ベーシストFX手法研究家&物理学者 Kou氏プロフィール
物理士トレーダー。トレード開始当初は期待通りの成績を挙げられなかったものの、学者にふさわしく確率論や統計学を駆使して検証と実践を繰り返した結果、2020年に10万円を7週間で1000万円以上に増やす。
本文◉yuko チャート提供:TradingView
ダウ理論の目線とN値で勝率とリスクリワードを高める
Kouさんに、ダウ理論を軸にしたボリンジャーバンドと値幅観測論を利用したトレード手法を解説していただきました。
「今回は、チャートのテクニカル分析の基本であるダウ理論の中でも、目線の考え方を軸にした、勝率とリスクリワードを両立するテクニカル分析とトレード手法を解説します」とKouさん。
「今回紹介する手法は、15分足〜1時間足レベルの損切り幅で、1時間足〜4時間足の値幅を取れるリスクリワードの良い手法です。リスクリワードが良いと勝率は低くなりがちですが、この手法では日足のダウ理論の目線を軸にすることで勝率も高めています。直近6か月の勝率は約68%でした。
このように、取引回数は少ないですが、リスクリワードと勝率を両立している手法です。
まず、環境認識として、日足のダウ理論の目線を確認します。目線の方向を確認したら、4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインが同じ方向に傾いているかをチェックします。傾きがない場合はトレードしません。
この日足のダウ理論の目線で狙う方向を決めて、その方向に沿ってトレードをすることが勝率を高めるための重要なポイントです」
短期レンジを待ってから15分足でエントリー
「エントリーは、1時間足が短期レンジを形成し、ボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが横からやや日足の目線方向になるのを待って行います。
短期のダウの目線転換とボリンジャーバンドのミドルラインが日足の目線と同じ方向に傾きはじめ、上下のバンドの幅が広がったら、日足の目線と同じ方向にエントリーします。
利益確定は値幅観測論のN値を利用します。目線が上方向の場合は、1時間足のレンジを形成する前に出た直近の上昇(目線が下方向の場合は下落)の値幅と同じ値幅が出ると予測します。損切りは短期レンジを反対側に抜けたときです。
このように、利益は1時間足~4時間足の値幅を狙い、損切りは15分足~1時間足のレンジ幅なので、損小利大のトレードとなるところが、この手法のメリットです」
押し安値と戻り高値は?目線の基準を持つ
この手法を使う上でのポイントや気をつける点はどこでしょうか。
「この手法を使うには、ダウ理論の押し安値、戻り高値をどこで見るか?という基準を自分の中で持つことが必要です。この基準があれば、ダウ理論の目線でトレンドの方向を把握し、4時間足の傾きを確認することで、トレンド方向とインジケーターの傾きが合っているかの判断が可能になります。
押し安値と戻り高値の見方が分からない方は、私の連載記事『王道トレードの手引き』の『第2回 機能する水平線を引くコツ』を参考にしてください」
ダウ理論の目線を使いこなせるとトレードの難易度がグンと下がります。納得できるまで検証することが大事とのことでした。
機能する水平線を引くコツについては、外国為替Onlineのページでもご覧いただけます。
手法で使用するテクニカル分析
図①ダウ理論(Dow Theory)
この手法では、ダウ理論の目線を軸にしています。切り下げた安値の起点となる高値(戻り高値)を超えたら上目線となり、切り上げた高値の起点となる安値(押し安値)を割るまで上目線が継続します。目線の方向にトレンドが発生・継続しやすいと考えます。
図②ボリンジャーバンド(Bollinger Band)
ボリンジャーバンドのミドルラインは期間20の単純移動平均線(SMA)であり、その方向と傾きでトレンドの方向と強さを確認できます。上下のバンドはボラティリティが大きくなると幅が広がります。ミドルラインが横向きでバンドの幅が狭いときはレンジ相場。ミドルラインに傾きが出てきてバンドが広がると、トレンド開始を察知できます。
図③N値
値幅観測論は、それまでの相場の値動きからあとどれくらいの値動きがあるかを予測計算する理論のことで、この手法ではN計算値(N値)を利用しています。
N値は上昇トレンドの場合、上昇幅と同じ値幅が、押し安値からさらに上昇すると予測します。左の図では、ABの値幅=CDの値幅となります。
トレード手法の基本情報
狙う通貨ペア | ドル円、ユーロドル、ユーロ円、ポンドドル、ポンド円 |
チャートの時間軸(環境認識) | (週足を週の最初にチェック)、日足、4時間足、1時間足 |
チャートの時間軸(新規エントリー) | 1時間足、15分足 |
チャートの時間軸(決済) | 15分足 |
使用するインジケーター | ボリンジャーバンド(期間20、偏差±1σ・±2σ) |
使用するチャート | ローソク足 |
使用するライン・オブジェクト | 水平線 |
使用する理論 | ダウ理論 |
平均的なポジション保有時間 | 2日前後 |
平均的な利益確定の値幅 | 60pips |
平均的な損切りの値幅 | 30pips |
■勝率の目安
約68%(直近6か月)
■トレードの頻度
1通貨ペアあたり2-3日に1回程度
環境認識では4時間以上の長期足、エントリーと決済は主に15分足で行っています。トレードの頻度は数日に1回程度で、保有期間は2日間ほど。トレード回数は多くないですが、リスク1に対してリワード2を狙う損小利大トレードです。
環境認識
●日足のダウ理論の目線を確認
●目線方向と同じ方向に4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインが傾いているかを確認
●トレードしない条件
①日足のダウ理論の目線の方向と4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインの傾きの方向が異なっている場合
②4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインの傾きがない場合
エントリー(新規買いの場合)
●1時間足のボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが横~やや上となり、レンジを形成
①短期のダウ理論の目線が転換
②ボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが上
③バンドが広がる
条件がそろえばロングでエントリー
決済売買(新規買い→決済売りの場合)
利益確定
●値幅観測論のN値を利用 過去の上昇と同じ値幅=N値で利益確定
●リスクリワードは1:2程度
損切り
●1時間足で形成されたレンジを下抜けたら損切り
押し安値・戻り高値と傾きで狙う方向を決めると勝率を高めやすい
この手法を用いた、ドル円のトレード例です。
このトレードの環境認識では、日足のダウ理論の目線は最安値をつけた戻り高値を上抜き上目線。ここからは最高値をつけた根本の押し安値を割るまでは上目線継続。4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインの傾きも上方向で、日足の目線と同じ上方向であるため、エントリータイミングを計ります。
1時間足がレンジを形成し、ボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが横~やや日足の目線方向となっていることを確認できるまで待ちます。
15分足で短期ダウの転換を待ち、短期ダウが転換するタイミングで、ボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが上方向になり、上下のバンドが広がったため、買いでエントリー。
直近のレンジの下限(押し目)から過去の上昇の値幅と同じ値幅(N値)で利益確定。
レンジを下抜けたら損切りですが、今回は損切りにかからず、N値を達成しました。
このトレードでは、損切りは約30pips、利益確定は約60pipsのリスクリワード1:2程度となりました。
エントリー時には、値幅を確認し、リスクが小さくなっていることを確認することも大切です。
実戦例:環境認識│ドル円◉日足〜1時間足◉2023年8月29日
日足のダウ理論の目線は、直近の最安値をつけた戻り高値を超えたため上目線。最高値をつけた押し安値を割るまでは上目線継続です。4時間足チャートに目線切替ラインを表示させています。4時間足のボリンジャーバンドのミドルラインの傾きが上になっていることを確認できたのでエントリーできるタイミングを待ちます。
実戦例:エントリーおよび決済
レンジ形成後短期も目線がそろうのを待つ
エントリーは1時間足のボリンジャーバンドのミドルラインが横向きになり、レンジを形成するのを待ってからになります。15分足で短期のダウ目線が転換したタイミングで、ボリンジャーバンドのミドルラインも上向きに変わり、上下のバンドの幅が広がるのを確認できたため、エントリーします。このとき、過去の上昇の値幅と短期レンジの幅を比較し、リスクリワードが十分かチェックしておきます。
利益確定はN値、損切りはレンジの下抜け
エントリー時に形成した短期レンジの底が押し安値になるとして、このレンジの下限からN値を達成すると予測します。過去の上昇幅は短期レンジを形成する前の上昇です。この値幅を取れるとして、リスクが十分小さくなっていることをチェックします。このトレードではリスクリワード1:2となりました。
①短期ダウが転換し、日足の目線と方向がそろう
②ボリンジャーバンドのミドルラインの傾きもそろう
③ボリンジャーバンドの上下のバンドが広がる
④過去の上昇幅が出るとして、短期レンジの底との値幅を比較
⑤リスクが十分小さいのでロングエントリー
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)