金融市場は多岐にわたります。株価、金利、為替などはそれぞれが独立して動いているように見えますが、実は密接な関係を持っています。とはいえ、FXトレーダーは為替市場が主戦場。監視対象が増えると負担も大きくなってしまいますが、他の市場を見ると何が見えてくるのでしょうか? FX、CFDなど複数の金融市場を股にかけるテクニカルトレーダーhanaさんに、インタビューを行いました。

テクニカルトレーダーhana氏プロフィール
CFD、FXが主戦場の専業トレーダー兼Fincsアドバイザー。hana塾で累計2000人以上の【自分の頭で考える】トレーダーを育成。鋭いテクニカル分析・分かりやすい指導に定評がある。日々、完全初心者でも根拠のあるトレードができるような情報を発信中。
聞き手・本文◉佐野雄二
株取引から派生したトレードスタイル
―hanaさんはFXだけでなくCFD取引もされているとのことですが、トレードの入口はどこだったのですか?
テクニカルトレーダーhana(以下hana) トレードそのものは、2013年の個別株の取引から始めました。ただ、2016年のトランプラリーで相場が乱高下していたため、一度トレードからは離れていました。その後、コロナショックが起こったころの株安をチャンスと判断して、相場に戻ってきました。2020年、2021年のコロナ相場の恩恵を受けて、本格的に投資にのめり込みました。
投資の勉強を本格的に始めようと思ったのは2022年です。ベア相場に乗るために、ベア型のETF(SOXS、TECSなど)取引を始めました。より機動的に取引ができる点に着目して、同年5月にCFD取引を始めました。
ただ、CFD取引用の教材が当時はあまりなく、チャート分析にある程度共通点のあるFXのテクニカル分析の教材を使って勉強していました。1日10時間の勉強を1年続けました。今年でCFD取引は4年目、FX取引は3年目になりますが、FXで勉強したことはCFD取引にもしっかり生かされています。
―どういった金融商品で日々トレードをされているのですか?
hana 資産全体で見ると、現物のETFや投資信託の割合が大きいです。ただ、日々の売買回数という点では、CFDとFXが中心です。その両者はレバレッジが効きますし、短期的な値動きを狙うことができます。そのため、資金効率の良さと柔軟な戦略構築の観点から、トレードの主力となっています。
―CFDとFXでトレードスタイルは同じですか?
hana CFD取引は細かい取引が中心ですが、FXは中長期で大きな波を見るスイング寄りのスタイルです。ドル円、ポンド円、メキシコペソ円、ユーロ円が主に見ている通貨ペアです。中心になっているのは円絡みの通貨ペアです。
円はリスクオフ相場で資産の逃避先として買われる傾向があります。たとえば、トランプ関税のヘッドラインが出てVIXが急騰したときなどは、円が強く買われる場面がありました。
―FX以外ではどういった市場に注目していますか?
hana 株価指数CFDやコモディティ、それからQQQのような米国株ETFですね。ナスダック100や金(ゴールド)は特に重要視しています。FXと密接な関係があり、為替の流れを先取りするヒントが多く含まれているためです。注視する割合としては、7割が株価、2割が為替、1割が商品先物でしょうか。
FX市場の外にも目を向けるべき
―FXトレーダーも、株価指数やCFDのチャートを見たほうが良いでしょうか?
hana 間違いなく見るべきです。FXトレーダーは他市場を見るべきですし、株トレーダーやCFDトレーダーもまた、為替市場を見るべきです。それぞれには相関関係があるからです。
FXは金利を重視するトレーダーが多いですが、金利と連動しやすい資産、例えば先ほど挙げたナスダック100や金の指数は、相場のセンチメントや資金の流れを可視化してくれます。クロスマーケットの視点を持つことで、より本質的な値動きを捉えることができるようになるわけですね。
―相関関係の有無は、どうやって判断しているのでしょうか?
hana チャートの動きを日々追うわけですが、重要イベント時の反応を比較して見るようにしています。同じ方向に動いていた市場が、あるときを境に逆向きになるといった変化には、何かしらのファンダメンタルズの転換があると考え、その背景を探ります。そうして、数字や指標のデータを追うだけでなく、「相場のセンチメントやリズム」を見るような感覚で判断しています。
例えば、金利という大ボスが相場にいるとして、為替や株価はそれぞれ金利の影響を受けます。その相互関係や、マーケット全体のリスクオン・リスクオフを見ている感じですね。ただ、金利そのものをチャートで追いかけるのは難しいため、金利を探るために追うのは株価と為替のチャートが中心です。
―他市場の動きはFXにどう波及するのでしょうか。意識していることがあれば教えてください。
hana 為替市場では「金利」が最も重要なドライバーの一つとされています。金利の変化や今後の見通し(=金利観測)は、為替だけでなく、株価やコモディティ市場にも大きな影響を与えます。例えば、市場参加者の間で「米国がそろそろ利下げに動くかもしれない」との見方が強まると、米国債の利回り(米金利)は低下しやすくなります。こうした局面では、企業の資金調達コストが下がるとの期待から株価が上がりやすくなります。
逆に、「利下げはまだ先」との見方が強まると、米金利は上昇し、株価には重しとなることが一般的です。ここで注意したいのが、ドル円の動きは常に金利に素直に反応するとは限らないという点です。例えば、米金利が上昇しても、それが株価の急落を引き起こすほどの〝過度な金利上昇〟であれば、リスク回避の動きが強まり、安全資産とされる円が買われるケースがあります。この場合、金利が上がっているのにドル安・円高が進むという、一見矛盾したような値動きが起こるのです。
―具体的に、他市場の情報はどういったタイミングでトレードに生かされていますか?
hana エントリータイミングの根拠として、他市場のチャート形状やトレンドの変化をよく使います。例えば、株価指数で明確な天井圏、または底値圏の反転シグナルが出たとき、為替が少し遅れて反応することがあります。そういう場面はFXのポジション調整の判断材料になります。逆に、チャートの形が連動していない場合や、変動のタイミングが明確に異なると判断した場合は、手を出さないようにしています。場が大きく乱高下することがありますが、その場の一時的な上げ下げはあまり気にせず、その後に形成される方向感を重視しています。
金融市場全体をセンチメントが揺るがした
―他市場の動きが相場変動のトリガーになったケースを教えてください。
hana 2024年の7月相場の値動きを基に説明します。当時の相場は、インフレ傾向と金利観測をめぐる市場心理の変化が、株式・為替・ボラティリティ指標に連鎖的な影響を与えた象徴的な局面でした。
月初めの時点では、米国のインフレ鈍化傾向に伴う利下げ期待が支配的で、それらを材料に株価は上昇傾向にありました。ナスダック100指数は4月中旬以降上昇を続けており、7月に入ってからもその傾向は変わりませんでした。生成AIブームの恩恵を受けていたナスダック市場のなかでも特にNVIDIAを中心とした半導体関連株が、この上昇トレンドの強い牽引役となっていました。「一生一緒にNVIDIA」といっても過言ではなかったでしょう。
市場が大きく動くきっかけとなったのは、7月11日に発表された米CPI(消費者物価指数)です。CPIはインフレの進行度合いを示す代表的な経済指標で、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を判断する際の重要な判断材料の一つです。
この指標がインフレ鈍化を示す(図1)と、表面的には「利下げへの期待が強まる=株高・ドル安になる」とポジティブな材料と受け止められます。
図1 インフレ鈍化・利下げ観測の強まり

米国債10年物利回りは、米国の長期金利を示す代表的な指標です。景気やインフレ、金融政策への市場の期待を反映します。一般的に、利上げ観測が高まると利回りは上昇し、株式や為替など他の市場にも波及的な影響を及ぼします。
7月上旬の米6月CPI発表を受けて、米国債10年物利回りは低下しました。インフレ鈍化と判断されて利下げ観測が強まった結果、米長期金利は低下し、為替市場ではドル安圧力の背景となる地合が形成されました。
そのような状況下では、ドル売り・株買い・金利低下といった「リスクオン」方向に市場が動くのが基本的な反応です。実際、このときCPIは予想どおりインフレ鈍化を示したものの、市場は織り込み済みと受け止め、セオリーどおりの動きになりませんでした。
「材料が出尽くした」と判断した投資家は、利益を確定するために売りを出します。特に、この当時で過熱感の強かったハイテク株が利益確定売りに押され始め、NVIDIAを中心に株価の急落が始まります(図2)。同時に、「生成AI相場はもうピークを迎えたのではないか」「業績も天井を打ったのではないか」といった見方がしだいに市場へ強まっていき、株価の下落が広く波及していきます。
図2 過熱状態の株式市場に売りが殺到

ナスダック100指数は、米国のナスダック市場に上場している時価総額上位100銘柄(非金融)で構成される株価指数です。主にテクノロジー企業の成長株の動向を示す代表的な指標として使われ、金利・インフレと相関が強いといわれています。
2024年7月に入ってからは、インフレ鈍化を好感した上昇局面から一転、CPI発表後は「織り込み済み」との見方が優勢に。生成AI関連銘柄の業績ピーク感が意識され、NVIDIAを中心に利益確定売りが集中し、市場の流れが変わりました。
これに呼応するようにVIX指数が上がりはじめ、8月には65付近まで急騰しています(図3)。VIX指数は、市場参加者が今後の値動きをどれだけ不安視しているか(ボラティリティ予測)を示す指標で、「恐怖指数」とも呼ばれます。市場のセンチメントが悪化して、多くの投資家がいっせいにリスクから逃れようと行動を起こしました。
図3 VIX指数急騰。相場に恐怖の風が吹く

VIX指数(Volatility Index)は、「市場がどれだけ不安を感じているか」を数値で示す指標です。上昇すれば市場で恐怖が高まり、株価が下落しやすくなります。VIX指数が高まると、為替市場ではリスクを避けるために円買いが起きやすく(=円高になりやすく)なります。
2024年7月〜8月、NVIDIAを中心とした半導体株の急落を契機に、VIX指数が急騰。市場が急速にリスクオフに傾いた様子が窺えます。ちなみに2025年4月下旬の急騰は、米国の関税をめぐるヘッドラインに反応したものです。
このような「リスクオフ」ムードの相場では、投資家は株式などのリスク資産を手放し、相対的に安全とされる資産へ資金を移す動きが強まります。日本円はリスク回避時に安全資産として買われることが多いのです。
―つまり、円を買う動きが強まることで、為替市場が円高に傾いていくのですね。
hana そういうことです。為替市場では、米金利の低下とともにドル円が下落しました。さらに、これまでブームとなっていた円キャリートレードの終焉も意識されるようになりました。円売りポジションの急激な巻き戻しが発生し、リスク資産から資金を引き上げる流れで円買いが加速しました。
センチメントの悪化と円高圧力に後追いで乗っかる形で、日銀が7月11日、12日に為替介入を実施。この流れをさらに大きなものにしました。ドル円は急激に円高へ傾き、7月上旬の160円台前半から8月上旬の142円台前半まで下落するなど、十数円もの大変動となりました(図4)。
結果的に「インフレ鈍化=買い材料」という従来のロジックが通用しなくなり、センチメントの転換が、むしろ売りのトリガーとして作用しました。
図4 かくしてドル円は急落した

2024年7月、米CPIの鈍化を受けてナスダック100が失速し、市場全体に「インフレ鈍化=利下げ観測の織り込み済み」という雰囲気が広がりました。
VIX指数の高まりから市場のセンチメントがリスクオフに傾き、日本の低い金利を利用した円キャリートレードから手を引く投資家が急増。市場の風向きが一気に円高へ傾いた所で、7月11日、12日には日銀が為替介入へ踏み切りました。これが追い風となり、7月から8月にかけて、ドル円は160円台から142円付近まで大きく下落しました。
果てしない大海原で見るべき指針とは
―FXトレーダーが他の金融市場も見るとなると、情報量の多さに何から始めたらいいか分からなくなってしまいそうです。「優先的に見るべきもの」をアドバイスいただけますか?
hana まずは金利と株価指数(特に米国)です。この2つの動きが為替市場に影響を与えやすいため、最低限ここを押さえるだけでも相場観がかなり養われます。
ただ、金利そのもののチャートを見ようとすると難しいため、それに連動するチャートを見るのが良いでしょう。例えばVIX指数やFear&Greedといった相場のセンチメントを表す指標を見ることで、相場が楽観的か悲観的かを判断できます。ドル円の場合だと、リスクオン相場になっていると円安に、リスクオフ相場では円高になっていく傾向があります。
初心者の方は、FRBの政策スタンスと連動性の高い米10年債利回りや、日経平均よりも強いドライバーとなるナスダック100の動きをシンプルに追うだけでも、十分効果的だと思います。最初からしっかり理解しようとするのではなく、まずは「継続して追う」ことを意識してみてください。
―『外国為替』の読者へ一言お願いします。
hana 目の前で動く短い時間足につい意識が振り回されてしまいがちですが、まずは月足、週足といった大きな流れを見ることが鉄則です。大きな流れは小さな流れに優先するものですから、相場を「俯瞰」することが大切です。それと同じく、為替だけを見るより、「為替以外の視点」をどれだけ持てるかが、トレードの勝率や安定感を左右すると思います。為替相場が動く前兆となるサインを他の相場から得られれば、FXのトレードでより優位に立ち回れるようになるはずです。
学ばなければならないことは多いですが、「分からないことを分からないままにしない」、「毎日半歩ずつでも良いから成長する」、「短期ではなく長期で資産形成する」ということを意識しましょう。複雑に見えるものを楽しみながらシンプルに捉える感覚でぜひ相場と向き合っていってください。
インタビュー日◎2025年5月28日





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