楽して儲けたい。それは全ての投資家の望みといっても過言ではありません。
ですが、本当に何もせずに儲けは出ないもの。
そこで「不労所得」ならぬ「微労所得」という考え方を提唱されるOnyさんに、そのノウハウをご教示いただきます。

Ony(おにー)氏プロフィール
日系大手IT企業から外資系大手IT企業で働きつつ、FX・米国株を中心に活動するトレーダー。X(旧Twitter)では不定期にスペースを開くほか、「#おにーさんの微労所得」にて日々の実績を配信。ブログ「Onyさんといっしょ」では、トレード戦略別の情報も整理・発信している。
冬時間入りで突然ピンチ!どうなるユロっとおにー
「Onyさんの微労所得実践道場」に目を留めていただき、ありがとうございます。無事に連載2回目を執筆させていただくことになりました(笑)。
早いもので、2024年も終わりを迎えようとしています。今年7月にリリースしたユロっとおにーも、破綻することなく無事に運用を継続することができています。「無事に」と書いたのは、実は米国冬時間に切り替わる直前で、冬時間になると時間成行注文機能では所定の時刻(6時5分)でエントリーできないことが発覚したためです。
急遽Androidマクロを開発・公開することでこの問題への対処を行いましたが、実際に冬時間になってみると、なんと約半数のユーザー様が早起きをして手動発注で対応する、という方針で継続運用してくださることが分かりました。愛用してくださる方が多くいらっしゃることがわかり、開発者冥利に尽きます。
ユーロ円スキャルピング戦略「ユロっとおにー」

手法実行時のポイント
①日本市場クローズ後までポジションが残る可能性があり、その際には手動で決済する。午後5時~午後7時の決済が望ましい。
②早朝に拡大するスプレッドが成績に影響する可能性がある。分割エントリーでスプレッドの影響を緩和できるが、必ずしも成績向上につながるとは限らないので注意。

ヒロセ通商の取引ツール「LION FX C2」を使うことで売買を自動化できます。時間指定は夏時間期間は5:05。冬時間期間には現在対応していません。リピート開始日は運用を開始したい日で、終了日は設定可能な最も未来の日にします。この画像の設定では、pips差は指値30(建値+0.03円)、逆指値550(建値-0.55円)。利確19回分で損切り1回分の損失をカバーできる比率です。
※上記は2024年10月時点の内容。最新ルールはユロっとおにー運用ガイドおよびOnyさんのXを参照
Androidマクロによる自動発注


冬時間の開始に合わせ、FX会社の時間指定成行+決済pips差の同時発注機能を利用した発注ができなくなり、ユロっとおにーに新たな発注方法が追加されました。手動発注の操作をAndroidマクロで自動化して行うもので、noteの記事の中で詳しく解説されています。
時間を意識した取引が再現性を創り出す
そもそもなぜそのようなリスクのあるエントリー時刻を選んだのでしょうか? また、なぜエントリー時刻を固定する必要があるのでしょうか? トレードルールとしてアノマリーを取り込むことができるようになることが、その答えです。
ユロっとおにーでは夏時間は午前5時5分、冬時間は午前6時5分をメインエントリー時刻として定めています。日本時間で考えるとサマータイムに左右されて分かりにくいですが、これはどちらもNY市場がクローズする55分前にエントリーする、ということです。

MT4やMT5でバックテストを行ってみるとわかるのですが、この時刻でエントリーした場合のみ明らかにパフォーマンスが向上します(上図)。例えば午前3時5分や午前4時23分といった他の時刻では、同様のパフォーマンスを期待することはできません。NYクローズ55分前になぜこのような有意性のある値動きのパターンが出現しているか、その理由は分かっていません。そのため、私はこれをアノマリーの一種だと考えています。
エントリー時刻とポジション最大保有時間を決めることで、毎日同じ時間帯にのみトレードを行うという状況を作れます。言い換えると、毎日同じエントリー条件およびイグジット条件で試行を重ねた場合のシミュレーションができるのです。
微労所得シリーズの他の戦略でも採用している考え方なのですが、一定の時間サイクルを抽出することによって値動きをパターン化して捉えることができるのではないか…と、私は考えています。月初から月末の1か月間であったり、週初から週末の1週間であったり、という切り出し方です。こういった時間サイクルにおいては、相場の参加者が一定の行動をとる可能性があります。例えば、毎週月曜日の午後10時にエントリーし、毎週金曜日の取引終了直前に決済する、というような行動パターンです。
このような仮説を立てたとき、エントリー条件とイグジット条件を一定にして試行を重ねる、ということの意味が出てきます。すなわち、値動きのパターンを炙り出す、ということです。「相場の参加者の行動に起因する特定の値動きパターンを炙り出し、毎日同一の条件でトレードを繰り返すことでパターンの再現を期待する。また人間の行動サイクルを逸脱しない範囲でトレード時間を短く切り出すことによって試行回数を増やし、確率勝負に落とし込む」。これこそが、ユロっとおにーの根底にある考え方です。事象の切り出し方を工夫することで、再現性を創り出しているのです。
再現性は人のためならず。自分のためである
私は「情けは人のためならず」という諺が好きです。誤用されることもよくありますが、本来は、他者への情けは巡り巡って自分に恩恵として返ってくるので親切にせよ、という意味です。私は、トレードにおける再現性も、「情け」と同じような性質なのではないかと考えています。
トレードの再現性という表現がなされるとき、私は主に二つの観点があると考えます。一つ目は、他者が定めたトレードルールを忠実に実行すれば自分も同じ成績を出せる、という観点での再現性です。人的再現性と言い換えても良いかもしれません。これはトレードルールの客観性を担保する上で大事な考え方だと感じています。
そして二つ目ですが、個人的にはこちらの重要性をより訴えたいところです。それは、時間的再現性の観点です。どれだけ優れたトレードルールであっても、タイミングが合わなければ成績の向上は期待できない、ということでは困ってしまいますよね。微労所得におけるコンセプトの一つである、安定したキャッシュフローを作る、という狙いとは正反対です。
中長期的に取り組んでいれば、始めたタイミングによらず好成績を狙える。今の自分ができている運用を、将来の自分が同じように実践すれば同じ成績がいつでも期待できる。これこそが、微労所得を実践するための大事なポイントとなります。
トレードにおいて、近い将来に対する予測の精度を高めることこそが王道のアプローチです。しかし、未来のことは誰にもわからないという大前提に立ったとき、予測に磨きをかけることが多くの人にとっての最適解とは限りません。
過去の値動きをしっかりと分析して今後の再現性に期待し、現在とは違う未来の自分も現在と同様に利益を得られるようにすること。これこそが、トレードにおいて私が選んだ手段です。私が再現性を追求しているのは、人のためではない。まさに自分のため、なのです。