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TNK氏特別インタビュー「EA開発者、波乱万丈を越え、なおチャレンジの道を征く」

TNK氏特別インタビュー「EA開発者、波乱万丈を越え、なおチャレンジの道を征く」

ゴールデンウェイ・ジャパン

現在はEA開発者として活躍するTNKさんですが、彼がここまで辿ってきたトレーダーとしての道程はたいへん険しいものでした。今回のインタビューでは、EAを自作するようになった経緯や、EAの具体的な運用、開発者の立場から感じる思いなどをお伺いしました。

TNK氏プロフィール
TNK氏プロフィール

EA開発者。FX歴は2014年~。EA歴は2018年~。2021年kindle出版。AvaTrade主催キングオブEA2022で3位入賞。裁量で何年学んでも結果が出ず、統計的な観点でルールを確立すべく、EAの作り方を習得。「全ての人々が、より天命に沿った生き方を選べるよう、健全誠実なシステムで支援する」を理念とする。【著書】FX自動売買脱初心者ガイド「失敗しないEA選びの真髄」: 勝てない原因の本質とは? MT4システムトレード攻略入門(kindle)

聞き手◉鹿内武蔵 本文◉佐野雄二

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「なんとかしないと」それがFXとの出会い

─まず、TNKさんとFXとの出会いについて教えてください。10年ぐらい前は大変な時期だったそうですね。

TNK そうです。当時30代後半に差し掛かったところだったんですが、2014年に体調を崩してしまいました。入院して仕事をすることもできず、借金もけっこう抱えていました。そのころに結婚もしていたんですが、妻や父をはじめ、家族に経済的に支援してもらっていました。ダメダメな人生を送っていたので、何か突破口というか、自分を変えていかなければならないと本気で思いました。そこでFXを一つの選択肢として考えたところがきっかけです。

 FX以外の投資としては、妻の名義で投資信託をやっていました。ただ、それもうまくいかなくて、自分でなんとか知識をつけないといけない状況でした。海外で生活していた時期があり、日本との為替も意識していました。

─FXを本格的に始めたきっかけについても教えてください。

TNK 2014年、入院したあたりから本を読み始めました。退院してからはパソコンで口座を作って、日本国内のFX業者で裁量取引をしていました。FXをやられている皆さんが最初に通った道ではあると思うんですが、いろいろな商材を買い集め、手法を研究して思考錯誤して練習するも、なかなか身につかず、成長している実感も湧きませんでした。

詐欺商材被害者の会がEA開発のきっかけ

TNK 4年ぐらい経って、裁量トレードだと「講師は勝っているのに自分はどうしても再現しきれない」と思って、自動売買に興味を持ちました。2018年ごろに、自動売買で勝負してみようと思って情報を集め出し、商材を買い集めました。当時はEAに関しては情報があまりなく、アフィリエイターもたくさんいたので、本物というか、本質になかなか辿りつけませんでした。

─今よりも情報が少なかったですよね。

TNK そうですね。自分自身目利きもできず、操作も分かりませんでしたし、いろいろなEAを動かしつつ、それが良いか悪いかも分からなかったので、けっこう損をしていました。

 一つ一つ買うにしてもEAは高価な上に借金もあって手を出しにくい。そこで「自分で作れればいいな」と考えました。それで、とあるスクールの教材を購入したんです。その講師は知識も経験も豊富でまともな方のように見えました。技術があって、英語も話せて、すごく魅力的な方でした。EAを作られているということで、教えてもらったんです。その人の理論を基に的確なロジックで組まれたEAだと思ったんですけど、今ひとつでした。

 ロジックをいくつか教えてもらったんですが、自分で同じように作っても、裁量でそのロジックどおりやってみても再現できないというか、損益グラフが右肩下がりになりました。その講座が終了するタイミングで、その人が作ったEAをいっぱい案内されました。高額でしたが買ってみて、それで稼働させても、一方通行の右肩下がりになってしまいまして。それで「この人ニセモノなのかな?」と思ったんです。

 その後も、とある詐欺商材に引っかかりました。「鉄板の聖杯だ」っていうEAが販売されていたんですね。「絶対負けない」って触れこみで広がっていました。よく分からないながらに買ってみたら、お金を振り込んで稼働させた直後にトラブルがありました。それで問い合わせても、返事が散発だったり、対応してもらえなかったり。

「運用者同士の被害者の会」というのがありまして、そこでも「ああでもないこうでもない、これは案内されてたけど、やっぱりダメだね」ということでした。もう記憶も定かではないんですが、「何かEAを自分で作れないかと思っている」とその中で発言したような気がします。そこで、カワセ係長のメルマガを紹介されました。そのメルマガに登録して1年ぐらい経って開発塾を案内されて、その受講がきっかけで開発者になれた、というところです。プログラミングの心得は特になく、時々本を読んだりしても全然頭に入らなくて、塾では学べる環境が整っていたので、無我夢中で猛勉強しました。

─TNKさんが世に出しているEAは何種類ぐらいあるんでしょうか?

TNK 20本ぐらいです。AMXっていうアノマリーEAが、ゴゴジャンさんで400本ご購入いただいてます。2021年から出品して、翌年の成績が好調で爆発的にお求めいただきました。その後は今ひとつですが…。

─開発者の方はEAをどのように運用されているのかが気になっています。TNKさんは、どんなEAを運用されているのですか?

TNK 私は、ナンピンマーチンやグリッド系は除外して、単ポジ系に特化しています。ナンピン系の開発と単ポジ系の開発って、使うテクニカルやくせが違っています。ナンピンの組み方を覚えるまで手が回らないというのもあったんですが、まずは単ポジ系を中心に取り組んでいこうと思って。

 運用も、ナンピン系は除外して運用しています。自作EAを小ロットで、いろいろな口座で継続的に回しています。出品しているものもそうでないものも、40か50ぐらい。その中で調子がいいものはロットを上げていこうと思っているんですが、今年前半にそれをやってみたら、あまり調子が良くなかったので、今のところは開発口座だけで自作のEAを回しています。お金に余裕があれば他作者様のEAを購入したいとは思っていますが、そこまで資金的な余裕もないので…。

─ロット管理はどのようなルールでされているのですか? 今回のかなり重要なテーマだと思います。

TNK ロット管理は、「岩ライザー」にバックテスト結果をまとめて、最大ドローダウンから計算しています。例えば初期証拠金が100万円だったら10%までと決めてしまい、その範囲で収まるロットの組み合わせでやっています。

─ところで、MT5って私は全然使ってないんですが、どうなんでしょうか? やっぱりバックテストは速いですか? ヒストリカルデータについてもMT4より親切ですよね。

TNK バックテストの実行は設定によっては速いです。訳が分からない初心者からすると、ヒストリカルデータをセットするっていうMT4の難しいことをやらなくて済むというのはあります。レポートの数値に関しては、出てくる数値のパラメーター量が多いので、読みづらいかもしれません。覚えてしまえば便利ですが。

TNKさんがGogojungleに出品しているEA(一部)

TNKさんがGogojungleに出品しているEA(一部)

TNKさんはGogoJungleに自ら開発したEAを出品しています。売れ行き好調のAMXは、11月20日時点で累計445本購入されています。出品ページ内では購入者からの質問へ丁寧に解答されており、EA開発に対するTNKさんの真摯な姿勢が表れていました。

勝てるEAだけが出回るはず、でも現実はそうなっていない

─シミュレーション段階で勝っているEAしか世に出回らないはずなのに、EAで勝っていない人が多くいる感覚があります。それについてはどう思われますか?

TNK その点は私もひしひしと感じております。何が原因なのかは私自身も試行錯誤中ですが、バックテストどおりには必ずしもいかないというのが私の持論です。経験則からしか言えないのですが、バックテストよりもフォワードは必ずパフォーマンスが落ちるということにして私は開発を進めています。

 まずバックテスト。MT4に限っては、注文は100%約定します。それが成績として表れるわけですが、リアルフォワードになると100%の約定にはなりません。MT4から注文を出して、ブローカーが注文を受けて、その価格でOKか、スリッページするかを判定してOKだったら約定します。そこに行くまでのタイムラグや、ブローカー側が約定するかどうかのジャッジは、EA側では決められません。ですから、EA側のシミュレーションでは100%の約定であっても、ブローカー側では95%だという差があったとしたら、約定力で差が出ますし、ブローカーによってはヒストリカル配信レートが違ってきますので、そこも差が出る部分ではと思います。

 他に、ブローカーによって、スプレッドとかスリッページとかスワップとか、手数料なんかも全然条件が違いますので、それで約定するかどうか、取引できるかどうかも変わってくる部分です。

─相場が変わると適正なロジックも変わります。どんなEAもいつかは使えなくなるか、あるいは逆に復活することもありえると思います。TNKさんはこのあたりをどうお考えでしょうか?

TNK 相場のボラティリティとトレンドによって、EAが通じるかそうでないかは全然変わってくると思います。いくらバックテストで平均値を取って、成績のプロフィットファクターが1.5だったり1.8で、リカバリーファクターも1年間で1とか2というデータがあったとしても、それは将来には全く関係ないというか、通用しないと思っています。

 自分で作るときもそうなんですが、2018年あたりの低ボラティリティの相場で調子が良かったロジックの平均値を取って錯覚し、その値幅に合わせて調整してしまうと、2022年のウクライナ侵攻のようなケースでいきなりボラティリティが上がっていったとき、全くそのEAは通用しなくなります。

─中身によってEAの賞味期限って全然違うんじゃないかっていう私の仮説があるんですが、詳しい人の意見が知りたいです。

TNK 恐らく、ボラ対応とトレンド判定が不十分か、製作時期が古いほど、将来通用しなくなりやすいと思います。以前はTP/SLを低めの固定値に設定して、ボラ拡大時に通用しなくなっていました。今ではよく、ボラに合わせて変動するようにしています。トレンド判定は、MAなどの判定を入れずに作り、トレンドが出た際に一切通用しなくなったことがあります。作成時は、直近を重視して調整しがちですので、古くなるほど相場が変わり、合わなくなりやすいと考えています。

─裁量でも自動売買でも、損益曲線の形状ばかり見られていて、利回りは軽視されがちな印象を持っています。TNKさんとしてはいかがでしょうか?

TNK 逆の発想でしたね。自分は利回りをアピールしてEAを提供するとすごく反発を受けるだろうと思っています。再現性がないんじゃないかって。

 EAを投資として考える方にとっては、たしかに利回りは大事ですよね。作る側としては、利回りを目指すことはあまりないように思います。負ける方法を減らしていくっていう感じでやっているので、ドローダウンや、大きな損失をいかに減らすかっていう視点から組み立てていっています。だから、出品するときに「利回りはこうです」って言うのは、自分は控えています。「勝てますよ、稼げますよ」と取られてしまうのを避けたいんです。

 そういう面で、EAを出品している立場としては、利回りは各々で計算していただければそれでいいかな、と思っています。

バックテスト分析アプリ「岩ライザー」

バックテスト分析アプリ「岩ライザー」

いわちゃんさん開発のバックテスト分析アプリ。今まで日本語で使えるバックテスト分析ツールがなかったことから開発が始まり、初心者でも使いやすいツールとして公開されています。ドローダウン情報を詳細に表示できる、損益グラフに通貨チャートの表示が可能、複利と単利の合成ポートフォリオなど、日本語対応のみならず機能が充実しています。

EAを良くしたい一方で開発者が感じるジレンマ

TNK 「EAに相場観を入れていったほうが良い。ファンダメンタルズをちゃんと認識した上でEAをオンオフしていく」という村居孝美さんの記事を以前『外国為替』で拝見しました。今年、実験的に同じことをやってみています。全部動かしっぱなしでデータを取って、こういうファンダメンタルズ指標が来るからこのEAは止めたほうが良いかもしれない、と思いつつ結果を出してみて、シミュレーションどおりだったことを確認する作業をしています。

─出品されたEAを買った人にケアや情報提供をしたい出品者は多いと思います。でも、それは投資助言として法律違反になってしまうんですよね。難しいところです。

TNK 不具合の改善は投資助言にあたらないはずなので、助言にならない範囲で一生懸命クレーム対応をしたりとか、ユーザビリティの改善をしたりとかはやりたいと思っています。投資助言にあたるのはロジックのアップデートとかなんですが、ゴゴジャンさんであればそれが可能です。他のマーケットさんだとできないので、その点には気をつけています。

 相場観に合わせた運用を伝えると投資助言になってしまうと分かっているので、自分の個人的な運用だけに留めています。

 EAの開発ができてもトレードで勝てるとは限りません。なかなかスムーズに勝てるEAが作れず、それが自分の課題だと思っています。「聖杯はない」って言いますけど、自分は聖杯を求めなければいけない立場です。改善できる部分はまだまだあると思います。それを基にして、安心して使えるEAを提供したいなと思っています。

─自動売買自体はもちろん問題ないんですが、詐欺師に利用されやすい点は問題ですよね。「自動売買だったら楽に儲かる」みたいな過剰な期待があるから、都合良く拡大解釈をしてしまうのかもしれません。

TNK それはありますね。どうしても期待を持ってしまうのは分かりますが、EAは設計どおりに取引を実行するツールにすぎませんから。

EAに過度な期待は禁物、理想と現実には乖離がある

─最後に、TNKさんから、読者のみなさんにメッセージをいただけますか?

TNK EA開発を専業でやっていますが、専業開発者になるのはおすすめしません。頭の毛がなくなります(笑)。

 自分自身、まだまだ発展途上で、ちょっと難しい研究段階の時期にあります。フォワードが好成績のEAをもっと作れるようになれば、将来は見えてくるかもしれません。

 EAの開発者になるにしても運用をするにしても、EAに期待しすぎないほうが良いと思います。バックテストの見栄えが良いものは比較的簡単に作れますが、フォワードが長く通用するEAを作るのは本当に難しいです。販売されているEAは、好調な時期に売れやすいんですけど、いざ資金を投入した瞬間に負けが続くとか、そういうことが本当によくあります。購入時はなるべく、好調すぎるEAに飛びつかないといいかなと思います。

TNK氏インタビューまとめ

①バックテストよりもフォワードは必ずパフォーマンスが落ちるものと考えたほうがいい
②「聖杯」はないと言われているが、妥協せずに聖杯を求め続け安心して使えるEAを提供したい
③EAは設計どおりに取引を実行するツールにすぎず、過度の期待は禁物

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TNK
EA開発者。FX歴は2014年~。EA歴は2018年~。2021年kindle出版。AvaTrade主催キングオブEA2022で3位入賞。裁量で何年学んでも結果が出ず、統計的な観点でルールを確立すべく、EAの作り方を習得。「全ての人々が、より天命に沿った生き方を選べるよう、健全誠実なシステムで支援する」を理念とする。【著書】FX自動売買脱初心者ガイド「失敗しないEA選びの真髄」: 勝てない原因の本質とは? MT4システムトレード攻略入門(kindle)
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