FXに関する著書多数、投資家教育を精力的に行う鹿子木健さんが提唱するのは、自分なりの勝ちパターンを持つこと。そうすることにより、FXをランダムなギャンブルから、堅実な資産運用に昇華できるといいます。
今回は、FXのトレードにおいてできること、できないことを整理しつつ、資金管理の土台になる部分について解説してもらいました。
本文◉鹿子木健
FX取引の棚卸しをして何ができるか把握する
いきなりですが、FXのトレードをするときの流れを書き出してみます。
- 相場が動く方向を予想する
- エントリーをする
- 決済をする
思いっきり簡略化すると、こういう感じじゃないかと思いますが、より細かく見ていきましょう。
①では、これから上がるのか、下がるのかといった方向感に加えて、いつごろ動き出すのか、いつまで動くのかといった時間の判断、どれくらいまで動くかといった価格水準の判断も入ってきます。
もちろんそれ以前の話として、どの市場に投資するのかという銘柄選定もこのフェーズで行います。
②では、どの通貨ペアを、どの価格、どのロット数でエントリーするかを決めます。価格指定をしてのエントリーも可能です。
③では、どの価格でポジションを手放すか決めます。エントリー時より利益が出ていれば利食い、損失が出ていれば損切りになります。こちらも価格を指定しての決済ができます。
このように一口にトレードをするといっても、いろいろな要素が絡み合っていることを整理しました。
さて、これら一連の流れの中で、私たち投資家にできることは何かといえば、「どの銘柄を取引するか」「売買価格の決定」「取引ロットの決定」だけとなります。
「どの銘柄が上がるか、下がるか」「いくらまで上がるか、下がるか」「いつまで上がるか、下がるか」といった部分は、投資家がどうこうできることではありません。つまり、誰にもコントロールできないことなのです。
どうにもならないことに固執しても意味がない
それにもかかわらず、自分にはどうにもできないことに、一喜一憂している人が非常に多いように感じます。特にこの傾向はTwitterなどSNSに強く、「これから上がってほしい」「そろそろ下がるだろう」「これ以上、上がるとロスカットになってしまう…」というような、むき出しの声に接する機会が多くあります。
ですが、このあと相場が上がるか下がるかは誰にも分かりませんから、事前にシナリオを立てることはできても、値動きは全て受け入れるしかありません。
そして、こういったネットの声の多くをよく見ると、ほぼ全てが既にポジションを保有している状態であることに気付きます。ノーポジションなら、ここまで強く相場の動きを祈ることはなかなかありません。もう持っているポジションが、なんとか利益になってほしい、これ以上の損失にならないでほしいという願望が多いわけです。
繰り返しますが、値動きを制御することは誰にもできません。エントリーしてしまったら、利益確定になるか、損切りになるかの2通りの結末どちらかになるだけです。自分でどうにもならないことを祈っても、投資結果が良くなることは残念ながらないのです。
数字の管理がトレーダーの仕事
私たちができる「どの銘柄を取引するか」「売買価格の決定」「取引ロットの決定」のうち、後ろの二つをよく見てみると、どちらも数字が絡んでいることが分かります。いくらでエントリーし、いくらで決済するか。どれくらいのロットでトレードするか。また、一度に全ロットを売買するのか、あるいは分割エントリー、分割決済をしていくかも重要です。
こういった数字の管理を、私はまとめて「資金管理」と呼んでいます。資金管理というと、損切りをイメージする人が多いように思いますが、損切りだけが資金管理ではありません。投資に使える全資金の中で、どれくらいの割合をトレードに投じ、1回のトレードでどれくらいのリスク、リターンを想定し、どの程度の勝率や利益率を想定するかといった、数字、お金にまつわること全てが資金管理です。
そしてこの記事で一番重要な部分ですが、相場が上がるか下がるかは分かりませんから、こういった数字のマネージメントで利益を狙っていくことこそ、FXの本質です。つまりトレード=資金管理であると私は考えます。
「手法は何でも良い」の理由がここにある
私は相場の分析やエントリー、決済の基準にボリンジャーバンドを使いますが、別のやり方でも全く問題ないと思っています。たまたま私がボリンジャーバンドが得意で好きだから使っているだけで、投資家それぞれが自分に合ったものを使えば良いと思っています。
またネットの話になりますが、チャート分析からのトレードのタイミングだけにフォーカスしている人が多いようです。いわゆるトレード手法です。もちろんトレード手法は重要ですが、先ほど述べたトレードの流れの中にある一要素に過ぎません。
トレードは資金管理こそ大切で、いつ買うか、いつ売るかだけという単純な方向感だけでは、安定した資産運用を実現できません。相場の動きは上がるか下がるかだけですが、二人に一人が成功していないのは、資金管理の考え方がしっかりできていないからです。多くの成功している投資家が「手法は何でも良い」と言うのは、こういった理由があります。
資金管理は奥深いですが、まずは「エントリーをする前に、損切りになったらいくら負ける、利食いになったらいくら勝つ」というお金の計算をする習慣をつけてください。そのトレードが勝つか負けるかは分かりませんが、勝っても負けても想定通りになるよう計画を立てていくことが資金管理の第一歩です。
FX雑誌「外国為替」vol.13
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