SNSや動画サイトを見ていると、「スマホだけで月◯万円」「勝てる手法を教えます」といった投稿や広告が目に入ることがあります。FXを始めたばかりで、なかなか思うような結果が出ないときほど、こうした言葉は魅力的に映るかもしれません。
こうした「稼げるノウハウ」は一般的に、有料で販売される場合「情報商材」と呼ばれます。情報商材に関してはトラブルが後を絶たず、国民生活センターによると、情報商材に関する相談は年間6,500件を超えたこともあるそうです。現在も相談は寄せられ続けており、いわゆる「怪しい」情報商材には、FXのノウハウをうたうものも含まれます。
もちろん、お金を払って知識を学ぶこと自体は悪いことではありません。書籍やセミナーから学ぶのは、トレードの上達に役立つ方法のひとつです。では、トラブルにつながりやすい情報商材は、どこが違うのでしょうか。
本記事では、公的機関が公表している事例をもとに、よくある手口と、購入前に気づきたい危険サインを整理します。
FXの「情報商材」とは何か、なぜトラブルになりやすいのか
情報商材のさまざまな形と、書籍との違い
国民生活センターは、情報商材を「インターネットの通信販売等で、副業、投資やギャンブル等で高額収入を得るためのノウハウ等と称して販売されている情報」と説明しています。FXに関するものでは、次のような形がよく見られます。
- PDFや電子書籍の形でまとめた「手法マニュアル」
- 動画講座やオンライン講座
- 会員制のオンラインサロンやコミュニティ
- 売買のタイミングを知らせる「シグナル配信」
- 自動売買ツールとセットになった商材
形はさまざまですが、書店に並ぶ書籍と比べると、共通する特徴があります。
ひとつは、買う前に中身を確かめにくいことです。書籍であれば、店頭で目次や本文をめくって、自分に合う内容かどうかをある程度判断できます。一方、情報商材の多くは、販売ページの宣伝文句と購入者の声らしきものを見ることはできても、実際に何が書かれているのかは、お金を払うまで分かりません。
もうひとつは、価格の根拠が見えにくいことです。数千円のものもあれば、数十万円のものもあり、その差がどこから来ているのかを購入前に比べることは困難です。
情報商材のすべてが悪いものではなく、法律で一律に禁止されているものでもありません。ただ、こうした「中身が見えない」「価格の妥当性が分からない」という性質が誇大な宣伝と組み合わさると、トラブルにつながりやすくなります。
公的機関が公表している、よくあるトラブルの流れ
国民生活センターや消費者庁が公表している相談事例を見ると、トラブルにはいくつかの共通した流れがあります。
まず、SNSの広告や投稿、知人からの誘いなどをきっかけに、比較的安い商材や無料の特典で関心を引きます。次に、「もっと詳しく教える」「個別にサポートする」として、電話やビデオ通話での面談に誘導されます。そこで、数十万円から百万円を超えるような高額なコンサルティングやサポート契約を勧められる、という流れです。
手元にお金がないと伝えると、借入やクレジットカードの分割払いを勧められるケースも報告されています。国民生活センターが2023年に公表した事例では、20歳代の女性がスマートフォンで副業を検索し、見つけたサイトから1,000円のガイドブックを購入したことをきっかけに、FXの自動売買ツールを勧められています。「初心者でもできる。空いている時間に見ているだけ」と説明され、約70万円のツールを割引で約40万円と提示されました。さらに「融資を受けて代金を支払っている人もいる」と言われ、スマートフォンの画面を共有させられたまま、貸金業者のアプリで借入を申し込んだといいます。後から解約を申し出ても、応じてもらえなかったそうです。
そして、実際に手に入れた内容は、「広告や説明と違って儲からない」「内容がごく一般的なもので、価値を見いだせなかった」「約束されたサービスが提供されない」といった結果に終わり、返金を求めても応じてもらえない。これが、多くの相談に共通するパターンです。
なお、『外国為替』は過去に、投資詐欺の被害者への取材に基づく記事も制作しています。合わせてご覧ください。
販売ページと勧誘に表れる危険サイン
宣伝文句に表れるサイン
トラブルにつながりやすい商材の宣伝には、似通った言い回しが繰り返し登場します。たとえば、国民生活センターの報道発表資料では、FXや暗号資産(仮想通貨)に関する相談事例の中で、次のような文言が紹介されています。
- 「月利50%で月あたり20~30万円稼いでいる」
- 「簡単に誰でも利益を得られる」
- 「一瞬にして資産を数百倍から数千倍。1億、10億、30億確約。先着10名」(暗号資産の事例)
また、2023年に消費者庁が特定商取引法違反で行政処分を行った事業者の例では、「損はしないから」「AIが取引をしてくれるから、リスクは限りなく少ないよ」といった説明が、FXの自動売買ツールに関する勧誘で行われていたことが公表されています。
これらの文言をもとに、よくある販売ページの例を編集部で作成してみました。

架空の販売ページの例
「FX歴わずか3か月の会社員が、スマホだけで月30万円!」
「誰でも再現できる、勝率90%のシンプル手法」
「元本割れの心配なし。損をしない仕組みを公開」
「今だけ特別価格。先着10名で締め切ります」
など
(※公的機関が公表した事例の文言をもとに、編集部が作成した架空の例です)
この中には、注意したいサインがいくつも含まれています。
1つ目は、「誰でも」「必ず」「損をしない」といった断定的な表現です。FXは為替レートの変動によって損失が出る可能性のある取引であり、誰にとっても利益が保証される方法はありません。「元本割れの心配なし」のように損失の可能性を否定する言葉が出てきたら、それだけで立ち止まる理由になります。
2つ目は、利益の話ばかりで、損失やリスクについての説明がないことです。「月30万円」「勝率90%」といった数字が並んでいても、どれくらいの資金で、どれくらいの期間に、どれほどの損失を経験しながら出た結果なのかが書かれていなければ、その数字を判断する材料にはなりません。
3つ目は、「今だけ」「先着10名」のように判断を急がせる表現です。冷静に比べたり、誰かに相談したりする時間を与えないことで、勢いで購入させようとするのはよく見られる手法です。
なお、「FX歴わずか3か月の会社員」のように、販売者や体験者の実績が書かれていても、それを第三者が確かめる手段がない場合は、そのまま信じるのは避けた方がよいでしょう。
勧誘と契約の流れに表れるサイン
危険サインは、宣伝文句だけでなく、勧誘や契約の進め方にも表れます。公的機関の注意喚起や相談事例から、代表的なものを挙げてみます。
勧誘と契約の流れに表れる危険サイン
- LINEなどのメッセージアプリに誘導され、個別のやり取りや電話、ビデオ通話で高額なプランを勧められる
- 「借りてもすぐに取り戻せる」と、借入やクレジットカードの分割払いを勧められる
- 「友達を紹介すれば報酬が入る」と、他の人を勧誘するよう持ちかけられる
- 代金の振込先が、事業者ではなく個人名義の口座になっている
- 販売者の名前、所在地、電話番号がはっきりしない
借入を勧める例としては、先ほどの消費者庁の行政処分の事例で「すぐに元が取れるから、借金しても何の問題もないよ」という説明があったことが公表されています。同じ事例では、「友達を勧誘すると、1人につき5万円くらい紹介料がもらえるよ」という勧誘も行われていました。
また、自動売買ツールとセットになった商材の場合は、「指定された海外の業者で口座を開くこと」が利用の条件になっていないかも確認したいポイントです。日本国内で営業するには金融庁への登録が必要ですが、登録のない海外の業者とのあいだでは、「出金に応じてもらえない」といったトラブルが起きても、解決が難しくなるおそれがあります。
ここまでの危険サインを、チェックリストとして整理すると次のようになります。

ひとつでも当てはまるものがあれば、その場で申し込まず、いったん距離を置いて考えることをおすすめします。
学びにお金を使う前に確認したいこと
購入前に確認したい4つのポイント
情報商材に限らず、トレードの学びにお金を使う前には、次の4つを確認しておくと安心です。
1つ目は、販売者の情報が明示されているかどうかです。インターネットでの通信販売では、特定商取引法によって、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを広告に表示することが求められています。こうした情報が見当たらない、または住所が実在するのか分からないといった場合は、注意が必要です。あわせて、返品や解約の条件も確認しておきましょう。通信販売にはクーリング・オフの制度がないため、購入後に「思っていた内容と違う」と感じても、契約の取り消しが難しい場合があります。
2つ目は、無料で学べる手段で代わりにならないかどうかです。FXの基本的な仕組みやチャートの見方などは、書籍や、FX会社が公開している学習コンテンツでも学ぶことができます。実際の値動きを体験したいなら、FX会社のデモ取引を使う方法もあります。たとえば、ヒロセ通商の「LION FX」、みんなのFX、DMM FX などではデモ取引の環境が用意されており、実際のお金を使わずに取引ツールの操作や注文の流れを試すことができます。有料の商材を検討する前に、まずこうした手段で基礎を固めておくと、商材の内容が妥当かどうかを判断する目も養われます。
3つ目は、サービスを提供する人や業者が金融庁への登録を行っているか、金融庁のウェブサイトで確認することです。個別に売買のタイミングを助言するようなサービスは、金融商品取引法上の「投資助言・代理業」にあたり、登録が必要になる場合があります。ソフトウェアの販売についても、誰でも自由に購入できる形で売られているものは原則として登録の対象外とされていますが、継続的に情報やサポートを提供するような場合には、登録が必要になることがあるとされています。
4つ目は、その場で決めないことです。面談の場で申し込みを迫られても、「家族に相談してから決めます」と伝えて、いったん持ち帰りましょう。本当に価値のある内容であれば、一晩考える時間を取ったからといって、手に入らなくなることはないはずです。
おかしいと思ったときの相談先
勧誘の内容に不安を感じた場合は、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を利用しましょう。消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、身近な消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます。金融サービスに関する相談は、金融庁の金融サービス利用者相談室でも受け付けています。
また、一度トラブルにあった人を狙った「二次被害」にも注意が必要です。「支払ったお金を取り戻してあげる」と持ちかけ、さらに手数料などを支払わせる手口について、消費者庁も注意を呼びかけています。返金や被害回復をうたう連絡を受けた場合も、すぐに応じず、まずは上記の窓口に相談してください。
まとめ
FXの「必勝法」や「稼げる手法」をうたう情報商材には、「中身を事前に確かめにくい」「価格の根拠が見えにくい」という性質があります。そこに「誰でも」「損をしない」といった断定的な宣伝や、判断を急がせる売り方、借入や紹介を勧める勧誘が組み合わさると、トラブルにつながりやすくなります。
学びにお金を使うこと自体は、決して悪いことではありません。大切なのは、「この商材の中身は、買う前にある程度確かめられるか」「お金の流れや販売者の情報ははっきりしているか」という2つの視点を持つことです。
100%儲かる方法があるとしたら、それを見ず知らずの人にわざわざ売る理由はあまりないはずです。少しでも迷ったら、その場で決めずに立ち止まり、必要に応じて相談窓口を頼ってください。それが、トレードのための大切な資金を守る第一歩になります。



















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