スゴ腕トレーダーのたくしあげ所長さん。
成功へのきっかけは、とにかく自分のトレードの見直し。
トレード履歴の分析、そしてライブ配信で繰り返される大負けトレーダーの特徴を抽出することで、お金を増やせるスタイルを構築した。
聞き手◉鹿内武蔵/本文◉小栗健吾
たくしあげ所長さんの億トレまでの軌跡
株、そしてFXに参入し、手当たり次第に手法を試すもうまくいかず
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トレード履歴、ニコ生配信の大負けトレーダーを分析し、トレードスタイルをブラッシュアップ
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レンジ相場の逆張りメインの手法に加え、2022年は順張りで上昇トレンドを追う
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2022年は11月までで+2億9000万円
最初は何をやってもうまくいかなかった
─たくしあげ所長がFXを始めるきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、20代のころにサラリーマンの収入だけでは駄目だと思っていて、株を勉強し始めたことです。ただ、倒産が原因で保有していた株券が紙切れになるなど苦い経験ばかりしたため、他に自分に合った商品がないか探していたらFXと出会いました。たしか、2007〜2008年くらいの話だったと思いますが、株で勝てないからFXへ移行したというよくある理由です。
─始めたころは、どんなトレードスタイルで取引していたのか教えてください。
手当たり次第に、いろいろな手法を試していました。例えば「移動平均線から離れたら買う」や「買われすぎのサインのときは逆張り」といったよくある手法を真似して、全然勝てないと思いながらも延々と取引を繰り返していたのを覚えています。
─どのような情報収集をしましたか?
雑誌や本はもちろん、当時増え始めていたFX関連のブログからも手法に関する情報を収集していました。もちろん、全ての手法がうまくいくわけではなく、1ロットくらいで取引していたので負けても少しお金が減るくらいでした。そんな感じでとにかく自分に合う手法を探していました。
他には、FX会社の取引履歴から自分の取引を見直したり抽出したりしていました。具体的には、通貨ペアや時間帯ごとに成績を調べていました。細かく記録をつけると負担になりすぎてしまうので、2週間に1回のペースでやっていました。
取引の見直しと記録を1年間続けた結果、自分の取引について正確に把握できていなかったと気付きました。例えば、ナンピンをしたときは勝っているイメージがあったのに、実際の成績はそうでもなかったり、NY時間の成績が思っていたよりかなり悪かったりしたことです。そして、これまでの自分は、勝ちトレードを増やすことを優先に取引を考えていたんです。ただ、この分析をしてからは「負けトレードを減らした方が結果的に勝てるようになる」「手法うんぬんよりも、取引中に自分が何をやっているのか知ることの方が重要」と考えるようになりました。
─当時は、どのFX会社で取引することが多かったのでしょうか?
DMM FXやGMOクリック証券、あとは外為オンラインもよく利用していました。FX会社では、口座開設をして取引をすると、いくらかキャッシュバックをもらえます。ほとんどのFX会社でキャッシュバックのキャンペーンが行われていた時期なので、いろいろなFX会社で口座を開いていました。
─これまでのトレード人生で最も印象に残っている大失敗した経験を教えてください。
ドル円の取引で70〜80万円を飛ばしたときです。ちょうどそのころ、ニコニコ生放送やYouTubeで自分のトレードを公開する人が出てきていて、そういう人と同じようにドル円のポジションを持つこともありました。総合収支で勝っている人も同じポジションを持っているのだから、自分の塩漬けポジションもきっと助かるだろうという謎の自信がありました。ただ、朝の7時くらいに突然ロスカットアラートが飛んできて含み損で真っ赤な画面を見たときは、初めて血の気が引く思いをしました。もちろん、すぐコンビニまで走って入金しに行きましたが、間に合わずにロスカットされました。
あとから考えると、資金がなくなる怖さをまだ知らなかったんです。雰囲気だけで取引していたので、何をやっているのかも自分自身でも分かっていない状態でした。1~2万円の利益が出て喜んでいたのに、その日だけで、70〜80万円も一気に飛ばした衝撃は今でも覚えています。この経験が堪えて、きちんと研究しなければならないと考えるようになりました。
たくしあげ所長さんが利用していたFX会社
勝てるようになったきっかけは負けているトレーダーの配信
─当時、この人みたいになりたいと目指していたトレーダーがいたら教えてください。
株の世界では、BNFさんやCISさんが輝いていた時期で、こういう人たちのようになりたいなと憧れていました。FXでは、過去にニコ生で配信をされていた南紀さんやまっさんですね。彼らは1000万円くらいの大きなお金で取引していたので、目標にしていました。そのとき、FXなら株とは違って大きなお金を動かせるのだなと思っていました。
─勝てるようになった要因は何だと思いますか?
ニコ生で、他の人が配信していた取引を見るようになってからだと思います。ポジポジ病で悩んでいたときに、どうすればそのような事態にならなくて済むのか考えていたんです。特に参考にしたのが、彼らの負けトレードです。当時だけでなく今もそうですが、本やWEBではトレーダーの成功体験やどんな手法で勝っているといったことばかりクローズアップされます。逆に負け方について書かれている本や取り上げているメディアはなかったんです。もちろん、ナンピンがダメとか、損切りは必須といった一般的な情報はありましたが、どのように負けて相場の世界から退場していったのかまで深く切り込んでいるものはありませんでした。
だからこそ、トレーダーがどんな流れで資金を減らしたのかが、リアルタイムかつ無料で視聴できるニコ生は貴重でした。FXの世界で他の人の保有しているポジションを見られる機会って、実はそう多くないです。今なら、トレードアイランドのように、誰がどのくらいの成績なのか分かるものもありますよね。
ニコ生を見ていると「ロスカットアラートが鳴って、負けている配信者の手が震えている」「血の気が引いてボタンを押せない」といった生の情景まで分かります。つまり、負けているトレードの疑似体験ができるので、ずっと見ていると負けている人の特徴も分かるようになりました。
負けの要因で多かったのが、最初の損切りラインをいつの間にかずらしていたり、自分のポジションは助かるはずだという謎の自信を持っていたり、1分以内で損切りするつもりだったのに1日、1週間と持ち続けてしまったりというケースです。ニコ生の配信者の負け方を見るうちに、自分がこうならないためにはどうすれば良いのかを考えるようになった結果、勝てるようになりました。
─他のトレーダーの負けパターンが分かるようになった結果、自分のトレードにはどのような変化が現れましたか?
ニコ生の配信では、ピンチに陥っているトレーダーに対して「早く切れ」といったコメントがよく流れていました。そういった配信を見て疑似体験をしていたので、自分が一人で取引しているときにも損切りをしたくない願望が湧き上がってくると同時に、ニコ生のコメントで煽られている光景が頭に浮かぶようになったんです。その経験をしてからは、自分の願望でずるずるポジション持っていたり、配信していた人と同じようなパターンで大負けしたりすることがほとんどなくなって、良い負け方ができるようになりました。
2022年はレンジ相場だけでなくトレンドフォローでも成果
─たくしあげ所長は、現在どのような手法でトレードをしていますか?
2022年は、通貨の強弱を見てレンジ相場の範囲内での逆張りと、トレンドフォローでポジションを長めに持つ手法で取引をしました。レンジからのブレイクを狙うのは苦手なので、トレンドについていく形ですね。ただ、もともと値動きが緩やかなレンジ相場が得意なので、今年のドル高円安相場のようなトレンド相場は苦手なんです。とはいっても、例年では類を見ないほどのトレンド相場を逃すのはもったいないので、4月以降はトレンドフォローでも取引するようになりました。
─通貨の強弱を基に取引するというのは、具体的にどのような流れなのか教えてください。
通貨の強弱を売買判断に使っている理由は、指標をきっかけに強弱の関係が突然変わったとしても、大きな損失を被る可能性は低いという考え方が根底にあります。基本的には、通貨の強弱を見つつ、だいたいこの範囲内で価格が動くだろうと目星をつけた上で、デイトレやスイングで取引をします。レンジをブレイクした場合は、重要な箇所でブレイクしたかどうかを重視します。重要な価格帯からブレイクしたのであれば、そのままブレイクした方向についていきますね。逆にブレイクした価格帯が重要な箇所でなければ、損切りをしてポジションを手仕舞います。
─現在は、どのFX会社の口座を使用しているのでしょうか?
外為どっとコムをよく使います。以前までは別のFX会社を使っていましたが、取引枚数の制限を理由に乗り換えました。今は3000万通貨ほどで取引をすることもあります。
─一般的な個人投資家の感覚では、3000万通貨取引をするためにはかなりの証拠金額が必要と感じます。どのくらいの期間でその水準まで資産を増やせたのでしょうか?
ここ6~7年で急激に資産が増えました。FXを始めたころは100〜200万円くらいの資金で、サラリーマンを辞めたときには、1000万円まで資金を増やしていました。そのころは長く生き残ることこそが重要だと考えていたので、勝ったらその分の資金だけ口座から抜いていたんです。
枚数を増やすようになったきっかけは、若いトレーダーもいる飲み会に参加したときです。自分よりも10歳以上若い人が参加していたのですが、彼らは何千枚も張っていて、さらに資金も多く持っていたことを知ったんです。自分は若い子よりも歳を取っていて、死ぬまでの時間も彼らよりないのに、なんでのんびり取引しているのかと感じるようになりました。しかも負けているわけではなくて、ある程度利益を増やせる確証がある中で取引をしていたのにです。
目の前の若い子がどんどんリスクを取っているのを見ると、「そりゃあ、お金が増えるよね」と思うようになりました。同時にこれまでのやり方では違うと感じるようになったので、自分も1000万通貨、2000万通貨と枚数を増やすようにしました。お金を大きく増やすというよりも、枚数を増やしつつ負けをどう管理するかを重視するようになったんです。
枚数を増やしたことで資産が7億円まで増加
─そのようなきっかけで枚数を増やしていったのですね。現在の運用資金や2022年のトレード収支を教えてください。
先日法人税を支払ったので、かなり減りましたが、今は口座に7億円入れています。銀行で普通預金をあまりしていないため、ほとんどFX会社の口座に入れています。あと、2022年のトレード成績は今の時点で+2億9000万円でした。今年はドル円がよく動いていたので利益を増やしやすかったですね。
ただ、損をした取引もあって、政府・日銀による1度目の為替介入のときにドル円をロングで500枚保有していたのですが、逆指値を入れていなかったんです。さらにそのときは別件で忙しくて、チャートを見ていませんでした。気付いたときには、2000万円の含み損が発生していて思わず叫んでしまいました。結局、すぐに取引を繰り返してその分の負けは取り戻しましたが、勝っているときもこんなことはあります。
─平日はどのように過ごしているのか教えてください。
毎朝8時30分に起床したら12時くらいまで相場を見ます。そのあとはeスポーツ事業の仕事のために出かけているので、スマホでレートを見るようにしています。夕方帰ってきて、夜くらいから朝3時もしくはNYクローズ時間の6時前後までは相場に張り付いていますね。そして仮眠を取って8時30分に起きてを繰り返しています。寝たいときに寝る生活をしているので、やりたいときに取引をしています。昼間、ずっと座りっぱなしで相場を見ていると健康に悪いですし、思考が凝り固まるのを避けるために意識して相場から離れるようにしています。
大きく稼ぐよりも相場から退場しないこと
─ご自身が勝てるようになった要因は何だと思いますか?
やはり、大きく損をしないことを考えるようになったのが要因だと思います。もちろん大勝ちに憧れはありますが、他人と自分は違います。なので、私は小さな利益でも「塵も積もれば山となる」を信念にしています。SNSで他の人の収支を見て焦る人もいるかと思いますが、資産が増えれば自然と張れる枚数は増えていくので焦る必要はありません。それよりも、相場の世界から退場しないことが大切だと皆さんには伝えたいですね。足場を固めておけば、結果はあとからついてくるので、自分と向き合うことを大事にしてほしいです。
─取引をしていると、大きく負けることもあるかと思います。そんなときどんな考えを持っていますか?
結局私は為替介入で2500万円負けています。人間なのでそういう失敗はありますし、時には予想外の事態が起きます。そんなときに自分の性格とどう向き合うかが重要だと思うんです。私は「しゃーない」という言葉を好んで使っています。自分が専業トレーダーであると人に伝えると、「全部の値動きの初動を取れている」と言われますが、そんなことはありません。苦手な局面はやらない方が良いです。むしろ、苦手だと分かったら、いかに取引しないようにするか考える方が重要ですね。無理して苦手なことを攻略しようとしても良いことはありません。逆に勝っているときは取引し続けた方が良いですね。今日は100pips勝ったから取引を終了すると言っている人もいますが、あまり良い考え方だとは思いません。
あとは、勝てないときに「今日はしゃーない。明日も相場が開いているから頑張ろう」と切り替えをするのも重要です。どうしても毎日取引していると負けるときもあるので、へこんでしまうことがありますが、そんなときに「しゃーないしゃーない、明日もあるよ」と考えると気持ちが救われます。
─相場人生におけるターニングポイントは何だったと思いますか?
勝ってたときはもちろん、負けていたときもトレーダーの集まるオフ会に行って多くの人にお会いしたことですね。日本ではまだトレーダーは珍しい存在ですし、普段お金のことについて話す日本人は多くありません。ですので、トレードしている人と会って話すのは貴重な時間です。オフ会では、他のトレーダーの相場観やお金の価値観に触れることができます。
お互い手法について詳しく聞くことはないです。ただ、どのように取引をしているかという話にはなるので、他のトレーダーの考えを聞くようになって世界が広がりました。資産の多い人は神みたいな存在と考える人もいますが、みんな酒を飲み飯を食べる同じ人間です。礼儀さえきちんとしていれば、どんどんそういった場所には出かけていった方が良いと思います。実際、最近の20代や30代前半の人って賢くて、どんどん顔出しをしたりオフ会に行っている人が多いと感じます。
焦らずに取引していれば大きく稼げるチャンスは来る
─読者の皆さんへ向けて莫大な資産を築くために何かアドバイスできることはありますか?
FXの魅力は、普通に働いていたら手に入らないお金が得られるチャンスがある点ですね。ただ、会社のように働いたら給料がもらえる世界とは違って、FXのライバルは世界の投資家や証券会社です。相場は自分の都合では絶対に動かないことを常に頭に入れて戦うことが大切だと思います。
ゲームのRPGで例えると、自分たちはそのような強者と棍棒や布の服で戦っているような状態です。大事なのは、自分が主役になることではなくて、世界の投資家や証券会社の人たちが保有しているポジションに逆らわずについていくことです。またHP、すなわち命と同じ意味を持つお金も重要です。資金を大きく減らさずにちょっとずつでも良いので増やしていきましょう。最初はあまり増えないと感じるかもしれないですが、取引を続けていれば、大きく稼げるチャンスは来ますし、ある日ひらめくこともあります。皆さんには、焦らずに取引を続けていれば良いことがありますと伝えたいです。
インタビュー日◎2022年11月15日
たくしあげ所長 億トレへの道まとめ
【1】自分の取引記録から、自分でも気付いていなかったクセや傾向を把握した
【2】メディアにあるのは勝っている人の情報ばかりだが、ニコニコ生放送のリアルトレード配信では、リアルタイムで負けている人の行動や精神状態などを目の当たりにできて、大きく資産を失うパターンを把握できた
【3】大負けする配信者の姿から学び、適切なタイミングで損切りができるようになった
【4】もともとはレンジ相場が得意だったが、2022年の強い円安相場を見て、トレンドフォローの取引も行い、年間で3億円近いプラス収支
【5】オフ会で出会った、自分よりはるかに高いリスクを取っている若いトレーダーに触発され、ロットを張るようになった。オフ会は有益なので、どんどん参加すべし
【6】資金が増えれば、自然に張れる枚数は増える。焦らずに地盤を固めていく
【7】「しゃーない」の精神で、負けても深追いしない
たくしあげ所長さんが利用していたFX会社
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)