テストデータの信頼性がEAの性能評価を決める
EA(Expert Advisor)はブラックボックスであり、完全なロジックが公開されることはありません。そのためEAの性能を評価するには、数値的に判断ができる試験結果を見る必要があります。特に試験の信頼性を確認することが極めて重要です。
信頼性とは提示された試験結果が正当な評価の基準となり得るかどうか、不正がないかといったことです。例えば極端に小さいスプレッドの試験結果や、計測期間が短すぎる、もしくは取引数が極端に少ない試験結果は、適切な評価基準を満たしているとは言えません。
自動売買で公開されるテストデータには主に3種類あります。まず、バックテストは過去データを使用するため、スリッページや価格受信状態の影響を受けません。第三者による信頼性確認のための追試が短時間で可能です。バックテストは3種類の試験の中で最も信頼性が高く、実施環境の影響を受けにくい特徴があります。
次に、デモ口座計測結果は受信状況の影響を受けますが、スリッページはありません。多くの業者では、配信レートが実口座と一致しないことがあります。後からの追試ができないため、公開された結果を信じるしかありません。また、アップデートや不具合、意図的な停止によるデータ欠落の可能性もあるため、試験自体の信頼性が低いことを理解しておく必要があります。
最後に、実運用結果は受信状況とスリッページの影響を受け、個人差や業者間の差が最も大きくなります。追試ができず、計測に時間がかかるために試験期間が短期間になりがちです。このため3種類の試験の中で最も信頼性が低くなります。
また、開発者自身が計測を行う場合、スプレッドやスワップなどの手数料が安い業者を選ぶことがあるため、利用者は使用予定の業者との差に注意する必要があります。実運用の結果のみを参考にする場合の最善は、公開されている業者を使用することです。
これらを考慮すると、バックテストが最も信頼できるテストとなります。その理由は、他者が追試を行えること、また計測者ごとの成績差が少ないことにあります。ただし、MT4のバックテストではスプレッド設定に注意が必要です。受信状況の差やスリッページなど不利になる条件を考慮し、利用する口座の平均スプレッドに4~5ポイント追加することが推奨されます。スリッページを下げると成績は向上しますが、同時に信頼性も低下することに注意が必要です。
また、EAを選ぶ際には、試験結果を比較することが重要です。チャートを比較する際は、横軸の期間や縦軸の金額の目盛りが異なるものを比較することはできません。最も良い方法は、現在使用しているEAをバックテストし、同じ期間、同じ条件、可能であれば同じ通貨ペアで行ったバックテストを比較することです。
EAの選択には、信頼できる試験結果の確認が不可欠です。「この開発者は信用できる」「人気のあるEAだから大丈夫」といった判断ではなく、個人差が少なく再現できるバックテストを重視しましょう。正確な試験結果を確認し、それが正しいかどうかを検証できることが、EAの選択において非常に重要です。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)