動画配信者として有名なオレ的ゲーム速報JINさんは、昨年の含み損が約8000万円まで膨れ上がったそうです。
まさに〝FX中毒〟となり爆損することもありますが、実は一度ハマるととことん研究するタイプだと知っていましたか?
そこで酸いも甘いも知るJINさんに「FXの現実」を語ってもらいました。
聞き手◉鹿内武蔵 本文◉荻田里佳
オレ的ゲーム速報JIN氏プロフィール
YouTubeで「オレ的ゲーム速報JIN@FX・株投資部」を運営。元々はまとめブログ「オレ的ゲーム速報@刃」の管理人で人気を博す。投資好きが高じて、FXや株式投資の動画を配信するように。大負け系の動画で人気だが、投資成績はプラス1億円以上を達成。
ビジネスで成功しネットの世界へ参入
─YouTubeやSNSの発信を通じて多くのファンを抱えているJINさんですが、FXを始める前は何をされていたのか、改めて教えてください。
10年以上前になりますが、サラリーマンを1年だけやっていた時期がありました。しかし、すぐに辞めてしまいニートになったので、生活費を稼ぐために家にある物をオークションサイトのヤフオク!などで売っていました。よくゲーム関係のものを売っていましたが、売るものも尽きて生活費を確保するのも危うくなってしまい……。
そこで、タウンページなどの電話帳を使って、ゴミ回収業者や引っ越し業者などに「なんでも良いから売れそうな捨てる物があったら譲ってください」と上から順番に電話したんです。応じてくれた業者の元へ、実家のバンを借りて家電などを回収しに行き、ヤフオク!で売るようになりました。意外にもそれが軌道に乗り、月収50万円ぐらいになり良い商売として成立しました。
─そのバイタリティーは素晴らしいですよね。しばらくその仕事を続けたんですか?
その後、ゴミ回収業者や引っ越し業者と仲良くなって、いわゆるリサイクル業のようなことを仕事にしました。 当時はインターネットとリサイクル業界の間に距離があり、何でも売れて素人でも稼ぐことができたんです。まとまったお金ができたところで、倉庫を借りたり、会社の登記をしたりしました。
─そこから配信者になったきっかけを教えてください。
オークションサイトで出品をして売れるまでの間が暇だったので、 ブログを書くようになったのが始まりです。まとめサイト「オレ的ゲーム速報@JIN」でゲーム系のゴシップをひたすら書いていたら人気が出てきました。働きたくないという気持ちがあったので、ネットで稼げる方法があるなら効率が良いと感じたんです。
まとめサイトもうまくいってお金が貯まってきたころ、配信ブームが到来。動画配信サイトでオンラインゲームをプレイしたり、雑談をしたりしていました。その中で、貯めたお金でFXをやってみたら視聴者に好評で……。 一度やり始めると本気になるタイプなので、FXを本格的にやるようになりました。
─昔から配信者として頭角を現していたんですね。しかし、なぜFXを選択したんですか?
海外旅行が好きでよく行っていましたが、年末に行くと円安のことが多く「損をしている気がする」と思うことがありました。 アノマリーがあるのではないかと考え「年末は円安になりやすいなら、円高になるのはいつなんだろう」と思って調べてみたんです。そこで見つけたサイトには「8月が円高になりやすい」と書いてあり「8月にドル円を買っておけば、年末に上がるから儲かるじゃん!」と思いFXを始めたのがきっかけでした。「旅行で損している分をFXで取り返したい」そんな遊び心のような、節約したいというような思いがありましたね。
─リアルな経験が今につながっているんですね。多くの人がJINさんの配信を見ていると思いますが、視聴者層は何歳ぐらいですか?
年齢層は高めで、 40~50歳ぐらいが多い印象です。それぐらいの世代が時間とお金を持っているので、投資に興味が出るんだと思います。僕もFXを始めたのはお金と時間に余裕ができてからだったので気持ちは理解できます。
為替の暴騰に翻弄される。今年は円高に傾くと予想
─JINさんがFXを始めて6~7年ぐらいが経過し、当時と比べて「変わった」と感じていることがあれば教えてください。
ドル円のボラティリティが上がり、昔とはゲームチェンジしているのは感じています。2020年にブレグジット(=英国の欧州連合離脱)後に暴落した相場は経験しましたが、それ以外で年間30円以上動く相場は滅多にありません。
─昨年のドル円相場は珍しい値動きをしていましたね。どんな戦略を立てていましたか?
昨年3月のドル円は120円ぐらいだったので、もみ合いながら円高に戻ると思って売りポジションを建てることにしました。しかし、その少し前からロシアとウクライナの戦争が始まり、一過性だといわれていたインフレも加熱する方向へ。米国のインフレ率が8%になり、政策金利が引き上げられたことでドル円のチャートが右肩上がりになったのは想定外でした。途中で損切りすればよかったのですが、意地になってしまいできず。何より含み損が大きくなりすぎて錯乱していました。今はもう大丈夫ですが、トレードは冷静にならなければ勝てないと改めて感じさせてくれた出来事です。僕はイレギュラーな暴落や暴騰はダメージを食らいやすい傾向にあるので、今後治していかないといけないと思っています。
─ダメージを負ってしまう原因は分析されていますか?
ポジションの保有時間が長いことも一つの理由かもしれませんが、一番は判断が遅いからだと思います。後から振り返れば負けた理由を冷静に説明できますが、トレードしている最中に冷静になるのは難しいんですよね。
─価格がどこまでいくのか、それは誰にも分からないので想定を超えた動きをすると戸惑いますよね。
今年も145円の値をつけたときに僕は頭打ちだと考えましたが、周りには「150円までいく」という人もいました。価格がどこまで伸びるのかは神のみぞ知る領域ですよね。でも、僕は150円まで行かないと思っているので、売りのポジションを今でも握っています。含み損はありますが、短期トレードでは勝っています。
─今、売りポジションを保有しているとマイナススワップがかなりの負担になっていませんか?
スワップポイントについては大失敗したと感じています。円安になり始めてから1000万円以上払っています。為替相場はいつか円高になると思っているので、含み損が出ているのは気にしていませんが、マイナススワップがここまで膨らんだのはきついです。ただ、ここで焦ってアクションを起こせば、冷静なトレードができなくなってしまうので「しょうがない」と割り切っています。
チャートの検証は宝探し。しかし、必勝法はない
─FX以外の金融商品も取引していますか?
基本的に何でもしていて、仮想通貨や日本株、米株、インド株も保有しています。
─FXと株ではどちらの方が成績が良いですか?
実をいうと、株では勝っているんです。FXは価格が上がったり下がったりするのでポジションを長期保有するのが難しいのですが、株の場合、買った後にほぼチャートを見ずに無駄な売買をしないから勝てているのだと思います。僕は株の方が資産を増やしやすいタイプのようです。
しかし、FXは土日を除いて24時間トレードできますし、日々変化していくので中毒性が高いですよね。
また、FXは必勝法のようなものが出ては消えていくイメージがあります。ひと昔前だと「月末のロンドンフィックスにポンドが買われる傾向にあるため、月末にポンドを買ったら儲かる」という手法を用いていましたが、いつの日からかそれが通用しなくなってしまいました。必勝法に皆が気づき始めたところで成績が落ちるので、メジャーになると勝てなくなるのかもしれません。僕は直近3か月のデータを調べて傾向を見つけるのが好きです。
─JINさんは検証をしっかりされているということですね。
検証は宝探しに行く感覚があって楽しいんです。ただ、散々模索して辿り着いたのは「絶対的な必勝法はない」ということ。もし、必勝法があっても一時的なものです。基本的にFXはお金の奪い合いをしているので、相手が苦しむ動きをします。最近の値動きもそれが露骨に出ていますよね。「誰かを行動させ損切りさせることがトレンドを作っている」というのはよくいわれる言葉で、今年7月に145円まで上がって一気に落ちたのも、まさにそれだと思います。
─FXはいつでもトレードができるというメリットがある反面、頑張ったからといって勝てるわけではないので難しいですね。そんな中でもJINさんはFXで好成績を収めている人にもたくさん会っていますよね。そういう人に共通することがあれば教えてください。
勝っている人は地頭が良く、謙虚な人が多いです。瞬時にリスクとリワードが計算できるので、損切りをしても生き残る力が強いと思います。中でも、GMOクリック証券で行われているトレードイベント「トレードアイランド」などでトップ層にいるFXスパシーバさんは、負けるときは大きく負けています。昨年も5億円ぐらい切っていたような……。それでも次の月には10億円を取り返しています。普通に考えたら5億円負けたらしばらく休むものですが、彼は度胸があるのか、倍で取り返すのでとんでもないですよね。
─額が大きくて別世界のようですね。謙虚な人が多いというのも意外でした。
お金を持っているアピールをしてもメリットがないと思っている人も多いです。また、勝っているからといってお金を派手に使っている人は僕の周りにはいません。億り人で元芸人の投資家・井村俊哉さんのようにお金を使わないタイプが多く、勝ちトレーダーは無駄遣いをしない印象があります。
─JINさんが交流ある人の中で「トレードがうまい」と思う人を教えてください。
先述したFXスパシーバさんやジャリ暴威さんというトレーダーがうまいと思います。FXスパシーバさんは今までに60億円以上勝っていて「今は勝ちすぎて資産を把握していない」といっていたので驚きです。しかし、そんなFXスパシーバさんも勝ち始めたのはここ数年のことで、2020年のブレグジットの際は、ロスカットされたそうです。一度退場して才能が開花したのかもしれませんね。
一方でジャリ暴威さんは、ここ1年間で約4億円まで資産を増やした人です。フルレバで買って、スイングで利益を最大限に伸ばす手法を取っています。1年でそれだけ勝てるのは尊敬します。
─二人とも国内のFX会社を使っているのでハイレバではないですよね。
そうですね。天然ガスをフルレバで安値圏で買い、高値圏で売るということをひたすらしたようです。恐ろしい成績ですよね。もともとはポンドで大きく資産を増やしたそうですが、超人技で普通の人は真似できません。うまい人の話を聞いて自分の糧にしようと思ったこともありましたが、僕には無理でした。ポジションを1000枚、2000枚単位で入れるので考えるだけで心が死にます。しかし、トレードランキング上位の人たちは勝てると思ったとき、思いっきり勝負を仕掛ける。だから資産が増えているんです。
彼らを見ていると「僕も1000枚ぐらい入れちゃおうかな」と衝動に駆られる瞬間がありますが、僕の場合は同じことをすると利益が出てもすぐに決済をしてしまうと思いますし、損切りはできません。資産を守るためにも、彼らのことはエンターテインメントとして見るのが一番安全ですね。
防衛力を高めて儲ける。資金管理はしっかりと
─今後挑戦したいことを教えてください。
無茶なトレードをすると資産がなくなるので、まずは生き残ること。昨年は錯乱しすぎて、含み損が最大8000万円まで行きました。ドル円が120円ぐらいのときに売りポジションを持って、151円まで握っていたので反省しなければと痛感しました。
今までトランプラリー(2016年)やコロナショック(2020年)、原油の0ドル割れ(2020年)、トルコリラ暴落(2021年)など、ありとあらゆる暴落相場でダメージを受けては復活し……。今回も何とか乗り切りましたが、いい加減改善しなければ破産するかもしれないという危機感があります。だから、まずは生き残ります。防衛力を高めて、儲ける。両立は難しいですが、それが今後の目標です。
─お金をたくさん持っていても資金管理は大事ですね。
勝っているトレーダーを見ると僕も勝てると錯覚しがちですが、あくまで自分が取り扱いできる金額の範囲内でやらなければなりません。
─資産をどこまで増やしたいと考えていますか?
お金が増えたら当然嬉しいですし、できることも増えますが、リスクも上昇するので資産を10億、20億にしたいという目標はありません。好きが高じてお金が増えるのが理想ですね。数字だけ追い求めると終わりがないと思うので……。
─資金が一定以上ある状態で投資家であり続けることは難しいんですね。
お金を大きく増やすためにリスクを取れば、お金が消えるリスクも増えます。FXは楽しくて魅力的ではありますが、ハマりすぎると時間やお金など大切なものを失ってしまうことがあるので距離感は大事です。
─最後に読者へメッセージをお願いします。
FXは頑張ったからといって資産が必ず増えるわけではありません。でも、生き残ってトレードを続けていれば、必ずチャンスがやってきます。そのチャンス相場で勝つために退場しないこと。負けたとしても冷静でいられるぐらいの金額で、実生活に支障が出ない範囲でトレードするべきです。大きく勝っている人に目がいきがちですが、年10%でも資金が増やせるのは素晴らしいことなので、自分に合った方法を見つけて資金管理をしっかり行ってください。
対談日◎2023年7月20日
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)