Kouさんにボリンジャーバンドとダウ理論を核とした初心者向けのトレード手法を教えていただきました。
ボリンジャーバンドで相場の流れを読み、ダウ理論を基に引いた水平線をブレイクするところを狙う順張りトレードです。難しいことはしておらず、シンプルでありながら値幅を期待できるトレード手法なので実践しやすいのがポイント。
自身のチャートでもKouさん流のボリンジャーバンドとダウ理論を駆使し、相場から利益を獲得していきましょう。
ベーシストFX手法研究家&物理学者 Kou氏プロフィール
物理士トレーダー。トレード開始当初は期待通りの成績を挙げられなかったものの、学者にふさわしく確率論や統計学を駆使して検証と実践を繰り返した結果、2020年に10万円を7週間で1000万円以上に増やす。
聞き手・本文◉北原拓実
BBの傾きで方向性を判断し水平線のブレイクアウトを狙う
─まず、初心者が使いやすいテクニカル指標は何だと思われますか?
Kou ボリンジャーバンドが使いやすいかなと思います。私もボリンジャーバンドを使用していて、期間は20、バンドは±1σと±2σを表示させています。最初は線が多く見にくいかもしれませんが、移動平均線+ボラティリティが分かるので慣れると相場環境を見やすくおすすめです。
あとは水平線を使っています。ダウ理論を参考に押し安値、戻り高値に引いて、その水平線を抜けたところを狙う短期的なブレイクアウトのトレードをしています。
─時間足は何を見ていますか?
Kou 主に日足、4時間足、1時間足、15分足の4種類のマルチタイムフレーム分析をやっています。週初めに週足もチェックしていますが、基本は日足から見ていく感じです。
─ボリンジャーバンドを使ったトレード手法を詳しく教えてください。
Kou ボリンジャーバンドは移動平均線と同じなので、ミドルラインに傾きがあるかどうかで方向性を見ています。日足や4時間できちんと傾きが出ているときにトレードを考えていくのが、環境認識としては分かりやすいかなと思います。
例えば、ボリンジャーバンドのミドルラインの20MAが上に向いていたら上昇傾向と判断して、ロングを考えていきます。反対に、ミドルラインが下を向いていたら下降傾向と判断し、ショートを考えていく形です。
─日足から15分足までの各時間足が全て上を向いているなら買いを狙っていくという考えでしょうか?
Kou 全部の足のボリンジャーバンドが上を向いている場合だと移動平均線でいうパーフェクトオーダー状態で、トレンドがものすごく強い状態です。でもその状況だとエントリー後は伸びにくく、損切り幅も広くなりやすいです。
例えば、日足~1時間足のボリンジャーバンドが上を向いている上昇トレンドだとしたら、15分足のボリンジャーバンドがスクイーズして横ばいになってから、上にブレイクし始めるところなどを狙います。そうすると、レンジの反対側に損切りを置けるので、損切り幅も狭くなりやすいし、もみ合うことで次の伸び代も出てくるので、リスクリワードが悪くなりにくいメリットがあります。
具体的なエントリーポイントはダウ理論を基に、15分足の押し安値、戻り高値に水平線を引き、上位足の方向に向かって水平線をブレイクしたところでエントリーをします。日足と4時間足で方向を見て、あとは1時間足と15分足でどの値幅を狙うかを決めていく感じです。
─初心者は順張りと逆張りのどちらがトレードしやすいと思われますか?
Kou 圧倒的に順張りだと思います。逆張りだと含み益になるまでの保有時間が長くなりやすいので、リスクが高まります。のんびりとポジションを保有するのであれば、順張りのほうがやりやすいと思います。
─初心者は逆張りを仕掛ける人が多いと言われていますが、そのあたりはどう考えていますか?
Kou 例えば、長期足で上昇トレンドが継続している中で、下位足がレンジや下落しているときにロングエントリーをするような、長期足の方向に沿った逆張りを狙うのは良いと思います。
一方で、強い上昇トレンドが出ているときに、値ごろ感やそろそろ下がるだろうみたいな形の逆張りをするのは危険です。
─根拠はないけど願望でエントリーしてしまうのはよくあります。
Kou 予想を外してもしっかりと損切りができるのであればまだ良いですが、「下がってほしい」「上がってほしい」みたいな気持ちが先行してしまうと、逆行しても「ここから戻すはずだ」という願望が大きくなり、損切りができずに傷口が大きくなりやすいです。
順張りの注意点としては、相場はずっと一方向に進むことはほとんどなく、調整が起きることがあります。トレンドフォロー中に調整が起きて損失を出してしまうのは仕方ないので、リスクを減らすためにも損切りを設定しておくことは大切です。
─利益確定と損切りはどうやって設定されていますか?
Kou 損切りはエントリーしたレンジの反対側に設定します。買いエントリーなら一つ前の安値、売りエントリーなら一つ前の高値に設定するという考えです。
利益確定は値幅で目標を決めていきます。値幅観測論のN計算を参考に、前回の上昇幅や下落幅と同じくらいを目標にするという形です。エントリーから反対の水平線に到達したら損切り、前回の上昇幅や下落幅と同じくらいの値幅に達したら利益確定をします。
─利益確定はN波動で見ていくということですね。エントリーから利益確定までの値幅が広めですが、伸びなさそうであれば途中で決済はしますか?
Kou ほぼ到達で決済することもあれば、トレールすることもあります。基本は設定したらほったらかしです。ただし、予想通りにエントリーした方向に動いていく中で、トレンドが反転しそうなサインが出たら逃げておくほうがメンタル的には気楽かと思います。
狙うトレンドの大きさにもよりますが、
①上昇を続けている途中で三尊など下へ向かうチャートパターンの成立
②下位足のダウが転換する
③下位足のインジケーターが逆を向く
など下位足の方向性を意識してみてください。
─エントリーよりも利益確定をするタイミングを決めるほうが難しいとよく言われています。
Kou 利益確定が難しいという人は多いです。何かしらの目安があれば分かりやすいのかなとは思いますが、トレンドの端から端までを取るのは基本的に無理なので、割り切るしかありません。ただ、トレードは割り切るのがすごく難しいですよね。
決済後にそのまま伸びていく場合もあり、そうなると次のトレードで「もっと粘ってみよう」と決済を我慢していたら経済指標発表や為替介入みたいなイベントが発生して逆行してしまい、一気に利益がなくなって後悔してしまうことはありがちです。
そして今度は「粘らなければ良かった」となり、利益がなくなるのが怖くてチキン利食いを続けてしまうようになってしまいます。
トレードで完璧を目指すのは無理なので、そこそこで割り切るしかないと思います。ただ、人間なので「もったいなかったな」とどうしても思ってしまうんですよね。人間のメンタルが関わってくるので、すごく難しいです。
勝ち負けだけにこだわらずリスクを減らすことが大切
─テクニカル分析をする上で、大切な心構えや準備は何だと思われますか?
Kou 心構えとしてはやはり完璧を求めすぎないということですね。頭から尻尾まで全て取ろうとするのではなく、「そこそこでいいや」という感覚を知っておくことが大切だと思います。
あとは、使っているロジックがちゃんとプラスになる可能性があるのかどうかを、過去の相場などで検証してしっかりと見ていくのも大事だと思います。
─手法を検証するのは重要ですか?
Kou 検証を軽視している人も多いですが、今のトレード方法が本当に優位性はあるのかどうかを見ていくために、検証して確かめるのは大切です。
例えば、何らかの商品を売るにしても、「良い製品ができたからさっそく売ろう」ではなく、最初は試作品やサンプルを作って試験などを繰り返し、実際に販売されるまでに何回も改良されていきます。FXもそれと同じで、今からやろうとしている手法が、本当に使えるところまで落とし込むことがすごく大事かなと思います。
─まずは手法を検証して、リアルトレードで使えるところまで改良していくことが重要なのですね。
Kou 検証の注意点としては、リアルトレードとの時間感覚のズレみたいなものがあります。
過去データでの検証だと、エントリーした後は利確と損切りのポイントがすぐに分かると思いますが、リアルトレードだとエントリーしてから利確や損切りまでの時間を待たないといけないので、日々の含み益や含み損にメンタルが左右され、耐えられなくなってしまう場合があります。
メンタルとの擦り合わせができていないと、検証して手法や取引ルールがある程度の優位性があると分かっても、いざリアルトレードで実践しようとしたら、損失への不安や恐れが邪魔をして思ったようにできなかったということになりがちです。
─実際に自分のお金を使ってトレードするので、メンタル面に左右されますよね。
Kou リスクの部分についてはしっかりと把握する必要があります。いきなりリアルトレードをする場合は、最小ロットで始めて、実際のお金を動かす感覚を覚えるのなら良いと思います。
トレードを始めたばかりなのに、早く大きく儲けたいからと大きなロットを張って勝負するのは、大きなリスクです。どこにリスクがあるのかをちゃんと分かっておくのが事前の準備なのかなと思います。
トレードの目的はお金を増やすことですが、お金を減らさない努力をするのも増やすことと同じぐらい大事です。減らした分を取り戻すのはかなり難しいので、資金を減らさないためにも、リスクを限りなく減らしていくことがトレードにおいて大切ということです。
─リスクの部分をしっかりと理解しておくことは重要です。初心者がFXで勝てない原因は何だと思われますか?
Kou コツコツドカンは、損切りができないのとロットを大きくしすぎることが原因とよく聞きます。そのきっかけは、人間の感情の部分ですね。FXは少額からものすごく増えるみたいなイメージが染みついていますが、実際は簡単には稼げません。理想と現実の差が大きいと思います。
あとは、トレードはお金を増やすことが正解なのに、「勝った」「負けた」にフォーカスしすぎることはよくあります。勝率が良くてもリスクリワードが悪かったらお金は増えないですし、逆に勝率が低くてもリスクリワードが良ければお金は増えます。勝ち負けよりも利益をしっかりと取ることを重視したほうが良いと思います。
─コツコツドカンはリスクリワードの設定ができていないことが要因なのかもしれないと。
Kou 例えば、ずっと上昇トレンドで、とりあえずロングしていれば利益を出せる相場であっても、いつかは上昇トレンドが終了します。もし、トレンドが崩壊するところでそれまでの利益が無くなるような大きな損失を出してしまっても、それまでの上昇トレンドでずっと勝っていれば勝率90%のような高勝率になります。
たとえ勝率が90%でも、最終的にお金が手元に残らないということになるので、勝率とリスクリワードのバランスが重要です。勝率だけでも駄目だし、リスクリワードだけでも駄目ですね。
いろいろと試してみながら自分に合う方法を見つけよう
─ここまではトレード手法についてお聞きしましたが、初心者におすすめの通貨ペアは何だと思いますか。
Kou 初心者におすすめなのはユーロドルとドル円です。為替市場ではユーロとドルの取引量が圧倒的に多いので流動性が高く、レートがいきなり飛ぶみたいなことになりにくいです。多くの人が取引しているだけにテクニカルも効きやすいと思うので、分かりやすい通貨だからこそ初心者が取引にするのにおすすめです。
─初心者でもマイナー通貨を取引してみたい人はいると思いますが、あまりおすすめはしない感じでしょうか?
Kou マイナー通貨はスプレッドが広がりやすいというデメリットがあり、スプレッド負けになりがちです。
例えば、ドル円で勝てているロジックでも、マイナー通貨だとスプレッド分で負けてしまうみたいなことが起きやすいです。初心者はあまりスプレッドを気にしない人もいますが、意外とスプレッドは馬鹿にできないです。マイナー通貨はリスクを分かった上で取引するのであれば良いと思いますが、基本的にはメジャーなユーロドルやドル円がおすすめです。
─メジャー通貨ペアのほうが流動性やスプレッド面で取引しやすいということですね。最後にこれからFXを始める人や初心者に向けて、一言お願いします。
Kou トレードでお金を増やす方法はいろいろあります。コツコツと取引を続けて利益を積み重ねていく方法があれば、ハイレバレッジで一発を狙う方法もあり、人によって考え方もさまざまです。正解はないので、いろいろやってみて経験を積むのがすごく大事だと思います。
例えば、スイングトレードだとトレンドに乗りやすくて勝ちやすいという人もいれば、逆に含み損が怖くてポジションを長期間持てない人もいます。自分に合っている方法や自分が続けやすい方法を見つけることがトレードで利益を出していくには何より大切です。
ただし、どんなやり方にしても、勝率とリスクリワードのバランスと資金管理についてはしっかりと理解しておきましょう。あとは、自分が行っているトレードを言語化できるようになりましょう。言語化できる=自分がやっているトレードを本当に理解していることなので大切です。
─確かに性格的な部分で得意な手法や苦手な手法はありますよね。
Kou エントリーの回数もある程度ないとイライラして精神衛生上よくないという人もいるので、自分の性格を把握するのも重要です。それは実際にトレードをやってみないと気がつかない部分だと思います。
だからこそ、スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、少額でハイレバ運用、多額資金でローレバ運用など、いろいろと試してみて、自分が長期的に続けられる方法を探していくことですね。そして、一度決めたら継続して経験を積んでいくことが、トレードを上達するために一番大切です。
インタビュー日◎2024年7月23日
ポイント①|ボリンジャーバンドの傾きの方向によって相場が上昇か下落か横ばいかを判断する
ボリンジャーバンドの中心であるミドルラインは移動平均線なので、この傾きで相場が上昇傾向か、下落傾向かを判断していきます。ミドルラインが上に向いていたら上昇傾向と判断してロングを考え、反対に下を向いていたら下落傾向と判断してショートを考えます。Kouさんはボリンジャーバンドの設定は20期間、±2σまで表示させています。
ポイント②|ダウ理論を基に高値・安値に水平線を引き、水平線をブレイクするタイミングを狙う
直近の高値や安値、節目の価格などは多くの人に意識されやすく、その価格帯をブレイクしたら価格が動きやすくなる特徴があります。意識されやすい価格帯に水平線を引くと、トレンドの方向が視覚的に分かりやすいのでおすすめです。Kouさんはダウ理論を基に、押し安値や戻り高値、直近の高値・安値などに水平線を引き、その水平線をブレイクアウトすることによって発生する大きな値動きを狙います。
利益確定|値幅観測論のN計算を参考にして、過去の上昇・下落と同じ値幅を狙う
過去の上昇・下落の値幅を参考にし、同じくらいの値幅に達したら利益確定。これは値幅観測論という考え方に基づいており、その中のN計算を使って利確ポイントを決定します。過去の上昇・下落の値幅と同じくらいの利益獲得を想定しておくことで、リスクリワードのバランスをある程度予想できるというメリットもあります。
損切り|エントリーポイントから逆行し、反対の高値・安値のブレイクで損切り
損切りはエントリーポイントの反対側に引いた水平線に設定します。水平線を引く基準は1つ前の高値もしくは安値です。これは反対の水平線を上抜くと、ダウ理論におけるトレンドの定義である「上昇トレンドは高値と安値を切り上げる、下落トレンドは高値と安値を切り下げる」が崩れ、トレンド転換のサインになるため。こういった場合は、損切りをして仕切り直します。
実戦例|日足と4時間足で上昇トレンドと判断し15分足で高値ブレイクのタイミングを狙う
日足と4時間足はボリンジャーバンドのミドルラインが上に傾いているので上昇傾向と判断し、ロングのエントリーを考えていきます。一方で、1時間足はローソク足が横ばいに推移しています。上位足では上昇トレンドが継続しているため、直近の高値をブレイクしたら上方向に勢いが出やすいと予想し、15分足でエントリータイミングを考えていきます。
15分足で直近高値と1つ前の安値に水平線を引き、直近高値をブレイクしたタイミングで買いエントリーをします。損切りラインはエントリーポイントから反対側にある1つ前の安値に引かれた水平線に設定します。上の事例ではエントリー後は予想通りに上昇を続けたので、以前の上昇幅を参考にし、同じくらいの値幅まで上昇したところで利益確定をします。
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