米SEC(米国証券取引委員会)は11月17日、ハッシュデックス(Hashdex)とフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)が申請していたビットコイン現物ETF上場に関する審査期限を延長した。これに加えて、11月21日に予定されていた、グローバルエックス(Global X)の審査期限も延長されている。
現在最初の承認候補として有力視されている、世界最大手の資産運用会社ブラックロックが申請した「iShares Bitcoin Trust」は、SECの意向を反映する形で、監視共有契約や不正価格操作に関する監視強化策が盛り込まれており、透明性・安全性の高いビットコインETFを実現しようとしているが、このETFの次回の承認期限は、翌年1月15日。
掲載の表の通り、審査期限は段階的に設けられており、2024年1月の前半に、再度複数の現物ビットコインETFの申請期限が訪れる。この状況からみて、ビットコインおよび暗号資産市場にとってポジティブな影響を与えるビットコイン現物ETF承認の可否という局面は、2024年1月に改めて訪れる。
しかし、あくまでこのスケジュールは期限であるため、表に掲載の日程通りの日取りで承認があるかどうかも曖昧な点は残っている。ポジティブなサプライズには警戒しつつ、なければ年内は暗号資産市場には我慢の期間になりそうだ。
10月には、ブルームバーグのETFアナリストが、ビットコイン現物ETF承認の可能性を90%以上に引き上げたことからも市場は承認可否よりも、承認時期に注目している。
このような期待感を煽るさまざまな材料と共に、米国のインフレ率が後退していること、そしてFRBによる利下げに対する期待が、今の暗号資産市場を押し上げてきたともいわれている。多くの材料は既に折り込んでいるのではないだろうか。
あくまでメディアという視点を崩さずに考えても、正直なところ、現在の期待感は〝既にバブル〟といっても過言ではない水準に達していると思う。ここからさらに暗号資産市場が盛り上がるのは、少し時間を要する可能性を頭に入れておいていただきたい。再三、この連載でも書かせていただいたが、本丸は2025年の夏ごろ。ビットコイン現物ETF承認後に、その他のアルトコイン現物ETFも承認され、次回のビットコインの半減期(3月予定)から480日ほど経過したころに、市場は盛り上がりをみせているであろうという推測は変わらない。それまで、マクロ経済や紛争の状況を鑑みて、慎重に考察しても全く遅くないと思う。
バイナンスジャパン、取り扱い銘柄は国内最多の47銘柄に
アルトコインを推奨している訳ではないことはご理解いただきたいが、これを読んでくださった方の中には、焦らず新しい選択肢として考察してみたいと思った方もいると思う。
先日、大手暗号資産取引所バイナンスの日本法人であるバイナンスジャパンが、新たに13銘柄の取り扱いを開始。これにより取り扱い銘柄数は、現在取り扱っている34銘柄と合わせて47銘柄となり、国内最多となった。
世界的な暗号資産取引所の日本進出も、当初は静かに始まった印象だったが、ここにきて大きく動きをみせたことは、国内の暗号資産市場に健全な競争が生まれ、取引手数料やステーキング等の還元率が、ユーザーにとってメリットの大きなものになるなど、非常に良い影響があると考えている。それに加えて、ビットコインからアルトコインへと流れるトレンドを、キャッチアップするためのグローバル水準のツールが日本でも活用できるのは心強い。
先日、『Iolite(アイオライト)』の創刊号で表紙を飾っていた、経済アナリストの馬渕磨理子さんに取材させていただいた。金融業界に精通する彼女も、世界の著名な投資家たちも暗号資産が分類されるようなオルタナティブの比率は10~20%とのことがほとんどだと話されていた。
この原稿を執筆している11月18日には、ChatGPTを手がけるオープンAI(OpenAI)のサム・アルトマン氏がCEOを解任され、同氏が手がけていたAI・暗号資産プロジェクト「Worldcoin」のトークンの価格が10%以上急落したというニュースもあった。
アルトコインを取り巻く環境は、ビットコインよりもはるかに複雑で予期せぬ出来事で上にも下にも大きく振れてしまう。実態を伴うプロジェクトなのか、プロジェクトのロードマップに不安要素がないか、参画しているメンバーは信用に足るのかなど、慎重なデューデリを行って分散投資をしてもらいたい。そして私自身も、馬渕さんのいう適切なポートフォリオを再考して来年以降に備えたい。
FX雑誌「外国為替」vol.14
発売:2024年12月23日(月)
定価:980円(本体891円)