
急騰中のリップルを知る
7月13日、暗号資産XRPが65円から112円へ急騰した。リップル社とSEC(米証券取引委員会)の間で、XRPが有価証券にあたるかどうかを巡って争われていた裁判。SECは2020年12月、XRPについて「米証券法に準拠せず販売された未登録証券である」として、リップル社を提訴した。約2年半後の2023年7月に、裁判を担当したニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所によって判決が下された。
この判決を簡潔にまとめると、機関投資家への販売は有価証券取引の要件に該当するとしたものの、それ以外の個人投資家を対象とした販売は、投資家がリップル社を通じて利益を見込む投機的価値を理解しているといえないと判断したのだ。一連の裁判はリップル社の部分的勝訴が大きく映る形で節目を迎えたことになる。
XRP Ledgerは、従来の銀行における国境を越えた送金や決済の非効率性を解決するために2011年に作られた分散型台帳技術を利用する即時グロス決済システムである。ビットコインブロックチェーンの既存金融を再定義しようとする性質とは若干主旨が異なり、既存の伝統的な銀行システムの改善に重きを置いているところが大きな違いの1つだと思う。
また2012年のローンチの際、1000億XRPの全てを発行し、リップル社がトークンの売却を決定した場合には流通することができるという点も、一部中央集権的に運営されているといえるポイントだろう。
では、XRPはこのまま価格が上昇し続けるのか? 2つの要因から私は懐疑的に考えている。
1つ目の要素としては、前述した1000億XRPの全供給量のうち800億トークンがリップル社に分配され、2017年には、そのうち550億XRPをエスクローアカウント(公正中立な第三者のアカウント)に移し、そこから毎月10億XRPを売却できる環境にあるという点だ。そもそも既存の銀行システムの改善に重きを置いているリップル社がXRPのボラティリティ拡大を望むだろうか。既存の銀行システムとの親和性があり、XRPがボラティリティの心配をほとんどすることなく、決済手段として利用しやすい暗号資産であり続けることはリップル社の生命線ともいえる。
2つ目の要素としては、現在の暗号資産を取り巻く環境において、XRPを活用して国際送金を行ったとしても、XRPがそのまま利活用されることは考えにくい点だ。そもそも暗号資産を用いた国際送金そのものが十分に利用されているとは言い難い。
以上2つの理由を挙げたが、暗号資産市場において、そもそも投資対象として考えた時の需要と、将来的なユーティリティ性を考えた時の需要は、必ずしもイコールで結び付けられない。これが顕著にみられる点も面白いところだ。ユーティリティ性の高い暗号資産に投資する際には、需要が供給を上回るさまざまな要素を加味して検討してもらえると、良い選択ができるのではないだろうか。

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