日銀は12月19日(金)の金融政策決定会合において、政策金利を0.75%程度へ引き上げることを全会一致で決定しました。これはコンセンサス通りですが、1995年9月以来、約30年ぶりの高水準となっています。米国経済の下振れリスクが低下したとして、来年の春闘に向けた賃上げの維持を背景に「経済・物価見通しの実現確度が高まった」と判断した形だと報道されています。
しかし、この歴史的な決定に対し、為替市場の反応は教科書とは逆を行くものとなっています。日銀待ちで動かなかったドル円レートは、発表直後から円売りが優勢となり、ドル円相場は一時156円台半ばまで上昇。債券市場では10年債利回りが2.020%(1999年以来の高水準)をつける一方で、為替は「金利差縮小」を無視するかのような動きを見せています。

植田日銀総裁のキーワードは「手探り」と「距離」
会見における植田日銀総裁の発言はタカ派的でありながらも、市場に「急激な引き締めはない」という安心感を与える絶妙なバランスだったといえます。実質金利の現在の水準は「きわめて低い」とし、緩和的な環境が続いているとの認識です。
経済に対して中立的な金利水準(中立金利)の推計値について、その下限までには「まだ少し距離がある」と明言。正確な中立金利の特定は困難であるとし、利上げによる反応を点検しながら「手探りで見ていく」姿勢を強調しました。
市場はこの「距離がある」「手探り」という言葉を「利上げサイクルは継続するが、そのペースは慎重かつ緩やかである」と判断した反応となったのでしょうか!? 結果として、利上げ決定自体は完全に織り込み済みであり、材料出尽くしによる円売りの口実を与えた形となりました。

日米金利差縮小でも円が買われない理由
今回の市場反応で特筆すべきは、「米国の利下げ(FOMC)」と「日本の利上げ(日銀)」という最強の円高材料が揃っても、トレンドが変わらなかったという事実です。これには、市場参加者が抱えるいくつかの複合的な要因が絡み合っています。圧倒的な円キャリー需要が要因だともいわれています。0.75%まで引き上げられたとはいえ、米国の4%台の金利と比較すれば、依然として円は調達通貨として魅力的である現実に変わりありません。
「金利差が縮まれば円高」という単純な図式は崩壊しており、実需・投機・センチメントが複雑に入り混じった、整合性の見えない相場展開が続いています。もちろん以前のようにそのまま素直にドル円が大暴落というシナリオもあったので何ともいえない部分ではあります。


植田総裁は円安について、「基調的な物価に影響を与える可能性については注意して見ていきたい」と述べ、企業の価格転嫁行動が活発化している現状に警鐘を鳴らしました。今後、この「整合性のない円安」がさらに進行し、輸入物価を通じて国内インフレを加速させるようなら、日銀は「手探り」のペースを速めざるを得なくなるともいえます。
市場が織り込んだ「緩やかな利上げ」というシナリオが、この止まらない円安によって裏切られるときこそ、相場の本当の転換点となるかもしれません。いずれにせよ今年最後の大きな材料は全て出尽くしました。
今年もあと数日。12月22日(月)からの重要指標・材料は次のとおりです。
■12月23日(火)
22:30~米GDP速報値
■12月24日(水)
22:30~米新規失業保険申請件数
■12月25日(木)
ゴト日
米国をはじめ日本以外がほとんど休場となる
■12月26日(金)
日本と米国以外はほとんど休場のまま
※まだまだ米国政府機関閉鎖の影響で解除されてからも正常に全ての指標が発表されていません。当日にしっかりご確認ください。
※12月アノマリー記事もご覧ください。
















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