「ポンド戦士」として人気のもちぽよさんは、FXを勉強する過程で検証の重要性に気づき、マルチタイムフレームを意識するようになってから勝てるようになったといいます。
初心者が成功するためには何が必要で何をやるべきか、もちぽよさんから学びましょう。
聞き手◉鹿内武蔵/本文◉上岸誠太郎
はじめてのFXは即退場。負けてから勉強を始める
―まずは、もちぽよさんの投資歴を教えてください。投資を始めたのはいつごろからですか?
遠い記憶なので怪しいんですけど、投資を始めたのは2011年だったと思います。FXを知ったのは、テレビ番組がきっかけです。その番組には株とFXのトレーダーが出演していて、別に株でも良かったのですが、当時はFXが良さげに見えました。ちょうど副業を探していたので、「これだ!」と思いました。投資対象をしっかり比較したわけでもなく、FXを選んだのは完全にノリですね(笑)。
―初心者のころはどんな勉強をされていましたか?
ノリで始めてしまったものですから、最初は全く勉強をせずにトレードしていました。しかも、いきなりリアル口座で(笑)。テクニカル分析やインジケーターのことなんて当然知るわけもなく、スマホアプリのチャート画面は初期設定のままでしたね。移動平均線が3本並んでいるだけのチャートを見ていましたが、分析するわけでもなく、何となく上がりそう、下がりそうといった雰囲気だけでトレードしていました。
最初は5万円の資金で始めたのですが、案の定資金は底を突いてしまって、そのときに「ノリや雰囲気じゃ勝てない」と分かったんです。ちゃんとした勉強を始めたのは、それからですね。初心者向けの本やネットで売っている商材などを買い漁って、FXの基本的なことから学んでいきました。
―専業トレーダーになるような人でも、初心者時代は失敗がつきものですよね。FXを止めたくなるような心が折れるレベルの失敗はありましたか?
2015年初頭のスイスフランショックのときです。ユーロスイスフランの急落が有名ですけど、ショック後は他の通貨ペアもボラティリティが高かったんです。そんな相場を見ていたら欲望が止めどなく溢れ出てきちゃいまして…。「今までの損失を一気に取り戻す!」というメンタルでトレードをしていたら、取り戻すどころかさらに損失が増えてしまいました。FXの失敗談にありがちなリベンジトレードです。今だから笑い話にできますが、当時は相当へこみましたね。お金を失ってしまったこと以上に、そんなトレードをしてしまった自分が情けなかったです。
検証をすればするほどワクワクが止まらない
―そのような失敗を経て、今では書籍も刊行するほど有名トレーダーになったもちぽよさんですが、トレードの成績が好転したきっかけは何でしょうか?
好転した要因はいろいろ考えられますが、最も大きなきっかけは「検証の重要性に気づけたこと」かもしれません。使いたい手法のエントリーポイントを過去チャートで探し、勝ったときと負けたときを一つずつ仕分けして、それを全てデータに残していったんです。検証って疲れるし面倒じゃないですか? だからほとんどの人は検証が嫌いだと思うんですけど、当時はすごく楽しかったんですよね。勝てそうな手法を丁寧に検証していったら、「あれ? この手法の通りにトレードしていくだけでドンドンお金が増えてしまうのでは?」とワクワクが止まらなくなってきたんです(笑)。
また、日々検証をすることで新たな「気づき」も出てきました。一つ目はチャートパターンで、「こういうチャートの形になったら次にこう動きやすい」という傾向があることを発見したんです。それと、マルチタイムフレームを意識するようになったのも、このころでした。
―一つの通貨ペアで複数の時間足を見るチャート分析方法ですね。
そうです。例えば、1時間足の動きを見てから15分足の様子を確認したり、逆に5分足で大きな動きがあったときに4時間足ではどうなっているのか見てみたりします。長期足から短期足、短期足から長期足というのを過去検証で意識的に確認していくと、それはもう〝気づき〟の連続でした。でも、当時はマルチタイムフレーム分析という分析方法があることを知らなかったんです。手法を検証しているときにいろいろなことを試してみて、トレードの勝ち方が固まっていった感じですね。
過去チャートの検証を一通り終わらせてから、次はデモトレードを使ったリアルタイムの検証を始めました。そうしたら検証した通りというか、それ以上に良い成績だったんです。フォワードテスト期間で確信めいたものを感じたところで実戦のトレードに切り替えました。バックテストとフォワードテストではトレード結果が全然違うことがありますが、実戦でも成績は良好でした。
―バックテスト、フォワードテスト、リアルトレードと段階を踏んでいったのが成功の秘訣かもしれませんね。
検証は大事ですね。本気でFXで稼げるようになりたいなら、それは最低限やっておかないといけません。FXを始めたばかりのころに戻れるなら、「今すぐその〝雰囲気トレード〟を止めろ」と当時の自分に言ってやりたいです(笑)。楽して勝てるほどFXは甘くないですよ。
FXは精神的につらい…目標は個別株の配当狙い!?
―リアルトレードでは、どんな分析や情報収集をしているのでしょうか。ファンダメンタルズ系のニュースを見ることはありますか?
情報収集は全然していなくて、チャートの分析だけでトレードしています。私の場合、チャート以外の情報が全てノイズになってしまうので、意図的にしていないんです。でも、最近始めた株のトレードでは毎日情報収集していますね。
―株ですか!? FXはもう卒業ということですか?
トレードは最終的に株をメインにしようかなと考えているところなんです。運用する資金が増えてきたら、放置できそうな株の方が良いんじゃなかろうかと。最終的な目標は配当金狙いで、それを実現するために情報収集を頑張っています。
FXでポジションを保有していると、他のことに集中できないときがあるんですよね。熟睡できなくて朝がつらい日もあったりします。ずっとFXをやり続けていくのは、精神的になかなか厳しいものがありますね。
―確かにFXは最終的にメンタル勝負みたいなところがありますからね。FXの専業トレーダーとして、今はどんな生活サイクルになっていますか?
あまり家から出ない生活を送っています(笑)。起きたらスマホで軽くチャートをチェックするくらいで、スキャルピングみたいにチャートをずっと監視しているわけではないです。あらかじめ指標やレートに設定しておいたアラートが鳴ったらチャートを確認してトレードするかどうか考えます。アラートが鳴るまでは、トレード以外の仕事をしたりネットフリックスでドラマを見たりして過ごしていますね。
特に「この時間に集中してトレードしよう」という考えはなくて、早朝にエントリーすることもあれば、ロンドン時間に短期トレードをすることもあります。相場次第ってことですね。チャンスがなければ1回もトレードしないで終わる日もありますよ。
聖杯探しは時間の無駄。王道のFX手法を極めよう
―もちぽよさんのような暮らしができるように、お勧めの勉強方法をこっそり教えてもらえませんか?
私的にお勧めの勉強法は王道中の王道ですけど、「ダウ理論」と「グランビルの法則」の二つを学んで、過去数年分のチャートで検証したり、デモトレードをしたりしてみてはいかがでしょうか。聖杯といわれるような特殊な手法を探し求める人の気持ちはよく分かるんですけど、聖杯なんて幻ですからね。探している時間の分だけ成功が遠のいてしまうと思うんです。早く成功したいなら、最初から普遍的で王道的な手法を使いこなせるように勉強した方が良いですよ。
―ダウ理論とグランビルの法則でお勧めの本はありますか?
一番のお勧めは、私の本です(笑)。というのは冗談半分で、私が勉強していたときに読んで良かったと思えたのは、「儲かる!株の教科書」というシリーズの『テクニカル指標の読み方・使い方』と『ケイ線・チャートの読み方・使い方』(共に日本実業出版社)の二冊です。FXの専門書ではありませんが、基本的なことを学ぶのに役立ちました。
―ありがとうございます。では、最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
これからFXに挑戦する人、今はまだ負けている人などいろいろな方が読まれているかと思いますが、私の勉強方法やトレード方法を知っていただいて、それが成功のきっかけになってくれたら最高ですね。書籍の他には、手法とインジケーターも販売していますので一度チェックしてみてください。ツイッターではトレードに関することを日々投稿しているので、そちらも見てもらえたらうれしいです。
インタビュー日◉2022年7月5日
基本に忠実にトレンド追従、もちぽよさんのFX取引アイデア
ZigZag
高値を頂点、安値を底として自動的に線で結んでくれるインジケーター。相場の上げ下げを視覚化するときに用います。
EMA
指数平滑移動平均線のことで、期間の異なる3本の線が縦に並ぶとトレンドの勢いが強く、絡み合うとレンジ相場であることが多いです。
MACD
代表的なオシレーター系インジケーターで、トレンドの変化を敏感に反映してくれます。これ単体でトレードをすることはなく、ダイバージェンスを見るために使います。
ヒドゥンダイバージェンス
ダイバージェンスとは、ローソク足とオシレーター系の逆行現象のこと。ヒドゥンダイバージェンスとは、ローソク足がトレンド継続の形を示しているのに、オシレーターが一時的にトレンド終了の形になる続伸・続落のパターンのことです。
基本的な順張りトレードの流れ
- ZigZagとEMAを見てトレンドの発生を探す
- 上昇時なら安値切り上げ、下降時なら高値切り下げの場面でMACDがヒドゥンダイバージェンスかをチェック
今回紹介するもちぽよさんのトレードアイデアは、王道中の王道であるトレンドフォローのパターン。ベースにあるのはグランビルの法則とダウ理論という、伝統的なテクニカル分析です。
まずZigZagとEMAで、相場に方向感が出ているタイミングを狙います。方向感があれば、押し目(上昇中の一時的な下降)や戻り(下降中の一時的な上昇)でポジションを持ちますが、このときに基準になるのがヒドゥンダイバージェンス。
上昇時なら、ローソク足が安値を切り上げていて、ダウ理論的に上昇の形状であるのに、MACDが一時的に下落している場合は、まだ上昇の余地があると判断して押し目買いを検討します。なお通貨ペアは、ポンド円をよく取引するそうです。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)