EAトレーダーとして自らEAを開発、販売している金ツッパ侍さん。
TwitterやブログでEAに関する有益情報を発信し続け、多くのトレーダーから支持を集めています。
そんなEA開発のスペシャリストに、激動相場をEA運用で乗り切るための極意を教えてもらいました。
聞き手・本文◉鹿内武蔵
「勝つのが先か、死ぬのが先か」の気迫でひたすら練習していた
─最新のEA事情、自動売買界隈の現状について教えていただければと思います。
よろしくお願いいたします。外国為替の創刊号、私も読ませていただきましたが、レベルが高くて、マニアックな情報も載っていて面白かったです。
─ありがとうございます。尖ったものにしようと思って作りましたので嬉しいです。さて、まずはこれまでの投資家としての経歴を教えてください。
投資家としてはもうすぐ9年目になります。最初は株式のトレードでした。とある事情で100万円くらいの臨時収入があり、そのお金を使って投資でも始めてみようかなと。若いときはスロプロだったので、「株でもたぶん勝てるでしょ」くらいの安易な気持ちでしたね。始めるときに、3万円の情報商材を買ってスタートしました。
ビギナーズラックで、一時的に50万円くらいの勝ちになったんですけど、そこから連続ストップ安を喰らったりして、結局大きく負けてしまいました。最初の1年くらいはこんな感じでした。
次にFXに参入します。最初は裁量トレードで、スキャルピングやデイトレードに挑戦。この時もいろいろな情報商材を買いあさったのですが一向にうまくいきませんでした。完全なる養分ムーブでしたね(笑)。
その次に、時間の優位性を狙うような手法に取り組んでいました。過去の価格データを取得して、Excelに落とし、「この時間帯にエントリーし、この時間帯にイグジットしたらどれくらいの期待値になる」というのをマクロを組んで計算しました。
─そのやり方はうまくいったんですか?
負けはしなかったけど、儲かるというわけでもなかったです。今にして思うと、過剰最適化だったのかなと。
それで裁量トレードに戻ります。この時期は、ずっとトレードの検証をしていました。平日は朝5時くらいに起きて、出勤前の3時間、仕事から帰ってからも、3時間。夜中の1時に寝て、また翌朝5時に起きる、みたいな。土日は毎週、10時間以上、PCにかじりついて検証していました。
「勝つのが先か、死ぬのが先か」の気迫で打ち込んでいました。そのうち動悸がしてきて本当に死ぬ気がして辞めましたけど…(笑)。
─練習はどのようなやり方だったんですか?
Forex Testerというソフトを使っていました。いろいろな手法を、ソフト上で検証し続けていました。その後、実資金トレードに移行し、少額の取引を続けました。週単位で勝ったり負けたりで、最終的にはだいたいプラマイゼロくらいでした。これが2017年くらいです。
2018年になって、自動売買を始めました。2017年末に実運用者のブログをいくつか読み、コンスタントに収益を積み上げているのをみて「これはイケるんじゃないかと…」。新婚旅行中にハワイからねこ博士さんのScal_USDJPYというEAを買ったのが最初です。
2018年はEAが勝ちやすい相場だったみたいで、EA運用者は全体的に成績が良かったですね。この時期は複数のEAを購入して回していて、うまくその波に乗れて150~200万円くらい年間で勝てました。そして2019年から、自分でもEAの開発を始めました。
─おおむね順調ですね。
ただ、2021年くらいから手を出した仮想通貨では、めちゃくちゃやられました。DeFiとかGameFiとか、いろいろ手を出したんですが、あまりにもセンスがなかった…。ポンジスキームだと分かった上で「おれは参入しないぞ!」と決めていたのに、周りの爆益具合を見ていてもたってもいられず、飛びつき、案の定そこが天井で爆損・…を繰り返してしまいました(泣)。
2021年は仮想通貨のバブルで、周りの人たちはみんな儲けていたのに、私だけボロ負けでたぶん1000万円くらいは溶かしたはずです。その後EAの調子が上がってきて、なんとか持ち直し、今に至るという感じです。
─壮絶ですね…。
ボラティリティでEA成績はガラリと変わる
─続いて、最新の運用について教えてください。
2022年はまれに見る、ボラティリティが高い相場になっています。そして、EAの運用結果はボラティリティに非常に左右されます。このあたりはバックテストをしてみるとよく分かることで、ボラティリティが低い相場では、損大利小の逆張りEAの調子が良いです。ボラティリティが低いということは、トレンドがないレンジ相場ということですから、いずれ元の価格に戻ってくるまで耐えるロジックが勝つことは想像に難くないですよね? 2018年はそういう相場でした。
逆に、ボラティリティが大きくなり、トレンドが出てくると、損小利大のトレンドフォローEA、ブレイクアウト型のEAの調子が良くなります。
ただし、ブレイクアウト型のEAは、相場が急激に動いた際のスリッページなども考慮に入れる必要があるため、好成績にならない場合もあります。
よくFX関係の本に書いてありますが、相場の7割はレンジ状態であると言われています。なので、ボラティリティが低い相場に合わせて作られた、レンジ相場型のEAの方が作り易い傾向にあります。だから販売EAはこの手のEAが多いですね。
1日の値動きが50pipsの時、利益確定が10pips、損切りが100pips、リスクリワードレシオ0.1のロジックは聖杯になりえます。いずれは戻ってきて利食いできる可能性が高いからです。でも同じ設定で、1日のボラティリティが500pipsのトレンド相場に挑んだ場合、利食いは僅かなのに高い頻度で大きな損切りに遭うので、おそらくボロボロに負けます。2022年のような強烈なトレンド相場において、レンジ相場型のEAはかなり厳しかったのではないでしょうか。
─ボラティリティが高い相場をEAで攻略する考え方を、さらに詳しく聞きたいです。
ずばり「リスクリワードレシオを上げること」です。私が2022年運用した中で、ブレイクアウトEAを高リスクリワードで動かしたものが非常に効果的でした。昨年までは+4pipsなどの薄利でトレーリングストップを発動していましたが、これに加えて+10~20pipsからスタートするような設定を平行稼働させました。こういう設定にすると勝率は当然落ちてしまうんですが、強いトレンドが出たときの破壊力はすさまじく、ちょっと目を離している間にものすごい爆益を叩き出していることもよくありました。
ちなみにこういったリスクリワードが大きめの設定は、期待利得も大きくなります。期待利得とは、トレード1回で期待できる利益のことです。スプレッドが広がったり、スリッページが多く発生して取引コストが高くなっている今の相場環境に対して、期待利得を大きくすることはトレード成績を向上させていく上で欠かせないことだと考えています。
なお、設定の調整は、直近の相場の状況を見ながら仮説を立て、2021年ごろからのバックテスト→結果が良かったら2015年ごろからのバックテスト→それでもプラス収支なら採用という流れで行っています。
─最近のEA界隈についてはどう感じていますか?
レベルがどんどん上がっていて、日々勉強させていただいています。最近はEA運用者が開発を始めるケースも多く、そういうEAはだいたい高品質です。以前は、過去の相場に過剰に最適化して、綺麗な損益グラフを作って売れるEAは作れるけど、自分では運用しないタイプの開発者が多かったイメージでした。またいろいろな販売サイトも出てきていて、以前より選択肢が増えているのもポジティブに捉えています。
─初心者トレーダーがEA運用で成功するためにはどうするべきでしょうか。
あれこれ悩まずにまずは始めてみることです! MT4の設定がどれくらいの難易度なのか、EAの運用がもたらすメンタルの影響はいかほどかなど、やってみないと分からないことがたくさんあります。私が知っている勝ち組トレーダーは、皆さん驚くほど行動が早いです。とりあえず何か一つ、EAを動かしてみると良いでしょう。初期コストは安い方が良いので、無料のEAを試すのも手です。
初期の操作や設定などは、Google等検索サイトでいくらでも情報が出てきます。さらにTwitterでEAに関する発信をしている人をフォローして、情報を集めていきましょう。界隈の猛者を観察していると、好調なEAの情報や設定、それにポートフォリオなどの有益な情報がポロッと出てくることもよくあります。さらに実際の収支を出している人も多いので、そういう方々の喜怒哀楽や阿鼻叫喚を見ていると、運用を続けて資金が増えていったあとのご自身をイメージできて楽しいかもしれません(笑)。
ただし、Twitterには初心者を喰い物にする詐欺師も紛れ込んでいるので、引っかからないように注意しましょう。無料のEAで人を集め、個人LINEに誘導し、粗悪なナンピンマーチンEAを勧めてくる輩には要注意です。そういった連中は、IBというpipsバック狙いです。
─資金はどれくらい必要ですか?
いきなり大きな資金を入れないことが重要です。データで見て想像するのと、実際に運用するのではメンタルへの影響が全く違いますから。初めは少額資金の小ロットで運用し、徐々に大きくしていくのが良いです。いきなり大きなロットを張ると、精神が崩壊して資金的にも大ダメージを受ける可能性が高いです。
あとはEAを買いすぎるのも駄目です。EAを買うこと自体が投資なので、自分の証拠金と照らし合わせて、どのくらいの期間でEAの購入額をペイできるかを計算しながら、一つずつ購入していきましょう。
最後に、人と自分を比べるのはやめましょう! Twitterを見ていると日々大勝ちツイートが流れてきますが、「他人は他人、自分は自分」です。上には上がいるので、比較してもキリがありません。面白いもので、同じEAを運用しても成績は変わってきます。それはプログラムにバグがあるからではなく、人間が動かしているからです。平常心を保ちながら、自分の運用スタイルを貫いていきましょう!
と、色々と偉そうに語ってしまいましたが、私もまだまだ道半ばです。明るい未来を掴みとるため、一緒に頑張っていきましょう!
インタビュー日◎2022年11月12日
金ツッパ侍 EA運用7箇条
【1】まずやってみる!
【2】自分で調べる癖をつける
【3】情報収集はTwitter!
【4】詐欺師に注意!
【5】資金を入れすぎない!
【6】EAを買いすぎない!
【7】人と比べない!
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)