スワップポイント最大化で長期的に安定した収益を
外国為替市場の深夜(Midnight)、特にニューヨーク市場の取引終了間際は、多くのトレーダーがポジションを閉じるため、流動性が一時的に大きく変動します。この時間帯には、価格の急激な変動、スプレッドの拡大、スリッページの増加が起こります。また、多くのブローカーがこの時刻にスワップポイントを計上するため、独特の市場動向が形成されます。この記事では、深夜の市場を最大限に活用するための情報と戦略について詳しく解説しています。
スプレッド
スプレッドとは、買値(Ask)と売値(Bid)の差であり、これがトレーダーの取引コストの主要部分を形成します。通常、市場の流動性が高いほどスプレッドは狭くなり、コストも低下します。しかし、市場の流動性が低い時期や大きな経済発表があるときは、スプレッドが広がることがあります。ブローカーによっては原則スプレッド固定の業者や、別に手数料を設定している業者もありますが、ニューヨーク市場の取引終了時刻の10分から20分前にスプレッドは広がり、そこから1~2時間後にスプレッドは戻ります。
スリッページ
スリッページは、注文した価格と実際に取引が実行された価格との間に生じる差を指します。これは、市場の流動性が低いときや大きなニュースイベントが発生したときに特に起こりやすい現象です。スリッページはトレーダーにとって不利な方向(ネガティブスリッページ)に作用することもあれば、有利な方向(ポジティブスリッページ)に作用することもあります。
一般的には、価格配信数が多いブローカーではスリッページが少なく、その影響も小さい傾向があります。ポジティブスリッページは、市場がトレーダーの注文方向に急速に動いたときに発生しやすく、例えば買い注文の際に市場価格が急激に下降し始めた場合、指値注文が予想よりも安い価格で約定することがあります。一方、ニューヨーク市場の取引終了時刻前後にスプレッドが広がるときは、ネガティブスリッページが発生しやすい状況となります。
スワップポイント
多くのブローカーは、ニューヨーク市場の取引終了時刻を超えてポジションを持つとスワップポイントが発生します。スワップは基本的に二つの通貨間の金利差に基づいて計算され、保有している通貨の金利が相手通貨よりも高い場合、トレーダーは金利差の利益を受け取ることができます。また、多くのブローカーは土日を含むスワップを水曜日に3日分として計上します。
ニューヨーク市場の取引終了時刻は、スプレッドの拡大やスリッページの発生という面で不利ですが、スワップを受け取ることができるポジションを持つことは強力な利益戦略になります。このスワップを最も効果的に利用するためには、スプレッドが拡大する前にスワップを受け取れるポジションにエントリーし、スプレッドが再び狭まった後にポジションをクローズする戦略が有効です。さらに、金利差が大きい通貨ペアを選ぶことで、より多くのスワップを獲得し、必要証拠金が少ない通貨ペアを選ぶことで資金効率を高めることができます。
AMSER的ミッドナイトの戦略(スワップ戦略)
ここでは、ニューヨーク市場の取引終了時のスワップ戦略を三つ紹介します。
① スプレッドが拡大する前にスワップ獲得のためのポジションをエントリーし、スプレッド拡大が終了した後にポジションを閉じます。この方法で、スワップポイントを効率的に獲得することができます。
② ①の戦略をスワップ3日分獲得できる日のみ実行します。
この方法でドローダウンが減少し、リスクとリターンを示す各数字が①の戦略に比べて改善されますが、取引回数が5分の1になるため、期間全体の収益は低下します。
③ 二つの業者でスワップが3日分支払われる日が異なる場合、両建てヘッジを行います。この方法は為替変動リスクを削減します。二つの業者で取引するためには倍の資金が必要ですが、週2回実行できるため理論上のスワップは②の戦略と同じになります。異なるブローカー間での両建てが禁止されている場合があるため、この戦略を実行する際は注意が必要です。
メジャー通貨の政策金利から見る通貨選択
政策金利は、スワップポイントの計算において重要な要素です。2024年5月現在、米国の政策金利が5.50%と最も高く、日本の金利が0.10%と最も低いため、ドル円はスワップポイントを獲得するのに有利な通貨ペアです。また、このペアはスプレッドが狭く、取引量も多いため、取引しやすいです。
スワップ戦略運用の注意点
① スワップポイントの比較
スワップポイントはブローカーによって大きく異なります。例えば、ドル円を10万通貨で取引した場合、1日あたり1000円から2500円のスワップを獲得できることがあります。適切なブローカー選びが重要です。
② ポジション保有期間
ポジションを短期間保有することで価格の大きな変動を避け、リスクを減らすことができます。ブローカーやサーバーによってスプレッドが拡大する時間が異なるため、そのタイミングを把握して最適なエントリーとエグジットのタイミングを見極めることが重要です。
③ スプレッドの拡大時期
多くのブローカーはニューヨーク市場の取引終了時刻の5分前にスプレッドが拡大しますが、1時間以上前に拡大するブローカーもあります。また、スプレッドが狭まる時間は、ほとんどのブローカーで取引終了後1時間から1時間50分後となっています。
④ MT4のバックテストの限界
MT4でのバックテストでは、現在のスワップポイントを過去の基準として用い、スプレッドの拡大やスリッページが発生しないと仮定します。これは実際の市場条件と異なるため、結果には注意が必要です。
⑤ 取引量の管理
大きなロット数での取引を行う場合は、分割してエントリーすることでスリッページのリスクを軽減できます。
ミッドナイトのスワップ戦略は、適切なブローカー選びと市場のタイミングを見極めることが成功の鍵です。リスクを管理しながら、効率的にスワップポイントを最大化する方法を理解し、実践することで、長期的に安定した収益を目指しましょう。
(2024年6月6日時点)
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