米SECがビットコイン現物ETFを承認
日本時間の2024年1月11日、米SEC(米国証券取引委員会)はビットコイン現物ETFを承認した。SECによって承認されたビットコイン現物ETFは、1月15日執筆時点で11件。暗号資産のシンボルのような存在であるビットコインの現物ETFが認められたことは、暗号資産市場にとって大きな進歩だろう。それと同時に、既存金融の仕組みを根本から変えていく可能性に期待されていたビットコインが、既存金融に取り込まれていく様に何ともいえない寂しさを覚えた。
承認の前後には市場が錯綜する情報が滝のように流れていた。10日、SECの公式X(旧Twitter)からビットコイン現物ETFの承認に関する情報が流れ、ビットコインの価格は4万2000ドル(約600万円)から4万6000ドル(約660万円)付近まで10%近くの急騰をみせたものの、XのSEC公式アカウントがハッキングされたことによる誤報だったことが分かり、4万ドル(約580万円)付近まで急落。現物ETF承認の誤報前の水準にまで反落した。
正確な事実は定かではないが、SECの公式Xの2要素認証をしていなかった可能性も浮上している。価格操作に対して、極めて厳格で慎重な態度をとっていたSECが、今度は捜査の対象になりかねない状況になったのはお粗末だった。最終的には翌日の日本時間11日承認に至り時間をかけて一時4万9000ドル(約710万円)に到達したものの、当日もCBOE(Chicago Board Options Exchange)がSECの公式発表に先んじてビットコイン現物ETF承認を発表したとされており、現物ETF承認まで相場は各方面からの発表に振り回された。なお、執筆時点では事実売りともみられる下落により、4万2000~4万3000ドル(約600~620万円)付近で推移している。
ビットコイン現物ETF取引開始当日、最大の取引ボリュームであったのはグレースケールの現物ETFで、1.6billionドル(約2200億円)以上あったとされている。そして、11件のビットコイン現物ETFの総計では、3billion以上の取引ボリューム。この情報からみるに想定通り、暗号資産市場には資金が流れる可能性が高まったといえるものの、価格が上がりに上がった現時点で機関投資家を含めた金融のプロたちが動き出すのは時期尚早な雰囲気を感じている。
今後の価格動向を探る一つの指標として、度々ゴールド(金)のETF承認後の価格推移が比較対象として挙げられる。2004年にゴールドの現物ETFが承認されたときには、約4年で370%の上昇をみせた。
実際のところ、ゴールドは現物で購入する障壁があったことから、ETF承認後に需要があって価格をつけたが、ビットコインの現物ETFに関しては、ゴールドよりもビットコイン購入時の障壁が低いため、ゴールドと同様に価格の動向を考えるのは浅はかなのではないかとの意見もある。しかし、ビットコインはゴールドよりも保管コストが高いのではないのだろうか。ハッキングのリスクやPINコード・アクティベーションコード・ハードウォレット自体の紛失等、自身で保管するコストは案外高いものだ。価格に一喜一憂せずに現物を持ち続けることが難しいというよりも、正確には長い間ビットコインをさまざまなリスクから守ることが難しいと考えている。
今後の方向感を占う上で注目すべきは米大統領選
今年の具体的な方向感としては、半減期と現物ETF承認によるビットコインの需要増加で急騰はないものの堅調に推移。最終的に米国の大統領選の結果が価格に大きく影響を与えるのではないかと考えている。特に共和党候補者として挙がっている無所属のケネディ・ジュニア氏が勝つことがあった場合、現在のSECの体制がゲーリー・ゲンスラー氏も含めて変わり、市場にポジティブに影響する可能性がある。一方で、共和党候補として優勢といわれているトランプ氏の就任は、ドルを脅かす暗号資産等の存在に懐疑的と思われネガティブに働く可能性はある。
前者がポジティブに働く見込みがある理由としては、ケネディ・ジュニア氏は自身でも10万ドル以上のBTCを保有しているともいわれているためだ。両者はビットコイン推進派と捉えられる面もあるため、彼らがリーダーシップを発揮できる状況になれば、暗号資産業界には追い風となるだろう。
2024年のビットコインは堅調推移、アルトコインは現物ETFの希望的観測から市場より、本当に中身のあるプロジェクトと、そうでないプロジェクトがふるいにかけられる。年後半には大統領選の方向性が、ビットコイン等の主要な暗号資産の価格に影響を与えるのではないかというのが大方の見立てだ。釈迦に説法だが、多くの暗号資産はオルタナティブに分類されるため、過度な期待は厳禁であることを覚えておいていただきたい。
FX雑誌「外国為替」vol.12
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