投資界隈で知らない人はいない総利益80億円の個人投資家・テスタさん。2005年、元手300万円から投資をスタートし、今や100億り人も見えてきた敏腕トレーダーです。
テスタさんが何を考えて投資を行っているのか、その成功の秘訣を女優/投資家・陽和ななみさんが探りました。
テスタ氏プロフィール
2005年に株式投資をスタート。デイトレードで利益を上げ、6年目で億り人に。生涯獲得利益80億円超の専業投資家。株式投資での収支は始めた年から18年連続プラス。専業投資家の中ではSNSのフォロワー数ナンバーワン。児童養護施設への寄付も精力的に行っている。【著書】株探 最強投資術 日本株編 億り人の銘柄発掘ワザで1億円を作る!【DVD】テスタの株式デイトレード 目指せ10億円 株式デイトレーダーの作り方
陽和ななみ(ひわ ななみ)氏プロフィール
女優/投資家、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。手塚宏二事務所所属。女優業の傍ら19歳から投資を学び、20歳から実践。既に6年の投資歴を持つ。現在は日本株や米国株、FX・CFD等を自身で運用し、チャート分析を基にそれぞれの金融商品で実績を上げている。松井証券「カンニング竹山のFXトーク」、SBI証券「マーケット超特急」など各証券会社の番組で活躍をみせる。2022年はFXで3000pipsを達成するなど、投資家としての実績も折り紙付き。
本文◉荻田里佳
プレミアムインタビューが実現
陽和ななみ(以下:陽和) テスタさん、お久しぶりです。6年くらい前にお会いしたときには、「株で8億円稼いだ」と仰っていました。それが今は80億円。テスタさんと同じように大成功を収めたいと思っている方はたくさんいると思います。
テスタ 投資は複利で増やせるのが魅力ですよね。資産が増えるにつれて株での利益も増えていくのが理想だと思っているので、僕自身思い描いた通りにはなっていると思います。しかし、株の専業トレーダーになって約19年、勝ったり負けたりを繰り返しているので本当にいろんなことがありました。1か月の成績を見るとマイナスになっていることも……。しかし、年間ではマイナスになったことがないのでトータルでは勝ち続けています。
陽和 専業トレーダーになった19年前といえば、ライブドア・ショック(2006年)あたりですよね。
テスタ その少し前から株取引を始めていたので、ライブドア・ショックはリアルタイムで見ていました。その他にもリーマン・ショック(2008年)もありましたし、震災やコロナなど、激動する相場を経験しています。
陽和 ショック相場に遭遇しても1年を通してマイナスだったことがないのは、さすがの立ち回りですね。
テスタ 最初の10年間ほどはデイトレーダーで、ショック相場でもポジションを持ち越さなかったのが負けなかった要因だと思います。大ダメージを食らうことがなかったんです。しかし、中長期投資をしていたコロナ・ショック(2020年)のときは、プラス2億円ほどあった含み益が一気にマイナス6億円に。同年の損益が一時マイナス6億円まで減ったことがあったので、さすがにその年はプラスにするのは難しいかと思いましたが、株価指数が大きく上がるなど、取引をするための好条件が揃ったので結果的にはプラスへ持っていくことができたんです。
陽和 手法としては「買い」がメインなんですか?
テスタ 今は「買い」がメインです。デイトレのときは買いも売りもできる信用取引・貸借銘柄が得意で、上がると思って上がらなかったらドテン売りをするなどのやり方を繰り返していました。現在は中長期が中心になっているので、買いが有利と考えています。
陽和 トレードをするときに意識していたことはありますか?
テスタ トレードを続けていると「○○ショック」と呼ばれる局面に必ず遭遇します。だから、ショックが起きたときに資産がどれだけ減るのかのシミュレーションをするよう意識しています。ショック相場の事例はいつでもネットで見られる時代なので、きちんと自分で過去の相場について調べ、今のポジションの場合どれほどのダメージを負うのか、そしてそれが自分にとって許容できる範囲内なのかというのを常に意識しながら、ポジションを取っています。
陽和 許容できる範囲は総資産の何%に設定していますか?
テスタ 僕の場合は総資産の10%台には抑えたいと考えています。投資は金額が減れば減るほど複利の効果が減って取り返すのも大変なので、とにかく減らさないようにしていました。特に僕は利益をコツコツ積み上げて守るタイプ。できれば10%以内に抑えたいですし、20%を超えるリスクは負ってはならないと思います。
積み上げる力で6年で利益を10倍に
陽和 少し前まで「テスタさんの総利益は50億円」と記憶していたんですが、今はもう80億円ですよね。コツコツ積み上げる投資でもかなりのスピードで増えるんですね。
テスタ これが複利効果です。最近は毎年10億円勝っていたので、2~3年経つと20~30億増えている計算になります。
陽和 投じられる金額が大きいからこその結果ですよね。
テスタ 僕も最初は何百円、何千円のトレードを積み重ね、数万円負けて落ち込むこともあったんですよ。やがて数千円の利益が数万円単位になり、いつの間にか20万円ほど利益を取れるようになりました。それから10万円台で取引するのが当たり前になったんです。だから、今からトレードを始める人も初めの利益は何百円単位で十分。長い目で見て成長するためにコツコツやるのが正攻法ではないかと思います。いきなり大きく勝とうとはせず、小さな利益を積み重ねていけば最後には勝てるというのが僕の考えです。
陽和 大きく張って負けてしまったら取り返し不可能となってしまいますもんね。
テスタ 一番もったいないのはトレードをやめてしまうこと。最初は誰もが初心者で、少しずつしか上手にならないということを忘れてはいけません。いきなり上級者のようにうまくなるのは不可能なので、退場せずに少しずつ学んで勝てるようになってほしいですね。
陽和 頭ではコツコツやるのが一番と分かっていても、退場してしまう人は多いですよね。その理由は何だと思いますか?
テスタ 知識がなく、経験も浅いのに大きな金額を張ってしまうからではないでしょうか。大きな金額を張りたくなったときは一歩引いて、今勝つためではなく、将来勝つにはどうしたら良いかを思い出してください。
陽和 焦る気持ちも分かりますが、身の丈に合ったトレードが大事だということですよね。
テスタ FXはデモトレードがありますし、株は自分が持ちたいポジションや決済したい価格を紙などに書けば、自分のお金を投じなくとも結果がどうなったかを知ることができます。だから自分にとってドキドキするようなお金を最初から払う必要はありません。
陽和 テスタさんは日頃から投資でのギャンブル要素を減らすべきだと仰っていますよね。
テスタ ギャンブルと勝つための投資は真逆で、ギャンブル的な要素をどれだけ排除していくかが勝つ投資につながります。そのためには常に冷静でいられるかが大事。焦ってドキドキしているということは、自分が想定していなかった値動きをしている、もしくはロット数が大きすぎるということです。平常心を失うことがあればそれを反省して、次に生かしていく。これの繰り返しで、少しずつ上手になるしかないと思います。
陽和 うまくなるための必須条件として、株とFXに共通していることはありますか?
テスタ ファンダメンタルズ分析・テクニカル分析のどちらを重視するにしても、何となくで取引をしないことです。自分で考えて、全てを想定していると適切な損切りができるはずですし、適切な利益確定もできると思います。仮にそれらを想定せずにトレードをすると、暴落したり暴騰したりした場合に慌ててしまいます。焦って判断ミスをしたり、間違ってナンピンしたりすると負の連鎖になるので、それをいかに防げるかが大切です。
陽和 テスタさんはどんな想定をしながらチャートを見ていますか?
テスタ デイトレーダー時代から今も変わりませんが、常に「○○ショック」が起きても大丈夫なポジションに抑えたり、一つの銘柄に一点集中しすぎないようにしたりして、リスクを限定しています。株やFXなどの投資は、一寸先は闇だと思っているので……。レバレッジとロットを高く設定したトレードの場合、通常の値動きなら大丈夫でも、想定外が起きると資産の何十%も減らしてしまう可能性があります。そういう投資は一生やらないと決めて取り組んでいるので、ありとあらゆることを想定しています。
陽和 20年という経験から想定できることはたくさんありそうですね。
テスタ 経験が浅い人は、過去のチャートや過去の事例を遡って調べると想定できると思います。例えば、リーマン・ショックという名前は聞いたことはあるけれど、それで止まっている人は多いと思います。調べれば、あのときどれだけの株が暴落したのかが分かり、もし今それと同等のショックが起きた場合、損失額はどれぐらいになるか。実際に計算すれば自分が大きく張りすぎているかもしれないと気づくきっかけになります。調べて損することはありません。僕から見ると、ほとんどの人は想定が甘いように思います。
初心者はルールを守る、上級者はルールを破る
陽和 テスタさんの投資への意識やお話をお伺いしていると、テクニカル分析でトレードをしているとも言い切れませんし、ファンダメンタルズ派というのも違う気がします。ベールに包まれたテスタさんのトレードスタイルを詳しく教えてください。
テスタ 僕がやっているのは雰囲気トレードです。株もFXも、市場参加者の多数決で動いているという考えが基本にあります。株は1人が一つの銘柄をたくさん買っていた場合、その1人の力で上がったり下がったりするので厳密にいうと多数決ではありませんが、それも加味した上で状況を判断することが「雰囲気を読む」ことなのではないかと。
上昇相場や下落相場を肌で感じる瞬間、いつもと同じトレードをするのではなく、強気の相場でどう戦うか、弱気相場ではどんなトレードをするのか、今年の相場が良いと感じたらこの戦略をとってみようなど、雰囲気に合わせて自分のスタイルを変えられるのが僕の強みです。
陽和 型にはまらないトレードスタイルをとっているということですね。
テスタ 初心者のうちは型にはめていろんなルールを作るのは大事です。それでもルールを守れないことはあるでしょうし、改定して新たなルールを作ったり、それを試してみたりするのは必要な通過点です。ルールが当たり前のように守れるようになると、臨機応変にトレードをする力がつきます。
例えば、「ナンピン禁止」というルールを作って、ルールを完璧に守れるようになった場合、ルールをカチカチにしすぎるのをやめてみる、そうするとトレードを行う中で「ナンピン禁止ルールを破って良い場面」が見えてきます。初心者はルールを作って守るトレードをした方が強く、上級者になったらルールは守って当たり前になり、崩して良い場面でどれだけ崩せるか、それを模索していくと期待値の高いトレードを繰り返せるようになると思います。
陽和 まずは「ルールを守る」、この土台をしっかり自分の中に築くことが大事ですね。
テスタ そうですね。投資をする上で柳をイメージすると分かりやすいかもしれません。柳は風が右に吹けば右に流れ、左に風向きが変わればすぐに方向転換する。これは相場と似ていますよね。ルールで縛っていると簡単に右往左往できません。しかし、僕は流れに沿って、どちらにもついていける気持ちでいるので、そういう意味で「雰囲気トレード」と表現しています。
陽和 通常時はトレンドフォローで、異常な空気を感知したときには逆張りを入れるということですか?
テスタ そうです。絶対的に今は順張りが良いだろう、でもこの銘柄だけは明らかに違うから逆張りしようなど、銘柄や投資をする日、時期に合わせて自分が持つポジションを自由に変えます。デイトレをしながら同じ銘柄でスイングをしていても、「この一瞬は下がるだろう」と感じればドル円で売りを入れるなど、いろんなトレードスタイルを組み合わせられるのが理想ですよね。
しかし、買いのスイングでポジションを持っている場合などは、バイアスがかかって空売りしにくいと思うので、バイアスを取っ払った別の脳を持って「今この一瞬は下がる」と考え、行動に移せるようにしています。
陽和 株の銘柄選びに悩んでいる人へアドバイスをお願いします。
テスタ 自分の目的をどこに持っていくかを明確にしてください。自分のスタイルはスキャルピングなのか、スイングなのか、中長期なのか、配当狙いなのか。デイトレなら前日の15時以降にニュースが出た銘柄をピックアップして、次の日に価格が動きそうだったら気配値を予想すると良いと思います。そして「この一瞬の値動き」で取引をしていくんです。このやり方だったら、悪いニュースでも良いニュースでもどちらでも対応できるはず。
一方で、スイングや中長期で「買う」とするなら、悪いニュースではなく良いニュースを探さなければなりませんし、仮に悪いニュースでも「これはいつか回復するようなニュース」などと判断できる目を養ってください。僕がコロナ禍に意識していたのは、「この会社は大変だけど、いつかコロナが明けたら回復するだろう」ということ。銘柄とニュースを紐づけて先を見通す力は、投資をする上で必要なんです。
陽和 中長期の投資では企業に問題がなくても、株価が下がっている場合に買いを入れるということですか。
テスタ そうとも言い切れません。会社や企業に問題がなさそうに見えるのに大きく下がっている場合、自分が見えていないだけで何か問題が起きていると考えます。自分の意見より大株主の考え、会社の考え、社長の考えなどを汲み取って上下どちらに行く可能性が高いのかを分析します。
陽和 保有しているポジションについても教えてください。
テスタ 決算が多い時期は銘柄の入れ替えを頻繁にしますが、多いときは全て合わせると100銘柄持つこともあります。少なくても常に10銘柄は持っていて、その他に配当用ポジションとして何十銘柄、米国株もあるのでノーポジになることや、全てを現金化することは何年もしていません。デイトレーダーになって約10年間は、100%現金化していましたが……。
陽和 この19年間で、トレードスタイルを変えて常に試行錯誤しているんですね。
テスタ 複利で増やすために変化しなければ、進化する時代についていけないと思っています。少額資金の場合、デイトレードだと資金を短期で回した方が増えやすいと思いますが、配当狙いで毎年5%をもらっても、最初の資金が少なかったら専業になるのは難しいですよね。
資金を増やすためのデイトレード、資金が増えた今だからできる配当狙い、これもトレードスタイルの使い分けです。また、本来の株価より割安な「バリュー株」狙いは、資金が増えたときに安定的に増やせると考え取り入れています。自分の資産・目標に合わせて何を選んでいくかは大事です。
移動平均線は売買の根拠、出来高で需給を確認
陽和 テスタさんが利用している移動平均線のパラメーター設定を教えてください。
テスタ 証券会社がデフォルトで設定しているものをそのまま使っていて、「5日」「25日」を参考にしています。ほとんどのデフォルト設定がこの期間なので、みんなが意識しているのではないかというのが僕の結論です。
株の板の場合は、例えば500円ぴったりのところで板が厚くなっているケースがあるんです。これはテクニカル的に見ると「500円はキリが良い」という理由だけで、業績などは関係がない場合がほとんど。テクニカルでトレードするなら、大多数の人が意識していることを参考にするのが僕のやり方ですし、複雑なものを見ている人は少ないと思って取り組んでいます。
陽和 多くの人が参考にしているテクニカルで好条件が揃うと、急上昇することがありますよね。テスタさんは、急上昇する前にポジションを持つようにしていますか?
テスタ もちろん急上昇前にポジションを持つよう狙うこともありますが、そこで売買するだけでなく、急上昇による需給に注目します。今の日経平均株価の強さ、その銘柄のニュースを組み合わせて、急上昇は一つの要素として捉えます。
陽和 移動平均線を使う場合は、価格との乖離率を見るのか、それとも線の傾きを見ているのか、何を注視しているのか教えてください。
テスタ 価格と移動平均線の位置関係を見ています。しかし、ここでも自分中心の意見はトレードに反映しません。「みんながプラス(またはマイナス)と捉えているからチャートはこの形を描いている」と思考するんです。
例えば、「移動平均線からの乖離率が高すぎるから、僕は売りに入ろう」ではなく「移動平均線からの乖離率が大きい。市場参加者はどう考えるか」ということに焦点を当てます。感覚的なものもあるので少し難しいかもしれませんが……。
陽和 それでは、25日線に価格が差し掛かったときに、何を見てどう判断するのか教えてください。
テスタ 25日線を下から上抜いたときに買ったり、損切りや利益確定の根拠に使ったりすることが多いです。移動平均線は「ある期間の平均から見た位置」を示しているので、25日線だったらそれより価格が上にあれば、ここ25日間のうちに買った人の平均より価格が高いということ。需給の判断材料にしているんです。
陽和 市場参加者の考え方は何を見て読んでいるんですか?
テスタ 出来高などです。出来高が少ない銘柄は、大口の1人の意思で急変動することがあります。すると、その人が移動平均線を見ていなかったら移動平均線は機能しなくなりますが、出来高では多くの人が参加しているかどうかが分かります。だから出来高は必ず表示させていますね。
陽和 出来高が急に増えている銘柄より、安定して出来高が多い銘柄を選んでいるということですね。
テスタ そうですね。また、出来高が急激に増えたときも注目していて、そのときに価格を動かすニュースが出たのか、何もないのにそうなったのかを確認すると、市場参加者の思考を読み解くヒントになります。大きな出来高をつけたあとに急下落した場合は、多くの人が買いポジションを手放したことが分かり、底は近いと判断できるというわけです。
陽和 テスタさんは約6年で利益が10倍に増えていますが、どういう経緯を辿ったのでしょうか。
テスタ 2013年、当時の内閣総理大臣の安倍晋三氏が掲げた経済政策「アベノミクス」で市場が良かったのと、株の信用取引でレバレッジをかけられるようになったのが資金を増やせた理由です。
2012年まではレバレッジを3までかけられましたが、その3倍の余力を1回使い切るとその日はレバレッジは使えなくなる仕様でした。しかし、2013年以降はレバレッジを1回使っても、その株を1回売れば、余力が戻る現行のシステムになったので、2013年からは資金効率が飛躍的に伸びました。2012年と2013年で比べると、1日の売買代金が10倍変わることも。今まで1回しか回転できなかったのが、一日中やると10回転ぐらいできるようになったので、2012年の10日分の仕事が1日でできる計算です。
それとアベノミクスが相まって、2013年度は資金が1億円から5億円に増えました。前年と比べて何百%も増えたのは、あのときだけだと思います。
陽和 そのときに金銭感覚が狂いませんでしたか?
テスタ 今ここで頑張るしかないと思っていたので狂いませんでした。2006年後半からトレードを始めましたが、2012年までは良い相場ではなかったんです。それでも、いつか良い相場が来ると思って取り組んでいたので、チャンスが来たときの戦略は既に考えていました。例えば、2012年まではデイトレ中心でしたが、2013年は中長期の投資も行うなど、毎日必死に「ここで人生を変えるんだ」という意識を持っていた記憶があります。1億円は大金ではありますが、一生安泰かと問われると「イエス」とは言い難いですよね。僕らの仕事は何の保証もないので、5億円に増やせたのは自信にもつながりました。
陽和 専業投資家になって株の市況が振るわなかったとき、FXは選択肢にはなかったんですか?
テスタ 僕が株を始めたばかりのころは選択肢が株しかなかったんです。FXはあまり聞いたことがなかったので、タイミングの問題かもしれません。
陽和 FXをしたことはありますか?
テスタ FXが流行ったときにやったことはあります。雇用統計の日に待ち構えてトレードをしたこともありますが、株とFXを両立するのは難しいと思いました。同じチャートでも考え方もやり方も違いますので……。
僕は長年株をやってきたため慣れた株を主軸としましたが、僕の周りでは株の投資家がFXに転向して、今でも毎年1億円ほど勝っている人もいます。どちらを選択したとしても勝ち方はあると思うので、皆さんは自分の生活スタイルや性格に合わせて向いている方を選択するのが良いと思います。
陽和 現在、株の取引をしながら為替の動きを意識することはありますか。
テスタ ファンダメンタルズを重視していた時代もあったので、円に有利な企業を調べたり、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価の動きや、ドル円を注視したりしていましたが、今はそれらをそぎ落としてシンプルな投資をするようになりました。1日にドル円が何円も動いたり、日銀の介入が入ったりしたらチャートを見ていますが、為替の価格を見て株のポジションを変更することはありません。
陽和 頻繁にトレードスタイルを変えているんですね。
テスタ 1個同じようなことをやりだすと、途端にみんな勝てなくなることがよく起こるんです。勝てなくなったら別のことをしなければならないので、引き出しをたくさん用意しておいて、今の相場にはこれが合うなどと選択できるようにしています。初心者は自分の得意なことを突き詰めますよね。それも必要ですが、不得意なものを切り捨てるのはもったいないと思います。得意なやり方で戦いつつ、他のことも勉強しておく。そうして少しずつ引き出しを増やすことで、いろんな相場に対応できるようになります。
陽和 これは本当にFXにも共通しそうですね。
テスタ 例えば、日銀の介入が期待されるときだけに勝てる手法は、普段使えませんよね。しかし、さまざまな事象を想定してトレードすべきだと思うので、それを知っていることは無駄ではありません。普段は使わない手法を学んで想定できる力を身につけるのは大切なことです。
トレードとダイエットの共通点。差が出るのは努力量だった
陽和 テスタさんの勝利の秘訣は、臨機応変にトレードスタイルを変えられることなんですね。天性に近いものがありそうですが、初心者の人がテスタさんのようになるのは可能だと思いますか?
テスタ 可能です。僕自身は大して上手でもないと思っていますが、努力の量は多いかもしれません。個人投資家として知られる井村俊哉くんも同じ。彼は24時間株のことを考えているようで、それを何年も積み重ねているので成績も比例しています。彼は僕より上手だと思いますし、やっている量も僕と全然違います。もしかすると、株に向いているのは僕の方かもしれませんが、彼は努力の量で僕を上回っています。向いている・向いていないより、どれだけ努力するかが結果につながる世界です。
しかし、ほとんどの人が受験勉強ほど株やFXの勉強をしていません。FXや株だってお金を稼ぐ手段の一つなので、人生を左右する重要なことです。それなのに受験勉強以上の真剣さで勉強をしている人は少ないと思います。今やっていないのであれば、やれば差が生まれるわけですから、それをチャンスと捉えてやり込むことが大切ではないでしょうか。
陽和 これから投資の勉強をする人にアドバイスをお願いします。
テスタ 株やFXで上達するためには、お金をかけなくてもできることがたくさんあります。焦らず、いきなり勝とうとするのではなく、しっかり勉強をしてからお金をかけて1~2年後に株を買う、という流れにしても長い人生で考えると遅くないんです。株をやるならそれぐらいの意識でやってもらえれば良いと思います。
陽和 会社終わりに飲みに行ったり遊びに行ったりするのを全てなしにして、受験勉強以上の時間と労力と魂で株やFXに打ち込んでごらんってことですよね。
テスタ そうすれば、うまくなる可能性は上がります。トレードはダイエットと一緒なんです。ダイエットも、食べずに運動すれば、痩せる可能性が高くなりますよね。でも、みんなそれをしない。僕も全然できないんですが、やれば結果は出るけどやらない人の方が圧倒的に多いんです。
やる・やらないはその人次第で、飲むダイエット薬やダイエットマシーンで痩せないように株やFXにも近道はありません。今より投資の意識と知識を深めれば、いつか結果に反映されると思って頑張ってください。
陽和 ダイエットの話が分かりやすくて心にグサグサきました。最後に、テスタさんの今後の目標や目指しているものを教えてください。
テスタ 「負けたら引く」ことを頭に入れておきたいです。「一寸先は闇」なのが投資ですから、どれだけ勝っても最後にゼロになったら駄目ですよね。そうならないためにはどこで身を引けるかが重要ですが、ピークでやめることはできないと思っています。
投資の格言「頭と尻尾はくれてやれ」というように、天井と底は誰にも当てられません。だから、僕も自分の限界が見えたら、そこは潔く守りに入る勇気を持ちたいです。今株で勝っているから今回の対談につながっています。負け始めて勝てなくなったとき、こういうオファーが来なくなると考え、投資をズルズル続けてしまう可能性だってあります。それでは本末転倒なので、仕事の依頼がなくなる覚悟を持って身を引くのが大きな目標です。
とはいえ、一番は負け続けることがないように、毎日少しずつでも頑張って何とか勝ちを積み重ねていくこと。だから、これからも僕なりの投資を続けていきたいですね。
インタビュー日◎2023年11月15日
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