証券会社での勤務経験を通じてファンダメンタルズ分析の基本を確立、それを踏まえた上で長期足から短期足に落とし込んでいくテクニカル分析手法を実践するFLARE FXさん。
X(旧Twitter)やYouTubeなども活用してFXの良さを伝えたいと語るFLARE FXさんに、投資家としての歩みやお勧めのトレードアイデアをお聞きしました。
聞き手◉鹿内武蔵 本文◉田中タスク
証券会社で基本を学び海外でのトレード生活も
─これまでの投資歴やFXのトレード歴などについて教えてください。
FLARE FX(以下・FLARE) 投資家としてのスタートは20歳のころで、当時は大学生でした。父親の勧めで投資に興味を持つようになり、それがきっかけになりました。卒業後は証券会社で4年ほど勤務しましたが、当時はFXはやっていませんでした。
その会社を辞めてから海外に行って、海外で数年間トレード生活をしていました。帰国後は外資系の証券会社に入社し、そこで数年勤務したのちに自分で法人を設立して専業トレーダーになりました。
─投資家として、これまでどんな市場で取引されてきたのですか?
FLARE FXがメインですが、証券会社に勤めていたこともあって日本株や日経先物などもやっていました。僕はものぐさなので、個別銘柄をリサーチするのが面倒に感じたというのもFXメインになった理由の一つです。ファンダメンタルズを分析しやすいのも、FXの魅力ですね。
─初心者時代は、どんな勉強をしてこられましたか?
FLARE 証券会社に入社すると、新人研修で株式や債券、投資信託などについて基本から教えてくれました。ただしテクニカル分析は研修に含まれていなかったので、そこは先輩に聞いたり書籍で勉強したりの日々でした。
立場上、たくさんのお客さんに接するじゃないですか。勝っている人、負けている人の両方を見てきたので、これもかなり勉強になったと感じています。
─証券会社の社員という立場だとトレードはできませんよね。退職後、自分でトレードをするようになって何か変わりましたか?
FLARE 自分のお金でやることのプレッシャーって、こういうことかと思いましたね。証券会社時代に見てきた勝ち負けは、自分の勝ち負けではありません。損をしたとしても自分のお金ではないので、全然感覚が違いました。
FXを始めた頃はFXは資産の一部、少ない金額を投資するべきだとよくいわれますけど、僕は資産の7割程度を使ってフルレバでやっていました。それだけに慣れるのも早かったと思います。
─勝てるようになった、今後やっていけそうだと手応えを感じたきっかけはどんなことでしたか?
FLARE 7年前に、ユーロドルの大きなショートをやったんです。それまではデイトレなど短期トレード主体で勝ったり負けたりを繰り返していたんですが、そのときは決済をせずひたすら引っ張り続けたんです。それが成功して、「ハイレバでガチホした方が稼げる」という成功体験になりました。それからはスイングトレードが主体になっていますね。
FXとは関係ないですが、『ミリオネア・マインド』という本があります。その本には「もっと世界を大きく見ろ」と書かれていて、それをFXに置き換えると5分足よりも月足を見るといった視点への転換になりました。
ファンダメンタルズ分析をテクニカルで補強する
─トレードに必要な情報の収集や分析の方法について教えてください。
FLARE 情報源は、主にネットニュースやメディアサイトです。重視しているのはブルームバーグとロイターですね。あとは時事通信やFX系のネットメディア。株との相関性もしばしば見られるので、日米の株価指数やVIX指数などもチェックしています。
今は市場の関心が金融政策に集まっているので、インフレ率や雇用、失業率などの指標にも注目しています。
─ファンダメンタルズは難しいというイメージがあります。その一方で必要性は高いと感じる人は多いと思います。どうやってファンダメンタルズ分析に慣れていけばいいですか?
FLARE 証券会社時代は毎日、日経新聞の読み合わせがありました。相場に影響しそうな記事を見つけて発表するんです。そういう記事を探すときに、他の記事も見るじゃないですか。それを繰り返していくうちに経済への理解が深まっていったので、同じように経済ニュースを見る日課を作るといいんじゃないですかね。
─なかなか近道はないということですね。
FLARE 今すぐ経済通! ということはないと思いますが、効率を高めるのであればブルームバーグとロイターを毎日チェックすることと、経済指標を追っていくのがお勧めです。これをやっているだけで、基礎的なことは分かるはずです。
あと、中央銀行トップの発言にも要注目です。どんなトーンで発言しているのかも含めて確認します。日銀の植田総裁の発言をExcelにまとめて、どう変化しているのかをチェックすると、全体の流れのようなものが見えてきます。
為替相場は政策を先読みして動くことが多いです。事実、利上げが始まる前からドル高は始まっていました。その段階で目立つ発言があったらテクニカル的に分析をして根拠を補強、その上で早めに仕込んでおくイメージです。期待で買って事実で売れというのは、FXにも当てはまると思います。
エリオット波動第5波とフラクタル構造に注目
─次にテクニカル分析について、よく使う手法や考え方について教えてください。
FLARE 最もよく使うのは、エリオット波動です。その中でも最後にやってくる第5波に注目しています。最後の第5波が急騰や急落の動きになりやすいのはエリオット波動の基本ですが、そこを狙います。
直近の高値(もしくは安値)にヒゲが出ているようなところがあれば、それも第5波のピーク部分として意識します。
そしてもう一つ重要なのが、フラクタル構造です。日足以上の長い足でエリオット波動が観測できたら、第5波と思われる部分を短い足で拡大します。そこにヘッドアンドショルダーやダブルトップ(ダブルボトム)などのチャートパターンが現れることがあります。そうすればさらに第5波の終了が濃厚になるので、エントリーしやすくなります。
日足以上の足でエリオット波動を確認、第5波と思われる部分で短い足を使ってヘッドアンドショルダーやダブルトップ(ダブルボトム)などのチャートパターンを探す。そこで示唆が得られたらエントリー。
この方法が良いのは、エントリー後すぐに含み益になることが多く、メンタル的にも取り組みやすい点です。さらに慎重にいくのであれば、一度にエントリーせずに分割してエントリーしていくと、より確度は高くなります。
上昇からの下落を狙う場合、ここでさらに上昇するのであればすぐに切れるので、負けにくいトレード手法です。
─トレードの実例を紹介していただけますか。
FLARE 一昨年、ユーロドルの大きなショートをやった例を紹介します。日足でエリオット波動が観察できる局面ですが、この第5波らしき部分はちょっと怖いなと思って見送りました。その後ダブルトップをつける可能性があるなと感じる局面がありました。このときは米国のインフレ率がじわじわと上がっていましたし、どこかで利上げがあるんじゃないかと思っていました。これは動くなと思ったところで、ショートを仕掛けました。
結果としてエリオット波動が終了したあとの修正波を狙ってショートを入れたわけです。その後は金融政策も考慮しながらガチホして利益を伸ばしました。
しかもこの第5波は、もっとさかのぼると前回高値付近なんですね。エリオット波動第5波であり、前回高値をレジスタンスとして意識したこともトレードの精度を高めました。
まずはダウ理論、そして1分足プラクティス
─トレード初心者にお勧めの勉強法、トレーニング方法はありますか?
FLARE 基本として、ダウ理論の理解から始めるのがいいと思います。価格の転換や相場への織り込まれ方など、押さえておくべき知識が盛りだくさんです。まずはそこをしっかり身につけるのがいいと思います。
トレーニング方法としては、値動きを見ることの大切さをお伝えしたいです。長い足だとエントリーチャンスをなかなか見つけられないので、1分足など短い足で頻繁にやってくるエントリーチャンスを探して、模擬的なトレードをやってみるのがいいんじゃないでしょうか。1分足が速く感じるのであれば、5分足でもいいと思います。
トレードは未来を見るものなので、先が分からない本物のチャートを使うことが重要です。
─現在多方面で情報の発信や教育活動もなさっています。これらの主旨や意図について教えてください。
FLARE メインはX(旧Twitter)での失敗経験などの発信です。日々の相場解説をYouTubeで配信するなどの活動もしています。全員が勝つことはできないですが、少なくとも自分に関わった人には勝ってほしいと願って有益な情報の発信に努めています。
フォロワーさんから感謝のコメントなどをもらえると、やって良かったと思えますね。
─最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
FLARE FXを始めたときはちょっと勝って、そこから爆損というパターンが多いと思います。爆損は痛いですが、損切りの重要性を理解するための成長プロセスです。次は損切りに悩むことになりますが、それも成長のために必要なことです。
損切りは正しい行為なので、そこで諦めてしまうことなく前に進んでほしいですね。損切りを余儀なくされるのは、エントリーがまずかったからです。エントリーを極めれば勝てるようになります。ぜひ頑張ってください。
インタビュー日◎2023年9月19日
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)