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FX業界の重鎮の相場観「トレードで食べていけるところまで経験を積んだ状態、それが相場観を持っているということ」◉山中康司

FX業界の重鎮の相場観「トレードで食べていけるところまで経験を積んだ状態、それが相場観を持っているということ」◉山中康司

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外銀時代から為替の世界で活躍し、個人投資家としても豊富な経験を持つ山中康司さんに、相場観の定義を語っていただきました。

シンプルにいえば、「相場で食っていけること」が相場観であるとのことでしたが、その心は? インタビューの後半では、今年後半の為替市場の見通しについて相場観を語っていただくという、貴重な機会をいただきました。

聞き手◉鹿内武蔵/本文◉武田貴士

山中康司氏の近影
山中康司氏プロフィール

やまなか やすじ。1959年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。1982年バンク・オブ・アメリカ入行、1989年バイスプレジデント、1993年プロプライエタリー・マネージャー。1997年日興証券入社、1999年日興シティ信託銀行為替資金部次長。2002年アセンダント社設立・取締役。【著書】テクニカル指標の読み方・使い方(日本実業出版社)

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相場観とはトレードで食べていけること

─ずばり、山中さんが思う相場観とは?

 経験値だと思います。人によって必要な経験値を得られる時間は違いますが、私の場合は2年くらいかかりましたね。

─その2年というのは、銀行に入られてからですか?

 銀行に入って、実際に自分でポジションを取り始めてからですね。2年経ったときに何を思ったのかというと、銀行にはいろいろな人がいますが、私の場合はディーラーとして配属されて、これで食っていけるなと思えた、ということですかね。

 個人投資家に置き換えると、兼業でも専業でも「トレードで食べていける」と思えることが、十分な経験値を得られたことを意味するのではないでしょうか。相場観といっても外れては意味がないですから、正しい相場観を持つことですね。

─やはり継続が一番大切、ということですか?

 何年かやってみて結果が出ないときに、もう一度学び直して再スタートするのも手ですが、誰しも得手不得手があるので、苦手なものをいつまでも続けるのもどうかと思います。

 普通の人なら、相場で勝っていける人は10人に1人くらいで、残りの9人は仕事にしない方が良いかもしれません。半分は勝って半分は負けると思いますが、その中で食べていけるのは10人に1人くらいではないでしょうか。

─よく聞く話ですが、やはりそうなんですね。

 相場観を得るには経験値といいましたが、世の中には1万人に1人くらい天才がいるんです。その天才にとっては1日で全てが分かってしまうかもしれませんが、にぶい人は5年やっても10年やってもダメかもしれません。

 テクニカルとかファンダメンタルズも含めて、天才はチャートをパッと見て売りじゃないか買いじゃないかというのが1日で分かります。このチャートはこういうときに動くんじゃないかと思っているうちに全てを理解してしまうんです。

 例えばサッカーやバスケなどのスポーツでも、ボールを持った瞬間に他の人とは全然レベルが違う、という天才的な人がいますよね。努力の結果そうなった人と、最初から天才という人がいますが、トレードでも同じかもしれません。

 天才は我々凡人からは想像がつきませんが、普通の人の場合はいろいろな経験をして知識を吸収し、トレーディングのテクニックを磨いて、チャートの見方を身につけていくうちに自分なりの相場観が生まれます。

 私がディーリングルームでトレーダーをしていたときも、そこから出ていく人の方が残る人よりも多かったです。自分に向いている、向いてないというのがどこかの段階で分かります。1年から2年くらいで「自分は大丈夫だ」という人も出てくるし、そうでない人もいます。

 私の当時の部下の中でも、いまだにメガバンクや金融機関でディーラーを続けている人もいます。彼らは自分なりに経験値を積んで、自分なりの相場観で死ぬまで食っていけると思えた人たちではないでしょうか。しかし、今でもディーリングに携わっているのはわずか3人だけです。それ以外の人は違う職業や分野に行きました。

相場観を構成する三つの要素とは

─ありがとうございます。次に、相場観において重要なテクニカル分析とファンダメンタルズ分析について、山中さんなりの定義をうかがいたいです。

 テクニカルとファンダメンタルズは明確に定義できます。テクニカルは基本的に値動きだけを見て、過去の値動きから将来の値動きを判断するという分析手法です。例えば、ドル円は昨年の秋に150円台の高値をつけて大きく下げましたが、今はどういう状況なのかを大局的に判断するようなイメージです。

 ファンダメンタルズは幅が広いですが、テクニカル以外の全てかもしれません。金利の分析、コモディティなどの幅広い市場、金融論や経済学も含めて今の立ち位置がどうなのか考えて、分析していくことなどが含まれます。最近の分かりやすい例でいえば、各国の金利の動きを考えて、その金利差から為替市場を分析していくようなイメージですね。

 相場観とは最終的に経験値といいましたが、テクニカルやファンダメンタルズで身につけた知識が経験値として相場観に反映されるので、相場観にはそうした分析によって得られた知識も入っているし、実際にトレードすることでリスク管理の重要性などが分かっているかどうかも含まれます。

 私も最初は平気でナンピンしていましたが、最終的にはしなくなりました。儲かっていても損していても損切りのリミットというのは銀行や個人としての基準があって、さすがに有り金全てを失うまでやるというのは馬鹿げていますから、どこかで利食いや損切りする必要があります。

 そうしたことは、取引の実体験の中から身についてきます。それら全てが一体になったものが相場観です。テクニカル、ファンダメンタルズ、リスク管理の三つを形作ることができた人なら、その人なりの相場観が形成されたといえます。

─いろいろな相場観があるということですね。

 そうですね。結局相場観というのは相場に勝つための見方という意味ですから、勝つためにどうすれば良いのかが自分なりに見えているかどうか。スイングとスキャルピングではマーケットの見方は全然違いますし、スキャルピングの場合はファンダメンタルズはあまり重要ではないですよね。それぞれが取引のスタイルに応じて経験値を積み上げて、勝つことができるようになれば「相場観がある」といえます。

インジケーターなしでも値動きの分析はできる

─以前のインタビューで、「インジケーターなしでも分析はできるけど、人に教える際に分かりやすいからインジケーターを使っている」という言葉が印象的でした。これはつまり、ご自分なりの相場観が既に醸成されているということですか。

 正直なところ、ドル円だったら負ける気がしないんです。トレンドが出たときに買いなんじゃないか、そろそろ買うのはまずいんじゃないかというのが、チャートやさまざまな人の発言から「気配」のように感じられます。

 5月当時、ドル円は145円より上には行かないんじゃないかといいました。これは思いつきでいったのではなくて、昨年の介入が出たのが145円台だったこと、他のチャートとか現在の相場環境とかいろいろなことを考え、中期的にはこうなるのではないかというのを自分なりに日々組み立てた上での発言でした。チャートだけの分析とは全く別世界の話で、半分は自分の経験値からくるものなので、言葉では説明しにくいです。

 分かりやすくいえば、過去の高値や安値を抜けてくる動きには気をつけます。ただそれだけでは足りなくて、何か自分の経験値をうまく表してくれるようなテクニカル指標はないだろうかと思ったのが、テクニカルの研究を始めたきっかけでした。私が現役のときは移動平均線とRSIくらいしか使っていなかったので。

 結局答えはないんですが、いろいろなテクニカルを使って、このテクニカルのこの部分は面白いなとか、この部分は他で使えるかもしれない、ということを意識しながら、メジャーなテクニカルの見方を覚えれば、その人にとっての将来的な相場観を組み立てていく中で役に立つ可能性が高いと思います。テクニカルは当たるにしても外れるにしても、今すぐ答えが分かります。初心者にも理解しやすいですし、とっつきやすいです。

 その一方で、ファンダメンタルズは難しくて教えるのも大変です。今であれば金利差を見てくださいといえますが、その時々でテーマが違ってくるのが難点です。ファンダメンタルズには大きな枠組みはありますが、その大きな枠組みで相場が動くのはあくまでも長い目で見たときの話であって、実際の取引スパンでいうとファンダメンタルズは非常に難しいです。

 私はテクニカルしか興味がないように思われがちですが、ファンダメンタルズも見るには見ます。ただ、あまり重視はしていません。1時間足で高値や安値を抜けたかとか、チャートの形がどうなのかという職人芸的な部分をより重視しています。

精神的な余裕が収益を生む

─山中さんが銀行をやめて個人投資家になったときに、勝てるまでにしばらく時間がかかったと聞きましたが、それも今のお話と関係がありますか?

 銀行のような金融機関で取引するのと、個人で取引するのでは動かせる金額が違います。また、銀行にいるときは大口の投資家やヘッジファンドがどう動いているのかが見えますが、個人投資家になってからは何も見えません。そこは大きな違いです。

 瞬間的な動きでいえば金融機関にかなうわけはないので、多少情報量が少なくても影響を受けにくい取引スタイルに変えざるを得ません。最終的には取引スパンは長めになりました。常に値動きを監視する必要はなくて、瞬間ごとの数十銭のブレを気にしないスタイルです。実際、それにフィットさせるのに1年かかりました。15年やってた人が1年かかったのかと思われるかもしれませんが、私は経験値を積むのにそのくらいの時間が必要でした。個人投資家に転向した最初の1年は負けましたね。

─はぁ~。それは重要な話ですね。

 個人投資家でも、FXから株、スイングからデイトレのように、取引のスタイルを変えると最初は損する可能性もあるでしょう。センスのいい人はすぐに勝つかもしれませんが、僕は自分のことを天才でもなければ全く向いていないわけでもないと思っているので、それなりに時間が必要かなと感じます。

 その際、重要なのは精神的な余裕です。私が独立してやっていこうと思ったときは、最悪10年間収入がゼロでもやっていけるだけの蓄えはあったので、精神的には余裕がありました。1年目はマイナス、翌年ゼロでも、3年目からプラスならいいじゃないかとのんびり構えていたので。

 自分に余裕がない状態でやっていくと精神的に負けちゃいますからね。精神的な余裕があれば、多くの人は経験値が蓄積されて、いずれ収益となって返ってくるのではないでしょうか。

日々の相場との向き合い方

─相場観を養うのに効果的な情報収集やトレーニングはありますか? 山中さんはどういう情報を得て、どういう判断を日々されていますか?

 相場を学んで経験することです。ファンダメンタルズを学ぶのにお勧めなのは、NHK出版の『投資家のための金融マーケット予測ハンドブック』です。教科書みたいな本でつまらないんですが、日本や米国の金融政策について全て書いてあります。そうした本から知識を得るのが一番です。

 それと、エコノミストが書いたレポートを読むのも悪くありません。新聞を読んでも相場観やファンダメンタルズを身につけるのは難しいです。『経済レポート』というサイトでは主要通貨からマイナー通貨まで各社のいろいろなエコノミストの記事を読めます。例えば、SMBCの人の見方が自分に向いていると思えば、それを読み続けてこの人がどう考えているか確認すると良いですね。理論を実際の市場に当てはめてどう考えるのかを知るためにレポートを読みます。

─現在も参考にしているレポートなどはありますか?

 今はもうレポートは一切読みません。自分なりに相場観が身についたし、ファンダメンタルズやテクニカルの見方もそれなりに身についているので、他人の意見に流されたくないんです。

 数字や事実しか見ない、つまりニュースや要人発言ですね。例えば、上田総裁が「2%のインフレ率達成はまだ先」と発言し、それによってYCC(イールドカーブコントロール)の修正が遠のいて円売り、というのは非常に理にかなった判断です。しかし、それを自分で組み立てるのと、ニュースに書いてあるからそう思うのでは全然違うことです。

 それを自ら組み立てるためにはファンダメンタルズの知識が必要ですが、YCCの修正があれば円売りから円買いになるとか、そうしたことが分かるなら事実だけで十分だと思います。人の意見を聞くと迷いが生じてしまうので。

 ただし、初心者は最初は人の真似をして意見を聞くべきです。これを身につけるには1年はかかりますが、それができるようになればしめたものです。

 テクニカルに関しても、基本はまず本を読むことです。一番メジャーなものは『マーケットのテクニカル分析』で、これは世界で最も読まれた本ではないでしょうか。今はパンローリングから復刻版として出ています。最初に読む本としては最適です。

 今はネットもあるし、翻訳ツールも優秀なので、なるべく海外の著名なサイトに目を向けるのも良いですね。日本語話者は1億3千万人くらいですが、英語を使っている人は25億人くらいいるので数が圧倒的に違うし、情報量も20倍。英語の情報に触れることは相場以外においても非常に重要です。

 次にチャートを週足、日足、1時間足といったいろいろな時間足や通貨ペアで500枚くらい印刷してほしいです。そこに定規で線を引いたり、次にどう動くかを自分なりに考えるうちに、教科書には書いてないことも見えてきます。もちろんダマシもありますが、とにかくいろいろなものを勉強することが大切です。

 『Runcha』という、過去20年の相場データを遡ってトレードの練習ができるアプリもあって、成績の比較もできるので、そういうものでトレーニングして自分が得たチャートの見方を実戦に生かすのも良いでしょう。

 テクニカルにしてもファンダメンタルズにしても、人の意見に耳を傾けなくてもチャートを使って売買できれば良いです。こうした練習を1年くらいやるのも一つの手だと思います。いきなりトレードして損してしまうよりは、ある程度準備をして望めば五分五分よりは勝てるのではないでしょうか。

この夏の相場はずばりどう動く?

─価格、金利など、さまざまな面から現在の相場をどう見ますか? 7月19日時点での例を教えてください。

 米国は7月の利上げが確実視されていますが、年内さらにもう一度利上げをするかどうか微妙な状況です。ECBも7月に利上げを行い、9月にも利上げを行う可能性が高いといわれています。

 日本はYCCの修正が入るという話はありますが、植田総裁の就任後にそうした発言がなくなってしまいました。7月にいきなりYCCの調整まで行くのは難しそうですが、議論は始めると思います。今年の後半もしくは来年の前半のどこかのタイミングで市場環境をみながら調整していくというイメージです。政策金利が変わらないという点では変化はないでしょう。

 絶対的な金利差という点では日米、日欧で+0.25%拡大し、日々のスワップ金利はさらに大きくなるので、こうした環境では外貨を売るのは難しいです。日本だけが金融緩和を維持していて、他の国は引き締めを継続していることを考えると、中長期的な大きな流れが円売りというのは変わりません。

 ただし、昨年の145円台での介入や円安牽制発言を考えると、145円というのは当局が考えている大きな節目です。8月までに145円を大きく超えて円安には動きづらいです。では135円、130円に行くかというと絶対的な金利差があるのでこれも難しい。

 米国は年内7月の利上げが最後になるのか、欧州はどうか、YCCの修正がいつになるのかが見えた段階で方向性が出てきそうです。それまでは基本的に上限が145円、下限は135円くらいと考えています。

 現在、円売りはかなり膨らんでいて、シカゴの円売りも5年ぶりの水準です。当時はその後、6~7円ほど円高に動いています。今回も既にそうなので、上も下も動いて目先は横方向と考えて良さそうです。

 何か大きく方向が変わるとすれば、米国は利上げを打ち止めて、日本がYCCを修正したときです。これは今年の後半に起こる可能性が十分あるので、そうなれば方向性としては125円を目指す動きになるのではないでしょうか。

 円売りに関しては、当局は145円を気にしているので、スイス円やユーロ円、ポンド円といったクロス円で、円売りが優勢な展開が続くのではないかと考えます。年初来の動きではポンドは非常に強く、ユーロもまあまあ強い。ドルは年初からあまり変わっていなくて、円だけが一人負けの状況です。それに対する調整が最近入ったに過ぎず、大局的な円の一人負けの状況は変わらないと思いますが、変わるときは大きく動く可能性があり、それは10~12月あたりではないでしょうか。

インタビュー日◎2023年7月19日

山中康司 相場観の正体

山中康司 相場観の正体

①相場観とは、トレードで食べていけること
②相場観を得るには、経験の蓄積が何より重要
③テクニカル分析とは、値動きだけで将来の値動きを判断すること
④ファンダメンタルズ分析は幅が広く、テクニカル以外の全てが該当するともいえる
⑤実際にトレードすることでリスク管理の重要性も分かり、これもまた相場観の一部となる
⑥勝つためにどうすべきか見えていることが相場観で、手法や取引スタイルによって相場観は大きく異なる
⑦精神的な余裕がないとトレードを続けられず、経験の蓄積が難しくなる
⑧定番の書籍を読むのはとても有効
⑨最初は誰かの真似をして意見を聞くべき

ABOUT ME
山中康司
1959年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。1982年バンク・オブ・アメリカ入行、1989年バイスプレジデント、1993年プロプライエタリー・マネージャー。1997年日興証券入社、1999年日興シティ信託銀行為替資金部次長。2002年アセンダント社設立・取締役。【著書】テクニカル指標の読み方・使い方(日本実業出版社)
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