ポーカーが強い人といえば、派手なブラフや卓越した読みをイメージするかもしれません。しかし実際には、ポーカーは「待つ」ゲームです。各プレイヤーには最初に2枚の手札が配られますが、そのうち7割以上は参加せずにフォールド(捨てる)するのが正しいプレイとされます。
もちろん、実力が高いプレイヤーほど弱いハンドでも利益を出すことができますが、参加率を上げるほど弱いハンドが増えるため難しい局面が増えます。その結果として分散は大きくなり、徴収されるレーキ(手数料)も無視できない金額になります。
一般的に、多くのアマチュアプレイヤーは弱いハンドで参加しすぎる傾向があります。ポーカーで生計を立てているわけではなく、あくまでも余暇や娯楽としてカジノに遊びに来ているので、強いハンドを待っているだけでは退屈というのも理由の一つでしょう。
アマチュアプレイヤーはポーカーに多くの時間を割けないため、いま目の前のポットを取りたい、勝負に勝ちたいという気持ちが強すぎるのです。収支が期待値に収束するには長い時間がかかるため、確率のゲームを制するには長くプレイすることが一番大切であるにもかかわらず。
自己顕示欲や自信過剰もプレイを歪める要因です。多くのプレイヤーは定石から外れた弱いハンドや、意表をつくアクションでポットを獲得して、自分の実力を示したいという誘惑に駆られています。反対に、強いハンドを待って確実に勝ちに来るプレイヤーは「タイト」もしくは「ニット」と呼ばれて、時には嘲笑の的となります。
しかし皮肉なことに、こうした参加しすぎでフォールドしない「ルース」なプレイヤーに対しては、ブラフしても降りないので、強いハンドを待って役が完成したときだけベットすれば簡単に利益を出せます。
これはトレードにも当てはまる話で、しっかり待って簡単な場面だけを狙うことで利益を出すことができるにもかかわらず、多くの人は難しいタイミングでエントリーしすぎています。
その理由はポーカーと同じで、多くのトレーダーは射幸心に駆られて「遊び」でエントリーするからです。そして目先の勝敗に固執しすぎるため、本来トレードすべきでないタイミングで無理をして負けるのです。
勝負に勝つことは、必ずしも高度な分析やスキルを駆使することを意味しません。むしろ、難解な局面を避けて簡単に利益が出る場面を辛抱強く待つことが、単純ですがとても大切です。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)