外国為替編集部の佐野と申します。雑誌の編集もFXも初心者マーク。
本腰を入れてFXを勉強するにあたり、読み終えた書籍から得られたことを発信していきます。

『IQ162のMENSA会員が教えるFX自動売買の基礎と実践』
筆者:Trader Kaibe
出版社:PanRolling
発売日:2021年3月
ポストコロナは継続中。本業以外に財布を持とう
第1回ではチャート分析、第2回ではファンダメンタルズと来て、第3回は自動売買に触れてみようと思い、何度か『外国為替』にご登場いただいているEA開発者・Kaibeさんの著書をピックアップしました。この本が世に出たのは2021年3月。緊急事態宣言も出ていたコロナ禍真っ盛りであり、人々の生活様式が一変した時期でした。ポストコロナの現在も、ウクライナ情勢を受けて生活コストが上がっただけでなく、日米金利差などによる歴史的円安、トランプ関税による世界的な経済の混乱など、物価は上がっていく一方。税金や社会保険料も上がり、私たちの生活が楽になっていく兆しは見えません。
会社に勤めていればそれで安泰という時代はとうに過ぎ、生活水準を落とさず生きていくためにも、本書のカバー裏にもある「本業以外の財布を持つ必要性」を誰もが意識しなければならなくなっています。本業でお金を稼ぎながら、補助的に資産を増やしてくれる存在として、自動売買(EA)を利用した投資は、本格的に資産運用の選択肢に入ってくるのだと感じました。
本書では、優位性のある戦略や、裁量と自動売買の比較、バックテスト等のデータを見るために必要な基礎知識、販売されているEAを購入する際の選定基準など、これから自動売買を始めようと考えている人が適切なやり方で自動売買を始められるよう、筆者の経験に基づいて導線が丁寧に書かれており、読み進めるにつれて心理的なハードルが下がっていく作りになっていました。
「自動」という先入観―持つべきは管理者のリテラシー
「EAを動かし続けるべきか、適宜裁量判断で止めるべきか」のような、実際にEAを運用する際に遭遇する問題にも触れられており、「自動売買」という名前から抱きがちな幻想を打ち消す意味でも有意義な一冊であったと感じました。
Expert Advisorという表現は直訳すると「専門的な助言者」ということになりますが、助言者ということは、あくまでも主役はトレーダーです。一方、日本語訳である「自動売買」の「自動」が持つ魔力は強大です。自動販売機や自動改札といった「任せておけば全部やってくれる」というイメージが一人歩きして、私も含めた多くの初心者トレーダーが誤った先入観を抱きがちです。実際にはEAを使うなら、FXの知識を十分に備え、EAの弱点や苦手な状況も把握して、時には「管理者」として判断を下す必要があることも、本書の内容に示唆されていました。EAを使うなら、管理者のリテラシーが不可欠。SNSで流れてくるインパクトの強い情報には、慎重でありたいものです。
とはいえ、限られた生活時間の中で「自分の代わりにトレードしてくれる」存在である自動売買が魅力的であることは確かです。今はもっと勉強を重ね、資金を準備した上で、EAを〝ツール〟として賢く活かせるよう、知識もリスク感覚も磨いていきたいと思います。