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辛口対談〜こんな時代だからこそ、次世代に伝えたいこと〜|細田哲生×村居孝美【後編】

辛口対談〜こんな時代だからこそ、次世代に伝えたいこと〜|細田哲生×村居孝美【後編】

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細田哲生氏プロフィール
細田哲生(ほそだ てっせい)氏プロフィール

一目均衡表の確立者「一目山人」の孫。一目山人の意思を引き継ぎ、正しい一目均衡表の使い方を普及することに従事。経済変動総研主催の、「一目均衡表倶楽部」「メールマガジン株式レター」にて一目均衡表による相場解説、罫線講座を執筆中。【DVD】 一目均衡表入門(パンローリング)

村居孝美氏プロフィール
村居孝美(むらい たかよし)氏プロフィール

伝説的トレーダー集団タートルズ、世界的投資家ラリーウイリアムズ氏他、トップトレーダーに直接取材を敢行し、その体系を再現すべく、システムトレードソフト「KENSHIRO-225」「ロジツク」をリリース。市場独自のアノマリーと値動きの規則性で作り上げた複数の売買戦略にて、リスクを軽減し高リターンの実績を上げている、トレード歴20年のシステムトレーダー。【著書】トレードの成功哲学 (パンローリング)

聞き手◉鹿内武蔵/本文◉荻田里佳

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変数が変われば結果も変わる。FXにも株にも楽な道は無い

細田 2024年になって4万円をつけた後に下がり続けた日経225も、再び上昇すると景色が変わりましたね。下落が始まった4日間ぐらいは、気持ちが重くなっていた投資家も多いと思いますが、持ち直したところで高値保ち合いがしばらく続いて、良い形がチャート上でも出来上がりました。このまま上昇を続けても不思議ではありません。

村居 4万円をつけた後の下落を見たとき、もう一段下げる可能性は十分ありました。それを考慮するのも大事ですね。

細田 今回は戻りが弱かったのですが、2万6000円後半~2万7000円まで価格が下がってもおかしくありませんでしたね。仮にそこまで下がった場合に予想できることとしては、再び高値を超えるには長い時間を要するということ。今回は下げる可能性を考えましたが、結局は相場が上昇しました。下落シナリオから上昇シナリオに方向転換しましたが、トレードをやりながら、しょっちゅうシナリオは変わっていきます。だから「最初言っていたことと違うじゃないか」と思うかもしれませんが、相場が変われば認識が変わって当たり前ですよね。

鹿内 つまり、変数が変われば計算結果も変わるということですよね。

村居 そうだと思います。ところが、僕もブログで「ポートフォリオを変えました」と書くと読者から怒られます。「システムトレードは同じやり方を続けるのが魅力であって、頻繁にシナリオが変わっていたらシストレの意味がない」と言われるんです。

鹿内 なぜ、そういう人は年単位で使えるシナリオやポートフォリオがあると思ってしまうのでしょうか。相場と向き合っていればコロコロ方向感が変わるのは分かるはずだと思いますが、シストレにしても設定を変更しなくても良いものを探し続けてしまう人はいますよね。

村居 広告宣伝を見て、楽に稼げると勘違いしてしまう人がいるのかもしれません。また、期間は限られるものの、一定方向にしか相場が動かず儲けられた経験をしたり、予想通りだったりすると、ドーパミンが働いて、その後も忘れられない経験として記憶してしまうのだと思います。人間の脳は都合のいいことだけ残すため、相場が変わっても同じことをやり続けてしまう慣性の法則が働いている可能性も……。

細田 やはり単純に、考えたくない人もいますよ。

村居 そうですね、考えないことは楽ですから。しかし、それを考えなければ、失敗すると最後は人のせいにして文句を言うことになります。

細田 僕は一目均衡表という独特なテクニカルを教える機会があるんですが、よく「難しい」と言われるんです。そのため、一目均衡表の簡単な使い方が好まれます。ところが、ふたを開けてみると、簡単な使い方で教わった人は一目均衡表を使いこなせていません。一目均衡表の先行スパンの雲を抜けたら「青空が広がっていました」と勘違いする人がいますが、それで相場が予想通り上手くいくことなんてないのです。

村居 要は簡単なマニュアルが欲しいんでしょうね。マニュアル人間になって、そのマニュアル通りで勝てるんだったら、みんな儲かっているはずですが、負けている人も多いのが現状です。日本全体がマニュアル化しているので仕方がないことなのかもしれませんが……。

鹿内 分かりやすい情報でないと頭に入ってこないんですよね。ネットも本も動画も、あまりにも情報が多すぎて、なるべく短い説明でなければ目に触れない時代なのだと思います。

村居 ネットで検索したら欲しい情報が得られる時代になり、答えをネットに求める人が増えたと感じます。自分で考える前に答えを求め、自分が欲しい情報をネットで探す。昔は自分で答えを出すために試行錯誤していましたが、今はその過程が抜けているので、大事なことが抜けているなと思います。

細田 誰かに教えてもらったのをそのまま鵜呑みにして株を買ったとしたら、その人が言ったことが間違いだったのか、何か他に問題があるのか、自分で考えないのは論外ですが、実際に考えない人がいるのが実情です。自分で考えてやっていると、いずれ自分なりに確信を持って分かることはあります。その練度が足りない場合は株で負けます。

村居 自分で考えて試行錯誤し、自分なりの答えを出す。これをいち早く勉強すべきですよね。

細田 それが一番大事。この過程を飛ばす人は勉強したことがないんじゃないかと思います。

村居 なるほど(笑)。学校の勉強も覚えて問題を解くだけというやり方ですから、仕方がないのかもしれません。

鹿内 それは昔からですよね。詰め込み教育を日本はずっとやってきたので。試行錯誤をしない人が増えたのはネットの情報量が多いからだと僕は思いますけどね。

村居 結局、自分で考える思考を持っている人が、株の世界では天才肌と言われたり、成功したりするのだと思います。

鹿内 上手い人はなぜ上手にできるんですか?

村居 相場に対して柔軟に対応できるからだと思います。僕の場合、学びに来た人へこの話をすると「時間がないからお金を払って学びに来た」と近道を探す人が多いんですが、学ぶのではなく、それはマニュアルをもらいに来ただけだと思います。そのため、提供するものと本人が欲しがっているものに乖離があります。

 一方で怪しい講師は「株やFXで勝つためのマニュアルがあるよ」と言って人を集め、資料を渡します。そういうものに大金を払うと結局遠回りするだけだと思います。勝つためにはマニュアルのような表面的なことだけではなく、自分で深く掘り起こして、思考しなければなりません。これが学びであり、それ以外に上手くなるための近道はありません。

細田 上達が早い人は、教えたときに膨大な量のメモを取っているのもポイントですよね。自分なりに見つけた疑問点や、自分で失敗したことなどを書いて、勉強にかなりの時間を費やしています。何もやらずに上手くいく方法は結局ないと思うんです。村居さんだって、1日に何時間もチャートを見ているじゃないですか。

村居 そうですね。昔ブレイクアウト手法でトレードをしていたときも、朝早く起きて全ての監視銘柄をノートにチャートで書きました。

 それに加え、マーケットが始まるまでにいくつかのチャートパターンを書いて、研究に時間を費やし、その日の戦略を決めるんです。マーケットが終わった後も、その日の値動きを分析して、1日中株のことを考えていましたね。そうすると、少しずつ頭の中にチャートが描けるようになり、各銘柄の特徴や値動きが読めるようになったんですが、この域まで達するには時間が必要だと思います。

 上手くなるには量をこなさなければいけないのだと、身をもって経験しました。

細田 勉強量は絶対的に必要ですよね。それが足りていないにもかかわらず、一つの手法を試して駄目だったからとすぐにやめて、次の違う講師の下で違う似た手法を試す人がいます。それではいつまで経っても上手くならないのではないかなと感じますけどね。

村居 僕の場合はブレイクアウト手法が通用しなくなったときに「なんで?」の試行錯誤が始まりました。ブレイクアウト手法を取り入れた人が軒並み負けて文句を言っている様子を横目に、僕は負けた理由を分析したんです。マーケット全体を見た結果、そのときに見えたのは下がっていたということ。上昇で買いだとバイアスがかかっていたので、売りの視点がなかったのが問題でした。

 いくら上を目指そうと下がってしまう相場だったのは冷静に考えれば分かることでしたが、誰も思考しないので負けた理由も分かっていませんでした。答えをネットの中に求め、難しい理論を引っ張り出して納得したがる人もいて、僕は不思議でした。下がっている中で買ったら負けるのは当然で、理由はとてもシンプルなのに、なぜ難しくするのだろうか、なぜ自分で考えないんだろうかと。

 反対に、常に自分で考えて相場と向き合っていたら、マーケットが変化したときに空気感で方向が分かるようになるものです。値動きの怪しい雲行きなどは、自分で察知できなければなりませんが、トレーダーの中には一定数明確な答えを欲しがる人がいます。

 今後の値動きは横ばいなのか、上昇・下降トレンドが発生するのか、誰かに明言してほしい気持ちはひとまず捨てるべきです。自分で値動きを予想できる感覚を養うことが何より大事です。その訓練を重ねてほしいと思いますね。

あれもこれもと欲張らず、まずは一つの手法を極めよ

鹿内 トレード初心者の方へ「これだけはやめておけ」と思うことを教えてください。

細田 複数のことにいきなり取り組むのはやめた方が良いと思います。最初は一つの手法を極めることを目標にしてみてほしいですね。どの手法を試しても、上手くいくときと上手くいかないときが出てくるはずなので、そのときに情報や自分のスタイルを整理して、技術を身につけられるのが理想ですね。

 例えば、「高値更新で買い」という手法を徹底したら、高値更新をしても、状況によって、その後は高値更新が続かず負けてしまうことがあるとします。高値を更新できなかったのはなぜなのか、そこで考えるんです。すると、負けた原因が分かりますし、どの場面で「高値更新で買い」をしてはいけないのかが分かってきます。

 一つの手法・道具で自分の売買に繋げ、相場に気持ちの良いほど当てはまって利益が出る瞬間を体験してほしいです。そのために、自分が興味を持っている方法で試行錯誤を重ねてください。

鹿内 複数の道具を使っていると、失敗したときに何が原因だったか理由を特定できないですよね。

村居 ちなみに、僕は昔、移動平均線と水平線だけでトレードをやっていました。それぐらいシンプルにしなければ動きが見えないので、なぜ勝てたのか、なぜ負けたのかを分析できません。

細田 さらに、利食いのポイントが難しいって声も多いですよね。それは意識が違うのではないかと思うのですが、エントリーポイントさえ間違えなかったら損はしないと思うんです。難しいと思う人は欲が出すぎているのです。これに尽きます。エントリーポイントと出口戦略のどちらが大事かといえば、僕は前者だと思うので、まずはどこでエントリーするかを考え抜くことに時間を使った方が良いと思います。

鹿内 エントリーポイントが間違っていたらどうしようもないですからね。

村居 システムトレードも裁量も、エントリーポイントを間違ったらアウトです。要するに、戦略と相場を照らし合わせて試行錯誤をしていくことが、最もやらなければならないことだということですね。

 ところが、市販されているEAは戦略を隠しているので、戦略を勉強できないのが難点。そのため、EAから始めようと思っている人は相場観を養えず、EAの止め時が分からないので負けやすい可能性もあります。

 これを例えるなら、車ですね。運転の方法を全く知らない無免許の人が、自動運転の車に乗って何らかの要因で車を停めたくなったとします。しかし、運転の方法が分からなければブレーキの踏み方が分からない。こんな状況になるわけです。世の中が便利になりすぎて、使う側がついていけていないのかもしれませんね。

鹿内 車の自動運転やシステムトレードのEA自体は素晴らしいものですが、使う側が無免許、または相場観ゼロだとメリットが発揮されないので、もったいないですね。

細田 ネット普及前にチャートを手書きで書いていた人たちにとっては、当時それは、想像もしなかったことです。一方で、手描きでチャートを書きながら新たに勝てる場所などを発見することもありました。今の人からすると、チャートを手書きにするという発想が逆にないかもしれません。

 ところが、チャートを眺めるだけの人、チャートを手書きで書いて分析に時間を費やす人、どちらが相場に対する意識が高いかといえば後者だと思います。

村居 手書きでチャートを書くと、パソコン上で見るチャートと形が異なるんですよね。パソコンのチャートは形が縮み、値幅が圧縮されて見えるのですが、手描きだと圧縮されないので、同じ相場でも違う形が見えるようになります。これは、実際に手で書いてみないと分からないことですね。

細田 形も違いますし、感覚も全然違いますよね。劇的に流れが変わったことも分かるようになります。そのため、1回は書いてみることをおすすめしますけどね。面倒くさいでしょうが、折れ線グラフでも良いので、違う景色を眺めてみてください。

村居 僕が昔スクールをやっていたころは、方眼紙を買ってきて皆でやりました。すると「こんなに違う」と、生徒は感心していました。

細田 手書きの場合、自分だったらどこで売買するのか意識するはず。それをしないのはもったいないですね。

村居 世の中が便利になったがために、見えないといけない所が見えなくなってしまったのだと思います。

過去を振り返り重ねる検証。それこそ勝ちに繋がる道

鹿内 昔はすぐに開花しない人も、強引に指導されることも含めて根性でカバーしていたと思いますが、今はすぐにパワハラになってしまうから才能がある人しか成功できない時代に感じます。

 まさに、チャートを鉛筆で書くというのも根性がないとできないことですし、それを教えられてもやらない人が多いので負ける人が多いのかもしれませんね。

村居 普通の人が才能ある人の真似をしても駄目ですからね。

細田 正直、相場が良ければ勝てる時期というのはあるんですが、それが終わるとお金がなくなって終わる人も多いです。

村居 お金がなくなる前に戦略を立て直して、トレードをやめずに続けるのが一番大事だということに気づいてほしいですよね。

 システムトレードは「これさえ使えば儲かる」という売り出し文句が浸透していますが、戦略が分からないのであれば勝つのは難しい。システムトレードを使う人は、これをきちんと理解しておくべきだと思います。

鹿内 経験が浅い人がFXで勝つには何をするべきだと思いますか。

村居 過去を振り返って検証を重ねることだと思います。チャートを見ていくことで、僕らが経験したことと似たものを得られる可能性が高いです。しかし、これさえしない人が多いので、マーケットを見ても方向感をつかめないのだと思います。

細田 上昇相場・下落相場・レンジ相場、初心者がどんな相場でトレードを始めたのかで、それぞれ認識が違うはずです。無知の人は上昇相場で入った方がエントリーポイントのタイミングが分かりやすいので、最初は勝ちやすいと思います。

村居 FXでも投資でも最初に「勝つ」経験をしている人はやめにくい傾向にありますよね。逆に、負けから経験するとやめがちですね。

鹿内 株もFXもトータルで勝てれば良いということを忘れてはいけませんね。それでは最後に読者へメッセージをお願いします。

村居 まずはやるべきことからきっちり勉強しましょう。戦略の中身をしっかり理解して、思考力をつけるのが大切です。「継続は力なり」なので、まずは続けることを目標にしてください。

細田 昔と比べると環境は恵まれているので、それを生かすも殺すも自分次第。人のせいにせずに、勉強と投資を続けていけば、必ず良い結果に繋がると信じています。

Editor’s Note 細田哲生×村居孝美

①相場が変われば認識が変わって当たり前(細田)
②答えをネットに求める人が増えた(村居)
③上達が早い人は、教えたときに膨大な量のメモを取っている(細田)
④誰かに明言してほしい気持ちはひとまず捨てるべき(村居)
⑤最初は一つの手法を極めることを目標にしてみてほしい(細田)
⑥戦略と相場を照らし合わせて試行錯誤をしていくことが、最もやらなければならないこと(村居)
⑦お金がなくなる前に戦略を立て直して、トレードをやめずに続けるのが一番大事(村居)
⑧昔と比べると環境は恵まれているので、それを生かすも殺すも自分次第(細田)

インタビュー日◎2024年3月19日

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FX「外国為替」編集部
FX「外国為替」編集部。たくさんの投資家の人生が、FXのおかげでほんの少し豊かになる—。そんな未来を目指して2022年8月に『外国為替』を創刊。雑誌は全国の書店およびAmazonで発売しています。
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