「FXを始めたいけれど、何から学べば良いか分からない」
「前知識なしになんとなくFXを始めてしまった」という人、実は少なくないのではないでしょうか。
今回は、FX超初心者に向けた基礎知識をまとめました。
これを読めば、FXはこわくない! 今さら人には聞きにくいFXの超入門知識です。
本文・編◉荻田里佳/外国為替編集部
- いまさら聞けない?FXのあれこれ
- 24時間動き続ける相場。FXの取引はネットで完結
- 証拠金取引ってなに?必要なお金を徹底解説
- 始めたばかりなら最低ロットで十分!
- 買ったら売る、売ったら買う。取引の流れを知ろう!
- 証拠金は増減する。資産が増える計画を
- スプレッドは時間帯で異なる?広がりすぎには注意すること!
- ニュースでよく聞く円安・円高、私たちの生活に影響はあるの?
- 1pipsはいくら?なぜpipsを使うの?
- 取引の損益を素早く計算、一喜一憂しないロット管理を
- 注文種類は複数ある。生活スタイルに合わせよう
- 1本のローソク足には知りたい情報が満載!
- テクニカルとファンダメンタルズ、両方身につけて鬼に金棒!
- 裁量トレードとシステムトレード、それぞれのメリット・デメリット
いまさら聞けない?FXのあれこれ
FXとはForeign Exchangeの略で、「外国為替証拠金取引」を指しますが、これを聞いても初心者であれば、頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいることでしょう。そんな人は海外旅行をイメージするとFXへの解像度が上がるかも。
例えば、日本から米国のニューヨークへ旅行するとします。現地で買い物を楽しんだり、食事を堪能したりするには米ドルが必要です。そのため、米国に到着したら、 両替所で日本円を米ドルに交換してもらわなければなりません。そして、帰るときに米ドルを日本円に戻して旅を終える、これが一連の流れだとします。このとき気になるのが、「今、1米ドルいくらなのか?」ということ。
旅の出発前は1米ドル=100円だったとします(現在とは違いますが、計算しやすいようにこのレートで考えます)。ちなみに、よく耳にする「1ドル〇円」というのは、1米ドルを〇円で交換できるということなので、今回の場合は1米ドルと100円を交換できるという意味。こうやって、日本円を米ドルに両替します。
1米ドル100円のときに、日本円10万円を両替すると、1000米ドルになります。一方で、米国から日本に帰るときに、もし1米ドル=90円になっていたら……? 10円減っているので、米ドルを日本円に両替すると、あなたは何もしていなくても、マーケットの変化により、損をしてしまいます(海外旅行程度の短期間で10円も変動することはあまりありませんが、計算を分かりやすくします)。
例えば、「たかが10円」と思う人もいるかもしれませんが、そんな人は10円に泣かされることになるでしょう。なぜなら、1米ドル90円のときに、1000米ドルを日本円に戻そうとすると9万円になります。1万円も減ってしまうのは痛い出費ですよね。反対に、1米ドル110円のときに、日本円へ両替すると11万円に。1万円得をするというわけです。
24時間動き続ける相場。FXの取引はネットで完結
旅行時の両替で利益が出た状態をドル円の為替レート(交換比率)で置き換えると、1万円の利益が出たことになります。ただし、FXの場合は取引手数料がかかり、純利益は異なるのでご注意を。とはいえ、それを差し引いても、FXには空港に行ったり、現地で両替をしたりする手間がかからず、全てインターネット上で完結させられる手軽さがあります。
また、最初に分かりやすいように馴染み深いドル円での取引について解説しましたが、FXは通貨と通貨の交換比率に投資して利益を狙う金融商品です。通貨には、日本なら円、米国なら米ドル、ユーロ圏ならユーロ、英国ならポンド、トルコならリラ、南アフリカならランド、スイスならスイスフランなどがあります。これらを組み合わせて、2国間の通貨ペアとして取引を行います。
次に、なぜ為替レートが常時動いているのかを頭に入れておきましょう。平日なら24時間休みなく取引が行われている外国為替の相場は、市場参加者の需要と供給のバランスで動きます。買いたい人が多いのか、売りたい人が多いのかで、どちらかに傾いていきます。
例えば、日本の半導体企業が米国に半導体を輸出し、その代金を現地通貨の米ドルで受け取るとします。しかし、日本国内での従業員の給与や製造コストの支払いには円が必要です。そのため、受け取った米ドルを円に交換する必要があります。このような「米ドルを売って円を買う」取引が増えると、円の需要が高まり、結果として為替相場が円高・米ドル安に進む可能性が高くなるのです。
そのほかにも、各国の金融政策や経済指標の発表、政治情勢など、さまざまなことが要因となって、レートは常に動いています。FXはこの変動するレートの未来を予測し、二つの国の通貨を交換しながら利益を得ることを目的とした投資です。
証拠金取引ってなに?必要なお金を徹底解説
FXでは、取引の対象となる通貨を、直接的に受け取ったり、渡したりすることはありません。その代わり、保証金の位置付けでFX会社にお金を預ける必要があり、これを証拠金と呼びます。この証拠金取引の仕組みにより、最大25倍のレバレッジをかけた取引が可能になります。
レバレッジとは梃子(テコ)の意味で、本来必要になる資金より少ない資金量でのトレードが可能となります。レバレッジ効果を実際の例で確認してみましょう。
1米ドルが100円、レバレッジ1倍(現物取引)で1万通貨取引をする場合の必要な資金は、100円×1万通貨÷1=100万円です。レバレッジ10倍では100円×1万通貨÷10=10万円、レバレッジ25倍では100円×1万通貨÷25=4万円となります。このように、そのトレードをするために必要な資金が、レバレッジ効果によって圧縮されます。
ただし、レバレッジはトレードを勝ちやすくするものではなく、資金効率をアップさせるだけの仕組みであることを忘れてはいけません。同じ資金のトレードにおいて、勝ち額も負け額も大きくなるのがレバレッジ効果です。
なお、ポジションを保有中に必要な証拠金は拘束されるため、それ以外の余剰資金が取引口座にある必要があります。また、証拠金は口座が破綻して強制ロスカットになっても、原則的に拘束された分を除いた資産は投資家の手元に残ります。
始めたばかりなら最低ロットで十分!
取引の通貨量の単位を「ロット」と表現します。FX会社によって1ロットの量は異なりますが、1万通貨を1ロットとする会社が多いです。ロットが多くなるほど、利益は大きくなりますが、損失額も増えるので、取引する際は入力ミスにご用心。ほとんどのFX会社は1000通貨から取引できるので、慣れるまでは最低ロットで練習しましょう。
買ったら売る、売ったら買う。取引の流れを知ろう!
次に、FX取引のサイクルを知りましょう。それは、「エントリーをしたら、必ずその逆の売買をしなければトレードが完結しない」ということ。
もし、上がると思って「買い」エントリーをしたのなら、「売り」の決済を、下がると思って「売り」のエントリーをしたのなら、「買い」の決済をしなければ、トレードが完結しません。
また、エントリーをしただけの状態を「ポジションを持っている」などと表現します。
証拠金は増減する。資産が増える計画を
先にも説明しましたが、FXは証拠金取引なので、直接ドルや円をやりとりすることはなく、売買の結果が口座に反映されます。どのように増減するのか考えてみましょう。
1ドル100円のときに、ドル円を1000通貨買ったとします。そして、レートが上がり、101円になって「売り」の決済をしました。すると、あなたは1000円勝ったことになるので、証拠金が1000円増えます。
逆に、同条件で99円に下がってしまったら1000円の負けなので、決済したらあなたの証拠金は1000円減ります。
FXにおける2種類の利益獲得パターン
このページでは主にキャピタルゲインを解説していますが、スワップポイントによるインカムゲインを狙う勝ち方もあります。ただし、スワップポイントは常に変動する可能性があり、受け取るだけでなく支払いになるパターンもあります。
スプレッドは時間帯で異なる?広がりすぎには注意すること!
次にレートの見方です。先にも説明しましたが、1ドル100円の場合は、一つの米ドルを得るのに100円が必要という意味と説明しました。
実際の取引画面には、Bid(売り)とAsk(買い)という二種類のレートが表示されています。FXは買いと売り、どちらからでもエントリーすることができ、上の図の場合は一つの米ドルを買うには、144.338円が必要ということを示しています。
なお、二種類のレートの中間に表示されている0.2はスプレッドです。スプレッドは売値と買値の差額のことで、投資家はスプレッド分だけ高く買い、安く売るため、このケースではエントリー段階で0.2pips分のマイナス収支となります。
相場が大きく動くとき、それと全く動かないときにはスプレッドが広がる傾向があります。エントリー前には、必ずスプレッドが広がりすぎていないか確認するようにしましょう。
また、FX会社によってスプレッドが異なることも、覚えておきましょう。
ニュースでよく聞く円安・円高、私たちの生活に影響はあるの?
よくニュースで聞く、「円高」「円安」とは、どういう現象なのでしょうか。
FXの通貨ペアは、片方の通貨価値が上がると、必ずもう一方の通貨価値が下がるという関係で成り立っています。これを、特に注目度が高いドル円で考えてみます。
「円高/ドル安」の状態は円が高くなり、米ドルが安くなっていることを示しています。1ドル160円が159円になれば、「円高ドル安になった」と表現するのです。
反対に、「円安/ドル高」になるのは、1ドル160円だった場合、それが161円に上がった状態のこと。「円が絡んだ通貨ペアの場合、数字が減ったら円高、増えたら円安」と覚えると分かりやすいでしょう。
1pipsはいくら?なぜpipsを使うの?
現代の日常生活でお金の計算をするときに、かつて使われていた単位である銭を使うことはまずないでしょう。しかしFXでは、1円未満の値動きを表現するために、銭はよく用いられます。1円は100銭、0.1円は10銭といった具合です。
また円絡みの通貨ペアに限らず幅広く使われる単位に、pips(ピップス)があります。
まず円をpipsに置き換えると、1銭(0.01円)は1pipsに相当します。そのため、日本円が113.25円と表示されているときの1pipsは5の桁の位置を示しています。円の場合は、「小数点第2位がpips」と覚えると良いでしょう。
そうなると気になるのは、円が絡まない通貨ペアの1pipsだと思います。例えば、ユーロドルの場合は、0.0001ドルが1pipsとなります。円絡み以外の場合は、「小数点第4位がpips」と覚えてください。
また、先にも説明した買値と売値の差を示すスプレッドの単位としてもpipsが使われます。ドル円のスプレッドが2pipsとなっている場合には、1ドルあたり2銭のコストがかかることを表しているのです。
FXでは「どれぐらい利益を取れたか」「どれぐらい負けたか」という値幅をpipsで表すことが多いので、しっかりと覚えておくようにしましょう。
もっと知りたい! スプレッド
【1】広がりやすいのは、①ボラティリティが極端に高いとき、②ボラティリティが極端に低いとき、③売りと買いどちらか一方だけの値動きになったとき
【2】スプレッドは、トレードをするたびに発生するコストである。ということは、スキャルピングのような短期トレードほどスプレッドの影響が大きく、スイングトレードのような長期トレードほどスプレッドの影響が小さい(手法により影響度がかなり違う)
【3】スプレッドが狭い方がもちろん有利だが、気にしすぎも良くない。円絡み通貨ペア、1万通貨取引の0.1pipsは10円の違いにすぎない。トレードルールや資金管理のほうが、より重要と考えよう
取引の損益を素早く計算、一喜一憂しないロット管理を
それでは次にお金の計算方法についてです。ロットのお話は先述しましたよね。もし、1万通貨取引をして100銭(pips)あなたの狙い通りに動いたとします。その場合は、あなたは1万円儲けたことになります(※円絡み、手数料は考慮しない)。1000通貨取引の場合に、狙い通り100銭(pips)動けば1000円、10銭(pips)で100円の儲けになります。
この計算がスムーズにできるようになると、トレードの計画が立てやすくなります。例えばあなたの投資金額が200万円だとします。1回のトレードで損失を1%に抑えたいと思った場合は、損失許容額は2万円になります。そして、1万通貨取引でこの1%ルールを実行する場合、何pips耐えられると思いますか?
答えは200pipsです。1万通貨で取引する際は、1円=100銭(pips)動くと1万円の損益になることを覚えておけば、頭の中でサッと計算できるようになります。特にスキャルピングのような短期売買をする際には、瞬時にこういった損益計算をしながらトレードを繰り返すことになります。
無免許海外FXについて
「海外FX」という単語を聞いたことがあると思います。もともとは日本の金融庁に無登録である、外国のFX会社のことでしたが、実際は所在地に関係なく、金融ライセンスを持たず、日本国内で営業をしているFX会社のことです。投資家がこういった無免許業者を利用することに罰則はありませんが、金融庁の管轄外であるためトラブルが起きても誰も守ってくれません。比較的まともに運営されている海外FXもあるにはありますが、初心者がそれを見極めるのは至難の業でしょう。
注文種類は複数ある。生活スタイルに合わせよう
ところで、これからFXを始める方は、この金融商品についてどういうイメージを持っていますか? おそらく、「たくさんのモニターを並べて相場に張りついているトレーダー」をイメージした方もいるはずです。確かにFXではそういったスタイルで成功しているトレーダーもいますが、そこまで常駐性が高くなくても勝ち組に回るやり方はあります。
その中でも覚えてもらいたいのが、予約する注文の使い方。FXでトレードをするために出す注文は、「なる早」で注文を通す成行注文と、価格を指定して事前に予約する指値、逆指値注文があります。指値は自分に有利な価格で、逆指値は自分に不利な価格で予約をする注文となります。
指値と逆指値を組み合わせたのが、上記のIFD注文、OCO注文、IFO注文で、事前の相場観にしたがって取引を半自動化できます。なお、マネースクエアのトラリピは、IFD注文を広範囲に等間隔に敷き詰めて、決済までが終わったIFD注文が再設置されるという仕組みです。
こういった各種予約注文を使いこなすことで、相場に拘束される時間を短くしながら、利益を追求できるというわけです。
いまだ現役の20年選手 MT4とはどういうソフト?
次項でも解説しますが、FXのトレードスタイルには手動で売り買いする裁量トレードと、機械に売買を任せる自動売買(システムトレード)があります。自動売買のプラットフォームとして人気があるのが、登場して20年ほどが経過しているMT4。
EAというプログラムを入手すれば気軽に自動売買が行える他、チャート分析や裁量トレードにも問題なく対応する、万能プラットフォームといえます。ロシア製のソフトだけに使用感には少々クセがありますが、ソフト自体は無料で使えます。また、後継のMT5も少しずつシェアを伸ばしています。プロにも愛用者は多いので、じっくり腰を据えてチャレンジしてみては?
1本のローソク足には知りたい情報が満載!
ローソク足は一見シンプルな形をしていますが、一目で多くの情報を得ることができるため、FXのトレーダーだけでなく株式投資家の間でも使われています。
ローソク足はそれ1本で、ある時間内の始値・高値・安値・終値(4本値)を視覚的に確認できます。ローソク足を時系列に並べたチャートを分析すれば、過去から現在に至る価格推移を把握できます。
ローソク足には2色あり、始値より終値が高いものを陽線、始値より終値が安いものを陰線と呼びます。
4本値の中で特に重要なのは終値です。そのローソク足の確定を待って、次の行動を考える人が多いためです。
テクニカルとファンダメンタルズ、両方身につけて鬼に金棒!
このような過去の値動きをチャートで分析し、今後のトレード方針を立てることを「テクニカル分析」と呼びます。
テクニカル分析では、相場に影響を与えるニュースは既に価格へ織り込み済みと判断することが主流です。ただし、過去から現在に続く値動きが、未来でも継続するとは限りません。
またテクニカル分析では、今の価格が相場の流れの中でどの位置にいるかを判断するというように、相対的な高さ、安さが分かります。
「ファンダメンタルズ分析」は、景気動向、金融政策、財政政策などの変化が、市場全体にどのような影響を及ぼすのかを分析します。端的にいえば、価格変動(=テクニカル)以外の全ては、ファンダメンタルズに属する情報と考えても良いでしょう。
特にFXでは、米国の雇用統計の結果や、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長の発言などで、レートが大きく動くことも珍しくはありません。また、多くのトレーダーが注目するのは、その国の金利。一般的に金融緩和を実施している国は金利が低い傾向にあるため、その国の通貨は売られやすくなります。その反対である金融引き締めは、その国の景気過熱を抑えるために行われる金融政策です。金利が上がる傾向にあり、その国の通貨は、買われやすくなります。
裁量トレードとシステムトレード、それぞれのメリット・デメリット
分析方法にも種類があるように、売買のやり方にも選択肢があります。「裁量トレード」は、売買の判断をトレーダー自身がその都度行うスタイルです。裁量トレードのメリットは相場に柔軟に対応できる点で、デメリットは、チャートに張りつく時間が長くなることや、判断に感情が入ってしまう可能性が高いことです。
「システムトレード」は、決められたルールに従い、機械的・継続的に取引を行う方法で、ほぼ自動売買と同義です。システムトレードは24時間、寝ている間も自動で取引が行われるので、機会損失を減らせるのがメリットですが、急な値動きに対応できないデメリットがあります。
一口にFXといっても、いろいろな分析、取引のスタイルがあるので、自分の生活スタイルに合っているものを取り入れることが大切です。
一番大切なのはFXの世界で生き残ること
どんな取引スタイルであっても、一番大事なのは資金管理と断言できます。資金管理は奥深いものですが、基本は「資金を小分けにして、少しずつ張る」です。オールインするのは投資ではありません
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
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