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Kou@ベーシストFX手法研究家氏特別インタビュー|相場を“縦と横”で読む、時間と値幅に基づくブレイクアウトを駆使する王道戦略

ゴールデンウェイ・ジャパン

ダウ理論を軸にブレイクアウトを狙うトレンドフォローは、シンプルにして実践しやすい王道の手法。裁量トレーダーとして成功を掴んでからも、初心者に向けた発信に日々積極的なKouさんに、現在のスタイルに至るまでの道程や、彼の手法を用いたエントリーから決済までの流れをお伺いしました。理論に基づいた堅実なスタイルは、裁量トレーダーのお手本の一つであるといえます。

聞き手・本文◉佐野雄二

Kou(こう)ベーシストFX手法研究家&物理学者プロフィール
ベーシストFX手法研究家&物理学者 Kou氏プロフィール

物理士トレーダー。トレード開始当初は期待通りの成績を挙げられなかったものの、学者にふさわしく確率論や統計学を駆使して検証と実践を繰り返した結果、2020年に10万円を7週間で1000万円以上に増やす。

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駆け出しの頃は負けていた、情報発信に努める理由

―「8週間で元手10万円を100倍にした『科学的FX神トレード』」を拝読しました。どういった経緯で出版に至ったのですか?

Kou KADOKAWAさんから連絡があり、連絡に気づくのが遅れてしまっていましたが、その後のやり取りを経て出版させていただく流れとなりました。文字数や図版の枚数に制限がある中で、できる範囲のことをやらせてもらいました。

―Kouさんは日頃から、初心者向けの発信を盛んにされています。本を出そうと思ったのも、その一環ですか?

Kou 僕自身、スタートして一気にやられて、お金を失っていました。情報があまりに溢れすぎていて混乱していたのが要因の一つでした。

 今は詐欺も多いですし、本当に有益な情報を吸収できないままFXの世界に足を踏み入れた結果、「少額でハイレバトレードを繰り返して全損する」「1分足でエントリーサインを追いかけて全然勝てない」「せっかくスタート地点に立ってもいざ始めるためのお金がない」という人を見かけてきました。そういった現実を前に、まとまった情報を発信したいと考えたのが、出版のきっかけでした。SNSでよく見かける爆益報告などは心を惹きつけるインパクトがありますが、そういうものに惑わされず、基本的なスキルを身に着けた状態でスタートラインに立って、最終的に負けないようにトレードを始めてほしい、という思いを持っています。

 FXは甘い世界ではなく、プロと初心者が同じ土俵に立ちます。そういった場で重要なのは、お金を増やすことよりも減らさないことです。厳しい相場で生き残るのに役立つ情報を発信してきたつもりです。

―Kouさんご自身がFXを始めたきっかけは何だったのですか?

Kou お金と自分の時間を確保するためというのもありましたが、仕事のストレスも負担になっていました。職場環境がだんだん悪くなっていき、とりあえず仕事を早く辞めたいと思っていました。FXを始めるハードルが低かったのが大きいですね。

 トレードを始めたばかりの頃はお金のことばかり頭にあって、トレードの検証をあまりしていませんでした。目の前で動いているチャートがお金に見えていたので、チャートが動いている以上「トレードしなきゃ」と気持ちが焦りましたし、お金を増やすためにはとにかくエントリーするしかないと考えて、ポジポジ病も患いました。

 なんだかんだでちょこちょこ利益は出していたんですが、結局はコツコツドカンで資金を減らしていました。1回も勝てずに負け続けているのであれば、もっと検証なり何なりやったと思うんですが、中途半端に勝っていたせいで、振り返りをせずに惰性で続けて、ダラダラとお金を失っていました。

―現在、ご自分がトレードを検証するときに重視することは何ですか?

Kou やることがそんなに変わっていないかどうか、つまりロジックそのものがぶれていないかをよく見ています。あとは相場環境の見方を振り返ることも重視しています。

ダウ理論軸のトレードはまず上位足からMTF分析

―トレードスタイルはどのスタイルに最も近いですか?

Kou 最近の相場だとスキャルピングが一番近いかもしれません。一日に1~2回ぐらい、チャンスがあればその時間に集中しますが、合わなければやりません。あとは、もっとロットを落としてポジションを積み増ししてスイングもするんですが、ヘッドラインにかなり振り回される相場だと、デイトレは難しいと思います。

―2025年の相場は、ちょっとした要人発言ですぐに揺れがちですね。

Kou 日中に含み益が出ていたのに、夜になったら全戻ししているケースも割とあります。今はデイトレというよりは、もう少し短めの時間軸で取り組むトレードや、方向感を決めてゆったり構えていくもの、という風に分けています。

 数日から一週間ポジションを持つゆったり目のデイトレぐらいが基本スタイルなんですが、そこは相場環境を見ながら臨機応変に対応しています。マルチタイムで見たときに、どこのトレンドを狙うかだけを事前に決めている感じです。その狙おうとしているトレンドが本当に狙えるかどうかを、上位足の環境から見ていきます。

―トレードの流れについて教えてください。環境認識はどのように行っていますか?

Kou ダウ理論が自分の中の軸になっています。今のトレンドや方向感を把握していくために、マルチタイムフレーム分析を行います。月の頭には月足をチェックし、週の頭に週足をチェックします。

 デイトレをするときは基本的に日足の確認から始めて、4時間足、1時間足、15分足をメインに見ています。移動平均線とボラティリティを見られるので、20期間のボリンジャーバンドを、±1σと±2σを表示して使っています。4時間足のMA(移動平均線)の傾きを重視していて、トレンドに対して順張りになるように、1時間足、15分足のダウの目線とMAの傾きをチェックしています。

 4時間足が下を向いていて、ミドルラインの20MAも下を向いていれば売れるかどうかだけを考えて15分足の方向感の一致を狙うことになるんですが、結局は方向感が合っていても、単にブレイクに乗ったりすると、損切りが引っかかってから伸びていったり、予想していた以上に伸びなかったりします。私は相場の動きにかかる時間の長さ(横軸)も見ていて、あるトレンドが2時間かけて形成された場合は、その後に形成されたレンジの時間も、同程度の長さを経てから次のブレイクが起こると考えます。この周期性を観察して、無駄なエントリーを避ける判断をしています。

―エントリーはどうされていますか?

Kou 基本的には順張りで、15分足でブレイクアウトを狙います。月足、週足、日足という大きい流れで方向感を掴んでいって、直前のトレンドの横軸を見ます。下降トレンドなら15分足で高値と安値が切り上がって上昇の流れに転じていれば、その後再び下げに転じるタイミングを狙って、戻り売りを仕掛けます。また、上昇トレンドならば、一度の上昇を確認してから、次にできるレンジを待ちます。その際には、上昇にかかった時間と、レンジの継続時間を比べてから順張りします。短すぎるレンジは、早い段階のエントリーを避けています。

図1 4時間足の移動平均線(MA)を重視

移動平均線は位置と傾きが大切

移動平均線は、単に価格の平均を示すだけでなく、その角度とローソク足との位置関係で「トレンドの方向性と勢い」を判断する材料になります。上図の場合は、勢いのある上昇トレンドと判断できます。


ボリンジャーバンドでトレンドを見ていく際は、中心線であるミドルライン(20期間MA)を見るのが基本になります。4時間足のミドルラインが下向きに傾いている場合、基本的には「売り優位」と判断します。

以下のチャートでは、ミドルラインが下向きに転じ、ローソク足自体も下がってミドルラインより下で推移しているため、目線を下に向けて売りを狙っていきます。大まかな方向感を掴めたら、エントリーするタイミングを狙うために下位足もチェックしていきます。

米ドル/円4時間足チャート

check!

ボリンジャーバンドは、価格の平均(ミドルライン)とその上下にあるバンドから構成され、トレンドの方向性や、相場のボラティリティを視覚化できるテクニカル指標です。

図2 短期足の逆張り、停滞、ブレイク狙い

ドル円1時間足チャート
ドル円15分足チャート

15分足を見ると、一時的に上昇していた短期足の流れが崩れ、安値を割って下降に転じています。こうした局面では、押し目買いを狙っていた短期トレーダーの損切りが一気に発動しやすく、その勢いで下落が加速することがあります。戻りを待って高い位置で売るのではなく、直近安値のブレイクを起点に下げが強まるタイミングを狙うのが、この戦略の特徴です。値動きにメリハリがあるため、エントリーポイントを客観的に判断しやすいのもメリットです。

■マルチタイムフレーム

4時間足下降
1時間足下降
15分足上昇からの下降

 例えば、図2のチャートで挙げたような局面です。図1の4時間足では、高値と安値を切り下げながら下降トレンドを形成しています。このような環境下で、仮に15分足が一時的に高値を超え、短期的に上目線に転じたとしても、上位足のトレンドが下降であれば、戻り売りを狙うチャンスになります。下降トレンドであれば、いったん直近の安値を割った後に戻しが入る場面でポジションを仕込むのがセオリーです。上位足で下降トレンドが出ていて、下位足でダウの転換が起こって上目線になっているときは、短期で押し目買いを狙っているトレーダーがいる環境です。こうしたケースでは直近の安値かそのすぐ外側に短期勢の損切りがあるはず。そうした損切り注文が集中しているポイントは、価格がそこを抜けた瞬間にトレンドが加速するきっかけとなることが多いのです。

 今回のケースは4時間足、1時間足が下降トレンドで、ショートを狙うべき環境です。安値を更新した後の反発で短期的に上昇しています。15分足で見て、この短期の上昇トレンドに現れたダブルトップなどを見て、MAに傾きがついてきて、短期の上昇が否定されだした後の安値割れが狙い目です。そして、エントリー前の安値まで下げてきていた分の値幅を取りに行きます。そうすれば、損切り幅も狭く、リワードも見込めます。

―こうして見ると、2025年のドル円相場は上下が激しいですね。

Kou 本当に激しいです。高値を切り下げながら来てはいるんですけど、反発も多いので、不用意なエントリーはすぐ損切りに引っかかります。全体の環境があまり良くなくて、とてもやりにくいと思います。146円台で底を打った感があって、下落幅の分の調整が入っていくと見ています。こういう相場では、デイトレより、もう少し細かめのトレードが良いと思います。

 値幅を見ていればエントリー前にリスクリワードが分かるので、そこが悪ければやらないほうが良いという判断もできます。

―リスクリワードはどれぐらいに設定されていますか?

Kou 平均すると1:1.67ぐらいです。ムラが多少ありますが、1を切るようならエントリーはしません。デイトレなら1.5前後で十分と思いますが、もう少し大きな値幅を狙うときは1:4や1:8にすることもあります。ただ、そういうチャンスは多くないです。デイトレベースだと、1.6前後あれば十分でしょう。

―利益確定も教えてください。

Kou N値の値幅を取るのが目標です。最初の値動きと同じだけの値幅を次の波でも狙うわけですが、Nの起点がどこなのかを迷う人が多いと思います。安値をブレイクした位置を起点と考えるのか、直近の高値を起点と考えるのか。そこは相場環境ありきで判断します。図3のケースなら、ダブルトップのネックラインを割って、MAが下向いてきた後の下降トレンドの持続時間(横軸)を一つの目安として値幅を取りにいきます。Nの値幅とその周期性、つまり縦軸と横軸のバランスを見るわけです。

図3 値幅観測論のN値幅を意識した利益確定

ドル円15分足チャート

Kouさんは、利益確定の目安として「N値幅」を重視します。Nの起点をどこに置くかは環境によって異なりますが、今回のケースでは、前の波である①と同じだけの値幅が②で出ることを前提にしています。また、値幅だけではなく、下落にかかった時間(横軸)にも着目します。前回の下落と同じくらいの時間を経た後に再度動き出すケースが多いため、値幅(縦軸)と時間(横軸)のバランスを見ながら、無理のない出口設定を行っています。

値幅観測論のN計算

N計算とは、最初の値幅(AB)と同じ値幅(CD)を目安に次の値動きを予測する考え方です。A→Bで調整が入って押し目となり、C→Dの再上昇でAB=CDとなる価格帯を、利益確定の目安と考えます。

 日足がレンジで4時間足も横這い、1時間足だけが下に向かい始めた所で15分足が下にブレイクしても、あまりポジションを握らないほうが良いでしょう。長期目線で見ると、方向感があいまいなためです。時間足によって方向感が異なる場合は、小さな値幅でリスクリワードのバランスが取れているかどうかを判断基準にしています。あくまでも重視するのは、上位足の環境です。

方向感が合えばいい、大事なのは環境認識

―まずは環境認識、その後に手法ですよね。環境認識が間違っていなければ、そんなに大負けしないんじゃないかと最近感じています。

Kou おっしゃるとおり、環境認識で方向感が合っていれば、やはり負けにくいと感じます。ざっくり言うと、順張りと逆張りって「順張りの順張り」と「順張りの逆張り」と「逆張りの順張り」、あとは「逆張りの逆張り」という4パターンがあると思っていて、その中で「逆張りの逆張り」を避けることが大切だと考えています。

 トレンドの転換点はどこかでやってくるので、逆張りの逆張りでも合うタイミングっていうのはあると思うんですけど、基本的にリスクリワードが良くありません。順張りの順張りでもいいし、順張りの逆張りでもいいし、逆張りの順張りでもいいし、環境に合わせたやり方も大事ですが、それ以上に「どのやり方に決めるのか」という軸を持つことのほうが大事です。

図4 エントリーの順と逆、組み合わせの妙

①順張りの順張り

トレンド方向に対し、押し目や戻りを待たず、ブレイクや継続を見てエントリーする。
➡上位足も下位足も同じ方向
➡(例)4時間足が上昇トレンド中に、15分足が高値を更新する流れにそのまま乗る
➡最もセオリーどおりで負けにくい

②順張りの逆張り

トレンド方向には一致。一時的な逆行で(押し目・戻り)でエントリーする。
➡(例)4時間足が上昇トレンド中、15分足でサポート反発を狙って買う
➡タイミングは逆方向だが、狙っている方向はトレンドどおり

③逆張りの順張り

レンジや転換点で、トレンド転換後の初動に乗るエントリー。
➡大きな流れはまだだが、短期足で明確な方向が出てきた場面
➡リスクは高めだが当たれば伸びる、トレンドの先取的な動き

④逆張りの逆張り

全体の流れに逆らい、なおかつ短期的な流れにも逆らうエントリー。
➡(例)下降トレンドの中で、「下がりすぎたからそろそろ上がるだろう」と買いエントリーする
➡リスクリワードが悪く、難易度が高い

 僕は4時間足のMAの傾きを重視しているのですが、その方向はすぐには逆行しにくいと感じています。方向感が出たらキープしておけば負けにくくなってきます。その中で逆張り気味にポジションを仕込むこともあります。いわゆるプレピラミッディングです。ポジションをあらかじめ分散して、リスクを許容する、順張りの逆張りですね。4時間足で見て、価格がMAから大きく乖離しているときは無理にエントリーせず、伸びしろがある環境で入っていくようにしています。

 一方向に動ききった後は順張りで入るのが難しくなります。そういった場面では、短期で狙うか触らないようにするかという判断ができます。僕がボリンジャーバンドを見ている理由は、方向感だけでなく、直近のボラティリティも把握できるからです。例えば、4時間足でバンド幅が収縮した後にバンドが拡大してボラティリティが上がってくると、エントリーのタイミングを見極めるのが難しくなることがあります。ただし、ミドルラインに明確な傾きがあり、バンドも大きく広がっている状態ならば、すぐにはトレンドが止まりません。トレードスタイルによって違いはありますが、トレンドが出た方向にとりあえず順張りで乗るように心がけるだけでも、トータルの勝率とリスクリワードのバランスは破綻しにくい環境になってくるはずです。

 また、「この辺に重要なラインがありそう」とか、150.00円のようないわゆる「キリ番」とかはあまり気にしていません。それよりも、長期の時間足で直近のレジスタンスやサポートを重視しています。

 例えばエントリーした後に、「この辺で反発しそう」と、直近の高値や安値をエントリーや損切りの目標にすることがありますよね。僕の場合は、あくまでもMAの傾きを基準にして、長期の方向感が出ていれば、その高値・安値をブレイクして狙った値幅を取れるという前提でエントリーするようにしています。

 こうした考え方ができるようになるためには、「何を基準にラインを引くのか」という視点が欠かせません。僕はそこをダウ理論で見ています。押し安値や戻り高値のラインをとりあえず引いておけば、離れたラインは気にしません。万が一、大きく逆行してきたら、そのときは損切りすればいいだけです。

 どんなやり方にもメリットやデメリットはあります。「あのとき別のやり方をしていればよかった」と考えを変えてしまうのは、やっぱり良くないです。とにかくトレードしやすい環境かどうか、4時間のダウの目線とMAに傾きが出てるかどうかで、その状態で1時間足以下の戻りを待つというか、調整を待っていきます。

―いきなり全部やろうとすると大変ですよね。まずは環境認識に狙いを絞り、方向感が合っている実感が持てることが大事でしょうか。

Kou そうですね。僕は方向感さえ合っていれば、エントリーもそこそこで良いと思っている派です。細かいやり方はあまり気にせず、長期の方向感を捉えることができていれば、利益を出せると考えています。

―方向感に逆らうと、利食いが狭く、損切りが広くなりがちですし、取引自体が難しくなりますよね。

Kou そうですね。ですから、エントリー手法の細かい部分よりも、やはり今の環境を見て方向感を見定めることです。目の前にある相場がレンジなのか、それともトレンドなのかを見極めることも含まれます。

―環境認識だけしていくトレーニングは有効でしょうか。

Kou アリだと思います。やり方としては、複数の時間足のMAの傾きと、ローソク足の位置関係を見るのが基本です。MAが上向きでローソク足がその上にあるなら「上昇傾向」、その逆なら「下降傾向」。高値・安値の切り上げ・切り下げ、つまりダウ理論の目線も意識します。各時間足のトレンドがどうなっているのかを確認します。

 例えば、4時間足が上目線で、1時間足が下目線だった場合を考えましょう。上位足では上昇しているのに、短期足では下げている。このような状況では、戻り売りしたい人と押し目買いしたい人が入り混じっていて、方向感が出にくいはずです。ブレイクしてもすぐに戻ってきたり、結局レンジになったりすることが多いんです。なので、方向感がまだ一致していない場面では、無理にエントリーせず静観します。その代わり、各時間足の目線が揃ったタイミングを狙っていくのが、僕のやり方です。

―方向感を見る目的でいろいろな通貨ペアを見たりして、全体を見る感覚を養うほうが、トレードが上達する気がします。

Kou それはあるでしょう。ただ、通貨ペアも見すぎると通貨間の相関も気になってきますよね。なので、単に数を見ればいいというよりも、見ている通貨の中で相関関係がどうか、チャートの縦(値幅)と横(時間)のバランスはどうか、波形が綺麗か、ジグザグの形が見えやすいかといった視点が大切です。

 そうやって見ていくことで、波形が汚かったり、方向感がはっきりしないような「分かりにくい相場」には手を出さない判断ができるようになります。結果的に無駄なエントリーを減らすことにつながります。

―簡単な環境から徐々に理解していくのが良いと思っていたので、正解っぽくて良かったです。

Kou はい。本当にそれでいいと思います。買いが優勢なのか、売りが優勢なのかさえ分かっておけば、とりあえず大局的な方向感に従ってポジションを持つようにするといいでしょう。

―相場は一体化していますし、全部の流れは同じですが、まずは環境認識から、というのはあらゆる人におすすめできそうですね。

Kou そうですね。ただ、もう一つ意識しておいたほうが良いのは、資金管理です。環境認識ができるようになっても、資金を入れすぎると、それだけでリスクが跳ね上がります。

―たしかに。思ったとおりやっても負けることは必ずありますし、そこに危機感が持てるのは良いことですが、ロットを張りすぎると、感覚が麻痺してしまうこともありますよね。

Kou そうなんです。そうなると損失も受け入れられなくなってしまいます。やることが明確に定まっていない状態では、口座にお金を入れること自体がそもそもリスクになると僕は考えています。結局、方向も決めずに無駄エントリーをして「ポジポジ病」を患い、資金を減らすだけになってしまいます。リスク管理をちゃんとできるようにならないと、何のために資金を投じたのか分からなくなってしまうでしょう。

裁量トレードに大事なのは自分の生活への納得感

―裁量トレードをやっていて「難しい」と感じることは何ですか?

Kou 正解がないことですね。日本人には特に多いと感じるのですが、一つの問いに対して確実な答えを欲しがることがよくあると思います。

 どんな方法でも、環境によっては上手くいくときもあれば全然ダメなときもあります。また、FXに負けはつきものですが、一つ負けるたびに「こうしたら良かった」「こっちのほうが良かった」と一つの手法を疑いすぎると、軸がブレて、自分が目指しているものを見失ってしまうと思います。

―自分のルールがブレないようにしていても、ロジック自体が相場に合わなくなればいつかは変えなければいけなくなるでしょうし、難しいところですね。

Kou 負けている共通点を見つけて、合わない相場を避け、合う相場だけで勝負していければ良いと思います。裁量トレードだと実際に取引するのは人間ですし、人によって、性格や資金量や生活環境も異なります。

 チャートを見られる時間帯も、普段の生活のストレス度合も千差万別ですよね。例えばポジションの保有時間一つとっても、「スイングが気楽でいいや」という人もいれば「ポジションを持ったままでは寝られない…」という人もいます。スキャルピングでサクッと取りたいと思っても、家族との時間も考えると難しいこともあるでしょう。また、子どもができたり、職場の配属が変わったり、働き方が変わったり、環境の変化によって、トレードのやりやすさも変わってきます。

 ずっと続けてきたやり方ができなくなる日も恐らく来るでしょう。だから、勝つために最適な手法を見つけるよりは、これから先ずっと自分がやり続けられるかどうかを納得できることのほうが大切だと思っています。

 自分の生活に対して納得感がないと再現性も落ちていき、上手くいかなくなります。過度なこだわりを持たず「そこそこでいい」という距離感を大事にするのが、裁量トレーダーには必要だと考えています。

―裁量トレーダーの読者に向けて一言をお願いします。

Kou 裁量トレードは難しいですよね。爆発力はあるんですが。スキルを磨き続けなければいけません。お金ばかり意識すると、IQが下がってしまうというか、マイルールを破ってしまう可能性も上がります。本にも書いたのですが、「お金の先に何があるのか」を考えてもらいたいと思います。

 FXで勝ちたいのは当然でしょうが、そこから先で何がしたいのかを忘れないようにできると、FXをやる意義が見えてくると思います。長期的な目標ができていれば、今のトレードでやるべきことも分かってきます。そうすれば、ポジポジしている意味もないと自分を客観視するいいきっかけにもなるはずです。大事にしてもらいたいのはやはり「納得感」です。

インタビュー日◎2025年3月11日

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 外国為替編集部の佐野です。FXのトレードに完全な模範解答は存在しないものですが、分かりやすさ、実践のしやすさという「王道」を求めるトレーダーのニーズにぴったりハマる一冊であると思います。

 王道が王道たる理由はその普遍性。この本に記されている手法は、トレンドフォローの基本に忠実なものです。本インタビューよりもさらに深く、Kouさんのトレードルールにも触れられています。Kouさんの手法を理解する上で必要なテクニカル分析の知識についても網羅されており、学んだ内容をドリル形式で復習できるようになっているため、FXを始めたばかりの初心者にもおすすめできる一冊です。

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