私たちが選択できる自動売買には、全部で3つのタイプが存在します。
自動的にトレードが実行される点は一緒ですが、それ以外の部分には明確な違いがあります。こういった俯瞰的な視点で業界を知ることも、長い目で見て投資成績の安定や向上に役立つはずです。
運用するにあたり自動売買のタイプを知る
FXの自動売買といっても、「売買ルール公開の有無」と「どの環境で動作するか」という二つの軸から、3パターンに分類可能です。
売買ルールについては、Bのリピート系自動売買は公開、AのMT4やMT5のEA、CのFX会社固有の自動売買は基本的に非公開です。どちらにせよ、どういったルールでトレードをするかを深く理解することは、自動売買で成功するために最も重要なポイントとなります。AやCの場合は、見えない部分を情報から推測する能力が求められます。
稼働する環境については、Aは自分で用意しなければいけません。対してBやCはFX会社側が用意してくれるため有利に見えますが、その分がスプレッドや取引コストに転嫁されています。
それぞれ特徴、メリット、デメリットがあるため、こういった分類で業界の全体像を把握することも意味があるといえます。
【A】MT4やMT5のEA運用|選択肢は多いがブラックボックスが難点
ポイント
●中身が見えないので、バックテストによる戦略の把握が重要
●実質的にVPSの使用が前提
●プログラミング能力があれば自作可能
●選べる自動売買の種類が多い
中身が非公開×ローカル稼働の典型例は、MT4やMT5のEAです。MT4は2005年ごろ、MT5も2010年ごろに登場しており、システム的には昔ながらのやり方といえます。売買ルールは企業秘密なので、バックテスト結果を分析するスキルが求められます。ただ販売や配布が盛んなので、選べるEA(自動売買のプログラム)の数は豊富です。なお、自前のPCで稼働させることは安定感を欠くため、VPSと呼ばれるクラウド上のPCでの稼働が主流です。
【B】リピート系自動売買|相場に仕掛けた罠にレートがかかるのを待つ
ポイント
●売買ルールは全て投資家が決める
●FX会社のサーバ内で稼働するため、PCやスマホの電源を切ってもOK
●損切りしない、含み損がいつもあるなど、裁量トレードと異なる点が多い
リピート系自動売買ではあらかじめ相場に注文を仕掛けておき、レートがそこに到達するのを待ちます。こちらからトレンドを追いかけるといった能動的な売買はせず、資金管理以外の大部分が相場任せになる受け身の運用といえます。そのため、裁量トレードではあり得ないセオリーを身に付ける必要があります。FX会社のサーバの向こう側で自動売買が実行されるため、投資家側は運用のための端末を用意する必要も、端末のスペックを問われることもありません。
【C】FX会社固有の自動売買|選べば無料で使えるかつて流行したタイプ
ポイント
●FX会社のシステム内に、複数の自動売買がラインナップ
●EAと同じく売買ルールは非公開
●取引環境を用意せずに済む
●取引コストは高め
FX会社の取引システム内に、EAのように中身が見えない複数の自動売買が用意されており、投資家は手数料を払えば好きなものを運用できるタイプの自動売買が、かつては盛んでした。現在では、マイメイト(インヴァスト証券)やみんなのシストレ(トレイダーズ証券)が代表的です。EAのように購入しなくても良い点は魅力ですが、その分取引コストが高めに設定されています。
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