この記事の目的は、リピート系自動売買の理解を深め、誤解を解くことです。
複数の有力なFX会社が提供しているため、メジャーなサービスの部類に入るはずです。にもかかわらず、独特の世界観があるからか、なかなか理解が難しい一面があります。
この記事がリピート系自動売買理解の突破口になりますように。
本文◉外国為替編集部
裁量ともEAとも全く違う概念
MT4やMT5のEAを使った自動売買とは別に、リピート系と呼ばれるタイプの自動売買は独自の発展を遂げています。ですが、どういった運用であり、どんなメリットやデメリットがあるのかが、いまいち理解されていない現状があるのではないかと思います。
確かに、リピート系自動売買は裁量トレードとは正反対の性質を持っています。EAの自動売買は、本質的には裁量トレードの自動化&ブラックボックス化です。よって、リピート系とEAは、自動的にトレードされる点以外に、類似点はほとんどありません。全くの別物なのです。
相場は追わない、最初から待っている
リピート系自動売買において最大の特徴は、相場の動きに合わせて売買をするのではなく、最初から注文を入れておき、値動きを待ち構える点です。そのため、注文が入っている価格帯での推移であれば、細かい値動きはあまり収支に影響を与えません。ただし、ボラティリティは利益に直結します。たくさん動いて、たくさん注文にヒットすれば、それだけ利益確定回数が多くなります。
狙うレンジから逸脱しないために
リピート系自動売買においては、注文が入っている価格帯内での値動きが続くことで、利益が蓄積されていきます。ということは、その範囲から逸脱しないことが非常に重要です。
それでは、どうすれば価格が設定範囲内に収まるのか。まず、レンジ相場になりやすい通貨ペアを選択することが大切です。
もう一つは、広い範囲に注文を仕掛けることです。狙う範囲が広いほど、当然そこからはみ出しにくくなります。もちろん、資金に余裕を持たせて、ほぼほぼ強制ロスカットにならない資金管理が前提です。
等間隔に並ぶ各注文が複数回利食い
外国為替ではリピート系自動売買という名称で統一していますが、海外ではグリッドトレードと呼ばれるなど、複数の呼び名があります。この自動売買は、広範囲に注文を等間隔(グリッド)で並べ、それぞれの注文が何度も利益確定する仕組みで、範囲内の変動を利益に換えていくことを目指します。あらかじめ注文が入っているわけですから、その範囲の値動きが続くことが望ましく、レンジ相場と相性が良いです。なお、国内のFX会社では、自社オリジナルの売買システムとして提供されていることが多いです。
自動売買ができるFX会社
長い目で見れば戻ってきやすいFX向き
P5の超初心者向け「外国為替入門」でも解説している通り、FXは通貨と通貨の交換率に投資をします。株や暗号資産のように、現金と対象の資産を交換するのとは違い、同カテゴリ内の交換ですから、一方的な流れが出にくい特徴があります。そのため、短期的にはトレンド相場でも、長期的にはレンジ相場、つまり元の位置に戻りやすく、FXとリピート系自動売買は相性が良いといえます。
裁量トレードのNG行動はむしろ推奨
塩漬け、損切りを我慢、含み損を放置。これらはどれも裁量トレードでは御法度ですが、リピート系自動売買では推奨される行動です。FXはレンジになりやすく、長期サイクルでは同じ価格に戻ってくる期待があるため、含み損になっているポジションもいつかは利食いします。そのため、損切りをせずに耐え続けることにメリットがあります。
そのためには、「損切りになる可能性が低い資金管理」の設定がポイントになります。ずばり損切りにならない設定とは何か。答えは「想定されるレンジ内の値動きに耐えられる設定」であることです。そして想定されるレンジを広げるほど、そこからはみ出す可能性は低くなります。Excelなどを使って、想定レンジ内の最大リスクを把握しておきましょう。
ボラティリティでしか利益が増減しない
デイトレードやスイングトレードなどで、たくさん勝ちたいと思ったらできることはたくさんあります。勝率を上げる、損小利大の取引、そしてロットを増やすなど。ところがリピート系自動売買では、ロットを増やす以外に利益を増やす方法がありません。あらかじめ注文が入っている範囲の値動きから利益が生まれるだけなので、投資家がその場の判断で売ったり買ったりしないし、利食いは固定、損切りしないのが前提なので勝率も関係ありません。そしてロットを増やせば、価格逆行時のリスクも増えることになります。
ボラティリティが利益額に直結
あらかじめ注文が入っているので、売買のタイミングも決まっています。ただし相場のボラティリティが上がり、値動きの幅が広がると、売買される回数が増えて利益も増えます。リピート系自動売買でたくさん勝てるかどうかは、ボラティリティに依存しているといえます。
売買内容が明確、人のせいにできない
EA | 売買ルールは企業秘密 |
リピート系 | 売買ルールは明確or自作 |
私たちが利用できるほとんどの自動売買は、取引条件が不明のいわゆるブラックボックスです。しかしリピート系自動売買は、あらかじめどういう条件でトレードをするのかが明確になっており、勝因、敗因も常に明らかです。そもそも、相場にあらかじめ注文が設置されているだけで、売買のタイミングが完全に固定されており、投機、トレードとすらいえないかもしれません。さらに売買ルールが一般公開されていて、自由に参考にできる特徴もあります。
よくある質問とその回答
Q.口座選びは大事?
A.FX会社がいろいろなリピート系自動売買を提供していますが、それぞれに特色があるため、使いやすいものを選ぶことが大切です。
ただし、スプレッドや手数料といった取引コスト面はそこまで気にしなくてもいいかもしれません。リピート系自動売買は、基本的にどのポジションも利食いされるまで持ち続けます。そのため、スプレッド分がコストとしてマイナスにならないという考え方もあります。ただ、スプレッド分不利な位置から取引がスタートするため、利食い回数に影響が出ると考えられます。
Q.つまりナンピンってこと?
A.買い下がり、売り上がりをしていくことはよくあるため、行動的にはナンピンと似ています。ですが、ナンピンはトレンドがいつか反転することを狙って、平均取得価格を下げる(売りなら上げる)ための行動です。
リピート系自動売買の場合は、最初から相場に注文が入っているので、状況に応じて買い増し、売り増しをしているわけではありません。また、トレンドの反転を期待してポジション追加をしているわけでもないです。行動は似ていますが、思想が違います。
Q.つまりどうやれば勝てる?
A.リピート系自動売買は、常に含み損を抱えながら運用をすることになります。また、「想定レンジ内に価格がある場合の最大含み損」は計算できます。つまり狙っている範囲内から価格が逸脱しない限り、計算される最大含み損額をそれまでに積み重ねた確定利益が上回れば、その運用は勝ち確です(想定レンジから出なければ)。ただし、利益の蓄積には時間がかかるため、少なくとも数か月は赤字のはずです。年単位で続けることを前提に、じっくり取り組んでみてください。
Q.どんなテクニックがある?
A.有名なものでは、ハーフなどと呼ばれる、売りと買いを組み合わせた設定があります。レンジを上下2分割して、上には売り、下には買いを入れます。このあたりはP12からの「鈴さんと一緒に松井証券で構築するPF成長戦略」で詳しく解説されています。
あと重要なのは通貨ペア選び。利益になりやすく、損失になりにくい通貨ペアを見つけ出すには、レンジになりやすいものを選ぶのが基本です。その一つの考え方を、P50の「地政学で攻略するリピート系自動売買」で紹介しています。
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FX雑誌「外国為替」vol.13
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