世界的に有名なリアルマネートレードコンテスト「ロビンスカップ」の2022年度大会で、見事、世界1位の座を獲得した注目の凄腕トレーダー・コウスケさんに直撃インタビューを実施。
参加者だから分かるロビンスカップの裏話や大会に継続的に参加する理由、大会優勝へと導いた手法のロジックなど、貴重なお話を伺いました。
聞き手◉鹿内武蔵/本文◉落合彰
世界制覇の勝因と戦略は?
─ロビンスカップで過去2回の入賞実績がある実力派トレーダーのコウスケさんですが、2022年度大会にも参加されていたと聞いています。今回の結果はどうだったのでしょうか?
「結果としては、2022年度のロビンスカップFX部門で無事1位を取ることができました。今大会は初期資金5000ドルからエントリー可能というルールだったので、最初に口座へ5000ドル入金してスタートし、それを最終的に2万1685ドルまで増やしました。収益率は333.7%ですね。1年間で72回の取引を行い、最大ドローダウンは1.82%と低めに抑えられ、勝率は93%と高水準で終えることができました」
─凄まじい成績を残していますね。リアルマネーを投じるトレードコンテストでこの成績は、さすがの一言に尽きます。そもそもロビンスカップとはどんな大会なのでしょうか?
「ロビンスカップはトレーダーの技術向上を目的に、1984年から39年間続いている、すごく歴史のある大会です。世界30か国の腕に自信のあるトレーダーが参加する大会で、グローバルな環境でトレードの収益率を競い合えるのが醍醐味です。トレード界で最も歴史と名誉のある一大イベントではないかと思っています」
─過去のロビンスカップでは、良い成績を残して有名になった人もいますよね。
「ロビンスカップ優勝で一躍有名になった人物として真っ先に思いつくのが、米国の投資家ラリー・ウィリアムズですね。彼が記録した1万%超の収益率は、いまだに破られていません。1万ドルの資金を1年で113万ドルまで増やすという驚異的なリターンで優勝し、世界的な名声を手にしています。その後に彼の娘さんもロビンスカップに参加して、確か収益率1000%という結果を残していたはずです。日本人では最初にバカラ村さんが1位になっています」
─投資業界ではロビンスカップの存在を知っている人は多いですが、日本の一般トレーダーにはまだまだ浸透していない印象です。
「そうですね。たとえロビンスカップという名前を知っていたとしても、どうやって参加すればいいのか分からない人が圧倒的に多いのではないでしょうか。ロビンスカップにエントリーする日本人が少ない要因としては、『言語』『リアルマネーで5000ドル必要』『エントリーに際した手続きが少し複雑』という三つの壁が挙げられます」
─割とハードルは高そうに感じます。エントリーするのに書類がたくさん必要なのでしょうか?
「エントリーするにあたり、英訳したパスポートや免許証などを準備しなければならず、役場に行って公証人に翻訳してもらったライセンスを取得する必要があります。分かりやすくいうと、海外に口座を開くイメージですね。海外銀行に口座を作るには公証関連の書類が必要になってくるのですが、それと同じ流れです」
─手間がかかるので敬遠しているトレーダーも結構多そうですね。ちなみに、ロビンスカップはどんなプラットフォームでトレードするんですか?
「取引プラットフォームは、ATCというブローカーのMT4です。これがなかなか厄介で、取引コストがかさむ環境なんですよ。例えば、ドル円のスプレッドは2pipsとかなり広く、短期売買には向いていません。スキャルピングのように1日に何回もトレードすると、いわゆる手数料負けしてしまう可能性があります。また、リクイディティ・プロバイダーは良いかというとそうでもなく、重厚なレートが配信されている感じではありませんでした。コストやレートが微妙だったので、基本的には1週間程度でポジションを手仕舞うセミスイングでトレードしていました」
日本のトレード技術はまだまだ向上の余地あり
─コウスケさんは、2017─2018年の日本大会で3位、2019年の世界大会で2位と、これまでにもロビンスカップで好成績を残しています。継続的にトレードコンテストに参加されていますが、その理由を教えてください。
「自身で取引ツールを開発していて、そのツールの品質を担保するのが第一の目的です。あとは日本人が世界で活躍するのはすごく重要なことだと考えていて、世界に旅立って海外でも日本人が頑張っている姿を見せたいという思いもあります。世界大会で好成績を残せば、日本にも実力のある本物のトレーダーがいることを証明できますからね」
─日本代表みたいな意識を持って参加されているのですね。日本人のトレードレベルは海外と比べるとどうですか?
「私は投資とトレードは分けて捉えていて、投資の情報やリテラシーの部分では日本人のレベルはそんなに低くないです。ただトレードという観点で比較すると、日本人のトレード技術は世界的に見てもまだまだ低い水準にあると思っています。資本に対してお金をどんどん入れて資産を増やす投資行為では、日本人は海外と比べても決して劣っていませんが、決済して稼ぐというトレード技術においては海外のヘッジファンド勢、プログラム、アルゴリズムなどを見ると、日本のレベルは低いなと感じます。逆の見方をすれば、日本人にはトレード技術の伸びしろが十分あるということです」
─今回、ロビンスカップ優勝という大きな偉業を成し遂げたわけですが、既に次の目標は決まっているのでしょうか? また、今後もロビンスカップに参加しますか?
「根底には日本人のトレード技術を向上させたいという思いがあるので、今後も初心者の方々に向けた分かりやすいツールの提供や、トレードの情報発信は継続してやっていきたいです。大会については一応継続してエントリーしようと思っているんですけど、まだ2023年の大会には申し込んでいません。1位で終わらせた方がきれいなので、このまま勝ち逃げするのもありかなと思っています(笑)」
裁量とEAを組み合わせたハイブリッド方式で参戦
─続いて、今回のロビンスカップで使っていた手法や考え方を教えてください。
「私の一番得意分野である裁量メインでトレードしていましたが、今回はスキャルピングができない環境下にあり、かつ相場に張り付ける時間も限られていたので、バックアップで三つのEAも回していました。裁量とEAを組み合わせたハイブリッド方式のトレードスタイルですね。EAの方はそこまでロットをかけていなくて、100%のうち20~25%がEAで、残りが裁量という配分です。EAは、自分が理解しているロジックが相場を見ていないときにも作動してくれるので、メンタル的な安定剤となりました。ハイブリッド方式にすることで、チャートをあまり見ることができない状況でも自信を持ってトレードに臨めましたね。
利用していたEAは、ボラティリティが急激に発生したときにエントリーするタイプのものです。ポジションを長く持つかどうかは相場の流れ次第になるんですけど、高ボラティリティが続く限りはずっと持ち続けるロジックでした」
─EAをサブ的に使っていたんですね。メインとなる裁量トレードは、どのようなやり方でやられたんですか?
「今回はセミスイング的なトレードになること、また収益率を上げていかなければならないという観点から、ピラミッティングを活用しました。ピラミッティングは、エントリーして自身の思惑通りに相場が進んでいった場合にポジションを積み増していく運用手法で、利益の最大化を図れるのがメリットです。
トレードする通貨ペアはドル円かユーロドルで、どちらの通貨ペアも日足ベースでの順張りを基本戦略としていました。ダブルインサイドバーやアウトサイドバーといったチャートパターンを相場の転換点として捉えてトレードする、スタンダードなやり方です」
─外国為替の創刊号で教えていただいた手法で戦っていたわけですね。今回の大会で良い収益率を残せた要因はどの辺にあるとお考えですか?
「トレードがうまくいった要因は、やはりドル円の動きが分かりやすかったことですね。今回は歴史的な円安相場に乗って利益をしっかり伸ばすことができました。そこである程度、収益のボトムが固まり、複利で高ロットを張りやすくなったのが勝因だと思います。
YouTubeや他の教材では随分前から公開していた話なのですが、ドル円相場は2021年10月の時点で5年間のレンジ帯を上昇ブレイクアウトしていたので、その時点で既に円安になることは予想できていたんです。なので、特に迷うことなく円安の流れに乗ることができました」
─そんなに早い段階から円安を視野に入れていたとは驚きです。相場の大きな流れはどういった形で判断しているんですか?
「年足→月足→週足…という具合に上位足から順番にチャートを落とし込んで分析しています。そしてチャート上でレンジを抜けそうだなと思ったときには、その方向だけについて行くようにしています。自分の勝手な思い込みで相場が反転すると判断しないように注意しています。トレンドは続きやすいことを意識した上で、大きな流れに乗ることが大切です」
裁量で基本を学んでからEA運用するのが理想的
─今回はハイブリッドスタイルでロビンスカップに臨まれたとのことですが、裁量とEAを使い分ける上で、何か秘訣みたいなものはありますか?
「初心者の方であれば、やはりまず裁量トレードをやってほしいです。裁量で基本的なテクニカル分析や売り買いを学んだり経験したりしたあとに、自分でロジックを理解できるEAを使った方が良い結果が得られると思います。裁量の基礎を身につけておけばEAに対する理解が深まり、より効果的に活用できるからです。何も学んでいない状態でEAを使ってしまうと、ロジックを説明されたとしても何のこっちゃ分からないですからね」
─確かにFXの基礎知識なしでEAにチャレンジするのは無謀だと思います。最後に、読者の方に向けたメッセージをお願いします。
「日々の生配信やオンラインサロンなどで、自分の口で喋って情報をアウトプットしているからこそ、相場の方向感をつかめたり、シナリオに裏切られたときにその裏切りの内容に沿ってトレードできたりした部分があります。今回ロビンスカップで1位を取れたのは、私の配信を普段から見聞きしてくださった皆さんのおかげかなと思っています。
また、私はトレードと投資の二つを使って資産運用していくことが大切だと考えています。例えば、お金があまりないのであれば、まずは投資とトレードに使う資金の配分を明確にしておいた方が良いです。基本的に、トレードに回す資金は資産の25%未満とし、資産が増加していくにしたがって、その割合をどんどん減らしていくべきだと考えています。資産の25%以上をトレードに投じてしまうと精神的に負荷がかかってしまい、トレードを楽しめなくなりますからね。
今後の大きな展望としては、トレードと投資の根本的な違いを日本人にしっかりと伝える活動も引き続き行っていきますので、応援よろしくお願いいたします」
インタビュー日◎2023年1月16日
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)