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FX詐欺の撲滅と不正確な情報の修正、海外FX対策が目標|猪首秀明氏インタビュー[後編]

FX詐欺の撲滅と不正確な情報の修正、海外FX対策が目標|猪首秀明氏インタビュー[後編]

JFX株式会社

日本のFXの生みの親ともいえる猪首秀明さん。
FXの黎明期とそれからの経緯に精通する「生き証人」に、現在のFXに対する思いや問題点を語っていただきました。

ネットに流布する詐欺や誤った情報、そして海外FX業者についての警鐘を鳴らし、本当の意味での金融リテラシーとは何かを教えていただきます。

聞き手◉鹿内武蔵 本文◉田中タスク

猪首秀明氏プロフィール
猪首秀明(いくび ひであき)氏プロフィール

1998年の外為法改正に伴い、ひまわり証券時代に日本初となる外国為替証拠金取引(FX)を商品化させ、その普及に貢献する。2012年に東岳証券の代表取締役に就任。2022年からはWikiFX Japan株式会社顧問の他、複数のFX関連企業の顧問を兼任。延べ3000人を超える個人投資家と接した経験から、個人向けの金融トレード運用アドバイザーとしても活動中。【著書】FX初心者でも問題なし! MT4自動売買スタートマニュアル

■前編記事(2023年10月発売の外国為替vol.7)はこちら

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詐欺や誤情報がFXをダメにする

─今のFX業界について、どんな問題点があるとお感じですか?

猪首 最近よく相談を受けるのが、FXに関連する詐欺についてです。直接の知人だけでなくそれ以外の人からも相談があり、とにかく数が多いです。こうした傾向のせいで、FXと聞いただけで怪しいものと思われている節もあります。

 1998年からブローカー(FX会社)として携わり、投資家と同じ方向を向いて歩ける業界にしたいと思ってやってきました。それだけに、詐欺が多いせいでFXが怪しいものと見なされるのは、あまりに悲しいです。

 2017年の暮れ(12月11日)、ビットコインが当時の史上最高値、1BTC=233万円をピークに下落が始まり、翌2018年はほぼ1年を通じ下げ一貫。同年12月には1BTC=35万円ですから、高値からの下落率はマイナス85%という凄まじい相場になりました。

 2017年の高値をつけたあたりまでは、世の中の空気は「投資といえば暗号資産」「暗号資産といえばビットコイン」「とにかくビットコインを買ってさえいれば儲かる」といったなんの根拠もない楽観論が渦巻いていましたが、この暴落によって多くの個人投資家が冷や水を浴びせられました。

 しかしFX業界にとってはこれが起点(機転)となって、それまで猫も杓子も状態で暗号資産に流れ込んでいた人もお金も、FXマーケットに流れてくることになったのです。

 2017年以降、FXの参加者も全体の取引高も毎年過去最高記録を更新しております。この流れを私はFX業界の第2黎明期だと感じています。

 マーケット規模が大きくなることは、業界人として大変喜ばしいことですが、参加者が増えることにより、残念ながら詐欺案件なども急増していることも事実です。このことで本来FXとは全く関係のない事実や誤認によって、懐疑的に感じている人が増えてしまっているのです。

 この時期にFXに流れてきた人がとても多く、出来高にもそれが表れていました。これがFXの第2黎明期だと感じていますが、詐欺が多すぎるせいでFXそのものに懐疑的な人が増えてしまっているんです。

 詐欺まではいかなくても、ネット上には不確かな情報や浅はかな知識によるいい加減な論調があふれています。そのような情報が堂々と拡散されている状況は看過できません。

─情報は多すぎると取捨選択が難しく、センスがない人、時間がない人は情報の洪水に飲み込まれてしまいます。結局は能力や時間の問題なのかなと感じます。

猪首 明らかに間違った情報があまりにも多く、しかもそれが事実であるかのように流布しています。そのことを考えると、出所不明の情報があふれているネットよりも紙媒体の方が真面目だと思います。

─ネット上の情報は検索によって再生産されます。どこかに書いてあることは拡散しますが、どこにも書いてないことは広がりません。レバレッジや税金についても間違っていたり、情報が足りない記事は多いですね。

猪首 その点、『外国為替』はまともな情報を発信している数少ない媒体だと思います。スペースが限られているだけに掲載する情報も厳選されていて、無駄がない。発信者が明確になっていることもあって、情報に責任を持っているところにも誠意を感じます。

─紙媒体には順序があります。普通は1ページ目から読むので、順序立てて情報を伝えられる強みがあります。もちろんうちも社名が出ているので、いい加減なことを発信すると怒られます(笑)

猪首 ネット情報は、点です。点で尋ねたことに、点で答えが返ってくる。そこに経緯やストーリーは含まれていません。今も新聞が好きなのは、お目当ての記事だけではなく下段部分の広告などから、そのとき注目されているものなどを知る機会があるからです。その意味で新聞には紙媒体としての意義があると思います。

 ネット全盛となっている今の時代であっても本の役割は健在で、何かを成し遂げている人はしっかりと本を読んでいる印象があります。

─本には本の役割が、今もしっかりありますね。その一方でネットの時代では検索力が大事です。検索力がないと、ほしい情報に到達できません。

猪首 ネットの普及によって求められるようになった、新たな能力ですね。その一方で、ネットが普及したことで退化した能力もあります。今どき、手書きで手紙を書くことはほとんどないので、漢字を読めても書けないなんてことは日常茶飯事です。

 Googleマップが普及したことで地図を読めない人も多くなったそうですよ。

─地図の役割、使い方が変わったということでしょうね。今の人は地図の使い方がそもそも全然違ってきています。

猪首 こうして便利になっていくことは悪いことではありません。しかしながら、ネットの情報は玉石混交です。FXに関する間違った情報を鵜呑みにすると損をしてしまうリスクが高いのに、それを訂正しても聞く耳を持たない人が多くなりました。明らかに間違っていても、です。

海外FX業者の本当の姿を知るべき

─海外FX業者についての本当の姿を知るべきと常に発信されていますよね。

猪首 ネット上にある間違ったFX情報の典型例に、海外FX関連があります。例えば、自称「海外FXで儲けている人」のサイト。そこには、どんなに儲けても税率は20%で一律、なんてことが書いてあります。国内のFX会社であれば分離課税なので約20%で正しいですが、海外FXは基本的に総合課税扱いなので、累進課税です。そんないい加減な情報の発信者が「年収1億」なんて書いてるんです。本来であればこの人は5000万円くらいの課税額になっているはずですよね。本当にそれだけ稼いでいれば、の話ですが。

─レベルが低すぎて、論外です(笑)

猪首 これは極端な例ですけど、詐欺関連や不正確な情報がはびこっています。そんなFXの世界をもう一度健全にしたいというのは、第1黎明期を駆け抜けてきた私の願いです。

 明らかな詐欺、明らかに間違った情報。これらを撲滅する必要があることに加えて、問題だと思うのが自称「金融リテラシーの高い人」の情報です。「日本人は金融リテラシーが低いのでもっと投資の勉強を」といった論調をよく見かけますよね。こんなことを言っている人が、金融先進国の米国では、中学校や高校の授業で株とかのチャート分析を教えている、なんて言っているんですよ。そんなことあるか、と(笑)

 こんなデタラメなことを言っている人が、日本でトレード教室を主宰していたりと。もう呆れるしかない。

─チャート分析はあくまでも方法論の一つであって本質ではないですね。

猪首 そうなんです。重要なのは、もっと広い経済や金融の仕組みを知ることです。米国は取引所文化なので、取引所がどんな役割を担っているかといったこともしっかり教育しています。

 この事実をどう解釈したら、チャート分析を教えているという話になるのか。結局、こうした発信者は日本の投資家を煽っているだけなんです。

─投資家を煽って、自分の利益に誘導する「ビジネス」なわけですね。

猪首 米国では子どももチャート分析を学んでいる、なんていわれて不安を感じた投資家に対して自分のスクールやサロンへの入会を勧めるというのも一つの手口でしょう。利益を大きくするために資産のほとんどをFXに投じるなんていうのも、正解ではありません。適切なポートフォリオを構築してリスクを管理しながら利益を最大化するのが正しい金融リテラシーです。

─海外FXを肯定する人たちはIB報酬など自分に何らかのメリットがある人です。海外FXのメリットとされるハイレバレッジやゼロカットもメリットとは感じられないです。

猪首 全くの同感です。日本では個人口座の最大レバレッジが25倍ですが、これでも十分ハイレバレッジです。

─海外FXの施策はどれもギャンブル的な要素を強めるものばかりで、トレードの上達に資するものではないかと。上級者向けすぎますね。

猪首 百歩譲っていえば、そうですね。上級者にしかメリットとはならないでしょう。海外にはFXの経験年数や取引回数によって、プロ認定された人だけがレバレッジを高くすることができる制度を設けている国があります。ハイレバレッジ取引にはそれだけの能力や資質が必要だということです。

 金融先進国と比べて日本のレバレッジ規制は理不尽だという意見もありますが、実は金融先進国ほどレバレッジ上限は低いんです。米国や英国ではおおむね20倍や30倍程度です。米国や英国は誰もが認める、金融先進国ですよね。その一方で500倍や1000倍といったハイレバレッジを売りにしている会社ほど、金融レギュレーションは低いといえるのではないでしょうか。

 ゼロカットも海外FXのメリットと称されていますが、そもそもゼロカットに引っ掛かってしまうようなポジションの持ち方がヤバいんです。ゼロカットがあるから安心と思っていること自体がおかしいことに気づくべきです。

─海外FXはNDDだから安心という意見がありますね。これについては逆だろうと思いますが、いかがですか?

猪首 そうですね(笑)。海外FX業者の中には、100%インターバンク市場に直結しているので信用できる、なんていっているところもありますが、実際そんなFX会社は皆無です。インターバンク市場の最低取引単位は、100万通貨です。個人投資家から出される1000通貨の注文をインターバンク市場でどう約定させられると思うのか?という話です。

 結局、そんなことを喧伝するのはIB報酬狙いの連中です。まことしやかに情報が拡散しているので事実であるかのように感じてしまう人が多く、今も海外FXに関する多くの誤情報は事実としてまかり通っています。

─出金トラブルも多発しています。

猪首 最初から1円も返す気がない海外FX業者がある以上、出金トラブルが起きるのは当然です。そもそも国内でFXビジネスをできなくなった日本人が海外で作った悪質な会社なのですから。詐欺もFXのあだ花といえますが、詐欺を働く連中もどこかのFX会社と組む必要があります。国内のまともなFX会社がそんな連中と組むわけがなく、結局は海外FX業者と組んで悪事を働くわけです。

 今、私のもとに寄せられるFX関連のトラブル相談はほぼ海外絡みといっていい状況です。

─日本国内のFX会社は厳しく管理されているので、そもそも悪いことはできませんよね。

猪首 厳しく管理されているから悪いことをしないというのは少々寂しい動機ではありますけどね(笑)。しかしながら、日本の規制が世界一厳しいというのは事実だと思います。取引所文化である米国では取引所への信頼は絶大ですが、相対取引への信用はそれほどありません。FX会社よりもシカゴのIMM通貨先物取引を好む人が多いのも、一つの証拠です。日本では取引所と相対取引があまり区別されていませんが、それにはFX会社への厳しい規制があるという環境も関係していると思います。

─そもそも海外で通貨を取引するのは金持ちだけというイメージがあります。

猪首 通貨だけでなく株も先物も、海外では1枚の取引単位が大きいです。米国の農産物取引では1枚が日本円で70万円以上になることもざらです。そんな常識を見てきたので、最近のFXイベントで若い人の姿が多いことには驚きます。20代、30代の人も珍しくありません。FXが個人投資家にとって身近な存在になったことの証左ですが、だからこそ詐欺の撲滅や間違った情報の修正にはこだわりたいです。

 私が今後取り組んでいきたいことを整理すると、①FX詐欺の撲滅、②明らかに不正確な情報の修正、③金融リテラシーと称する不正確な情報の修正、そして④海外FX業者の日本での活動をなくすことです。

─先ほどから登場している「海外FX」という呼称なんですが、これだと海外旅行みたいで楽しそうにも感じるじゃないですか。海外であることが問題の本質ではないので、何か別の呼称はないですかね。例えば「無免許FX」みたいに。

猪首 それ、いいな(笑)。海外であることが問題の本質ではありません。海外資本であっても金融庁に登録をしている正規のFX会社はちゃんとあります。そういった正規の会社と区別するためにも、声を上げていくべきです。

 海外FX業者の中には日本のFX業者よりも資金力のあるところもあります。そんな業者が資金力を発揮して、海外FX養護派という名の怪しげなビジネスマンを創り出してしまっています。

─海外FXの中でも昔から日本で馴染みのあるような業者であればまだまし、という意見もあります。これについてはいかがですか?

猪首 聞いたことがないような名前のところは、もちろん論外です。ですが、会社が大きいから、昔から馴染みがあるから安心ともいえないと思います。日本の金融庁は、日本国内でFX取引サービスを展開するのであればちゃんと登録してくださいと海外に向けても発信をしています。海外FX業者はもちろんこのことを知っているので、登録の必要性を知りながら無視しているわけです。外資系であってもきちんと登録している業者があるのに、その一方で必要なことをせず無視し続けているスタンスは看過できません。資金力があるから大丈夫、馴染みがあるから大丈夫、ではなく、そのスタンスが問題なのです。

 預かり資産の取り扱いについても、日本以上に安全なスキームはないでしょう。かつてスイスフランショックが起きたときには世界的な大手だったアルパリが破綻しました。そのせいで投資家も大きな損失を被りましたね。FXの世界ではこういうことが起きるので、投資家保護の姿勢はとても重要なんです。海外FX業者にそんな気があるはずはないのに、それでもお金を預けられますか?というわけです。

─今後のFXの発展のためにもご活躍をお祈りいたします。

猪首 ありがとうございます。FXの「生き証人」として、これからもFXが安心、安全なものになるよう、積極的に活動していきます。

─ありがとうございました。

インタビュー日◎2023年9月20日

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FX「外国為替」編集部
FX「外国為替」編集部。たくさんの投資家の人生が、FXのおかげでほんの少し豊かになる—。そんな未来を目指して2022年8月に『外国為替』を創刊。雑誌は全国の書店およびAmazonで発売しています。
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