覚えましょう。前者の代表格が利益確定、後者が損切りです。この関係を把握していると、オーダーブックも理解しやすくなります。
また、損切りの逆指値注文は、利益確定の指値注文と比べて、似たような位置に入る傾向があります。これはオーダーブックの注文情報を見れば理解しやすく、同じ予約注文でも指値より逆指値のほうが偏りが生まれやすいです。
2時限目|損切りが同じような価格に置かれやすいのはなぜ?


利益確定(指値)はトレード方針や時間軸、資金などにより差異が生まれやすいですが、チャート上の分かりやすい位置や価格に置かれやすい損切り(逆指値)は似通った位置になる傾向があります。
損切りが損切りを呼び大相場ができあがる
逆指値が偏りやすいということは、たくさん逆指値が入っている位置に価格がさしかかると、まとめてそれらが約定して、相場に流れが生まれやすいことにつながります。実際、相場のトレンドは逆指値が消化されることにより生まれやすいことが、これまたオーダーブックの注文情報を見ていると分かります。
さらに逆指値の約定による値動きが、次の逆指値約定を生むことにより、暴落や暴騰が発生します。位置が偏っているため、まとめて同じタイミングで処理されやすいからです。
こういった一方的な値動きが極端に強いと、あらかじめ入っている逆指値だけではなく、FX会社による強制ロスカットを次々と呼び、歴史的なショック相場の出来上がりです。
3時限目|逆指値注文の連続執行が強力なトレンドを作る!

例えば買いポジションの損切りは、反対売買となる売り注文です。上にあるように損切りは同じような位置に入りやすく、買いポジションの売り損切りが発動して下がる→さらに買いポジションの売り損切りが発動してもっと下がる…というループになることがあります。強くて速いトレンドの多くは逆指値の連鎖であり、強制ロスカットが大量に発生して連鎖すると、暴落や暴騰に発展します。
大口がどう動くかが実はFXで一番大事です
FXはよく人気投票でトレンドが生まれるといわれます。上がるという意見が強ければ上がり、下がるという意見が強ければ下がるのはそのとおりです。ただし、この投票は一人一票ではありません。莫大な資金を運用する大口は何万票も持っていますし、大部分の個人投資家は一票しか持っていません。つまり相場は、大口の動向に左右され、我々のような個人投資家は大口についていくことでしか生き残れません。
ただし大口にも不利な点があります。小口はほとんどいつでも、表示されている価格かその付近で売買ができますが、これは小ロットだからです。極めて大きいロットの大口は、自分の大ロットで相場を動かしてしまうため、狙った価格より不利な価格でのポジション保有になってしまいがちです。ただ、流動性が高い局面では、買いたいときには売り手、売りたいときには買い手が十分にいるため、大口でも狙った売買がしやすいです。
4時限目|多数派の資金が少ない小口、少数派の資金が多い大口

外国為替(FX)市場にはたくさんのプレイヤーが参加していますが、そのほとんどは個人投資家です。個人投資家の資金量は少なく、全てを合計してもマーケットに占める割合はわずかです。対して、数は少ないものの大量の資金を運用するプロトレーダーは「大口」と呼ばれ、マーケットに大きな影響を与えます。ただし彼らは流動性が高い場面を選んでトレードをします。
あわせて市場間の移り変わりも意識したいポイントです。FXはほぼ24時間トレードができますが、時間帯によりプレイヤーは入れ替わります。そしてプレイヤーが入れ替われば、流れが変わることも多いです。市場のスタートや切り替わりの時間帯は、反転を狙う戦略も有効です。
5時限目|市場が切り替われば参加する投資家も入れ替わる

外国為替(FX)市場では株式のように固定された取引市場がないため、その地域の株式市場と連動するようにプレイヤーが入れ替わっていきます。市場が切り替わると、参加している投資家も入れ替わるため、前市場と違う値動きになることも多いといわれています。
FXでダマシが起きるのは大口のせい?
テクニカル分析についても、意識をアップデートしたいところ。インジケーターやチャートパターンだけで、未来は予想できません。ただし現在まで続く傾向として、判断材料にはなります。
そして上がるか下がるかの判断バランスが崩れた方に相場は動くわけですから、いくらテクニカル分析で明確なシグナルが点灯していても、買い方と売り方のバランス次第です。そしてすでに述べたとおり、大口は個人投資家より圧倒的に影響力が強いことも忘れてはいけません。
6時限目|テクニカル分析は「傾向」であり未来は教えてくれない

移動平均線やMACDなどのインジケーター、ダブルボトムや酒田五法などのチャートパターンは、どちらも過去から現在まで見られた「傾向」です。決して未来を教えてはくれません。ただし、傾向はしばらく続く可能性があるため、相場の方向性や意識されやすい価格を判断するのに役に立ちます。
7時限目|自分が少数派だったときにダマシが起きる

ダマシとは、テクニカル分析から導き出される予想と、実際の値動きが食い違うことです。ただ相場の値動きは、常に買い方と売り方の綱引きの結果です。買い方は売ってくれる相手方が必要ですし、売り方は買ってくれる相手方が必要です。そしてそれらのバランスが崩れれば、価格が変動します。ダマシとは、資金的に自分が少数派だっという結果に過ぎません。