億トレーダーには、元スロプロが多い傾向があります(編集部調べ)。お金を奪い合う世界において、ライバルよりも優位性の高い立ち回りをしてきた─そんな経験がトレードの舞台でも活きているのかもしれません。この企画では、パチスロの話を通して、FXで勝つためのエッセンスを探ります。2回目のゲストはカニの被り物でおなじみのFX系ユーチューバー、カニトレーダーさんです。
カニトレーダー氏プロフィール
2014年よりFXを開始するも、根拠のないポジション保有を続けてしまう「ポジポジ病」をわずらい、3年間でマイナス200万円。2016年FXから撤退。しかし2017年、「負けた原因を分析して、もう一度だけトライしてみよう。それでもダメだったら辞めよう」と決心、徹底的に今までのトレードを分析した結果、収支が伸び始める。2018年1月、YouTubeチャンネルをスタート。【著書】3年でマイナス200万から「副業FXで月収30万ちょい」の人生イージーモードにした件(ぱる出版)
聞き手・本文◉上岸誠太郎
高設定台のために期待値を考えてから
─FXの雑誌でパチスロの話を伺うという、かなり斜め上な企画なんですが、今回は取材を快諾していただきありがとうございます。
カニトレーダー(以下、カニ) いろいろと挑戦されている雑誌だと知っていたので全く問題ないですよ(笑)。ギャンブルと投資、投機は近いものがあって、「期待値で考える」という点に関しては一緒だと思っています。FXや投資界隈で活躍されている方たちは、もれなくパチンコ・パチスロを打ったことがあるのではないでしょうか。パチスロだけじゃなく、カジノや公営ギャンブル、麻雀なども勝利を追求する姿勢や考え方はFXと近いものがありますし、この企画が誕生したのは必然なのかなと思いますよ。
─そういっていただけると助かります! 趣味は「競馬・ボートレース・パチンコ・スロット」と公式ホームページに書かれているカニさんならば、絶対に濃い話が伺えると思っていました(笑)。それでは早速、パチスロ遍歴からお聞きしたいんですが…。
カニ パチンコとパチスロ両方をやっていたんですけど、ガチで活動していたのは主にパチスロの4号機全盛期時代で、事業を興す前の時間にゆとりのある20代前半のころになりますね。事業でやっていた競馬は正直いって勝ち続けるのは難しい部分がありますが、パチンコやパチスロの場合は結構単純で、公営ギャンブルより勝ちやすいんですよ。パチンコなら釘が開いている台、いわゆるボーダーよりも回る台に座るだけ。パチスロの場合は高設定の台に座り続けることができれば、長い目で見れば高確率で勝てますよね。
─ボーダー理論や期待値に早くから気づいていたんですね。そのような台をどうやって探していたんですか?
カニ 当時の北海道は他県と比べてパチンコ店が多かったと思います。今では考えられませんが、そのころってイベントで設定を示唆する告知があったじゃないですか。
─エビとかアンコウ(海物語の絵柄)のポップが台に刺さっていたり(笑)。
カニ P-WORLDというパチンコ店の情報が手に入るサイトで、メルマガを数十店舗分登録しておいて、そこから美味しいイベントを探すわけです。
─スロ好きならみんな見ているメジャーなサイトですよね。
カニ そうそう。たまに「ジャグラー全台設定5以上」なんて激アツな情報が届くことがあって。今はもうどの店も抽選入場だと思うんですけど、当時は並んだ順の入場という完全に早い者勝ちの時代でした。気合と時間の両方を持ち合わせた人間なら勝てたんですよ! 氷点下の早朝に並んでいたときは本当にしんどかったなあ…。
─氷点下(笑)。真冬の北海道はパチスロ愛というか勝利への執念が試されますね。カニさんが活動されていたのは4号機全盛期とのことでしたが、どんな機種を打っていましたか?
カニ 北斗の拳と吉宗、主役は銭形あたりを狙っていました。
─おおー、懐かしい。東京の話ですけど、シマの7〜8割をこの3機種で占めていた時代ってありましたね。北斗の拳しか置いていない専門店があったり。
カニ パチスロの全盛期でしたよね、間違いなく。その後、北斗が消え吉宗が消え銭形が消えて5号機に入れ替わって、天井狙いが割に合わない時代になってしまいました。それと同時期に就職をしたのもあって、いったんパチンコ・パチスロから離れることになりました。
─5号機になったタイミングでスロプロを廃業したって人は多かったみたいですね。
カニ パチスロ氷河期みたいな時代がしばらく続いていたのですが、その後5号機でまた天井狙いが有効な稼ぎやすい時期が到来したんです。その時期はスロプロ第2期としてパチンコ店に通っていました。たしか2年くらいだったと思います。
─なるほど、お話を伺う感じですと、天井狙いで期待値を積んでいくスタイルですね。カニトレーダーになる前はハイエナスロッターだったと。
カニ 嫌な言い方しますね(笑)。でも間違っていないです。
主役は銭形で期待値を学んだ
─期待値という考え方をいつから意識するようになったんですか?
カニ 主役は銭形(平和、2004年)ですね。この機種をきっかけに期待値のことを考え始めました。今振り返ると一番思い入れがある機種ともいえます。
パチスロの「天井」というのは、一定のゲーム数まで回すと必ずボーナスに当選する仕組みじゃないですか。ということは、その天井に近いゲーム数で放置されている台に座ることができれば、より確実性の高い立ち回りになるんです。この考え方を意識できたことが、勝てるようになった一番のきっかけだと思います。
─天井はストック機の機能ですよね。主役は銭形の天井ゲーム数って…。(ネットで調べ始める)
カニ (即答で)次回BIGの場合が1490G、REGの場合が999Gで、たしか700Gくらいから打ち始めれば2000円くらいの期待値だったと思います。入店したら条件に合う台を探すのですが、期待値がない台では打たないため、場合によっては1ゲームも回さずに帰ることもありましたね。
─徹底されていますね。1000円だけミリオンゴッドを打つなんてことは当然…。
カニ ないです(笑)。仮にその1000円でGODが揃ったとしても、期待値を軸に行動している人にとってそれは「負けの行動」なんです。逆に期待値の高い台、例えば設定6の台を終日ブン回して負けてしまったとしても、それは正しい行動をしたので問題ありません。
─運良く勝てても嬉しくない?
カニ FXもそうですけどギャンブルで負けてしまう人は、その場その場で運の良し悪しだけでやっていますよね。なんの根拠もなく、「なんとなく出そうだから」という思い込みで台を選んだり。パチスロはギャンブルですけど、期待値のある行動を積み重ねていけば収支は多かれ少なかれプラスになります。「運の要素を排除するにはどうしたらいいか?」ということを考えていくと収支が安定すると思いますよ。
─やっぱりFXとパチスロって共通点が多い気がします。値ごろ感でエントリーしている人は一時的に利益が出てもトータルで見ると稼げていないところとか。
カニ 共通点といえば、どちらもメンタルが重要ですね。これがブレブレになると正しい行動(期待値のある行動)ができなくなってしまうので。すぐに取り返そうとするのは特に危ないです。
─競馬や競艇の最終レースでその日の負けを取り戻そうとするなってことですね。
カニ その通り! ギャンブルもFXもパチスロも競馬も、やり方をどうこう考えることより、ドキドキハラハラしない金額でやることの方がよっぽど重要です。
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)