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松崎美子氏プレミアムインタビュー「ロンドンで見た『世界の為替の中心』そこには自分で相場を動かすプロがいた」

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海外の銀行で為替ディーラーを務め、今はロンドン在住。個人投資家として自身のトレードだけでなく、経験から得た情報の発信にも注力する松崎美子さん。

「相場は自分たちで作るもの」という、日本では考えられないようなディーラーの世界で見たこと、感じたこと、そして日本の個人投資家に向けてのメッセージを存分に語っていただきました。

松崎美子(まつざき よしこ)氏プロフィール
松崎美子氏プロフィール

まつざきよしこ。スイス銀行東京支店へディーラーアシスタントとして入行。結婚のため渡英。バークレイズ銀行本店ディーリングルームに勤め、日本人で初めてのFXオプション・セールスとなる。1997年には米投資銀行メリルリンチ・ロンドン支店でFXオプション・セールスを務め、2000年に退職して数年後より、個人投資家へ。ブログ、セミナー、コラム、YouTubeを通じてロンドンや欧州の情報を日々発信している。
【著書】FXファンダメンタルズの強化書──情報を利益につなげる実践の読み方・使い方/松崎美子のロンドンFX (金融の聖地で30年暮らしてわかった日本人が知らない為替の真実)他

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陽和ななみ(ひわ ななみ)氏プロフィール
陽和ななみ(ひわ ななみ)氏プロフィール

女優/投資家、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。手塚宏二事務所所属。女優業の傍ら19歳から投資を学び、20歳から実践。既に6年の投資歴を持つ。現在は日本株や米国株、FX・CFD等を自身で運用し、チャート分析を基にそれぞれの金融商品で実績を上げている。松井証券「カンニング竹山のFXトーク」、SBI証券「マーケット超特急」など各証券会社の番組で活躍をみせる。2022年はFXで3000pipsを達成するなど、投資家としての実績も折り紙付き。

本文◉田中タスク

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出る杭が打たれる日本から出る杭が伸びる英国へ

陽和ななみ(以下:陽和) 今回は初の女性ゲスト、そしてロンドンと中継で繋いでのインタビューという、初づくしです。海外の銀行でFXセールスとして活躍して、今もロンドン在住。とにかくカッコいいところ目白押しの松崎美子さんです。

 あまりにも輝かしい経歴をお持ちの松崎さんですが、今は個人投資家としてロンドンで活動されているのでしょうか?

松崎美子(以下:松崎) 自分のトレードに加えて、FX会社のコラムを書いたりといった情報発信活動が中心です。あまり表には出していませんが、オンラインサロンの運営もしています。

陽和 海外暮らしが長いですが、いかがですか? 日本とはどんなところに違いを感じますか?

松崎 もう全然違いますよ。イギリスは個性のある人が多くて、人と違ってナンボです。人と違うことが「出る杭」となる日本が生きづらいと感じたので、私は出ました。こっちではそれがデフォルトです。日本のような同調圧力はありませんし、そもそも誰も人のことなんて気にしていません。

陽和 子どものころから海外への憧れはおありだったんですか?

松崎 子どものころ、近くに商社のアメリカ人駐在員が住んでいたことがきっかけの一つになっていますね。あのカルチャーショックは人生を変えたかもしれません。

陽和 今では念願かなって、快適なロンドン生活という感じですか?

松崎 日本を出ても結局同じ島国のイギリスにいるわけですが、同じ島国でもアプローチが全然違うので、のびのびやらせてもらってますよ。

陽和 女性で投資家、海外で活躍。そんな憧れが止まらない松崎さんに、恒例の10の質問をさせていただきたいと思います。

10の質問

陽和 それではいきます、ぜひ直感的にお答えください。


Q1 株よりもFXのほうが面白い。
A1 それは、両方面白いです。

Q2 ポンドが好きだ。
A2 イエス、大好きです。

Q3 短期トレードよりも中長期トレードが好きだ。
A3 イエス。

Q4 FXではファンダメンタルズが最も重要だと思う。
A4 イエス。

Q5 FXは勉強すれば誰でも勝てるようになると思う。
A5 ノー、そうは思いません。

Q6 こういう局面であれば勝てるという得意なパターンを持っている。
A6 イエス。

Q7 過去に大負けをしたことがある。
A7 イエス、あります。

Q8 女性にもっともっと投資をやってもらいたいと思っている。
A8 イエス、ものすごく思っています。

Q9 日本人にもっともっと投資の勉強をしてもらいたいと思っている。
A9 イエス。

Q10 投資をやってきて良かったと思う。
A10 イエス、そう思ってまーす。

陽和 ありがとうございました。松崎さんというとFXのイメージが強いですが、株もおやりになるんですね。

松崎 私が若いころはバブルの始まり。極端な話、株を買えば誰でも儲かる時代だったんです。20代の半分以上は会社で働きながら個別株投資、それで生計を立てていた感じでしたね。

陽和 それが今ではFXがメインということですか?

松崎 その時その時の趨勢に合わせて変えていっています。今は9割がFX、1割が株価指数です。

陽和 今の9割を占めるFXですが、松崎さんにとってFXとは何だと思われますか?

松崎 株は個人でやっていただけですが、FXは銀行で仕事としてやってきましたから。FXは自分が頑張った分だけ数字に表れるので、やりがいがあると思います。

陽和 やっぱり、日本のFXとロンドンのFXでは全然違うんですよね。

松崎 もう、比べちゃいけないレベルです。日本にいたのは30年以上前なので今は変わっているかもしれないですけど、当時の日本でのFX取引は実需をこなすためのものでした。ロンドンは自分でトレンドを作っていかないと続きません。チャート右側の白紙部分を作っていくのが、ロンドンのディーラーです。この時点でマインドから全てが違うと感じます。

FXの重要な情報は英語、日本人はスキャル向き?

陽和 勉強すれば誰でも勝てるわけではない…私としては衝撃のお答えでしたが、やはり難しいですか?

松崎 株や為替、さらには自分でトレードせずに人に任せたほうがいい人など、人によって向いているものは違います。常にポジションを持っていないといけないような人はFX向きではないと思います。自分のお金が減ることに恐怖を抱く人も、そこに気持ちを持っていかれてしまうので、あまり向いていないかもしれませんね。FXをやっているから偉いわけではないので、向いていない人は無理にやることもないと思います。あとは、勉強することを厭わない、その手間と時間を惜しまない人は向いていると思います。

陽和 どんな勉強が効果的だと思われますか?

松崎 中長期的に為替はファンダメンタルズで動くものですが、その情報はまず英語で届きます。日本人は英語への苦手意識が強いので、それならチャートパターンや得意パターンなどから短期的な利益を狙うスキャルピングのほうが向いているかもしれません。

陽和 ファンダメンタルズを勉強しようと思ったら、何から始めるのがいいですか?

松崎 一番手っ取り早いのは経済指標、その中でも金融政策です。中央銀行の総裁や理事など、要人の発言を微妙な行間まで読み取れるようになることを目指してほしいです。

 同じ人をウォッチしていると、同じような英語の文章でもニュアンスの違いに気づくことがあります。7月のパウエルさんの議会証言は明らかに変わった、それなら次のジャクソンホールではどうなる? その後のFOMCでは? というように時系列を追っていくと、変化を察知しやすくなります。利下げ回数がどうなるかなど、今後しばらくは見どころいっぱいです。

 ファンダメンタルズを勉強していくと、このように見るべきところが分かってくるので、面白いですよ。

陽和 たくさんの要人がいますが、今注目するのはやはりパウエルさんですか?

松崎 基軸通貨の要人という意味では、パウエルさんですね。それに加えて、個人的にはミネアポリス連銀総裁であるカシュカリさんにも注目しています。彼って利上げのときにはタカ派、利下げのときにはハト派になる人なんです。そんな彼はまだタカ派なので、いつハト派になってくるかは要注目です。

陽和 局面に応じて意見が変わる人がポイントなんですね。

松崎 各中央銀行にそういう人がいるので、私はそこに注目しています。こういう人の発言が変わると、他の人も追随することがあるんです。そうなると予測を立てやすくなってきます。

陽和 勉強すれば勝てるかの質問にノーと答えられましたが、本気でやるのであればイエスということで良いですか?

松崎 良いと思いますよ。実際に、そういう人もいます。本気でやるとなると勉強と研究に専念する必要がありますが、会社員の人だと時間が足りないですよね。それなら週末などに勉強するというように上手く時間と手間を使ってほしいと思います。絶対にやってはいけないのは、コピートレードです。絶対に伸びません。

陽和 SNSで誰かが発信している情報に乗っかる人はいますよね。それで勝てる人はいないということですね。

松崎 乗っかろうと思う時点で失格だと思います。FXをなめてるんじゃないかと思っちゃいますね。他人の意見、ポジションは他人のもの。乗っかるだけだとどこで損切りするのかも分からず、シナリオが組み立てられているとはいえません。極端な話、その人がいなくなったら終わりです。

3回やられたら入らない。3年間我慢したことも

陽和 松崎さんは、ポジションはどのくらい持たれるんですか?

松崎 短いときで1か月から2か月、長いと9か月くらいです。損切りになったときはもっと短いこともあります。

陽和 損切りについては、どうお考えですか?

松崎 損切りありきで、そこからポジションサイズを決めるようにしています。損切りの位置と入る位置が大きく離れているときは、小さいポジションでしか入れないことになります。

陽和 損切りポイントはどうやって決められているんですか?

松崎 前回安値などの節目を意識して、それをブレイクしてしまったら相場が崩れたと判断します。3回連続でやられたときは、やばいなと思ってしばらくトレードしないようにしています。

 ただ、その後に自分の思っている方向に進んだ場合は、それでポジションを持っていないというのもダメなので、遅れても入るようにしています。

陽和 トレードの失敗でメンタルをやられたりはしませんか?

松崎 ありますよ、大きく資産を溶かして入院したこともあります。デスクトップPCの上に風呂敷をかけて見えないようにして、電源も抜いて、トレードできないようにしました。そのときは3年くらいトレードができなかったですね。

陽和 3年!? それだけできない時間が続くと、もう違うことをやろうとは思わなかったんですか?

松崎 FXはライフワークなので、辞める選択肢はなかったですね。自分にはこれしかありませんし。

自分たちが相場を作る、それがロンドン市場です

陽和 そもそも松崎さんは、なぜ為替ディーラーになろうと思われたんですか?

松崎 東京時代も外資系で働いていたんですが、銀行の一番端っこに違うことをやっている部屋があったんです。何をやっているのか聞いたら、為替ディーラーだと。ディーラーって何?と聞くと「女の仕事じゃない」と言われました。

 それなら絶対やるしかないと思って、銀行を辞めたんです。日経新聞に載っていたディーラー募集に応募、2社のうち1社に合格したので入社したのが始まりです。

陽和 ディーラーとして入社すると、どんなことを教わるんですか?

松崎 入ったときは売りも買いも何も分かりません。何か手法を習うといったことはありませんし、そもそも手法らしい手法もありません。そのときのマーケットの流れやファンダメンタルズ情報を分析して、自分でポジションを取ることから始めました。「ナントカ手法」みたいなものはディーラーの世界にはないです。

陽和 先ほど「相場を自分で作っていく」とお話しになりました。これって、どんな感覚なんですか?

松崎 ディーラーって、狙った方向にとことんやるんです。思っている方向につついてみて、そこに行くようであればどんどん行っちゃえ、という力づくの感覚です。

陽和 個人的に、東京のトレンドがロンドンで逆になると感じることがあるんですが、そんな傾向はあるんですか?

松崎 逆に行くこともありますね。ただ、ディーラーは目先の動きを追っているわけではないので、むやみにアジアの動きの反対にしようというわけではありません。私の肌感覚では、NYのほうが逆になる傾向が強いのかな、なんて思うこともあります。

陽和 国による気質の違いもあるということでしょうか?

松崎 そうですね。やはりロンドンとNYは違うと思います。ただ、市場としてロンドンを超える市場はないと思っています。絶対自分たちが相場を作っていくというプロ意識、これが本当にすごいんです。これを目の前で見られたことは、私自身も良かったと思っています。

陽和 そのプロ意識、やるからには勝たなければというものですか?

松崎 そうです。日本ではオリンピックに対して「参加することに意義がある」といいますが、イギリスは違うんです。勝たなければ意味がないんです。かつては全然メダルを獲れない国だったんですが、20年かけて金メダルが獲れる国にする方針を立てて、国を挙げて強化に取り組んできたんです。その結果、世界で2番目に金メダルを獲れる国になった。この国には、そういう強みがあるんです。普段は9割がダメな国ですが(笑)。

陽和 ディーラー時代に最も苦労したことは何ですか?

松崎 英語。これに尽きます。英語はカナダの学校で習いましたが、アメリカ英語とも違っていました。しかもイギリスに来ると、これまた同じ英語とは思えないほどアクセントが違うんです。ディーリングルームでは色んな方言が飛び交っているわけですが、マーケットで何かが起きて皆が騒いでいることがあっても、何のことなのか分からなければ翌日クビになるような世界です。

 苦労はしましたけど、英語が分かるようになってからは、楽しさしかないです。

陽和 逆に、ディーラー時代に一番良かったことは何ですか?

松崎 ソロスさんのポンド危機を目の前で目撃できたことですね。本当の意味でのヘッジファンドや年金の人たちとも出会えました。日本人で英語のコミュニケーションができる人材ということで、円に興味を持っている人たちに満足してもらえたことにも幸せを感じました。

陽和 円って興味を持たれているんですね。それはなぜですか?

松崎 金利がないからです。ほぼゼロ金利で資金調達ができるのですから、興味を持たれるのは自然かなと思います。世界を見回しても金利がない国はありませんので。

陽和 円は利上げをしても当面は金利差が大きいでしょう。となると市場の状況は変わらないとお考えですか?

松崎 円売りのポジションはヘッジも含め、莫大な額になっているので、利食い(円買い/外貨売り)が入れば、大きな調整を強いられます。今のところは、日本の長期金利が2%を超えるとは思っていません。逆に、もし日本の長期金利が2%を超え、もう一方のアメリカで利下げがあって長期金利が3.50%くらいになると、金利差は1.50%です。こうなると円売りの手仕舞いが世界規模で加速するだけでなく、新たな円買いも起きると思うので、円高/外貨安の動きは驚くほどのマグ二チュードとなるでしょう。

損切りレベルがあやふやなトレードは最初からしない

陽和 ディーラーを辞められて個人投資家に転身されたわけですが、そこで感じた一番の違いは何ですか?

松崎 オーダーが見えないところ。今も個人のオーダーは見えますが、中央銀行やヘッジファンドのオーダーとは桁が違いますから。飛行機に槍で立ち向かうような無力さを感じました。

陽和 それだと最初はなかなか勝てなかったんですか?

松崎 それがね、最初から勝ってしまって。それがその後大きく溶かしちゃうことにつながりました。最初に負けとけば良かったのに、3か月で資金が8倍になって、私すごいんじゃないか?と。

 そんなとき、損切りを置かずに3週間アメリカに遊びに行ってたんです。電話やネット上の操作でポジションを閉じることもできたんでしょうけど、それをせずロスカットです。資金管理ができていなかった自分を責めてしまって、入院です。

陽和 そこでまたやろうと思うところが、カッコいいです!

松崎 別れた旦那さん、初めは同業者だったんです。入院して退院して、「2年ほど仕事をしていないお前を見ているのは辛い」と言われまして。「何にも興味を示さない人間を見ているのも辛い」と言われて、これは言ってもらって良かったですね。

陽和 それもあって、損切りや資金管理を重視されているわけですね。

松崎 損切りレベルがはっきりしないトレードはしません。9勝1敗でも全部をなくすことがあるのがFXです。資金管理なくしてトレードはできません。

陽和 何か一つ、実践されている資金管理ルールを教えてもらってよろしいですか?

松崎 パクリになってしまいますが、『マーケットの魔術師』という本に出ていたルールを真似しています。1回のトレードで3%負けたら損切り、3回続けて負けたら1週間休む、といった具合です。

 だいたい1回目や2回目はやられて、それを踏まえて3回目、4回目で花開くことが多いです。2回目まではマーケットのセンチメントと自分の考えとの乖離を見るような感じですね。

得意パターンは「〇〇危機」

陽和 得意な勝ちパターンをお持ちだとのことですが、それはどんな勝ちパターンですか?

松崎 一番勝てるのは、「〇〇危機」です。ロンドン在住で、英語のニュースを活用していち早く情報をキャッチできることは私の強みなので、それを活かしやすいのが、例えば「ギリシャ危機」のような出来事です。

陽和 「〇〇危機」を狙う場合、やはり渦中の通貨を売るのですか?

松崎 例えば「ギリシャ危機」であれば、舞台であるヨーロッパからどこにお金が流れるのかに注目します。アメリカや日本も選択肢ではあるんですが、お金って近くの国に流れるんです。そうなると狙い目はポンドとスイスフラン。ユーロ売りポンド買い、ユーロ売りスイスフラン買いといったトレードですね。

 ただ、スイスは為替介入の可能性があるので、その意味では介入のないユーロ売りドル買いという選択肢もアリでしょう。

陽和 介入というと、今年は日本でも介入がありましたが、円もやりにくいですか?

松崎 円はもう悲しい通貨になってしまったので、トレードしていません。軍事にしろ、政策にしろ、決められない国の弱さが出てしまっています。

 そういう意味ではポンコツながらもイギリスは戦ってくれる国、守ってくれる国だと思います。

陽和 日本の個人投資家はドル円から始める人が多いですが、何かおすすめはありますか?

松崎 情報収集が日本語ということだと、円絡み以外は難しいかもしれません。今では翻訳ツールやChatGPTもあるので、こういうものを利用して英語の情報源にも触れてほしいと思います。

陽和 思い出に残るトレードは、ありますか?

松崎 やっぱり「ギリシャ危機」ですね。ギリシャがEUに加盟する際に、数字の嘘をついていました。それが発覚して、その時は10秒に1回くらいのペースで英語のニュースが流れてきて、ずいぶんトレードにも役立ちました。

 2009年からの下げ、最初は取れていなかったんですが、何かおかしいな?と思い始めました。その後、イタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガルへと危機が飛び火して、ユーロは雪崩のように下がってきました。私はこのあたりから取れています。

 その後、2012年に欧米4か国の首脳が密室で会合し、ユーロを守ることを決めました。それをドラギさんに投げて「ユーロを守るためなら何でもやる」という発言が出ました。このあたりからユーロの買いに転じました。

 途中で反転することもありましたが、下げのときは下げ、上げのときは上げしか考えないので、どちらかの目線だけでトレードしています。

陽和 日本の個人投資家に人気の新興国通貨についてはどう思われますか?

松崎 銀行時代、ある新興国について、その通貨の価値が強いので絶対にもっと弱くするべきだと考えたヘッジファンドが、ドル買い/その通貨売りをとんでもない額でやったことがあるんです。当該国の中央銀行から電話があって、うちの通貨を売っているのかと聞いてきたくらいです。

 しかしその電話の30分後くらいに、マーケットがピタッと止まりました。なぜ? と思っていたら、その当該国が為替市場を閉めますというヘッドラインが流れてきました。膨大なポジションを持っていましたが、もう何もできなくなりました。

 あれ以来、絶対に新興国通貨は触らないようにしています。スワップが高いので魅力的かもしれませんが、突然取引できなくなるリスクと背中合わせです。スワップ狙いも、ほどほどに。

陽和 最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします!

松崎 「億トレ」は目立ちますし、誰もが目指したくなりますが、誰でもなれるものではありません。そのために心臓がバクバクするようなポジションを取るのは良くないので、くれぐれも資金管理ありきで丁寧にいきましょう。

 そもそもFXにせよ株にせよ、向いている人、向いていない人がいます。向いていないことに努力しても自信をなくしますし、もっと人生を楽しんでほしいです。他人と比べず、自分の身の丈に合ったことをやるのが一番はないでしょうか? 『外国為替』のインタビューでこれを言うのは変ですが、FXがなくても生きていけます(笑)。なので、FXをやるなら楽しんでほしいです。楽しくなければ続きませんし。

インタビュー日◎2024年7月11日

ギリシャ危機当時のユーロドルを振り返る

ユーロドル週足チャート
Screenshot

 ギリシャ危機は、2009年に発覚した同国の財政問題がきっかけとなり、ユーロ圏全体に広範な影響を与えました。ギリシャは、手厚い社会保障制度と過剰な公務員雇用により、財政赤字が深刻化していましたが、前政権がその実態を隠蔽していたため、2009年10月の政権交代で赤字の深刻さが露見。ギリシャ国債の格付けが引き下げられ、投資家の間で同国の債務返済能力に対する不信感が広がり、国債の利回りが急騰しました。

 この状況は、ギリシャのみならずユーロ圏全体に影響を及ぼし、ユーロの信頼性が揺らぐこととなりました。ギリシャ危機を受け、ユーロ圏ではユーロ安が進行し、為替市場が不安定化。ユーロ圏全体での統一通貨への懸念が高まり、ユーロ圏諸国の財政健全性に対する市場の目が厳しくなりました。これにより、他の南欧諸国への波及リスクも高まり、欧州全体で金融市場の動揺が広がったのです。

 EUとIMFはギリシャに対し、緊縮財政を条件に支援を行いましたが、ギリシャ国民の反発は強く、国内の政治情勢も不安定化しました。特に、2015年に誕生したチプラス政権は、反緊縮を掲げ、EUとの対立が激化しました。この際、ギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥るリスクや、EU離脱の可能性が高まり、ユーロ圏全体への悪影響が懸念されました。

 最終的にギリシャはEU側に譲歩し、金融支援プログラムが実施されましたが、その後もユーロ圏の経済は長期にわたって低迷。ユーロの信頼回復には時間を要し、ユーロ圏の金融システム全体の脆弱性が浮き彫りとなりました。この危機は、ユーロ圏にとって統一通貨のリスク管理や各国の財政統制の重要性を再認識させる契機となり、欧州全体での経済的協調の必要性を浮き彫りにしました。ギリシャ危機は、単なる一国の問題に留まらず、ユーロ圏全体の金融安定性と統一通貨の未来を揺るがす重大な局面として歴史に刻まれています。

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FX「外国為替」編集部
FX「外国為替」編集部。たくさんの投資家の人生が、FXのおかげでほんの少し豊かになる—。そんな未来を目指して2022年8月に『外国為替』を創刊。雑誌は全国の書店およびAmazonで発売しています。
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