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松崎美子のFXロンドン部[第8回]〜欧州から見た政治・経済・金融政策の急所〜

松崎美子のFXロンドン部[第8回]〜欧州から見た政治・経済・金融政策の急所〜

ゴールデンウェイ・ジャパン
松崎美子(まつざき よしこ)氏プロフィール
松崎美子氏プロフィール

まつざきよしこ。スイス銀行東京支店へディーラーアシスタントとして入行。結婚のため渡英。バークレイズ銀行本店ディーリングルームに勤め、日本人で初めてのFXオプション・セールスとなる。1997年には米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスを務め、2000年に退職して数年後より、個人投資家へ。ブログ、セミナー、コラム、YouTubeを通じてロンドンや欧州の情報を日々発信している。
【著書】FXファンダメンタルズの強化書──情報を利益につなげる実践の読み方・使い方/松崎美子のロンドンFX (金融の聖地で30年暮らしてわかった日本人が知らない為替の真実)他

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※FX雑誌『外国為替』vol.16より転載 最新号の目次・お知らせはこちら

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債務問題と防衛費増額のジレンマ

 6月下旬に開催されたNATO首脳会議。そこでは数々のドラマが繰り広げられた。ただでさえ債務残高が増えすぎて、過剰赤字削減を義務付けられている南欧州各国は特に、防衛費増額に難色を示した。

 NATO加盟国でも防衛費の規模はかなり違う。対GDP比(図)で見ても、高いのがロシアと国境を隔てているポーランドやバルト3国。一方、ロシアから距離があるスペインなどは、目標2%以下の状態が続いている。

NATO加盟国の防衛費

防衛費対GDP比は最終的に5%で合意

 NATO会議直前まで、5~10年後に防衛費対GDP比3.5%という数字がコンセンサスとなっていたが、終わってみると「5%」で合意となった。達成時期では意見が分かれ、東欧各国は2030年、ルッテ事務総長が2032年を支持し、最終的に10年後の2035年で決定した。そして5%の内訳は、3.5%が国防費、1.5%がインフラ整備などの安全保障関連費とされている。

 スペインは最後まで合意書に署名をしなかったが、それを非難したのはアメリカではなく、同じ欧州各国といわれている。最近のNATOメンバー間の関係は変化しており、以前はトランプ大統領が「防衛費を増やせ!」と命令していたが、ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、ポーランドやバルト3国が大幅に防衛費を増額したこともあり、EU加盟国間での意見の対立が目立つ。

 NATO会議でも、スペインという名前は出していないが、各国の首相からは「防衛費のただ乗りは許せない。皆が痛みを分かち合うべきだ」という意見が最も支持されたという。
 たぶんこれは、NATO第5条「加盟国に対する攻撃は、加盟国全体に対する攻撃とみなされる」という集団防衛の原則を基に、お金を出さない国が出した国に守ってもらう時代は終わったという意味に受け取れる。 

ヨーロッパでの防衛費拡大の動き

 NATO会議に先駆け、EUは最大8000億ユーロ規模の防衛ファンド構想を立ち上げた。この内訳は、以下のとおりである。

・今後10年間で、5000億ユーロが必要と試算されていた防衛費を、8000億ユーロに拡大
・5段階の計画
・第一に、EUの財政規律ルールである「成長安定協定」(公的債務残高は対GDP比で60%以下、財政赤字は3%以下)を一時棚上げする
・第二に、EU全体で1500億ユーロの借り入れを実施(コロナ禍当時のように、EUが代表して債券を発行するのか?)
・第三に、コロナ給付金などをベースに、加盟各国が独自に防衛費増額に踏み切る
・第四と第五は、現在欧州に残っており自由に使える資金を、欧州投資銀行(EIB)などが中心となりまとめる

 このニュースが発表されたときは長期金利上昇で反応したが、その後、続報は出てきていない。

過剰財政赤字是正手続き(EDP)というシステム

 欧州には「過剰財政赤字是正手続き」というシステムがある。2009年から始まったギリシャ債務危機の過ちを二度と繰りかえさないため、2012~2013年にEU全体で加盟国の財政を監視するシステムが導入された。ここで決められた財政均衡基準を遵守しない国には罰を与えるという内容である。基本となる財政均衡基準は、

①財政赤字が対GDP比で3%を超えない
②公的債務残高が対GDP比で60%を超えない

 それと同時に、財政均衡基準の厳守を約束するため、各国の憲法もしくは同等レベルの国内法に明記することを義務付けた。そして違反した場合、赤字のX%分のお金を預託するといった制裁措置を講じるなど、非常に厳しい規定となっている。

 昨年夏、フランス・ベルギー・イタリア・ハンガリー・マルタ・ポーランド・スロバキアがEDPに認定され、債務削減義務が生じた。そこに来てNATOで防衛費が対GDP比5%目標となったので、スペインは最後まで抵抗したのだろう。もし今後、各国での対応が難しくなれば、前述の「防衛ファンド」構想を使い、全体責任という形を取るのかもしれない。

 ちなみにEDPには大きな落とし穴がある。それは「非常時の出来事が起これば目標を達成しなくても済む」という例外条項だ。コロナのときにこの特例が適用された。もしかしたら「防衛費増額」にも「非常事態」を適用しないとも限らないだろう。いずれにしろ、「債務の持続性」という問題は今後、欧州だけでなく、アメリカ、イギリス、日本でも問題になるはずだ。

いずれ日本も増額か?

 日本の防衛費がGDP比で何%かは知らないが、イスラエル・イラン紛争にアメリカが関与し、一発で和平を勝ち取ったため、トランプ大統領はますますアメリカが世界を守っているという姿勢を強めそうである。

 当然、守ってもらうには、費用がかかる。今すぐに日本も「防衛費対GDP比5%」というグローバルスタンダードを押し付けられるとは思わないが、日本のGDP600兆円の5%である30兆円の防衛費負担を毎年強いられる時代が来ないとは言い切れないだろう。

ABOUT ME
FX「外国為替」編集部
FX「外国為替」編集部。たくさんの投資家の人生が、FXのおかげでほんの少し豊かになる—。そんな未来を目指して2022年8月に『外国為替』を創刊。雑誌は全国の書店およびAmazonで発売しています。
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