漁師で身につけた野生の相場観を武器に、FXを開始してわずか10か月で月収850万円を達成した水島翔さん。今回は、知識ゼロの初心者が身につけるべきマインド、手法について伺った。
水島 翔(みずしま しょう)氏プロフィール
株式会社好きなことで生きていく代表取締役。スキャルピングとデイトレードを得意とするFXトレーダー。1984年、富山県生まれ。高校を中退し、地元建設会社、漁師、大手運送会社に勤務。会社員生活を送るが、FXに出会い、10か月後に月収850万円を突破。現在は好きなことで生きていくために自分のライフスタイルを発信。地域創生のために飲食事業や不動産事業なども展開する。【著書】漁師トレーダー翔の「一本釣りFX」 世界一やさしいデイトレ・スキャルピング入門(ぱる出版)【著書】株式会社 好きなことで生きていく(扶桑社)
聞き手・本文◉荻田里佳
ビジネスとして成功しFXでなりたい自分に
FXはギャンブルか、それともビジネスか。どちらにするかは自分次第だと思う。僕自身はビジネスとしてFXをやっているから、勝てる方法を身につけて、実際に勝ち続けている。
しかし「FXで一発逆転したい」、そう思って始めたものの、大負けしてしまう人がいるのも事実。そこで今回は、どうやって勝てるようになったのか、マインドの部分も含めて解説していく。
僕がFXを始めた理由は、お金と時間を得たいからだった。高校中退後は、漁師をやったり、地元の建設会社で働いたりした。大手運送会社で営業マンとして、サラリーマンをしたこともある。営業マン時代は貪欲に数字を追い求め、出世する喜びも得ていた。
結婚をして子宝に恵まれたが、車のローンや月々の支払いがあり、経済的に逼迫。給料が上がっても、贅沢ができるわけではなかった。「もっと時間が欲しい」「もっと良い車に乗りたい」といったお金で叶えたい願望はあれど、役職が上がっても給料はさほど増えず、欲だけが溜まっていた。そんな毎日にモヤモヤする日々。SNSでは、僕が欲しい時計をつけてキラキラした毎日を送る人が目につく。
そんなときに出会ったのがFXだった。「これなら夢を叶えられる」。一念発起して、FXに夢中になった。デイトレに専念するため、FXを始めて3か月で会社を辞め、10か月が経ったころには月収850万円を達成。
僕がFXで成功できたのは、成功するまで諦めず、努力を続けてきたからだと思う。多くの人は「継続」できずに断念するが、凡人こそ、自分のモチベーションを維持する努力をすべきだ。「なりたい自分になる」。それには、具体的に将来成功している自分を思い描くと達成しやすくなる。稼がなければならない理由を明確にするのだ。あなたは今、何のためにお金が欲しいですか? まずは、この問いに即答できるようになろう。
脳を騙して錯覚させる心のブレーキの外し方
「ビジョンボード」というものを知っているだろうか。ビジョンボードとは、欲しいもの、行きたいところ、目標としている人物、自分の大切な人などをプリントアウトし、切り貼りして作ったボードのこと。ビジョンボードを作っているときは、胸がわくわくしてときめくだろう。
僕もFXを始めたばかりのころに、ビジョンボードを作った。目標をいつでも見られるところに可視化して置いておくと、自分が進むべき道がはっきりと分かった。変わりたいけれど、一歩を踏み出せないという人に特におすすめしたい。
ここで考えてほしいのだけれど、皆は「なぜ自分が変われないのか」を考えたことはあるだろうか。ある瞬間は胸が高鳴り、何かに挑戦しようと思っていても、一晩寝て起きたときには、日常に戻り、わくわくを忘れてしまう。新しいものに挑戦することや選択することはエネルギーが必要。そして、人間には「新しいことをして失敗したらどうしよう」とエネルギーを抑える心理が働くことがある。エネルギーを最小にするために「今までと同じ」行動を取ってしまうことも珍しくない。これこそが「現状維持メカニズム」だ。
それでも変わりたいなら、行動をするしかない。そのためにビジョンボードを作り、脳を騙して錯覚を起こさせ、心のブレーキを外そう。常に未来の自分をリアリティーをもって描き続けることで成功に近づくことができるのだ。
大局の波に乗れば初心者でもFXで勝てる
初心者は、チャートを見たときに「まず何からやれば良いのだろう」と悩むかもしれない。ただ、どんなトレードスタイルでも共通するが、複数の時間軸でチャートを分析するマルチタイムフレーム分析は身につけるべき基本だろう。僕は、エントリーしたらその日で決済するデイトレを行うことが多く、マルチタイムフレーム分析は週足から日足、4時間足、1時間足、15分足、5分足といった具合で見ていくことが多い。
相場というものは「上位足の方向性が、下位足の方向性に対して優先される」という原理原則がある。そのため、上位足のチャートを順番に見て、大局の流れを把握する必要があるのだ。僕は各時間足で「意識されている価格帯」を見つけたら、水平線を引くようにしている。その水平線をブレイクしたら売買を検討するからだ。ここで覚えておいてほしいのは、上位足で意識されていた価格帯をどちらか一方にブレイクすると、大きく価格が動く可能性が高い。だから、どの時間軸に水平線を引いたのか、チャートを一目見ただけで分かるように、僕は時間軸ごとに水平線の色を変えている。そして、下位足より上位足の方向に従って、伸びるところだけを狙っていく。
初心者は「伸びるところ」が一体どこなのか、最初は分からないかもしれない。しかし、それも仕方がない。これは知識と経験を積まなければ分からないことだから。今回は僕なりの視点について深堀りする。大衆の動きが見えやすくなり、「トレンドに乗る」とは何かが見えてくると思う。
FXは大局の流れに乗れば勝てるゲームと言っても過言ではない。だから初心者は、大きな波に乗る練習から始めるように訓練を積もう。
分析に欠かせないダウ理論。重視される高値と安値とは?
「利益が伸びるところを狙う」ために、僕はダウ理論をもとにチャート分析を行っている。ダウ理論とは、米国の証券アナリストであったチャールズ・ダウ氏が提唱したチャート分析理論のこと。ダウ理論には法則があり、
①チャートはファンダメンタルズも全て織り込んでいる。
②トレンドには3種類ある。
③長期トレンドは3段階からなる。
④平均は相互に確認される。
⑤トレンドは出来高でも確認できる。
⑥トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する。
この六つの基本法則をベースにして相場を分析する。全て覚えたほうが良いが、中でもトレンドについてしっかり学ぶ必要がある。
相場の流れには、上昇トレンド・下降トレンド・レンジの3種類がある。上昇トレンドは、直近の高値と安値が前回の高値・安値を切り上げ続けている状態のこと。一方、直近の高値・安値が前回より切り下げ続けていたら、下降トレンドと判断する。
そして、上昇・下降トレンドの終了には明確なシグナルが出る。上昇トレンドは、前回の高値を直近の高値が更新できず、前回の安値を下に割ってしまったら、終了したと考える。下降トレンドはその逆。前回の安値より直近の安値が高くなり、前回の高値を上にブレイクしたら終了となる。
ここまでで分かるように、前回の高値・安値は非常に意識される価格帯だ。それが一目で分かるように水平線を引いて、ブレイクを機にエントリーを検討する、というやり方もある。
また、長期トレンドは、先行型投資家の買い(または売り)が主となる第一段階、多くの投資家が追随する第二段階、一般投資家や初心者の参入が増える第三段階からなる。第三段階では、第一段階でポジションを持った投資家が利益確定する価格帯で、トレンドの終焉といわれている。
以上を踏まえた上でチャートを見ると見方も変わるだろう。短期的に売買する場合でも長期の目線は必要なので、覚えておくことをおすすめする。
トレンドの変化は目線で判断、流れをアクティブに読む
先ほど、直近の高値・安値はトレーダーから意識される傾向にあることを説明したが、そのほかにも価格が急上昇・急下降した先端の価格帯も意識されやすい。僕は、そのような意識される価格帯のことを「重要な高値・安値」と呼び、重要な高値の直前の谷になる安値を「高値の起点」と呼んでいる。反対に、重要な安値の直前の頂点を「安値の起点」と呼ぶ。
マルチタイムフレーム分析・ダウ理論を基にトレンドを分析したら、次は自分の目線をどちらに向けるか考える必要がある。そのときに、起点の考え方が役に立つのだ。
トレンドが継続している間は、順張りでエントリーを検討する。そして、トレンドの終了を予測するために、「目線」を都度変えていく。上昇トレンドの場合は高値の起点を下へブレイクしたら、目線を下へ変化させる。下降トレンドは、安値の起点を上にブレイクしたら目線を上に変化させる。トレンドと目線が一致して、上の場合は買いを、下の場合は売りを仕掛ける。
例えば、高値と安値を切り下げ続けている下降トレンド中に、安値の起点を上にブレイクしたとする。この場合は、目線を下から上に変化させるのだ。もし、このあと前回の安値より直近の安値が高くなったら、その時間軸では上昇トレンドに移行したと判断することができる。
こうやって、ダウ理論の変化の過程を起点のブレイクから判断し、目線を変化させながら相場についていく。常にアクティブな判断ができるのが僕の強みでもある。これは訓練をすれば、誰でも身につけられる感覚だ。誰だって、最初は自転車に乗れなかったと思うけれど、練習しているうちに乗れるようになったはずだ。そして、しばらく自転車に乗っていなくても、自転車を運転する「感覚」は覚えていると思う。トレードはこれと一緒だ。
一度勝てる感覚を身につければ、少し負けてしまっても再び勝てるようになるはず。そのためには、利益は最大限に狙って、リスクを最小限に抑える損小利大の考え方が必要になってくる。資金管理をしっかり行って、皆さんも勝ち組トレーダーになれることを心から願っている。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)