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詐欺と悪事が蔓延するFX業界浄化への提言[前島隆志×山中康司 インタビュー]

詐欺と悪事が蔓延するFX業界浄化への提言[前島隆志×山中康司 インタビュー]

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海外無登録FX業者に関連する詐欺の被害が後を絶ちません。

外国為替では注意喚起の記事や、事情を知る方々のインタビューなどを通じて情報を発信してきました。

今回は海外FX業者の問題について、正規ライセンスを持って投資助言や自動売買ソフトの販売などを手掛ける株式会社トリロジーの前島隆志代表と、同社の山中康司取締役にお話を伺いました。

両氏からのお話から浮かび上がった、FXの健全な発展のために必要なこととは?

前島隆志(まえじま たかし)氏プロフィール
前島隆志(まえじま たかし)氏プロフィール

投資助言業を営む株式会社トリロジー代表。FXの奥深さから個人投資家の限界を知り、FX互助会的な発想でW2C(ウィンスクエアクラブ)を立ち上げる。1990年松下電器産業に入社から早期退職までの12年間、半導体研究開発に従事。DRAM設計、Flashメモリ−プロセス開発を通じて得たプログラミング技術と最適条件抽出は、現在の投資助言業に活かされている。

山中康司氏の近影
山中康司(やまなか やすじ)氏プロフィール

1959年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。1982年バンク・オブ・アメリカ入行、1989年バイスプレジデント、1993年プロプライエタリー・マネージャー。1997年日興証券入社、1999年日興シティ信託銀行為替資金部次長。2002年アセンダント社設立・取締役。【著書】テクニカル指標の読み方・使い方(日本実業出版社)

聞き手◉鹿内武蔵・本文◉田中タスク

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SNSから誘導され、有名人登場の手口に被害多発

─海外無登録FX業者に関連する被害が多発しているとお聞きしていますが、御社に届けられている事例にはどんなものがありますか?

前島 X(旧Twitter)の「月利100%」というポストを見た人を、公式LINEに誘導、そこで有名人を名乗る人物が話しかけてきて「あなたの100万円がないとファンドを組成できない」として振り込みを急かしてくるといった手口がありました。有名人が言っていることだし、と思って急いで振り込みをするとすぐにロスカットという手口です。

「月利300%」の証拠画像を見せられて、それを信じて100万円を振り込んだら3日で全額を失ったという事例もありましたね。「マックス3ポジしか取らないEAだから」と勧められて入金したらいきなり30ポジ取られて飛ばされた、という事例もあります。

─どれも散々な内容ですね。

前島 公式LINEとはつながっているので、そのことについて抗議をしたら、「Xで被害報告をしようものなら名誉棄損で訴える」といわれたそうです。詐欺師が被害者を訴えるといっているわけで、もう無茶苦茶です。

─こうした事例には共通の傾向はあるのですか?

山中 LINEやSNSなどを巧みに使っている点ですね。呼びかけた人以外にサクラのような役割の人がいて、何となく入らざるを得ない雰囲気を作ってきます。からくりを知っている人であればあり得ないんですが、「FXで儲けよう」という欲があると、それをうまく利用されてしまいます。

 月利数百%といった極端な話が多いことも共通点の一つです。有名人としては実業家のホリエモンさんや村上ファンドでおなじみの村上世彰さんなど、お金を持っていることで有名な人の偽アカウントが多いです。普通に考えたら、本当にその人たちがファンドを組成するのに100万円が足りないなんてことはあり得ません(笑)。

─月利100%、200%というのも現実味がないですね。

山中 そんな極端な話である時点で、おかしいんです。どんな優秀なファンドマネージャーでも毎年倍にできるわけではありません。

 投資の神様、ウォーレン・バフェットでも平均の年間リターンは10%行きません。それが何十年も続いているからすごいんです。年利ではなく月利という言葉が出てくる時点で怪しいと思った方がいいです。

─EAによる自動売買というのも、海外FXへ誘導するツールのようになっています。

山中 自動売買ツールを使うというと、AIのように何かすごいものを使うという印象を与えます。EAを知らなかった人にとっては「新しい稼ぎ方」のように見えて、魅力を感じてしまうのはあると思います。実際には最終的に損をしてしまうEAも多いのですが。

─それも含めて、海外FX業者が詐欺の温床になっているわけですね。

山中 FXの詐欺に遭ってしまった人たちのほとんどは、海外業者絡みです。海外FXといいながら日本人が日本人を騙す仕組みになっている業者が実に多いです。1000倍など極端なハイレバレッジ取引をさせておいて、指標発表後などにスプレッドを一気に広げてロスカット、それを彼らの利益にするというのも常套手段です。

─海外FX業者といいながら、実は詐欺業者である可能性が高いと。

山中 たまたま日本でライセンスを持っていないだけでまともな業者もあるかもしれませんが、そうだとしても国内のFX会社を利用していた方が安全なわけです。仮にまともな業者が存在していたとしても、それを初心者が区別できないことが問題です。

 海外FX業者と関わるのであれば、全てが自己責任です。何があってもおかしくありません。GEMFOREXについても最初は普通の業者でしたが、今はもう出金できない状態です。日本と違って信託保全等の投資家保護が無い業者も多く、預けたお金が戻ってこない覚悟が必要です。

前島 金融庁登録のFX会社には全額信託保全が義務づけられています。万が一その業者が破綻した場合も全額が保全されているため、ペイオフの上限が1000万円である銀行預金よりも実は安心感は大きいんです。

アフィリエイトとIBの根本的な違いとは?

─海外FX業者の暗躍には、IB報酬が深く関わっています。これについてはどう考えられますか。

前島 IBというのは、Introducing Broker(イントロデューシングブローカー)の略です。口座開設で報酬が発生するワンタイムアフィリエイトと真逆で、口座開設者が取引をするたびにスプレッドの一部が報酬になる、ライフタイムアフィリエイトを得る法人、個人のことです。

山中 これが意外にタチが悪いんです。海外の無登録業者が日本居住者向けにFX取引サービスの営業をすることは違法です。その海外FX業者への口座開設や取引を誘導して利益の一部を受け取るには、金融商品取引法(以下、金商法)による第一種金融商品取引業者である必要があります。このことを知らずにIB報酬狙いのアフィリエイトビジネスをしている人がいますが、もし金融庁が本気で摘発をしたら、これらの人たちが罰せられるリスクがあります。

 しかし、当の海外FX業者は日本の法律が及ばないところに本拠地があるので取り締まれません。IBそのものは詐欺ではありませんが、違法な行為に加担してしまっている人はかなりいます。

 少数ですが、分かっていながらも捕まることはないと思ってやっている人もいます。そんな人たちは無知な人をIBに勧誘して、さらに違法行為の片棒を担ぐ人を増やしてしまうわけです。

─僕のところにすら、海外FX業者からの勧誘が来ます。

山中 来ますよね。SNSでフォロワーが多い人、影響力がありそうな人にも勧誘しているので、鹿内さんのところに来てもおかしくありません。

─違法な勧誘の行き着くところは、海外FXということなのでしょうね。

山中 オレオレ詐欺の世界には、一度でも騙された人のリストがあるそうです。海外FX詐欺についても同様で、1回でも騙された人のところにはまた別の案件を紹介するといった勧誘が来て、何回も騙される恐れがあります。

 こういう人たちも、最初から海外FX業者に関わらなければ騙されることもなかったわけです。よく分からないのであれば、最初から手を出さなければ詐欺と出会う可能性もなくなります。

利用者への罰則はないが、今後、勧誘者には摘発リスク

─海外FX業者に関連するFX詐欺について、正規ライセンスを持つ御社の見解をお聞かせください。

山中 利用者が海外FX業者に口座を開いて取引をすること自体に、今のところ罰則はありません。そのサービスを提供している業者は違法であるものの、日本の法の効力は及びません。あくまでも自己責任の世界です。

 そんな中、指定暴力団の工藤会に関する海外FX事案で逮捕者が出た事件がありました。そのときの罪名は、金商法違反です。これまで普通の人であれば逮捕されなかったことですが、反社会勢力がまず見せしめ的に立件されたのかもしれません。このことを見ても、当局が目を光らせていることは確かでしょう。

─外資系と海外FX業者についても、明確に区別する必要がありますね。

山中 海外資本であっても、日本の金融庁に登録しているのであれば問題ありません。OANDA証券やアヴァトレード・ジャパンなどはいずれも正規業者です。無登録営業をしている業者には金融庁が警告を発していますが、国にできることはそこまでです。しかし業者の関係者が日本国内に居住しているのであれば、捕まる可能性があります。非居住者を捕まえることはできませんが、居住者であれば話は別です。そしてそれは、勧誘をしている人も同様です。

前島 口座開設サポートを含めて広告や勧誘などはいずれも店頭デリバティブ取引の媒介行為として、金商法の違反行為(無登録営業)に該当する可能性があります。無登録の海外FX業者は勧誘をしていなくても、国内居住者から注文を受けた時点で金商法第58条の2および金商法施行令第17条の3に抵触します。

 これ以外にもさまざまな点が法律に抵触するので、やはりわけの分からない海外の業者に口座開設などはしないことです。

海外FX被害を根絶できる決定的な手段はない

─これだけリスクや危険性が指摘されているのに、なぜ海外FX業者が依然としてはびこっているのでしょうか。業界を安全、健全にしていくにはどうするべきだと思われますか?

山中 国が規制をしたり個人の権利を制限しない限り、根絶は不可能だと思います。自分たちとしても海外FX業者には手を出さないようにしましょう、としか言いようがありません。

─それでも魅力を感じている人たちは、いったい何をメリットだと思ってしまうのでしょうか?

山中 1000倍など途方もないハイレバレッジ取引ができることや、ゼロカットなどでしょう。100万円単位の資金がある人は考えないと思いますが、10万円など少額で一獲千金を狙いたいと思ったら、ハイレバレッジ取引に魅力を感じても不思議ではありません。それで元手を作って、普通のFXに進出という流れを考えている人が多いように思います。

─FXをギャンブルと捉える考え方ですね。

山中 NISAなど制度面で整備されていることもあって投資というと株で、FXやコモディティ、暗号資産などにはギャンブル的なイメージを持っている人は多いと思います。

 金融リテラシーが向上したら、こういうイメージについても正常化していくんじゃないでしょうか。本来は政府がやるべきことかもしれませんが、まずは業界全体でやっていくべきですね。こういう被害がありますよ、ということを知らしめることも重要な活動の一つです。

─日本のルールでは個人の権利を制限することはできないでしょうね。

山中 これだけ被害が出ているのですから、当局としても動いてほしいと思う部分はありますが、個人の権利を制限することになるので難しいでしょう。

 諸外国ではある程度規制しているところもあるので、参考にして頭を使ってほしいですね。

─海外のFX業者を取り締まることはできないので、やるとしたら日本で勧誘をしている人たちへの取り締まりでしょうか?

山中 そんな動きが起きる可能性はあるでしょう。個人よりも大々的に営業している法人を狙うかもしれません。法人でIB報酬狙いの海外FXアフィリエイトをやっているところは、注意した方がいいです。

─海外FXへの勧誘をする人たちの目的はIB報酬のはず。日本のFXでそれができれば問題を改善できる気もします。

山中 一理ありますが、ハードルは高いでしょう。当局はハードルを上げることはあっても、下げるのは難しいでしょうから。

 アフィリエイトを拡大解釈して一定の要件を満たした人にIBを認めるなどの制度ができれば、可能かもしれません。IFA(資産アドバイザー)の規制緩和と似たイメージです。

─結局は、一人ひとりの金融リテラシー向上が大事ということになりますね。

山中 それについては、国も10年以上前から言ってきました。高校の授業にも導入されましたが、もっと即効性のあることもやるべきです。

 昨年、ある大学で講演をしたんですが、大学の中にも詐欺がはびこっている実態を見聞きしました。自動売買ツールが入ったUSBメモリが30万円で取引されていたり。友達を紹介したらキックバックがあって、10人紹介したら実質タダで手に入るといったように、ほとんどねずみ講のような仕組みです。

 こうした問題も、やはりリテラシーの低さゆえでしょう。マスコミはオレオレ詐欺に関する発信や報道には積極的ですが、それなら海外FXなどの金融詐欺についても積極的に発信していくべきだと思います。

─海外FXに関するリスクやデメリットを発信されている前島さんからも、読者に向けて注意喚起をお願いします。

前島 海外FXのメリットは、数百倍以上のハイレバレッジとゼロカットくらいです。つまり「ギャンブルができる」ということだけです。

 逆にデメリットを数えればきりがありません。国内FX会社と比べてIB報酬があることもあってスプレッドは広いですし、入金する際にもよく分からない決済代行会社の口座に振り込んでから入金されるため、幾重にも手数料が取られた上に為替の分も乗っかってきます。入金されたときには結構減っているということも珍しくありません。

 それなら入金ボーナスは?となるかもしれませんが、100%入金ボーナスがあるからと口座を作って入金したら計画倒産、もちろん信託保全などされていないといったこともあります。破綻しないとしても出金トラブルが無茶苦茶多いことはよく知られていますよね。

 日本人を標的とする無登録の海外FX業者は詐欺の温床であり、信託保全なし、納税なし、雇用創出なし、設備投資なし、といったように日本人にとって存在価値のないものです。こうした海外FX業者へ勧誘する行為は違法であり、国益を毀損する行為と言わざるを得ません。

 くれぐれも利用しないように、また勧誘することで違法行為の片棒を担ぐことがないよう、ご注意ください。

インタビュー日◎2024年2月1日

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FX「外国為替」編集部
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