元証券マンで現在は個人投資家として活躍しているかぶカブキさんに、自身の失敗と成功の経験から読者に伝えたい勝つために大切なことをお聞きしました。
現在の投資スタイルの根幹にもなっている、企業の業績を見て利益につなげる考え方についてもお話しいただきました。
聞き手◉鹿内武蔵 本文◉諸田裕己
爆上げ銘柄分析のかぶカブキ氏プロフィール
証券会社の元プロトレーダー。投資歴は証券会社と個人で約15年。2019年7月より個人運用を始め、1年9か月で原資を約17倍に増加させる。証券会社で培ったプロ経験を生かした手法で、2倍以上になる小型銘柄を見つけるのが得意。株式投資初心者の人でもステップアップできるような、実践に役立つ有料級の日本株情報を発信中。
勉強になったのはディーラーよりも営業
─まずはかぶカブキさんがどんな投資の経験をしてきたのか、これまでの経歴をお聞かせください。
かぶカブキ 大学生時代に三菱自動車の株を初めて買ったのですが、その当時はほとんど動かなかったので、こんなものかという感じでした。再燃し始めたのは今から8年前ぐらいに、株式取引の上手な人から教えてもらう機会があって、そこからまた頑張ってみようと再スタートしました。数年で資産を数百倍にした人で、どうすれば短期で資産を増やせるかの考え方を教わっていました。
最初はその人が教えてくれるままに買ってうまくいってたので、どんどん株式投資の魅力に惹かれていきました。ですが、その人の主張や方法がうまくいかなくなっていき、次第に自分も負けていきました。そこから自分でもしっかり勉強するしかないと思い立ち、証券会社に入社したんです。
─個人投資家としての株取引をやめて、証券会社の従業員として投資を学ぼうと思ったんですね。証券会社でのお仕事は、投資の勉強になるんですか?
かぶカブキ 最初の仕事が、日本株を売買するディーリング業務でした。上がったら買い、下がったら売るを繰り返し、その日のうちに決済する短期売買に近い取引は、自分の性格とは相性が良くなくてほとんど勉強にならなかったです。
その後にコミュニケーション能力を見込まれて、ディーリング部門から営業に異動してからがすごく勉強になりました。営業として多くのお客さまと対話をしたことで、取引がうまい人とうまくない人の二極化を感じたんです。利益を出せる人たち、あるいは損失が多い人たちの特徴が見えてきて、すごく勉強になりましたね。
─どんな特徴なのか少し教えていただけますか?
かぶカブキ 大きな特徴の一つは、ファンダメンタルズをよく理解しているかどうかです。投資にはどうしても不確実な要素がたくさんあるのですが、しっかり調査してその不確実性を減らしていく。売買の根拠を限りなく確信に近づけて取引できる人が、大きく資産を増やしています。もう一つは、売買の根拠が分かっていても利確が早すぎると儲からないので、利を伸ばしている、損小利大を実践できていることが共通点です。
証券会社で営業を経験してからは、勝つ人の特徴を参考に、負ける人の特徴を矯正していくことで成績が良くなりました。資産を推移グラフで見ると、元手94万円で再スタートして今は5000万円以上です。手法が安定している現在は結果もしっかり出ていて、1000万円を超えてからは資産が急激に伸びるようになりました。
企業の決算を見て買う王道の投資スタイル
─今のかぶカブキさんはどんな売買スタイルなのでしょうか?
かぶカブキ 株価が上がっていく要素が多い銘柄を買って、バイ・アンド・ホールドが基本です。小型株を中心に、2倍、3倍になってくれそうな銘柄を保有して利益を伸ばすやり方が多いです。買う銘柄の判断は、企業の決算を最も重視しています。なぜ決算が良かったか仮説を立ててその背景なども調べ、株価がまだ上がってないと思えばその銘柄を買い、次の決算まで持っておく。決算が取引の軸になるスタイルです。
─大きく成長する銘柄を狙って利益を伸ばしていくと。どれくらいの期間保有しているのでしょうか。
かぶカブキ 大体3〜4か月で売却することが多いです。早いと1週間ぐらいしか持たないこともありますし、長くても1年です。想定よりも伸びていかなかった場合には、損切りしています。株式のトレーダー全体で見れば、中期保有ぐらいですね。配当があれば手放す理由はない、買ったら一生持つ、という投資家もいますから。
─証券会社勤務の経験以外に、どんな勉強をされて今の勝てるスタイルにたどり着いたのでしょう?
かぶカブキ 基本的には株式取引なので決算を中心に見ています。良好な決算、良い数字を出している企業について調べることを徹底しています。
初心者時代は自分でも何をすればうまくいくのかが分かっていなかったので、本当に迷走していました。チャート分析の勉強もしましたし、SNSを見て取引のうまい人が注目している銘柄やその判断材料を追いかけたりしました。いろいろな勉強をしたのですが、結局勝てませんでした。
そこからは自分に合わないと思ったことは全部捨てて、ファンダメンタルズの基本となる企業業績の変化や向上にのみ焦点を当てるスタイルに変えたんです。
─テクニカル分析や短期売買ではなく、中長期で見て業績が良い企業を買う、利益を出している企業は株価も上がる。株式投資の王道ですね。
かぶカブキ 企業の業績が上がる要因には背景があるんですよ。例えば、飲食店の鳥貴族は月間での売上高が前年比43%増と絶好調の業績を出していました。これはコロナ禍が終わった後の今年5月ごろからの外国人への水際対策終了がきっかけです。外国人旅行者が日本に多く訪れるようになりインバウンド需要が増えた結果、飲食店の業績が良くなっていたことが要因の一つに挙げられます。
世の中の動きにはいろいろな因果関係があって、単に業績が良いから、新製品の発売や新サービスが出るからその企業の株を買うのではなく、その背景に何があるかを考えることで買うべき銘柄が見えてきます。
─そうしたシナリオを仮説として立てて、どこが儲かるかを考える思考こそが大事なんですね。
かぶカブキ 先ほどの例でいえば、インバウンドは飲食店の好調に影響したといいましたが、外国人旅行者がたくさん訪れたことはホテルや鉄道会社、他の業界にも良い影響が出るだろうという仮説を立てることもできます。それを念頭に入れて、自動車、船、食品などあらゆる業界を対象に情報収集をすることで、企業の業績が上昇する背景も見えてくると思います。
自分の経験を伝えて誰かの手がかりに
─現在、かぶカブキさんは投資についての情報発信や教育の活動も行われていますよね。
かぶカブキ 昔は人にいわれるまま投資をして失敗し、投資の勉強も仕事も最初はうまくいかなくて、お金も全然なかったんです。失敗ばかりの人生でしたけど、株にのめり込むようになったことで資産がどんどん増えていき、絶望した状態から復活できた経験をしました。こうした経験をもがいていた昔の自分に教えたい気持ちを原動力に、現在似た境遇の人たちにとって何か手がかりになればと思い活動をしています。
─最近では執筆もされて8月に書籍が発売されています。内容的には自身の経験や取引スタンスが反映されているのでしょうか?
かぶカブキ 短い期間でも安全に資産を増加させるための考え方が中心です。チャート分析だけじゃなく、どちらかというとファンダメンタルズの基礎と応用、その変化を見ることが大事という内容で書いた本です。
株式投資では、短期的に資産を増やすことが目的でも、長期的に10倍株や50倍株を狙う場合でも、やはり決算書が重要。そして業績の中身とその業績が伸びた背景を知ることが大切です。その背景から企業の上向きが継続するかどうかを判断することで、さらに利益が伸ばせますから。
株を始めたい、勉強したいと思うFXトレーダーの方にもお役に立てると思います。株式はFXにはない企業の業績が大切な判断材料となります。株価への影響も大きいので、業績の見方や考え方が分からないという初心者のお役に立てれば幸いです。
─FXで成功したトレーダーであれば、他の金融市場にも積極的に投資していきたいと、株式に注目する人も多いですからね。素朴な疑問ですが、決算書は誰にでも公開されている情報にもかかわらず、見る人によって出せる利益の差が開くのはなぜでしょうか?
かぶカブキ まず個人投資家の皆さんは会社に勤めている人が多いので、決算書の内容を精査する時間が十分に取れていないことが考えられます。表面的に決算を見て銘柄をホールドしてるだけの人も多いんですよ。二つ目は業績内容やその背景が取引の判断とリンクできていないことです。
この二つが解消できれば、水面下で起こっていることを見て、株価が少しずつ動き出す早いタイミングで買うことができます。初心者の場合、株価が大きく動いて盛り上がったときに買ってしまう人が多いですが、それだと今後も向上する背景の余地がなければ、利益は伸ばせません。情報をリンクさせて先を予想して、動き始める前に乗っておくことが大事です。
─今後かぶカブキさんが挑戦したいことはありますか?
かぶカブキ 金融・投資に関する知識をもっと学び、助言業の資格を取って投資スクールを作ることを次のステップとして考えています。今のままでは投資に関する教育や指導は厳しく制限された範囲でしかできません。なかなか難しい目標ですが、しっかり勉強して挑戦していきたいと思っています。
─最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
かぶカブキ 投資はとにかく継続することが大事です。長く続ければこそ、分かってくることも多いし、資産をより大きく増やせます。相場から退場しないように投資を継続することが理想です。
僕が最初に投資で失敗したように、性格的に向いていない取引スタイルに負け続けるまでこだわるのはよくありません。うまくいかなければ、思い切った転換を考えることも大事にしてみてください。
インタビュー日◎2023年9月20日
FX雑誌「外国為替」vol.13
発売:2024年10月22日(火)
定価:980円(本体891円)