投資を始めるときに、「証券会社はどこがいいのか」「どの金融商品にするか」「取り扱い銘柄は何があるか」といったことを調べる方はたくさんいらっしゃいますが、始める前から税金のことを調べる方は少ないかと思います。
しかし、個人の場合は同じ金融商品という括りの中でも何の取引を行っているのかによって税金の計算方法が異なり、確定申告が必要かどうかも変わってくるため、あらかじめ税金のことを把握しておく必要があります。
ここで金融商品の税金と確定申告について、順に見ていきましょう。
堀龍市氏プロフィール
ほりりゅういち。FX専門会計会社「日本FX会計株式会社」の代表税理士として、全国の有名投資家らの税務顧問も担当。節税や税務調査対応のスキルが口コミで広がり、北海道から沖縄まで顧客実績があり、電話やメールだけでなくリモートでの無料相談も行っている。
株式取引
一般的には証券会社の口座開設をされる際に、「特定口座」か「一般口座」を選択すると思います。
①特定口座(源泉あり)
特定口座(源泉あり)で利益が出た場合、証券会社が代わりに源泉徴収し税金を支払ってくれるので確定申告は原則不要です。ただし、複数お持ちの口座の年間の損益の合計がプラスだった場合、一つでも損失が出た口座があれば損益通算のための確定申告をすることで課税される所得が少なくなることもあります。また、全ての口座を合計したときに損失が出ている場合、損失の繰越の申告をすることで翌年以降の利益と相殺することが可能です。
自動的に損益通算や損失の繰越はされませんが、申告することでお得になるケースがあります。
②特定口座(源泉なし)
同じ特定口座でも、源泉なしの場合は利益が出ていれば必ず確定申告が必要になりますが、証券会社が年間取引報告書を提示してくれるので、その内容を基に申告できます。
③一般口座
一般口座は源泉徴収もされませんし、年間取引報告書の発行もありませんので、全て自分で収支を計算して申告する必要があります。なお、株の経費は取得費と売却手数料のみです。
上記①〜③いずれのケースにおいても、所得の分類は「譲渡所得」に該当し、税率は一律20.315%(復興特別所得税含む)となります。もし損失が出た場合は、確定申告することで3年間繰り越すことが可能です。
④NISA口座
NISA口座の範囲内で得られる利益には税金がかかりませんので、確定申告は不要です。
⑤iDeCo口座
iDeCoはNISA同様、運用益に税金はかかりませんが、掛金が全額所得控除になるので、年末調整や確定申告で所得控除に入れ忘れないようにしましょう。
株の配当金
株の配当金の多くは配当所得(分離課税)に該当し、受け取る際に税引き後の金額が支払われるので、既に税金は納めていることになります。なお、課税所得の合計が900万円以下の場合、あえて確定申告(分離課税ではなく総合課税で計算し直す)をし、配当控除を利用することで既に納めた税金を取り戻せるケースもあります。
FX取引
FXには株式のように特定口座はありませんので、全て自分で収支を計算し申告する必要がありますが、個人の所得税の場合は1年間に決済したものの合計がプラスであれば税金がかかり、未決済のポジションに含み益があっても税金はかかりません。
同じFXでも国内の証券会社(正しくは金融庁に登録のある業者)か、そうでないかによって税率(分離課税か総合課税か)が変わりますが、いずれも原則「雑所得」に該当します。
①国内FX
国内FXの場合、同じ雑所得でも「申告分離課税」に該当するため、税率は先ほどの株式と同じで一律20.315%(復興特別所得税含む)です。
②海外FX
国内FXに該当しない場合(海外FX)は「総合課税」に該当するので、お給料など他の所得と合算した金額によって税率が決まります。
このように、国内FXと海外FXは計算方法(税率)が異なるため、一緒に計算してしまわないよう注意しましょう。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産は雑所得の総合課税に該当するので、税率は最大で55%(住民税を含む)となり、海外FXと損益の通算が可能です。
国内の取引所を利用している場合、年間取引報告書(業者によって名称は異なります)が発行されるので簡単なように見えますが、暗号資産(通貨)の種類ごとに(BTCはBTCだけで計算といった形で)集計する必要があるため、複数の取引所を利用している場合は単純に足すだけでは所得の額が正しく出ないケースがあります。
また個人の場合、暗号資産を購入して持っているだけでは税金はかかりません。
CFDや先物取引
こちらは雑所得でも分離課税に該当する取引になるので、国内FXと同様、一律20.315%(復興特別所得税含む)の税率が適用されます。損失を3年間繰り越すことも可能です。
国内証券会社を利用した米国株投資
米国株の売却益(譲渡益)は原則米国では税金はかからず、日本だけで税金がかかるような仕組みで、税率は日本の株式と同じ一律20.315%(復興特別所得税含む)です。しかし、米国株の配当金は米国で10%源泉徴収され、日本でも20.315%課税されるため二重課税になっています。この場合、確定申告をして外国税額控除を受けることで、その年に既に納めた税金が戻ってくる可能性があります。
本文◉堀龍市
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)