女優、起業家として幅広く活動しつつ、FP1級を目指して日々勉強を続ける咲嬉さんには新NISAの枠組みや活用方法を、独自の視点でFXや株式のアノマリー投資を研究、発表している川崎ドルえもんさんには、株式のアノマリーについて教えてもらいました。
FX以外にも投資や投機の世界を広げたい方にとって、非常に学びになる対談となりました。
咲嬉(さき)さんプロフィール
女優、タレント、株式会社プリエーヴ代表取締役。瀬戸早妃(せとさき)名義にて「ヤングジャンプ制服コレクション2001」で芸能界デビュー。その後、グラビアアイドルとして「ミス週間少年マガジン2003」に選ばれ、女優タレントとしてテレビドラマ、バラエティ番組、ラジオ、舞台、セミナー講師等の各方面で活動。2017年、アパレル通信販売のセレクトショップ「モントレゾール」を開業し、翌2018年に株式会社プリエーヴを設立。現在は起業家として活動すると同時に、ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定1級の国家資格取得に向けて勉強中。
川崎ドルえもん(かわさきどるえもん)氏プロフィール
金融天気予報士、FXトレーダー、仮想通貨、発明家。独自のFXトレード手法、グルトレ(グルグルトレイン)を開発、公開している。【著書】資金管理を徹底解説!「FXキャッシュマネジメント」:FXで儲からない理由は資金管理にあった!? (電子書籍)【著書】話題のFX新手法底辺高校卒業生と最強の為替サイト ザイFX!が作った【1日5分で稼ぐFX】グルトレ完全ガイド! (ダイヤモ ンド社)
聞き手◉鹿内武蔵 本文◉北原拓実
2024年からの新NISAは旧NISAから大きく変わった
─今回は話題の新NISA、そして株式投資とアノマリーの関係について、咲嬉さんと川崎ドルえもんさんに語っていただきたいと思います。まずは新NISAとはどのような制度なのかをFPの立場から咲嬉さんに教えていただきたいです。
咲嬉 株式投資で利益を出した場合、通常だと20.315%という税金が引かれ、実際に手元に入ってくるお金は税金を引いた残りの金額になります。一方で、NISA制度を利用すると、元本の一定額までは株式投資で得た利益に税金が発生しないというメリットがあります。
NISA制度は2014年から始まりましたが、2024年から新NISAと呼ばれる新しい制度に移行し、昨年までの旧NISAとは年間に投資できる金額や保有できる期間などが変わっています。
─新NISAは旧NISAとはどのように変わったのでしょうか。
咲嬉 旧NISAにはつみたてNISA、一般NISA、ジュニアNISAの3種類があり、つみたてNISAは年間に投資できる上限が40万円で、20年間の積み立てが可能でした。トータルだと、20年間に40万円をかけた800万円です。一般NISAは年間の投資上限が120万円で期間は5年間、トータルだと600万円です。
この二つは併用不可能で、どちらかを選ぶ選択制です。つみたてNISAを選んだ人だと年間の投資額は40万円までで、一般NISAの120万円は使えなかったんですね。
ジュニアNISAは未成年のいる方が年間80万円まで投資可能で、保有期限は5年間、トータルで400万円です。これが旧NISAです。
新NISAではつみたてNISAがつみたて投資枠に変わり、年間の投資枠が40万円から120万円の3倍になりました。一般NISAは成長投資枠という名前に変わり、120万円だった年間の投資枠が2倍になり、240万円まで買付可能です。
さらに、新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠を併用可能で、合計すると年間360万円まで投資可能です。昨年までの旧NISAと比べると年間投資枠がかなり拡大しています。
しかも、運用できる期間は無期限に変更されました。30年や40年という長期間でも保有を続けられることになっています。ジュニアNISAはなくなりましたが、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて、最大で総額1800万円まで新NISAを利用した投資が可能です。
また、昨年までの旧NISAは、1回買い付けてしまった銘柄を売却してしまうと、その売却した投資枠は復活しませんでした。一方で、新NISAは売却した投資枠が翌年に復活します。簿価残高方式で計算するのですが、例えば、100万円で買った株式が150万円に値上がりしたときに売却した場合、次の年にはその100万円の元本分が復活し、また100万円分の株式を購入できるようになります。旧NISAのときは投資枠が復活しなかったので、ありがたい制度だなと思います。
─とても分かりやすいです。
咲嬉 新NISAはつみたて投資枠と成長投資枠を併用できて年間360万円分まで購入可能なので、私的にも新NISAをみなさんの資産形成に上手に役立てていただきたいなと思います。
川崎ドルえもん(以下、川崎) つみたて投資枠と成長投資枠では購入できる株式に違いはあるんですか?
咲嬉 違う部分と同じ部分があります。つみたて投資枠は購入できる範囲が低コストの投資信託になっており、成長投資枠は投資信託のほかに個別株やREITも買えます。人気の高いS&P500やオルカン(オール・カントリー)と呼ばれている全世界株式の投資信託はつみたて投資枠と成長投資枠のどちらでも購入可能です。
あとは細かいですが、つみたて投資枠ではゴールドの投資信託やETFが買えなくて、成長投資枠では購入可能みたいな違いがあります。成長投資枠の方がいろいろなものが買えて、つみたて投資枠の方は制限がかかっているイメージです。
また、新NISAでは一部のレバレッジ型の商品が買えなくなりました。例を挙げると、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」や「米国レバレッジバランス・ファンド」などは買えません。
私としては、旧NISAは一般NISAが5年という期限があるのに一部のレバレッジ型がOKだったというのは怖いなと思っていました。5年間だと大きな含み損が出たときに復活しない可能性があり、NISA制度では損益通算も不可となっています。非課税というメリットは利益が出たときに初めて意味があるので、5年という短い期間でレバレッジ型の商品を買えるというのはFPの立場としてはあまりオススメできないです。新NISAはリスクの高い商品は撤廃され、中長期目線で保有するものが主流になっているので、そこはいいなと思っています。
─NISAのような仕組みが導入された背景について、どういう狙いがあると思われますか?
川崎 非課税にすることで国民に株式投資に興味を持ってもらい、経済を活性化させようみたいな感じかなと私は思っています。咲嬉さんはどうお考えですか?
咲嬉 NISAという制度自体は10年前の2014年1月からありますが、投資枠が拡大するのは投資家にとってはうれしいことではあります。ただ、そのメリットには裏があると思う人もいるのではないでしょうか。
私としては、働き方が昔とは変わってきた影響があると思っています。一つの企業に何十年も勤めるよりもいろんな仕事をしてみたいとか、自分の適性に合った仕事に転職してみたいという人が増えた印象があります。
私自身、一つの企業に何年も雇用された経験はなく、フリーで動いていた部分も多かったので、収入がどうしても安定しなかった時期があります。そのような人が増えると経済も回らないですし、不安を抱えて生きていく人も多くなると思うので、そのときに資産運用を味方につけてほしいなという政府の考えがあるのではないでしょうか。
老後資金を会社だけに頼るのではなく、自分で何とかしていければ生きる希望も湧いてきますし、そういったことを応援してくれる制度なのかなと思います。
─たしかに今は終身雇用や年金制度の崩壊が叫ばれている状況で、今後は自分でお金を稼ぐということは重要になるという論調が強くなっています。
咲嬉 私自身は投資をしなくてもいいならそれに越したことはないと思っています。1兆円くらい持っていたら投資はしないかもしれないです。
─1兆円持っていたら生活に困らないから余剰資金を動かしたくなると思いますよ(笑)。
咲嬉 たしかにそうかもしれません(笑)。私はこのまま今の仕事だけをやっていても、収入の上限が見えてしまう部分があります。自分の会社を立ち上げてアパレルの仕事をしていますが、売り上げの保証もないですし、世の中のトレンドが大きく変わったときにすぐに仕事を変えられません。そういうときに、ずっと続けられる収入の柱の一つとして資産運用があるといいなと思います。
私は必要に迫られて投資を始めたタイプなので、実家が裕福であるとか、不動産を大量に持っていて家賃収入がある人はうらやましいです。投資をやらなくても生きていけたら良かったのになと思ったりしますね。
─今の話は面白いですね。川崎ドルえもんさん的には投資はどういう位置づけですか?
川崎 似たような感じです。いろいろ投資していかないと老後も大変ですし、今は円安で日本円の価値が下がり続けているので、円で貯金するよりも金の現物や米ドルに投資するのがいいのかなとは思います。日本円だけで資産を持っておくリスクを株式や為替などの金融商品に分散するという意味で資産運用をしているという感じですね。
─ドルえもんさんはもっと一攫千金を狙うみたいな解答が来ると思いましたが、普通に堅実で驚きました。
川崎 ギャンブルする年齢じゃないですよ(笑)。
─ギャンブルと違って、NISAは長期投資が前提ですよね。株式投資は基本的に成長する前提だから成り立ちますが、FXはゼロサムです。川崎ドルえもんさんはFXが中心だと思いますが、投機と投資を分けて考えていますか?
川崎 一時期はギャンブル的なトレードをしていましたが、最近は安定的なトレードをしています。それこそギャンブルで年利100%くらい取れるようになりたいとは思っていましたが、100%のときがあれば逆にマイナス100%の可能性もあるので、FXでギャンブルトレードはやらなくなりましたね。
ロト6やボートレースはやっていましたが、FXや株式に関しては投資としてのんびりとやっていきたいと思っています。
─皆さんいろいろ考えているんですね。
アノマリーに基づき株式売買をしている
─ここまでは咲嬉さんに新NISAについて教えてもらいました。次は川崎ドルえもんさんが株式投資で面白いトレードをしていると耳にしたので、どのようなトレードをしているのかをお聞きしたいです。
川崎 私はアノマリーアナリストとして活動していて、株式や為替、株価指数、商品コモディティなどのアノマリーを調べています。具体的には、いろんな金融商品の月毎、週毎、日毎の傾向を調べています。
株式のアノマリーだと、各国の株価指数で過去20年間の月足で陽線がついた回数と陰線がついた回数を調べてデータ化しています。
例えば、NYダウだと4月の月足は過去20年間のうち17回陽線がついているので、NYダウは4月に上がりやすい傾向があると考えられます。同様に7月は16回、11月は15回の陽線がついているので、NYダウは1年の中で、4月、7月、11月に上がりやすいアノマリーがあるということです。
株価指数だけでなく、日本株に関しては240銘柄を調べています。5月の話をすると、例えば、ダイキン工業は5月と6月は過去20年間中14回陽線がついています。反対に、8月と9月は陽線回数が少なく、陰線になった回数が多いので注意した方がいいみたいな感じですね。
咲嬉 なるほど、すごいです。私は個別株だとダイキン工業やオリエンタルランドを持っていますが、数日~数か月で売ることもあるので、頻繁に売買したいものはNISAではなく特定口座で買っています。例えば、NISA口座で1月にダイキン工業を買って2月に売ってしまえば、売却部分の投資枠が復活するまで利用できないので、非課税メリットがもったいないなと思って、個別株はNISA口座では売買していません。
川崎 NISAは長期保有するのが普通みたいになっていますが、長期保有じゃなくて上限の1800万円いっぱいを使って頻繁に売買するという方法もいいのかなとは思います。
咲嬉 注意点としては、新NISAは翌年に投資枠が復活しますが、年間で買える上限は成長投資枠だと240万という決まりがあります。これは前年に100万円分を売ったからといって、次の年は購入可能な上限が340万になるわけではないんですよね。投資枠が復活するけれど、年間の投資上限が増えるわけではない点には注意が必要です。
川崎 僕もその点は不満に思っていて、購入可能枠の復活分を投資上限にプラスさせてほしいです。
咲嬉 年間を通していつでも売買できるようになるといいですよね。長期目線で老後資金とかを作ってほしいという考えとはぶれるので、しょうがないとは思いますが。
─そこまで行くとNISA制度自体の是非につながると思います。話を戻しますが、川崎ドルえもんさんはアノマリーに基づいた売買を新NISAでも行っているのでしょうか。
川崎 そうですね。アノマリーを参考にしながらエントリータイミングを見ています。例えば、キヤノンだと、6月と7月は下落した回数が多いので、その下落したタイミングを狙って、8月ぐらいから新NISA枠で買って長期保有をするというやり方もありかなと思います。
─例えば、10月に上がりそうなら10月1日から保有しておくみたいな感じですか。
川崎 個別株だと、週足データを基に毎週銘柄を切り替えることをしています。例えば、来週はユニ・チャームが、過去20年間で90%上昇しているので、明日ユニ・チャームの株を買って、来週の中頃に売るみたいな感じです。
月曜日に窓開けすることがあるので、その前の週の金曜日に買って、次の週の中頃に上昇率を見ながら売るみたいなことを繰り返しています。アノマリーについては、僕のnoteで配信しています。
─アノマリーを利用するやり方にたどり着いたのはどんな経緯があったんですか。
川崎 僕は細かいデータ収集が得意なので、アノマリーデータを使って投資で利益を狙いつつ、投資家に有益な情報も提供していきたいなという感じで始めました。
目標はFXのチャレンジとアノマリー投資の継続
─川崎ドルえもんさんには何回かインタビューしていますが、情報量がすごく増えましたよね。
川崎 僕はもともとFXトレーダーなので、ドル円とかの銘柄のアノマリー調査を7通貨ペアから始めて、最終的に31通貨ペアのデータを取りました。システム化しているので、個別銘柄のアノマリーをすぐに出すことが可能です。今は日本株240銘柄、米国株は120銘柄を出していますね。
新NISAでは米国株も取引可能ですが、米国株を含める必要があったのかなと思います。日本経済を発展させたいみたいな思惑があるのなら、日本株限定にすればいいので。
─たしかに税金を取らない代わりに、日本株を押し上げたいというのがあるんだったらそういう意見もありますね。それでは、お二人のこれから挑戦したいことを教えてください。
咲嬉 ずっとやりたいと思っていたFXを始めたいです。昨年の夏ぐらいから、メキシコペソ円が8.1円~8.2円ぐらいのときにメキシコペソを推している企業のセミナーを受講し、「いいな」と思いました。
日本とメキシコは金利差があるのでスワップポイントが大きいということで、値動きを気にしなくても保有できるのかなとか、無理にハイレバレッジを設定せずにレバレッジを2倍や3倍など自分のリスク許容範囲内に設定すれば長期保有も可能なのかをいろいろ調べて考えているうちに時間が経過してしまいました。今はもう9円を超えてしまっていて、セミナーを受講したときに始めていればとちょっぴり後悔しています(笑)。
FXはやってみないとわからないという部分もあるでしょうから、少額からでもチャレンジしてみたいです。
川崎 僕もメキシコペソ円には注目していました。
咲嬉 最近だと日本がマイナス金利を解除すると大きな話題になりましたが、スワップポイントに影響があるんですか?
川崎 ものすごく影響します。一昔前の日本は金利も高く、銀行に預けておくだけでお金がもらえた時代があり、今も預金しておけばいいみたいな風潮が続いているのはあまり良くないなと思っています。
今はゼロ金利なので、金利の高い外国のお金を買って金利をもらうみたいな行動はした方がいいと思います。基本的には金利が高い国に資金が流れていくので、金利状況を見ながら短期売買をするときもあれば長期売買するみたいなことはありますね。
咲嬉 FXをやったことのない私みたいな人にとって、外国のお金と聞くと米ドルぐらいしか馴染みがないので、メキシコペソみたいな他国のお金の名前を言われても分からないというのは正直あります。初心者がFXを始めるとして、オススメの通貨ペアやFXのやり方はあるんですか?
川崎 僕はFX系だと外貨預金をしたのがスタートでした。今は米国の金利が5%ぐらいで、日本はゼロ金利なので、純粋に外貨預金の感覚でFXをやるという方が最初はいいのかなと思いますね。
今はドル円も上がり続けていますし、買いで保有しているとスワップポイントを受け取れるメリットもあります。ただ、銀行口座の外貨預金だと手数料やスプレッドがすごく高いので、FXの口座でドルを買って外貨預金の代わりにするみたいなことを最初はしてみてもいいのかなと思いますね。
咲嬉 ありがとうございます。ちなみに、FX会社にもいろんな種類がありますが、どこの口座を開いたら良いとかはあるんですか? 株式投資は楽天証券とかSBI証券、マネックス証券、DMM.com証券などが有名ですが、FXを始める際の口座の選び方はどうすれば良いのでしょうか?
川崎 ネットで検索すればFX会社の人気ランキングが出てきます。最初は使いやすいランキングでトップの会社が安心なのかなと思います。あと、証券会社にもFX口座がありますよね。例えば、楽天証券にはFX口座があります。そういうのからスタートしてもいいのかなと思います。
ちなみに日本の金融庁に登録していない海外FX業者もありますが、リスクが高いのでやらない方がいいですね。金融庁に登録してあるFX業者なら問題ありません。
─無登録のFX業者にもメリットはあるんですけど、無登録業者はお金が返ってこない場合もあって非常にリスキーです。仮に取引するならしっかりとリスクを理解してほしいなというのはありますね。
咲嬉 FXに関してはまだ始めてもない状態ではあるので、FXが得意な方とかにもっとしっかりとお話を聞いて始めるのがいいなと思いました。FPは年金社会保険・金融資産運用・税金・不動産・相続などを幅広く学びますが、全てにおいて深い知識を持っている人ばかりではないので、常に勉強して知識を高めていきたいなと思っています。
川崎 ちなみにFP3級をとりました。
─おめでとうございます。最後に、ドルえもんさんの目標をお願いします。
川崎 継続して株式のアノマリーの配信をしつつ、実際に株式投資をして利益を出していきたいです。FXと比較すると、株式の方がアノマリーは効きます。まだ半年ですけど、株式口座は20%アップしています。このままアノマリー投資を続けていけば年利100%を達成できるかもしれません。長期目線ではなく週毎の短期投資ですが、そういうのを引き続きやっていきたいと思っています。
あとは、取引を自動化したいですね。FXは自動化したので、次は株式投資の自動売買ができたらいいのかなと思っています。
─お二人ともすばらしい目標です。ありがとうございました。
インタビュー日◎2024年3月21日
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