FXは自分のメンタルとの闘いであり、どんな人にも通用するメンタルコントロール手法は資金管理であると説くFXで馬さん。
多くの負けを経験した上で適正なロット数を管理する手法を確立、そこから冷静な分析とトレードができるようになったことで勝ち組になれたと語るFXで馬さんに、再現性の高いメンタルコントロール法と相場分析手法についてお聞きしました。
FXで馬(えふえっくすでうま)氏プロフィール
サラリーマン時代の2000年ごろより、金・プラチナの積み立て投資を開始。2005年ごろより株式投資も開始するが、ライブドアショックなどに巻き込まれ大損してしまう。その後、2011年ごろにFXと出会い、激しいギャンブルトレードを繰り返す。大きく勝つこともあったが負けの方が大きく、資金管理を徹底。最終的に勝ち組トレーダーへと転じ、2017年ごろから専業トレーダーとなる。現在はFXの投資助言サロンを運営するなど、多くの個人投資家を指導中。
聞き手・本文◉田中タスク
最初はうまくいったもののライブドアショックにやられる
─記憶に残っている失敗、「やってしまった」という経験について教えていただけますか。
FXで馬 個別の負け額となると正確には覚えてないですが、FXを始めたころは完全にギャンブル感覚でした。ロット数を大きくしていたので勝つときもなかなかの金額を取れますが、逆に負けると一瞬で大負けです。逆指値が何なのかも知らず、特にリスク管理もせずにハイレバレッジ取引を繰り返していました。そんなトレードをしていて強制ロスカットを一度も食らっていないのは奇跡といえますが、数十万円単位の損切りは何度もしました。
株でやってしまった2000万円弱の損失と比べると少ないとはいえ、合計で数百万円は負けてしまったと思います。時期としては2006年から2010年ごろですね。
─株で2000万円の損失は大きいですね。
FXで馬 友人の勧めに乗った当初はうまくいっていたんですが、ライブドアショックに見事に巻き込まれてしまいまして。もちろん私に株を勧めてくれた彼も大事故に遭ってしまいました。
─トレードで負けた原因は、何だったと思われますか?
FXで馬 感覚的にやったトレードですね。なぜ勝ったのか、逆になぜ負けたのか分からないトレードは負けます。一時的に勝ったとしてもそれは偶然で、同じことをやっているといつかは大負けして、最悪の場合は退場になります。
人に説明できない、言語化できないトレードには再現性がありません。それで勝っているトレーダーは存在しません。これ、記事のタイトルにしてもらってもいいくらい大事です(笑)。
─では、勝っているトレーダーとはどんな人だと思われますか?
FXで馬 プロが継続的に勝っているトレードは、地味なものです。ギャンブルのような荒々しいトレードや大きなpips数が動くようなトレードはカッコ良く見えますよね。しかしそれは客寄せパンダのようなもので、地味なトレードをコツコツと繰り返しているのが、真の勝っているトレーダー像だと思います。
─今にして思えば間違っていたと感じる勉強法やトレーニングはありますか?
FXで馬 そもそも勉強してからやるという考えがなく、感覚的にやっていたことが間違いでした。どこまでいっても投資ではなく、勘任せのギャンブルでしたね。FXと真剣に向き合えていなかったと思います。
─その間違いに気づいて、これではいけないと思うようになったきっかけはどんなことですか?
FXで馬 社会人として最も長く身を置いていたのは、パチンコ業界です。そのせいもあって、運に任せてパチンコを打ってもトータルでは必ず負けることを知っていました。どうせやるなら、理論的かつ戦略的に勝ちを目指すパチプロを目指すべきとの考えに至ったんです。そこそこ稼げるようになってからはカジノに行ったこともありましたが、カジノの攻略法も再現性が高いほど実は全然面白くないんですよ。FXもこれと同じで、勝ちにいく手法に派手さや面白味はありません。
パチプロが編み出した勝つためのロジックと、FXの手法って、根っこの考え方は同じなんだと気づいたときから、正しい方法で勉強やトレーニングをするようになりました。
─具体的に得た教訓、現在にも生かされているような気づきについて教えてください。
FXで馬 負けを繰り返した結果、トータルでは大きく負けていました。やがてそれを取り返すことを真剣に考えるようになって、そのときに真っ先に考えたことが損切りのルールでした。一度の損切り額に上限を設けて、そのルールに基づいてトレードをするようになりました。FX的にいうと、「資金管理の徹底」です。
勝ち組への転換点は資金管理にあった
─収支がプラスに転換するようになったきっかけは、どんなことでしたか?
FXで馬 もともと損切りに対してそれほど抵抗がなく、大きく負けても感情的になることは少なかったんですが、資金管理を徹底するようになってからはさらに冷静にトレードと向き合えるようになりました。そうなると自分なりの分析もできるようになって、まだまだ素人ながら根拠のあるトレードができるようになってきました。
週や月のトータル収支がプラスになるようになったのは、このころです。
─損切りを含む資金管理の重要性に自分で気づけるのって珍しいことだと思います。そんなマインドになれた理由はありますか?
FXで馬 損切り自体は「やってしまった」という気持ちで終われましたし、切り替えることもできていました。超えてはいけない負け額を感覚的に把握していたんです。最初は感覚的なものでしたが、いろいろと調べていくうちにそれが資金管理というものだったのか、と知りましたね。感覚的にもっていた点と点がつながっていったイメージです。
─資金管理の重要性は、私も強く実感しています。馬さんはどうやってその大切さを伝えていますか?
FXで馬 勝っている人は全員ができていることであって、逆に資金管理ができていないのに勝っている人を見たことがない。こう切り出した上で、勝ちたいのであればやるべきことだと開口一番に伝えています。教科書でいうと、1ページ目です。
Excelシートを使って具体的な数字を交えて説明しますが、そこから導き出されたロット数が正しいのかどうか、最初は分からないと思います。最初は分からなくてもその通りにやってもらったらメンタルが安定するので、「こういうことか」と分かってもらえます。正しい負け方を知れば、自ずと勝ち方も身についていきます。
─正しい負け方という言葉には、含蓄がありますね。
FXで馬 相場の神様、ジョージ・ソロスも「生き残れ」といってるじゃないですか。派手な相場戦でイングランド銀行をつぶしたほどのおっさんがいうのですから、それが真実だと伝えることもあります(笑)。
10分割してエントリーをすれば、用意した資金で10戦できるわけですよね。確率論から見て10連勝するのは難しいですが、逆に10連敗もそうあるものではありません。
トレンドを見つけて安全に乗るのが基本
─馬さんは順張りを得意とされています。その理由は何ですか?
FXで馬 本当は順張り、逆張りのこだわりはないんですが、相場の転換点を見極めて逆張りをするよりも既に発生しているトレンドに乗っかる方が安全だと思うからです。確実性の高いトレンドに乗っかるので取れるpipsは少なくなりますが、「頭と尻尾はくれてやれ」の格言通りです。もちろんうまくトレンドに乗ればpipsを大きく伸ばすこともできますしね。
─そのトレードスタイルを確立したきっかけはあるのですか?
FXで馬 アベノミクスが始まった2012年ごろ、ドル円は買っていれば儲かる時期がありました。とても強いトレンドで私も順張りで稼ぎました。このときに順張りの有効性と一方的なトレンドの威力というものを実感しました。
─効果があったと感じる勉強法やトレーニング法を教えてください。
FXで馬 やはり大事なのは、資金管理です。資金量から導き出した適正なロット数よりもさらに抑えたロット数でトレードするようになると、勝っても負けても分析した通りのレートでエントリーできるようになりました。メンタルがやられない程度のロットなので、戦略をトレードに正確に反映できたということですね。
ほとんどの人は「怖い」「もうダメだ」という感情で損切りをします。これだとメンタルがやられてしまっているので、そうではなく適正なロット数で逆指値の損切りを淡々と行うのが最善です。
トレード指南をしている人の中で、いうことを聞かず感情が入ったトレードになっている人のほぼ全員はロット数が大きすぎます。その結果、やられてしまいます。
─2023年の現時点での収支をお聞きしてもいいですか?
FXで馬 1月から10月までの収支は約1500pipsのプラスです。例年の3分の1程度というところです。
─ということは、今年は不調ですか?
FXで馬 去年はボラティリティがありましたが、今年はやりにくかった印象です。でもこの結果によって方針を変えるのではなく、同じメンタルで粛々とやっていきます。取り返そうとしたり、ここからラストスパート! なんて考えると死にます(笑)。
トレンドを見極める。それを継続すること
─これだけは覚えておくべき、という知識や技術について教えてください。
FXで馬 トレンドフォローが基本なので、通貨ペアの方向が大事です。最低限、移動平均線の傾きだけでもしっかり分析することです。そして、自分が興味をもった手法やテクニカル分析があれば何でもいいので、最低3か月以上は続けて、検証することです。
─続けてナンボ、というのはよくいわれていますね。
FXで馬 何度か連敗しただけでダメな手法、ダメなテクニカル分析と決めつけてやめてしまうようでは話になりません。それはインジケーターや自動売買のEAも同じです。ダメだった場合、なぜダメだったのか分かるまでやるのが鉄則です。
─少なくとも3か月という期間については、なぜですか?
FXで馬 1日1回トレードしたとすると、1か月で20回から30回くらいになりますよね。それを3か月続けたら100回くらいになります。本当は100回以上検証するべきだと思いますが、最低でもトレード100回分の検証は必要かなと思います。
この回数に至る前にやめざるを得なくなるのは、やはりロット数が大きすぎるからです。有効性があるかどうか分からないものにフルレバレッジで立ち向かうこと自体が無謀です。
─ファンダメンタルズ分析ではどんなことに意識したら良いですか?
FXで馬 その年、月などの時間軸で注目されている「旬」のテーマを見つけることが先決です。例えば、2020年3月のコロナショックから世界的に金利は下げられ、2022年からはそれを一気に戻す動きとなりました。そのため、政策金利や物価指数、金融政策、インフレ関連の指標などによって相場が動く場面が何回もありました。この旬は今も続いているので、最も注目するべき点でしょう。
─今の旬から、馬さんは相場をどう展望されていますか?
FXで馬 8月くらいまでは利上げが旬のテーマでしたが、その後は利上げの打ち止めが注目されています。ここから先は日本に注目が集まって、日銀の金融政策相場が起きると見ています。日本の特殊な金利政策の転換が12月19日に発表されたら、この日が爆弾になるかもしれません。今は銀行株などが買われているので、市場の関心は既に集まっています。
人のせいにしていると一生勝ち組にはなれません
─ずばり、大きく資金を増やす秘訣はありますか?
FXで馬 トレードに自信を持てるほどの実力がついてきたら、大きなチャンスの到来を見極めて、しっかりロットを張ってやることに尽きます。しかし、どんなに根拠のあるトレードであっても「絶対」はありません。チャンスで勝負に出た結果、当たってもハズレても1度きりにしておくことです。
─頑張る個人投資家に、メッセージをお願いします。
FXで馬 最終的にトレードは自分自身のメンタルとの闘いです。このメンタルコントロールが何よりも大事で、それを実現する再現性の高い手法が資金管理です。これって人から教わることではなく、自分自身で自分に合った最適なルールや手法、資金管理法を見つけることが何よりも重要です。
こういう雑誌を買ってみようと思う人は、遊びでやっていてもFXは勝てないと理解していることと思います。それなら勉強しようと思うわけですが、モチベーションを維持するのは簡単ではないでしょう。そこでまずは、FXを習慣づけてみてはどうでしょうか。1日に10分や30分といった時間をとって、1週間で数時間をFXに充てる。それを習慣化していくと、勉強も進むでしょうしトレードの経験値も高くなっていきます。
トレードで負けるたびに相場や手法、ツールなどのせいにしているようでは一生勝ち組にはなれません。投資は諦めず努力を続けていけばしっかりと成果が出るものであり、お金を増やせる素晴らしい方法です!
Editor’s Note
①勝因、敗因が分からないトレードでは成功できない
②人に説明できない、言語化できないトレードでは成功できない
③プロが継続的に勝つトレードは地味
④一度の損切りで負ける金額に条件を設けるのが資金管理の基本
⑤資金管理を徹底するとメンタルが安定し、負け方が分かり、勝ち方も身についていく
⑥転換点を見極めるより、既に発生しているトレンドに乗る方が簡単
⑦自分が興味を持ったやり方を最低でも3か月間は練習する
⑧ファンダメンタルズ分析は、今の旬を見つける
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)