4月7日に、タイの警察が、タイ国内で日本人を相手に投資詐欺を繰り返していた、中国人とタイ人が在籍する63人のグループを摘発したというニュースがありました。SNSで著名な人物を装い、オンラインのやりとりの中から金銭を騙し取る手口でした。インターネット上のやりとりだけで詐欺が完結するのが、ある意味今風といったところでしょうか。
投資も投機(トレード)も、参加者全員がお金を増やすことは構造上不可能です。ゼロサムゲームと呼ばれるFXがその最たる例ですが、誰かが必ず負けなければいけません。
だからこそ、FXなどでお金を失ってしまうのなら、せめて金融市場に資金を投じた結果であるほうがまだマシではないかと思います。ドル円でショートしたり、ビットコインを買ったり、個別株やインデックスに投資をして、結果として資金が減ってしまうのは、それは正常な金融市場における投資や投機の結果です。
しかし詐欺師に騙されてお金を失うのは、金額が同じだとしても全く意味が違います。それは、うさんくさい詐欺師に投資をし、案の定お金を奪われているということです。つまり、金融市場で戦えておらず、不戦敗と同じなのです。
無策のトレードは推奨されませんが、FXでも、暗号資産でも、株でも、まぐれで勝つことはよくあります。詐欺師に投資すると、こういったラッキーパンチすら起きません。必敗です。
なぜこういった投資詐欺は昔からずっとなくならないのでしょう。要因は複合しているはずですが、1つ考えられるのは、「特別な情報」に弱い人が一定数いるということ。これから上がる銘柄をあなただけに教えます、他の人は誰も知らない裏技があるんです…。甘美ですね。僕も好きです。こういった方向の詐欺には、高学歴で社会的地位もあり、お金をけっこう持っている人がコロッと騙されたりするのを見かけます。きっと、プライドをくすぐる何かがあるんでしょうね。
厄介なことに、投資において裏技的な勝ち方が、全くないわけではないのです。ごくたまにあったりします。でもそれを、家族でも友達でも恋人でもない人には教えないですよね。
必ず勝つやり方はなく、負けるときは負ける。それならせめて、今回紹介したような何らかの金融市場で戦いたいものです。得体の知れない誰かに投資しても得るものは一切なく、ただお金が減ります。変な表現ですが、詐欺師に頼らずとも、自分だけの力でお金を増やせる世界が、FXであり、株であり、暗号資産です。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)